平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 四十六番栗山欽行君。
   〔四十六番栗山欽行君登壇〕

○四十六番(栗山欽行君) まず、調布飛行場の管理運営について伺います。
 調布飛行場は、東京の島々と本土を結ぶ定期航空路の拠点として重要な役割を担っており、調布飛行場の安定的な管理運営のために地元住民の不安を解消し、理解と協力を得られるよう取り組んできたものと考えています。
 昨年七月に発生した調布飛行場付近の航空機事故から一年半が経過しようとしていますが、いまだ事故原因が究明されず、今も地元住民の不安が払拭されないままとなっています。
 こうした状況の中、本年九月には、調布飛行場の周辺住民を含む七千名を超える署名とともに、自家用機の撤廃や被害者の救済などについて知事宛ての要望書が提出されました。
 そこでまず、自家用機についてですが、平成十三年の調布飛行場の都営空港化に際し、都が地元三市と締結した協定書においても、積極的な分散移転を図るとの約束がされており、早急に対応していくべきと考えます。都の見解を伺います。
 次に、被害者救済についてですが、今も事故原因が明らかになっておらず、加害者が特定されないことから、被害住民への損害賠償など、抜本的な救済が全く進んでいません。
 このため、周辺住民は、万が一将来、同様の事故が起きたとき、被害を受けた住民が置き去りにされてしまうのではないかと不安を募らせています。
 事故発生後の一年半の間、被害者救済が進まないという事態は、当初の想定を大きく超え、長期化しています。
 こうした事態に際し、都は、例えば生活再建のための資金を支援するなど、従来の空港管理者の役割を超えた新たな救済策を打ち出すべきであると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、隣接する東京スタジアムで開催されるラグビーワールドカップ二〇一九について伺います。
 世界最高峰のスポーツイベントであるラグビーワールドカップが、いよいよ三年後に迫りました。アジア初の開催となるこの大会は、北海道から九州までの十二会場で開催されます。開会式、開幕戦の会場である東京スタジアムを満員のラグビーファンで埋め尽くし、その勢いを全国に波及させる強い気概を持って臨むべきと考えます。
 これまで都は、ラグビーの試合会場や都主催のイベントなどで、二〇一九年大会のPRに取り組んできたことは承知しています。しかし、三年後の大会に向け、さらにラグビーへの関心を高めていくためには、これまでの取り組みに加え、都民、国民に広くラグビーの魅力や情報を伝える工夫も必要です。
 二〇一九年大会の成功に向け、都はどのように開催機運の盛り上げに取り組むのか、伺います。
 さて、二〇一五年に開催されたイングランド大会では、約二百四十五万人ものラグビーファンがスタジアムを埋め尽くしました。開会式、開幕戦の会場となっている東京スタジアムにも、期間中、VIPを含め大勢の観客が訪れることが想定されます。
 東京スタジアムではこれまで、サッカー日本代表選などの大規模スポーツ大会や、五万人を超える商業コンサートを開催してきた実績がありますが、二〇一九年大会では、国内外から訪れる皆様に心から楽しんでいただけるよう、スタジアム周辺の交通アクセスについても万全の体制を整える必要があります。
 本年六月に行われたテストマッチは、天皇皇后両陛下のご臨席のもと、三万四千人を超える観客が訪れ、都やスタジアム、関係機関には、二〇一九年に向けた貴重な経験となったと思いますが、同時に飛田給駅の混雑緩和など、交通アクセス面での課題も明らかになりました。
 そこで、ラグビーワールドカップ二〇一九に向け、交通アクセスについてどのように検討を進めていくのか、伺います。
 二〇一九年大会の翌年には、オリンピック・パラリンピック大会が開催されることから、世界的なスポーツの両大会を機に、将来のまちづくりを見据え、対応を進めていくことが重要と考えます。
 一方、東京スタジアムの地元飛田給では、駅西側の一号踏切が狭隘であることから、地元協議会が拡幅を求める陳情を調布市議会に提出、昨年十二月に採択されています。これを受け、市は将来のまちづくりも見据え、踏切の安全性向上を図るため、踏切道の拡幅に向け京王電鉄と調整中と仄聞しています。
 多くの人が利用されることが見込まれる飛田給駅や、その周辺の安全性向上は極めて重要です。駅及び周辺の安全性や利便性向上に取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、全国育樹祭を契機とした森づくりへの機運醸成について伺います。
 ことしの夏は水不足が心配され、水の大切さを改めて考えさせられた年でもありました。森林には、土や根に水を蓄える水源涵養の機能があります。加えて森林は、自然災害の防止、都民の憩いの場所の提供など、都民生活に不可欠な数多くの役割を果たしています。
 こうした都民の貴重な財産というべき森林を保全、育成するため、都はこれまで、林道等の整備や多摩産材などの利用拡大などに取り組んできましたが、緑豊かな森林を次世代に確実に引き継いでいくためには、森づくりに対する都民の理解と協力が必要であると考えます。
 平成三十年には、全国育樹祭が東京で開催され、調布市の武蔵野の森総合スポーツ施設で式典が行われる予定になっています。この育樹祭は、森づくりや木材利用の機運を盛り上げ、都民がふだんの生活の中で森林を意識し、森づくりへの積極的な参加を促す絶好の機会となります。
 都は、この機会を逃すことなく、都民の森づくりに対する機運の醸成に取り組んでいく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 水道局は、明治時代、木々が伐採され、土砂の流出が続いていた山々を百年以上の長い年月をかけ、水道水源林として育成することにより、緑豊かな森林に再生しました。
 しかしながら、近年、民有林の荒廃が進行し、小河内貯水池への影響が懸念される状況にあります。
 私はかねてから、多摩川やその上流に位置する東京都の水道水源林の保全に強い関心を持ち、活動してまいりました。
 第二回定例会の我が党の代表質問において、今後の森づくりの推進に向けた具体的な道しるべの作成についてただしたところ、荒廃の進む民有林の購入を進めるとともに、さまざまな主体による森林保全活動の具体的な手法を検討し、今年度中に、みんなでつくる水源の森実施計画を策定する旨の答弁がありました。
 そこで、みんなでつくる水源の森実施計画の検討状況について伺います。
 次に、IWA世界会議について伺います。
 東京水道は、都民生活と首都東京の都市活動を支えるため、水源林や浄水場、送配水管など、水源から蛇口までを一元管理し、安全でおいしい水の安定的供給に取り組んでまいりました。こうした長年の事業運営の中で培ってきた技術やノウハウは、世界の人々にとって大いに参考になるものと確信します。
 二〇一八年には、多くの水関係者が参加するIWA世界会議が日本で初めて東京で開催されます。IWA世界会議は、東京の上下水道の魅力、また、それを支える技術力やノウハウを国内外に向けて発信する絶好の機会となります。
 そこで、開催まであと二年と迫る中、ラグビーワールドカップ、東京五輪へとつなぐ、東京のプレゼンスを向上させる起点とすべく、今後、本格的な準備を進めていくことが必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、東京農業の振興に向けた施策について伺います。
 昨年四月の都市農業振興基本法の制定を受け、本年五月に閣議決定された基本計画により、都市農業振興に関する新たな施策の方向性が示されました。国では、今まさに農地制度や税制度の改正に向けた議論が行われております。
 都においても、本年八月に東京都農林・漁業振興対策審議会から、東京農業の新たな展開について答申が出され、今後の東京農業が目指す方向性が示されました。現在、都ではこの審議会の答申を受け、新たな東京農業振興プランの策定を進めていると聞いています。私の地元農業者の方々も、このプランの内容や策定状況に注目しています。
 そこで、都は答申を踏まえ、東京農業のさらなる発展を図るため、プランをどのように策定し、施策を展開していくのか、見解を伺います。
 次に、GAP制度の推進について伺います。
 リオから東京へ、世界の注目が次期開催都市である東京に集まっており、大会機運の醸成が加速していくものと思います。
 こうした中、都内の農業者からは、大会会場や選手村でもぜひ都内産の新鮮な農産物を提供したいとの声が寄せられています。しかし、農産物の提供については、ロンドン大会以降、持続可能性や安全な食の確保などへの配慮から、生産現場や流通、加工、販売までの工程を高度に管理されたGAP認証など、国際的にも通じる第三者認証を受けた農産物であることが採用条件となっています。これとは別の食品衛生管理方式であるHACCPシステムと同様に、大いに注目すべき点といえます。
 私の住む狛江市では、意欲ある農業者が狛江GAP研究会という組織を立ち上げ、自主的にGAP手法を取り入れた野菜のブランド化を進めていますが、こうした農業者は、第三者認証のあるGAP取得にも意欲を見せています。
 二〇二〇年東京大会を契機に、世界の皆様に都内産の新鮮な農産物を安心して味わっていただくためにも、GAPの認証取得に向けたPRや支援が必要と考えますが、都の対応や今後の展開について伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 栗山欽行議員の一般質問にお答えをいたします。
 飛田給駅についてでございますが、ラグビーワールドカップ二〇一九や二〇二〇年東京大会の開催を踏まえて、駅周辺も含めた安全性等を一層向上させる必要がございます。
 現在、地元市が、お話のように駅に近接する踏切道の拡幅に向けた検討を進めており、その実現には線路の分岐部分の移設が必要であるため、都は鉄道事業者に詳細な検討を働きかけるなど、市の取り組みを支援してございます。
 あわせて鉄道事業者に対し、駅構内のエレベーターの増設やホームドアの整備に取り組むよう働きかけておりまして、今後、補助制度を活用しながら積極的に支援してまいります。
 引き続き都は、地元市や鉄道事業者と連携し、飛田給駅及びその周辺が、利用者にとってより安全で快適なものとなるよう取り組んでまいります。
   〔港湾局長斎藤真人君登壇〕

○港湾局長(斎藤真人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、調布飛行場の自家用機の分散移転についてでございますが、都は、これまでも地元市と締結した協定に基づき、自家用機の分散移転に取り組んでまいりました。国から飛行場の管理を引き継いだ平成四年時点と比較いたしますと、三十五機あった自家用機は、現在十九機まで減少しております。
 今回の事故発生を受け、自家用機のさらなる分散移転に取り組んでまいりましたが、地元の意向も踏まえ、現在は全ての自家用機所有者に対し移転についての意向調査を行うとともに、移転先を確保するため、関東及びその周辺の空港調査を行っております。
 引き続き、これらに積極的に取り組んでいくことで、自家用機の早期分散移転を図ってまいります。
 次に、航空機事故の被害者の救済についてでございますが、都は今回の事故を受けて、相談窓口の設置や住宅被害を受けた方に対する被害家屋の撤去など、さまざまな支援を行ってまいりました。
 航空機事故では、原因の究明に多くの時間がかかることが一般的であり、その間、被害者には責任がないにもかかわらず、賠償制度が実施に移されない事態も考えられます。今般の事故におきましても、ご指摘のとおり、現に被害者が救済されない期間が長期化しております。
 こうした状況を踏まえ、都は、都営空港を離着陸した航空機が都内で事故を起こした場合に、被害者が迅速に救済されるよう、具体的な方策について検討してまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長塩見清仁君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(塩見清仁君) ラグビーワールドカップ二〇一九に関します二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、開催機運の盛り上げについてでございます。大会開催の機運を高めるためには、ラグビーに関心のない層を初め、多くの方に興味を持っていただけるよう、効果的なPR活動が重要でございます。都はこれまでも、ラグビーの試合や都主催のスポーツイベントの機会を捉え、ラグビー体験や大会のプロモーションを実施してまいりました。
 大会千日前の十二月二十四日のクリスマスイブには、東京タワーをライトアップし、あわせてステージイベントなどを開催することで、話題づくりに取り組むこととしております。
 さらに、誰もが気軽にラグビーの魅力や情報に触れられるようホームページを刷新し、都内の試合やイベントを紹介するとともに、ルール動画や大会PR映像等をSNSとも連動して発信するなど、今後とも、広く都民のラグビーへの関心を高め、大会への大きな期待につなげてまいります。
 次に、東京スタジアム周辺の交通アクセスについてでございます。
 これまで、六月のラグビーテストマッチを初め、大規模なスポーツ大会やコンサートにおいて、交通輸送の課題を明らかにするための調査を実施いたしてきました。
 これによりまして公共交通機関の利用、歩行者や道路交通等の状況、イベントの種類に応じた観客の観戦行動を把握し、現在、組織委員会、地元自治体、交通事業者など、関係機関と連携したプロジェクトチームにおきまして、その対策の検討を進めているところでございます。
 今後、最寄り駅の混雑緩和や周辺道路の渋滞抑制、観客の分散を図るためのシャトルバスの活用等について対策の方向性を整理いたしまして、地元市を初め、関係機関とさらに検討を重ねまして、具体的な交通アクセスの計画につなげてまいります。
   〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、森づくりへの機運醸成についてでございますが、水源の涵養など、多くの機能を持つ森林を健全な姿で次世代に継承するには、都民の理解と協力が必要でございます。
 全国育樹祭は、森づくりや木を使うことの大切さを広く全国に発信する森林と緑の祭典でございまして、都民の森づくりへの機運を醸成する絶好の機会であると考えております。
 都は、育樹祭の開催準備を着実に進めるため、先月、区市町村や関係団体等で構成いたします実行委員会を立ち上げたところでございます。今後は、都民の関心を一層高めていくため、森林や木に触れ合い、親しむイベントを開催するなど、区市町村等と連携した取り組みを検討してまいります。
 こうしたさまざまな機会を通じまして、森林が果たす役割や木のよさを広く発信することにより、森づくりへの機運を高め、健全で活力のある森林の育成を図ってまいります。
 次に、東京農業の将来に向けた施策展開についてでございますが、東京農業が力強く発展するためには、大都市の優位性を生かした施策の展開が必要でございます。東京都農林・漁業振興対策審議会の答申におきましても、多様な担い手の確保、育成や、力強い農業経営の展開、多面的機能を発揮した農地保全などの施策の充実が求められているところでございます。
 現在、都では、新規参入者の受け入れや定着への支援を初め、先進技術の活用や農産物のブランド化による高収益型農業の確立、都市計画制度等と連携した農地保全などについて、新たな視点に立った実効性ある取り組みを検討しているところでございます。
 今後は、これらの施策に都民や農業関係団体などからの幅広い意見を反映させまして、新たな東京農業振興プランを、来年の春を目途に策定してまいります。
 最後に、都内産農産物におけるGAPの推進についてでございます。
 東京二〇二〇大会の選手村等に都内産農産物を提供するためには、組織委員会が定める調達基準案に示されました、食品の安全性や環境への配慮等を求めるGAP認証の取得等が必要になると見込まれているところでございます。
 そのため都では、農業者が円滑に認証を取得できるよう、今年度からPR用リーフレットを配布するほか、モデル農家において、生産工程や安全対策等の改善指導を行うコンサルタントの派遣を開始しております。
 今後は、農業者に対し認証の適合基準等を説明する研修会を都内各地で開催いたしますとともに、GAP認証の取得に向けた支援を着実に進めてまいります。東京大会を契機といたしましたこうした取り組みにより、新鮮でより安全・安心な都内産農産物の利用を促進してまいります。
   〔水道局長醍醐勇司君登壇〕

○水道局長(醍醐勇司君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、水源の森実施計画の検討状況についてであります。
 水道局では、多摩川上流域の水道水源林を百年以上にわたりまして所有、管理をしてまいりましたが、一方で、水源林とほぼ同規模である民有林の一部で荒廃が進行し、土砂の流入等による小河内貯水池への影響が懸念されております。
 このため、貯水池周辺への影響が特に大きい民有林の荒廃度を調査し、有識者の意見を踏まえた購入の優先度を定め、おおむね十年間で購入を推進していきます。
 また、水源地保全の重要性を都民と共有し、積極的に参画してもらうため、都民サポーター制度や協賛金、ネーミングライツによる企業の森等の取り組みを新たに実施いたします。
 これらの内容を取りまとめ、都民の声を反映させた上で、今年度中に実施計画を策定し、着実に施策を推進することで、次世代に良好な水源地を継承してまいります。
 次に、IWA世界会議の開催に向けた取り組みについてでありますが、我が国初の開催となるこの会議は、水分野における新たな知見や技術が集結する世界最大規模の会議であります。会議の成功には、内容の充実はもとより、二〇二〇年東京大会につながる万全のセキュリティー対策等が不可欠であることから、開催都市東京の役割が極めて重要となります。
 このため、水道局、下水道局では、産学官の関係機関から成る開催国委員会を設立し、展示会やプログラムの充実、警備強化に向けた体制づくり等に取り組んでおるところです。
 二〇一八年に東京で開催されるこの会議では、長年培ってまいりました漏水防止や高度処理などの先進的インフラ技術を国内外へ積極的に発信することによりまして、世界の水環境改善と東京の産業力強化に資するよう、引き続き関係機関と緊密に連携し、精力的に準備を進めてまいります。

○議長(川井しげお君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十一分休憩

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