平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 九十一番三宅正彦君。
   〔九十一番三宅正彦君登壇〕

○九十一番(三宅正彦君) 初めに、昨日の代表質問の答弁に関連し、お尋ねいたします。
 まず、バレーボール会場の見直しについてです。
 昨日、横浜市の林市長は、定例記者会見において、二〇二〇年大会での横浜アリーナ開催は、極めて厳しいとの見解を示しました。とりわけ、有明アリーナでの開催に期待している方が多く、競技団体の理解を得ることができるかどうか懸念を示しています。
 知事は、我が党の代表質問に対し、林市長とは長年の友達であり、日々連絡をとり合っており、クリスマスまでに結論を出すといわれました。
 そこで、林市長の会見を踏まえ、今後、クリスマスまでの間、何をされるつもりなのか、見解を伺います。
 また、昨日の代表質問で、大きな黒い頭のネズミに関する質問に対し、ご想像にお任せしますという旨の答弁がありました。知事自身が記者会見で語られたことについて聞いているのですから、想像に任せるというのは、自身の発言に責任を負わない、大変残念な答弁といわざるを得ません。都議会の議場は、都民の代表同士が真剣な議論を交わす場です。改めて答弁を求めます。
 次に、多摩・島しょ地域の観光振興について伺います。
 東京を訪れる観光客に東京の魅力を幅広く理解してもらうためには、都心の観光スポットをめぐるだけではなく、多摩地域や島しょ地域にも足を運び、エリアごとの自然や文化に触れる機会をつくり上げることが大切だと考えます。
 多摩や島しょでは、観光関連の団体だけではなく、経済分野を含めた多様な主体が、来訪者の誘致に向けて独自に活動を行っています。そうした取り組みの中から、多摩や島の名産の焼酎を観光に役立てる考え方などが出てきたものと考えます。これらの地域の団体や組織の力をうまく結びつけることこそ、効果の高い観光振興を展開するポイントになると考えます。
 多摩地域では、エリアの枠を超えた新たな事業に取り組んだり、島しょ部では、島同士の連携により、来訪者とその消費をふやす仕組みをつくることもできると考えます。さらには、こうした動きが活発になれば、誘客のためのイベントにも注目や関心が集まり、旅行者の増加につながるものと思います。
 こうした視点に立ち、都は、多摩・島しょ地域の観光振興をどのように進めていくのか、知事の見解を伺います。
 次に、自然公園を生かした観光振興について伺います。
 東京の自然は、大半が多摩と島しょに広大な自然公園という形で広がっているため、これらを環境面から守ることのほかに、旅行者の誘致に向けた活用を図る視点は、これからますます大切になると思います。自然公園は、トレッキングを楽しめる森林や渓谷、美しい海岸など、海外からの旅行者にとっても魅力的な観光資源にあふれています。
 国でも観光振興の立場から、国立公園の活用に向けた検討を始めていますが、都においても同様の考え方から、自然公園への訪問者をふやす具体的な動きを進めるべきです。
 自然公園では、景観も含めた環境を保護する必要があるためにさまざまな制約があり、集客に役立つ施設をつくる場合に、多くの工夫が必要となります。こうした規制についても柔軟に見直すべきと思います。と同時に、自然公園を訪れる観光ツアーをふやすための努力も大切であると考えます。
 自然公園を生かした観光振興をどう進めていくのか、都としての考え方を伺います。
 次に、アクセシブル・ツーリズムの推進について伺います。
 二〇二〇年のパラリンピック大会のレガシーとして、障害者を初めさまざまな都民が幅広く社会の中で活躍し、生活を楽しもうとする流れを定着させることが大切です。特に、これからは、障害者が楽しむ機会をふやす分野として、スポーツ競技のほかに、観光旅行などに注目していくことが必要になると考えます。体などの機能が十分でなくとも、車椅子を使いつつ、まち中で観光を楽しむことは、今後の少子高齢化社会で増加する高齢者にも当てはまる面が大きいものと思います。
 障害者や高齢者が、観光バスにより車椅子なども用いて旅行をするツアーは、最近ではアクセシブル・ツーリズムとして、少しずつ社会の中に広がりつつあるとの話も聞きます。アクセシブル・ツーリズムはようやく動きが始まった段階であるだけに、都民の理解を広げ、具体的なツアーをふやすため、都としても適切なサポートを進めていくべきです。特にこうしたツアーでは、さまざまなきめ細かい対応が必要で、その作成にはコストもかかるため、行政として普及に向けたサポートも必要になると思います。
 都として、アクセシブル・ツーリズムの推進に向けてどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、大会スタッフ等による障害者への対応について伺います。
 パラリンピックの開催は、共生社会の実現に向けた大きな一歩であり、そこで重要となるのが、ハード面はもちろんのこと、ソフト面でのバリアフリーの推進です。
 私は九月に、リオ・パラリンピックを視察してまいりましたが、大会スタッフやボランティアが、笑顔で誰にでも声をかけ、サポートを行っている姿を多く見かけました。車椅子では歩行が困難な道であっても、スタッフが車椅子を押してサポートするなど、ハード面の不足を人的な対応でカバーしている様子も見られました。
 また、会場内では、ブラジルの観客が他国の選手のことも応援するなど、おもてなしの心で大会を盛り上げていることも実感しました。選手にとって、一緒に楽しむ姿勢で接してくれるスタッフやブラジル国民の存在は、大きな力になったに違いありません。
 東京でも、世界中から多くの観客や選手を迎えることになります。我が国では、困っている人を助けたくても、声をかけていいのかわからない、どのようにサポートしたらよいかわからないといった声も聞きますが、基本的な知識があれば、ちゅうちょなく接することが可能です。
 また、大会を機に、障害者に対してみずから進んで手助けをする意識が人々の中に広まれば、心のバリアフリーが大会のレガシーとなることも期待できます。
 そのためには、まず、大会スタッフなどによる障害のある方々などへの対応が適切に行われるようにすることが重要だと考えますが、今後どのように準備を進めていくのか、所見を伺います。
 次に、有人国境離島について伺います。
 本年四月、いわゆる有人国境離島法が議員立法により成立し、来年四月から施行されることとなりました。
 この法律は、近年の、日本周辺海域における外国漁船による違法操業が行われるなどの看過できない諸情勢を受けて制定されたもので、領海基線を有する重要な離島を保全し、地域社会を維持する上で必要な施策等について定めた、大変意義深い法律です。
 同法では、有人国境離島地域のうち、継続的に居住可能とするための環境整備が、当該地域社会維持の上で特に必要な地域が特定有人国境離島地域として指定されています。
 同地域に対しては、航路、航空路運賃の負担軽減と雇用の拡充、漁業経営の安定など、地域社会を維持するための施策に関する財政上の措置が規定されており、該当する離島の振興にとっても大変有益な内容となっています。
 ところが、東京都における同地域の指定状況を見ますと、伊豆諸島の南部地域、すなわち三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島のみが指定されています。これは同じ伊豆諸島として、地域の特性を尊重しつつも一体的に振興を図るべき東京都の立場からしますと、見過ごすことができない状況です。
 今後、伊豆諸島南部地域に対する措置が具体化すれば、同じ有人国境離島地域であると思われる伊豆諸島の北部地域、大島、利島、新島、式根島、神津島との間で格差が生じることが懸念されます。
 都は、来年四月の法の施行に向けて、こういった課題も含め、どのように有人国境離島地域における地域社会の維持に取り組んでいくのか、都の見解を伺います。
 次に、島しょ漁業振興について伺います。
 伊豆諸島、小笠原諸島の活性化には漁業の振興が欠かせませんが、漁業者の高齢化や後継者不足が急速に進行しており、このままでは、漁業技術の継承ができなくなる島が出てくるのではないかと危惧しています。
 一方、近年、島外の方でも、漁業に関心を持ち、漁業者になることを夢見て、島の漁船の乗り子として経験を積み、独立した方もいます。しかし、受け入れる漁業者の経済的な負担が大きいことなどから、せっかく申し出があっても断らざるを得ず、漁業者の育成の機会を逃しているケースもあるのが実態です。
 こうした就業意欲のある人を積極的に受け入れ、漁業者として育成するために、都はどのように取り組んでいくのか所見を伺います。
 次に、島しょの都立高校について伺います。
 以前、本会議の場で紹介した都立大島高校のツバキの園庭が、生徒や学校の努力により、本年二月、国際優秀ツバキ園に見事認定されました。このように、島ならではの特色ある教育に取り組みつつも、生徒数の減少が続いている島の都立高校の活性化は、地域の振興のためにも急務であると、これまで都議会の場で訴えてきました。
 こうした中、都教育委員会は、今年度入学生の選抜から、地元町村がホームステイ方式により受け入れた生徒に対し、島の高校への受検を可能とし、今年度は神津島村において、一名ではありますが、地元の神津高校に入学し、今も元気に学校生活を送っております。
 また、地元町村と高校が協力して、中学生島しょ体験ショートステイを実施し、島の多様な魅力を中学生にアピールしており、今年度は、昨年から実施している神津島村に加え、八丈町でも実施されています。
 島外の生徒を受け入れることを通して、多くの都民が島の魅力を再認識することは、地域振興の大きな力となります。
 今後も、島外の生徒を受け入れる高校を着実に拡大するとともに、生徒数も増加させていくべきと考えますが、地元町村では、新たなホストファミリーの確保や、生徒が夏休み中に部活動に取り組むための宿泊経費等の課題を抱えながら、取り組んでいると聞いています。
 そこで、都教育委員会は、こうした課題に対する今後の取り組みと島外生徒受け入れの拡大に向けた方針について、どのように考えるのか見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 三宅正彦議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、バレーボール会場についてのご質問がございました。
 アジェンダ二〇二〇では、既存の施設の活用、このことがうたわれております。横浜アリーナの活用というのは、この点にかなうものとして検討案としたわけでございますが、会場スペースの確保、運営動線、バリアフリー、そして輸送の面などから精査をしているところでございます。できるだけ早く結論を見出していきたいと考えております。
 それから、昨日の代表質問につきましての、重ねてのご質問でございました。
 大きな黒い頭のネズミは誰かということでございますが、これについては、この比喩の表現しか記者会見でも使っておりません。そこで、誰がどうだということについては、申し上げてはおりません。あえてご説明するならば、さまざまなこれまでの古い体制などを代表するといったことで、済みません、片仮名を使いますと、アンシャンレジームということでございましょうか、頭の黒いネズミを、このことを総称として使わせていただいたところでございます。
 そして、お地元であります多摩・島しょ地域の観光振興についてのご質問がございました。
 多摩・島しょ地域は、豊かな自然に恵まれております。そして、それぞれの地域に際立った個性がございます。それらがきらりと光るブランドに磨き上げていくことによりまして、観光客の誘致に対しまして役立つ大きな魅力となることでありましょう。そのために、新しい発想と意欲を持つさまざまな主体が切磋琢磨をしながら、協力をして観光振興に取り組む、そのことによって観光地としてのポテンシャルを十分に引き出すこと、このことが重要だと考えます。
 ご指摘の多摩地域におきましては、観光協会、そして商工団体などが地域の特産品などをブランドとして育て上げるとともに、自治体のエリアを超えたネットワークの構築で観光ルートづくりなどを行う新たな取り組みを支援しているところでございます。
 また、お地元の島しょ地域におきましては、島焼酎特区を実現いたします。島同士が連携して、来島や周遊を促して、消費を喚起する新たな仕組みをつくることによりまして、地域経済の活性化につなげていくということでございます。
 さらに、それぞれの島が独自の強みを発揮して、新たなイベントやツアーの実施、先日もご一緒させていただいたようなイベントがございます。創意と工夫を凝らして競い合って、観光客を誘致する力を高めることができるように後押しをしてまいります。
 そして、これらの施策の展開によりまして、多摩・島しょ地域の特性を最大限に生かした観光振興を効果的に進めてまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長及び関係局長からの答弁とさせていただきます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 島しょ高校への島外生徒の受け入れについてでございますが、都教育委員会では、現在、島しょの町村が実施するホームステイ費用の軽減策や、中学生島しょ体験ショートステイの実施経費に対して補助を行っております。
 今年度、神津島村と八丈町が、都教育委員会との共催により実施した中学生島しょ体験ショートステイは、島しょの自然や高校に対する都内公立中学生と保護者の興味、関心の高さから、募集人員を上回る多くの応募があり、島外生徒受け入れの必要性を改めて認識したところでございます。
 今後、島しょ高校における島外生徒の受け入れの拡大に向け、ホームステイ方式以外での生徒の受け入れ形態や、夏季休業中に生徒や保護者が負担する宿泊費の軽減などの課題を整理し、島しょ町村と協議を進めてまいります。
   〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、東京の自然公園を生かした観光振興についてでございますが、都内を訪れる旅行者がより多くの自然に触れる機会をふやすため、多摩や島しょの自然公園の活用を図ることは効果的でございます。
 これまで都は、東京の豊かな自然を観光面で生かすため、多摩地域の森林の中の散策ルートのPR等に取り組んでまいりました。また、小笠原島諸島の自然に接して観光を楽しむエコツーリズムへのニーズ調査などを行っているところでございます。
 今後は、多摩・島しょ地域に広がる自然公園を対象に、旅行者の興味や関心の集まる観光ツアーのあり方を調べ、その結果を観光関連の事業者と共有して、旅行者誘致に結びつけることを検討してまいります。
 こうした取り組みにより、東京の豊かな自然を活用した観光振興を着実に進めてまいります。
 次に、アクセシブル・ツーリズムの推進についてでございますが、東京の観光を幅広い旅行者に楽しんでいただくためには、障害者や高齢者が快適に移動しながら旅行のできるアクセシブル・ツーリズムの充実が不可欠でございます。
 これまで都は、障害者等が旅行の際に円滑に移動できる仕組みづくりに向け、宿泊施設へのスロープや手すりの設置に対して助成を行うほか、車椅子のまま乗り降りのできるリフトつき観光バス車両の導入を支援してまいりました。
 今後は、障害者等に配慮したツアーをつくる旅行事業者への支援を検討してまいります。また、こうしたツーリズムへの理解を醸成するため、都民や観光関連事業者に対するPRや啓発活動についても検討いたします。
 これらの取り組みを通じて、東京を訪れる多くの旅行者に、より快適な観光の機会を提供してまいります。
 最後に、島しょ漁業における人材の確保、育成についてでございますが、漁業の担い手を確保し、着実に育成していくためには、就業希望者が長い年月をかけて技術を身につけ、漁業者として独立するまでの一貫した支援が必要でございます。
 このため都は、就業希望者に対し、漁業団体が実施する漁業体験研修に係る経費を初め、独立を目指す就業者が船舶操縦免許等を取得する際の費用や、漁船、漁具等を借り受ける場合のリース料を補助しているところでございます。
 今後は、こうした取り組みに加え、熟練漁業者が就業希望者を受け入れ、漁具の作成や操船、操業等に係る、より実践的な技術指導を行い、漁業者としてひとり立ちできるよう育成する仕組みを検討してまいります。
 これらの取り組みにより、島しょ漁業の将来を担う人材を確保、育成し、東京の水産業の一層の振興を図ってまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長塩見清仁君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(塩見清仁君) 大会スタッフ等の障害者への対応についてでございますが、運営時のバリアフリー基準でございますアクセシビリティーガイドラインでは、障害者等に対する接遇の指針を盛り込んで策定を進めておりまして、その案は現在、国際パラリンピック委員会、IPCに承認申請中でございます。
 ガイドラインには、例えば、ニーズを聞いた上でサポートするといった基本的な心構えや、視覚障害者を誘導するときは、誘導者の肘や肩を持ち、横に並んで歩いてもらうなどの具体的なサポート方法が記載されております。
 今後、こうした障害特性や場面に応じた接し方等の習得を目指す研修を、組織委員会と連携して検討、実施し、大会スタッフやボランティアがみずから進んでサポートする姿勢を育むとともに、大会を契機に、誰もが心のバリアフリーを実現できるような取り組みにつなげてまいります。
   〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 有人国境離島地域についてですが、同地域の維持は、我が国の領海や排他的経済水域の保全等を図る上で大変重要でございます。
 都はこれまで、東京都離島振興計画に基づき、定住促進や持続的発展に向けて、伊豆諸島全域の一体的な振興を図ってまいりました。
 現在、国においては、有人国境離島法の施行に向けた準備を進めており、都は、国の定める方針に基づき、伊豆諸島三宅島以南における特定有人国境離島地域の維持計画を平成二十九年四月に策定することとしております。
 都は、特定有人国境離島地域の維持に向け、この計画を着実に実施するとともに、引き続き、北部地域を含む伊豆諸島全域の一体的な振興に積極的に取り組んでまいります。

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