平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 三十五番尾崎あや子さん。
   〔三十五番尾崎あや子君登壇〕
◯三十五番(尾崎あや子君) 豊洲市場問題、東京五輪の契約節減問題は、東京都民ならず、全国から注目を集めています。この二つの問題では、一〇〇%に限りなく近い落札率で、一者しか入札に参加せず、競争性に欠ける案件が相次ぎ、中には我が党に談合情報が寄せられた案件も存在しています。
 知事が立ち上げた都政改革本部でも、これらの案件が取り上げられ、財政のワイズスペンディング、税金の有効活用が働いているのか、大きな問題とされています。
 こうした契約の客観性、公平性、透明性を第三者によって監視、検証する機関として、入札監視委員会があります。ところが、さきの決算特別委員会で、我が党の質問で明らかになったように、この入札監視委員会が第三者機関としての役割を果たしておらず、その結果、まともな監視ができていないという問題が浮き彫りになりました。入札監視委員会の改善について質問いたします。
 入札監視委員会は、一年前の契約案件から一定の事案を抜き出して審議にかけます。これをどう選ぶか。都の説明によると、入札監視委員会の委員長が方針を事務局、すなわち都財務局に指示し、事務局が複数の案件をリストアップした上で、最終的に委員長が選定するということです。
 委員長に決定的な権限があります。
 そこで私は、過去三代の委員長を調べてみました。初代の委員長は財務局の経理部長、二代目の方も財務局の経理部長の経験者、そして、三代目の方も、財務局の契約二課の課長を務めていたことが判明しました。財務局の契約の中枢にいた都庁OBが委員長を務め、事務局、すなわち財務局と一緒に委員会で議論する案件を選び出す。これで第三者機関の役割が果たせるでしょうか。
 入札制度に詳しい桐蔭横浜大法科大学院客員教授の鈴木満氏は、監視委員に都庁OBを入れるのは、自分でやったことを自分でチェックするようなものであり、適正手続の原則に反すると、厳しい見解を表明しています。
 知事、どう思われますか。
 三代目の方は、元中央卸売市場長であり、同氏が委員長となった間に審議対象になったのは、二〇一二年四月から二〇一五年三月までの入札案件、すなわち豊洲新市場整備にかかわる入札契約が相次いだ時期です。
 ところが、当初の予定価格を四百億円以上も引き上げて、落札率九九・九%で落札した豊洲新市場施設の三つの本体工事は、談合疑惑が指摘されているにもかかわらず、審議対象になっていません。もし審議したら、まさにそのものずばり、自分でやったことを自分でチェックすることになってしまうのです。
 知事、余りにも公平性、透明性に欠ける不適切な人事だとは思いませんか。お答えください。
 他県はどうなっているのか、政令指定都市を抱える十五の道府県の入札監視委員会の現委員長の経歴を調べました。一県を除き、土木や契約に詳しい大学の研究者や弁護士、公認会計士といった、れっきとした第三者の有識者が務めており、東京都のように、その県の幹部職OBが委員長という県はありませんでした。福岡県では、運営要綱で、県の職員であった者については選任しないものとするとしていたり、多くの道府県で、自分や親族がかかわった案件では審議に加わらないとしています。
 知事に伺います。
 入札監視委員会は、第三者機関にふさわしく、委員には、都庁の職員であった者は選任しないのが当然のあり方ではないかと考えます。知事の認識と都の入札監視委員会の改革への決意を伺います。
 入札監視委員会が審議した案件は、低入札案件や中小企業が受注する規模の小さい案件がほとんどです。大手ゼネコンによる巨額の工事費を伴う高落札案件には手をつけようとしない入札監視委員会のあり方が、厳しく問われています。
 国は、地方自治体の入札監視委員会の運営マニュアルを発行していますが、その中では、規模の大きい発注があった場合には、随時審議を行うのが望ましいとしています。兵庫県では、予定価格の九五%以上の高落札率、談合情報があった案件を審査することを要綱で定めており、京都府や熊本県の実際の審議でも、高落札案件が審議されています。
 財政のワイズスペンディングを第三者委員会がチェックする観点からも、入札監視委員会においては、契約規模の大きい案件や高落札率案件を審議の中心にすることが重要だと考えますが、知事、いかがですか。
 審議対象案件の抽出の改善について伺います。
 国土交通省のマニュアルでは、発注者が審議案件を指定しないことと書いています。つまり、行政側が審議案件を選んではいけないのです。他県では、東京都のように、委員長と事務局が相談して選ぶのではなく、第三者である入札監視委員が交代の輪番制で選び、説明も事務局ではなく、委員が行うようにする道府県が少なくありません。
 都も、第三者委員会にふさわしく、それぞれの委員が審議する案件を選び、説明もするよう改善すべきですが、いかがですか。
 入札監視委員会を開催するに当たって、都は、各委員に、前年度に入札があった案件の一覧表を送付します。ところが、この一覧表には、それぞれの案件の落札率を書き込む欄がありません。多くの県では、入札監視委員会や委員に提出する案件の一覧表には、落札率を記入する欄がついています。委員が高落札率案件をチェックできるよう、都の入札監視委員においても、契約案件の一覧表には、落札率を記入するよう改善を求めますが、いかがですか。
 次に、多摩地域の問題についてです。
 知事は選挙中、多摩地域の格差という点をしっかり目配りしたい、二十三区より整備がおくれている多摩格差という言葉があると発言し、就任後も、市長会で、多摩格差ゼロは皆様と連携していきたいと発言していました。十一月十一日の定例記者会見では、記者からの質問に、多摩地域の医療の面、産業の研究開発などについて答えています。
 知事は、新たな多摩格差についてどのように認識されていますか。
 二十三区よりも家賃が安い多摩地域に引っ越してくる子育て中の若い人たちがふえています。ところが、以前は子供の医療費は無料だったのに、今は医療費の負担がふえて困っている。何とかしてほしいとの声も寄せられています。
 多摩地域では、小中学校の医療費助成制度において、十九市が所得制限を設けています。ところが、二十三区は所得制限がありません。同じ都民でありながら、住んでいるところによって負担のあり方が変わるという地域間格差をなくし、どこに住んでいても、安心して子育てができるようにすべきだと思います。都民の福祉の向上は自治体の魂です。
 医師会の役員から話を聞きましたが、子供の医療費を無料にすることには、誰も反対はしないといっています。市長会からも要望が出ており、多摩地域でも、小中学生の医療費助成制度の所得制限をなくすため、都の対策が早急に求められますが、知事、いかがですか。
 多摩地域では、特に新生児集中治療室NICUの不足や産科、小児科不足が深刻です。東京都の周産期医療協議会では、毎回のように多摩地域の周産期医療について発言があり、多摩地域は少ない状況、区内との格差がまだまだある、周産期の大規模施設をつくることは必須との意見が出されています。
 NICUは、東京全体で三百二十九床ですが、多摩地域には七十二床しかありません。にもかかわらず、これまで都は、多摩地域の目標を決めてふやすことを拒否してきました。年間出生数一万人当たり三十床という都の方針だと、多摩地域だけで百床は必要です。
 また、最近は、住んでいるところで子供を産みたいが、子供を産める産科がなくて困っている、産科のお医者さんが高齢になって、病院をやめたという声が多く寄せられます。私の活動地域である東村山市内には、助産所も含めて二カ所、東大和市、武蔵村山市ではそれぞれ一カ所と、大変少ない状況です。
 厚生労働省は、周産期医療体制のあり方に関する検討会の意見の取りまとめ案を十一月十七日に発表しました。その中で、分娩施設の減少に伴い、妊産婦の分娩施設へのアクセスの悪化が懸念されている現状や課題が明らかにされました。安心して出産し、安心して子育てができる環境をつくるべきですが、知事の積極的答弁をお願いしたいと思います。
 次に、多摩地域の無電柱化についてです。
 知事は所信表明で、東京の電柱をゼロにすることを目指したいと発言しました。多摩地域の都道は、歩道幅が二・五メートルもない狭いところが多く、電柱があるために、雨の日にはすれ違うことができず、車道におりなければならないところや、通行人がベビーカーとすれ違うときにも危険な状況があります。
 都の無電柱化推進計画に示されている都道の地中化率は、二〇一五年度末では、区部は五五%と進んできていますが、多摩地域は一七%と立ちおくれています。
 知事の公約を推進するために、立ちおくれている多摩地域での無電柱化を早急に進めるよう求めますが、知事の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 尾崎あや子議員の一般質問にお答えいたします。
 入札監視委員の選任についてのお尋ねがございました。
 これまで都の入札監視委員会では、契約法規や建築、土木技術に精通している弁護士、大学教員などの学識経験者とともに、公共調達の実務経験があって、入札契約制度に関しての専門知識を有する都のOBを委員に選任してきたと聞いております。
 前の委員長は、都のOBではございますが、第三者として中立的な立場からご審議をいただいてきたとは聞いておりますが、都民の目から見ますと、その選任自体に公正性が疑われるようなことは避けるべきと考えます。
 今後の委員の選任につきましては、委員長を含めた委員について、都のOBではない、学識経験者から選定するよう既に事務方に指示をしたところでございます。
 入札契約の審議対象の選定につきましてのご質問もございました。
 都の入札監視委員会では、これまで契約制度の運用状況を具体的な事案をもとに審議することに主眼を置いて、審議の対象とする案件は、制度のあり方や制度改正後の効果の検証などに役立つように、契約実績の多い一般的な案件を抽出することを基本としていたと聞いております。
 審議対象の選定につきましては、今後、行政から独立した第三者機関として、入札監視委員会全体で合議をいたしまして、決定していただくことが望ましい、このように考えております。
 多摩格差についてのご質問もございました。
 従来からの公共下水道、道路などの課題につきましては、これまで、都と市町村が連携をして解決に努めた結果、いわゆる多摩格差は、かなりの部分で解消しているものと認識をいたしております。
 一方で、多摩地域は人口減少、少子高齢化の進展、そして大規模工場などの撤退など、依然として、それぞれの地域ごとに異なる諸課題を抱えています。
 私は、先般の都知事選の間も、多摩の各地に足を運びましたし、また、知事就任後も、奥多摩町、そして檜原村を訪問させていただいたところでございます。その中で、豊かな自然を初めとするさまざまな魅力とともに、それぞれの地域が抱える課題を実感することもできました。
 今後も、精力的に地域に足を運びまして、その実情を的確に把握した上で、課題を一つ一つ解決していきながら、オール東京の発展につなげていくことが重要だと考えております。
 小中学生の医療費の助成事業についてのご質問でございます。
 私は、小中学生の医療費への助成事業は子育てを支援する福祉施策の一環であり、一定の所得制限、自己負担は必要だと、このように認識をいたしております。
 この事業の実施主体は区市町村でありまして、それぞれの議会におきましてさまざまな審議を経て、条例を定めて実施をしておられます。
 そして、多摩地域の周産期医療体制、NICUについてのご質問がございました。
 多摩地域では、都立多摩総合医療センター、小児総合医療センターと杏林大学医学部付属病院がスーパー総合周産期センターとして、妊婦を必ず受け入れるとともに、多摩全域を対象として搬送の受け入れや調整を行っているところでございます。
 また、これらの病院が中核となりまして、多摩地域に所在する四つの地域周産期母子医療センター、都独自に指定をいたしております三つの周産期連携病院、その他主要な病院や診療所などがネットワークを構築して、リスクに応じた役割分担と連携を進めております。
 さらに、都は、周産期医療に従事する医師の確保のために、奨学金の貸与、産科、NICU等の医師に手当を支給する医療機関への支援も行っております。
 今後とも、必要な医師や看護師の確保を進めながら、限られた医療資源を最大限に活用いたしまして、多摩地域におけます周産期医療体制の充実を図ってまいります。
 多摩地域の無電柱化についてのご質問でございます。
 東京の防災力を高めるために、都内全域で無電柱化を推進することは重要でございます。
 都はこれまでも、無電柱化推進計画に基づきまして、多摩地域においても、都市防災機能の強化に重要な役割を果たす緊急輸送道路や、主要駅周辺などで無電柱化を推進してきました。
 現在の国会におきまして、私が国会議員の時代から取り組んでまいりました無電柱化を推進するための法案も、いよいよこの国会で成立の見込みとなっております。
 都におきましても、これをベースに条例案の検討を進めて、総合的、計画的に東京の無電柱化を推進していく強い決意を持っていることをお伝えしておきます。
 なお、その他の質問につきましては、財務局長からのご答弁とさせていただきます。
   〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) まず、入札監視委員会の審議対象についてでございますが、お話の国土交通省の運営マニュアルの中では、東京都のような規模の大きな団体ではなく、発注件数が少ない団体に対しまして、規模の大きい発注があった場合に、随時、審議を行うことを勧めているものでございます。
 また、審議対象とする案件につきましては、事務局が選定しているという事実は全くございません。委員長の方針に基づき、事務局が該当する案件を全てリストアップし、委員長がその中から選定してきたところでございます。
 次いで、審議対象とする案件の選定手続や資料作成方法などについてでございますが、第三者機関であります入札監視委員会で決めていただきまして、その指示に基づき対応してまいります。

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