平成二十八年東京都議会会議録第十七号

   午後四時開議

○副議長(小磯善彦君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十八番斉藤あつし君。
   〔七十八番斉藤あつし君登壇〕

○七十八番(斉藤あつし君) それでは、四つのテーマ、六問伺います。
 まずは、学校のイクボスの課題についてです。
 小池知事は、イクボスの都職員への奨励をしておりますが、最近、私の地元小平市の周辺の都立高校の関係者の皆さんと話をしているときに、学校現場でイクボスにできるならなりたいけど、人手不足で業務も多い、人材がふえない限りは持ち帰り残業ぐらいしか対策が思いつかない、知事がいうようにはなかなかできないんじゃないかなというような厳しい意見をいただきました。私も以前より、長時間労働、人手不足の教育現場の改善を要望していましたから、納得をするところでございました。
 そこで伺います。
 管理職がイクボスを実施して、教員が働きやすい環境をつくっていただきたいわけですが、所見を伺います。
 次のテーマに移ります。
 本年度予算に移転建てかえ先の青山の土地購入費三百七十億円が計上されている都立広尾病院について伺います。
 新しい広尾病院の内容については、現在、首都災害医療センター基本構想検討委員会、以下検討委員会と称しますが、そこで議論をしていただいております。
 さて、先日の厚生委員会では、私の質問に、病院経営本部が、今年度の土地購入予算の取り扱いについては、その検討の推移を見きわめながら対応するというふうに答えました。つまり、簡単にいうと、舛添知事時代に、三百七十億円の予算が、十分な準備や議論がされないまま三月に提案されたので、無理に年度内の予算執行をしないということであります。そして、議論を待つということです。慎重姿勢への転換というのは、私は大変評価いたします。
 同時に、私も、都庁の内部資料として扱われました二つの、発注段階から調査の方向性が異なるみずほ情報総研、そして伊藤喜三郎事務所作成の調査報告書、これを参考にしていろいろチェックするという工夫はできたんじゃないかなということを省みる必要を感じているところであります。
 それで伺うんですけれども、病院機能や医療にかかわることは検討委員会で議論していただくわけですけれども、医療以外の課題は、都の病院経営本部がきちんと担い、汗をかかなくてはいけないと思います。そして、提案時の議論や準備が不十分だったというならば、医療以外で心配事は、ここで念をきちんと押さなくてはいけないと思います。
 都立広尾病院は、島しょの救急患者のために、東京消防庁のヘリコプターによる医師の移送のほか、患者の受け入れを行っております。周辺住民に配慮して、通常、ヘリコプターは米軍の赤坂プレスセンターや東京ヘリポートに着陸して、そこから救急車というふうになるんですが、しかしながら、医師が一刻を争う状態と判断をする場合は、夜間でも直接広尾病院に着陸をしているということであります。地域の皆さんのご協力には大変感謝を申し上げます。
 一方、移転の可能性がある青山の地に立ちますと、三十四階建ての高層マンションや、予定地から十メートル程度しか離れていないオフィスビルなど、十階以上の中高層ビルが現在地よりもかなり多く密集しており、仮に病院屋上にヘリポートをつくっても、ヘリ離発着時には音の影響をかなり受けるんではないかというふうに思われます。
 先日、実際に東京ヘリポートで測定をしてみましたら、ヘリコプターの音というのは、三十メーターの距離で会話が難しい九十七デシベルあることがわかりました。そのため、そういったこともあって、病院経営本部所管の豊島病院や荏原病院は、周辺への配慮から、ヘリコプターは大規模災害時以外では離発着できないということになっているそうです。同様の事情で、今後、島の救急搬送に制約が生じないか、心配するところであります。
 また、この地には、江戸時代の面影を残す旧淀藩稲葉家跡地として琵琶池という池と林がありまして、古くからの周辺住民の方が、歴史ある土地の今後の扱いを危惧しているというふうにも聞いております。
 このように、医療以外の分野でもしっかり対応、判断に努めなければいけない課題がございますので、仮に広尾病院が青山へ移転する場合に、病院運営の環境整備をどのように考えているのか伺います。
 次いで、小池知事は八月三十一日の会見で、小池都政におきましては、もう既定路線でしょう、一度決めたのだから、何も考えなくてよいという考え方はとりませんとお話しになっておりました。実際、今回の件でも、第二回の検討委員会で、病院経営本部が会見での知事の発言、大きな経費が伴うことから用地取得については慎重にということを披瀝しまして、場所を含めて、自由な議論を進めるという方向になりました。土地購入先行で準備不足じゃないかなというふうに心配していた側としては、大変安心をしたんです。
 では、検討委員会を進めていった後、その結果をどのように都は取り扱うのか、今後の進め方について伺います。
 三点目です。有料老人ホームと特別養護老人ホーム、以下特養ホームの待機者解消策について伺います。
 介護保険制度に関する意識調査で、介護への負担感が減ったかというふうに聞くと、家族の中で一番減ったと答えるのはお嫁さんなんだそうですね。制度が女性の負担軽減に貢献できるなら大変うれしいことです。
 さて、その介護保険制度で、施設サービスの代表格はやはり特養ホームでございます。先日、厚生委員会で、私の質問に福祉保健局は、いわゆるこの特養ホームの平成二十五年度の都内の待機者は約四万三千人とされるものの、要介護度三以上で入所の必要性が高い人となると、そのうちの約一万四千人であると答弁をしておりました。絞られたわけですが、それでも、高齢化の進展を考えれば、ニーズはまだまだ高まるんじゃないかなというふうに思います。
 しかし、高齢者の住まいのほかの選択肢として、有料老人ホームというのもございます。
 平成二十八年十一月一日現在、都内の有料老人ホームは、施設数七百四十九カ所、定員数四万五千三十六人と、都内の特養ホームの入所定員数に匹敵する規模になっているんですが、私は常々、入所が必要で経済的に可能な方は積極的に有料老人ホームを活用すべきと考えておりました。特養ホームを複数申し込んでもすぐに入所できなければ、思い詰めずに気持ちを切りかえて、有料老人ホームやほかの施設を調べて判断を進めていくのも理想ではないでしょうか。
 そこで、有料老人ホームの中から、経済的にも自分に適した施設を都民が安心して選択するためには、都はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
 さらに、都内有料老人ホームの約八割は、介護サービスつき施設です。私の周囲の施設を見ますと、要介護度三以上の入所者は、大体三割から四割ぐらいいらっしゃいます。場合によっては、医療的ケアやターミナルケアへの対応が可能なところもあります。周囲とのトラブルが課題となる、行動の障害を伴う認知症も相当数対応しています。
 ちなみに、平成二十七年度では、特養ホームが年十一カ所新設されるのに対して、有料ホームは四倍の四十八カ所新設をされています。ざっくり計算をしますと、毎年、重度の要介護者の受け入れ数というのは、特養ホームの一・四倍で、有料老人ホームの方がたくさん受けているということになります。この介護力をもっと活用できないかと思うわけですね。
 しかし、有料老人ホームは、人材確保の大変さは、もちろん給与の高い低いというのもありますけれども、看護、介護資格者から見て研修などで、大手はともかく、中小事業者となると、スキルの維持向上が難しいんじゃないか、できないんじゃないかというふうに心配して、募集しても来ない場合があるというんですね。本当に特養ホームの待機者を減らそうと思うのであれば、広く重度の要介護者に携わる専門職の研修を充実されるような体制づくりを、私は提案しておきたいと思います。
 有料老人ホームにおける介護サービスの質的な向上を図るため、都はどのような取り組みを行っているのか伺います。
 最後に、障害者差別解消に向けた条例制定について伺います。
 私たち都議会民進党は、二〇〇六年、障害者差別禁止条例プロジェクトチームを設置し、仲間とともに、私も当時条例制定に取り組んでいた千葉県を視察するなど、多くの関係者からヒアリング、調査を重ねて、東京都に条例制定を求めてまいりました。
 その後、民主党政権のときに条約署名をして、障害者差別解消法の議論が始まり、ようやくことし四月に施行となっています。
 そして、知事の所信表明において、障害のある方々への差別をなくす取り組みを一層推進するための条例を検討するとの発言がございました。関係者にとっては本当に待望の決断であります。
 もともと障害を持つ人は一定割合で生まれます。また、誰しも事故、病気、高齢によって障害を持つ可能性があります。より一層、障害のある人もない人も、互いの暮らしにくさに配慮し合って生きられる東京にすることは、障害者やその家族だけでなく、全ての人に関係があることです。条例制定に向けた検討では、できるだけ多くの都民の意見をしっかりと聞いて、制定過程そのものが相互理解を深めるものとなるよう取り組みを進めることが必要と考えますが、知事の所見を伺って、終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 斉藤あつし議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者差別の解消に向けた条例についてお尋ねがございました。
 今回検討を開始いたします条例案ですが、誰もが暮らしやすい共生社会、つまりダイバーシティーの実現に向け、社会全体で障害者への理解を深めて、差別をなくす、その取り組みを一層進めることを目的といたしております。
 そのため、検討に当たりましては、障害のある方はもとよりですが、合理的な配慮を求められている事業者、そして学識経験者の皆さんらで構成する会議を設置いたしまして、議論を進めていく考えでございます。
 平成十八年十二月に国連総会で採択されました障害者の権利に関する条約、日本語で、私たちのことを私たち抜きに決めないでをスローガンといたしまして、障害のある方が議論に参加して策定された、このように伺っております。
 都におきましても、今後さまざまな立場の方々の意見を十分にお聞きいたしまして、丁寧に議論を進めます。そして、平成三十年度の条例の施行を目指していく考えでございます。
 なお、その他の質問につきましては、教育長、そして関係局長よりご答弁をさせていただきます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 学校現場のイクボスについてでございますが、教員が育児や介護を行いながら働き続けることができるよう、学校現場においても、管理職みずからが意識を変えて働き方を見直すことが重要でございます。
 都立学校では、全管理職がイクボス宣言を実施し、校内の教職員に周知したところでございます。
 都教育委員会におきましても、東京都職員ワーク・ライフ・バランス推進プランに基づき、例えば育児休業中等の教員に対する支援として、教職員研修センターが実施している研修の一部を動画で配信するなど、教員が育児、介護と仕事を両立できる取り組みを推進してまいります。
 今後とも、学校現場の状況を把握しつつ、教員が働きやすい環境づくりに努めてまいります。
   〔病院経営本部長内藤淳君登壇〕

○病院経営本部長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、広尾病院改築に係る環境整備についてでございますが、病院施設の整備に当たりましては、工期中はもとより、その後の円滑な運営のためにも、周辺環境に影響のある事案につきましては、あらかじめ地域住民等の理解と協力が得られるよう努める必要があると考えております。
 広尾病院の改築につきましては、現在、その基本構想の策定に向け、検討委員会におきまして、具体的な病院像の見きわめを中心に議論が進められております。
 今後、都といたしましては、基本構想に関する議論も踏まえながら、具体的な施設計画や運営方法などの詳細を詰めていく中で、必要な環境整備を検証し、地域に対する説明やきめ細かな配慮など、適切に対応してまいります。
 次に、広尾病院改築に向けた今後の検討についてでございますが、基本構想検討委員会は、各分野の専門家や医師会代表者、地元の行政関係者などから構成されており、先月末には第三回検討委員会を開催したところでございます。
 この間、広尾病院の現状分析とともに、新たに策定された地域医療構想も踏まえ、将来担うべき医療や地域との協働関係のあり方などにつきまして、さまざまな観点から活発な議論が進められております。
 都といたしましては、個々の委員からいただいた貴重なご意見やご示唆を含め、検討委員会における議論を十分尊重して、改築のあり方全体の検討に生かしてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、有料老人ホームの選択を支援する取り組みについてでありますが、都は、有料老人ホームへの入居を希望する都民が、一人一人の身体状況や経済状況等に応じて適切な施設を選択できるよう、情報収集の方法や資金計画の立て方、施設見学の際のポイントなどをわかりやすく解説した小冊子、有料老人ホームの選び方を作成をし、区市町村等を通じて配布をしております。
 また、サービス内容や利用料金等を比較検討できるよう、届け出がなされております都内全ての施設の重要事項説明書を、都のホームページで閲覧できるようにしております。
 今後とも、都民が高齢期の住まいの一つとして有料老人ホームを安心して選択できるよう、きめ細かな情報提供に取り組んでまいります。
 次に、有料老人ホームの質の向上に向けた取り組みについてでありますが、都は、有料老人ホームの適切な運営を確保するため、施設の構造や設備、職員の配置など、事業者が遵守すべき事項について独自に指導指針を定めております。
 また、介護支援専門員や社会福祉士などの専門資格を有する職員が、施設を訪問し、サービス提供の実情を把握した上で、食事介助や排せつ介助の改善手法などを助言指導しております。
 さらに、サービス向上の取り組みを一層促すため、昨年十二月には、認知症介護やみとり介護に関する研修の実施に努めることなどを新たに指針に盛り込み、事業者向け説明会等を通じて周知をしております。
 今後とも、こうした取り組みを進め、有料老人ホームにおける介護サービスの向上を図ってまいります。

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