平成二十八年東京都議会会議録第十七号

   午後一時開議

○議長(川井しげお君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川井しげお君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川井しげお君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第十九号、東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例外条例一件、知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意についてがそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(川井しげお君) 昨日に引き続き質問を行います。
 七十番きたしろ勝彦君。
   〔七十番きたしろ勝彦君登壇〕

○七十番(きたしろ勝彦君) 初めて小池知事に質問をさせていただきます。
 まず、知事選では、勝つために標的を絞った見事な選挙戦術、すばらしい選挙結果でした。そして、二度目のベストドレッサー賞受賞、おめでとうございます。重責ですが、一千三百万人都民の幸せのために頑張っていただきたいと思います。
 まず最初に、この四カ月間に感じたことを質問します。
 都政への関心が高くなったのは、まさに小池知事誕生の結果だと思います。ただ、横文字、外来語が多く、困惑している都民も多いのではと危惧しております。
 そして、オリンピック会場の経費削減のための提案、豊洲新市場における食の安全の観点からの判断は、大切な視点であり、多くの都民も支持しています。
 しかし、豊洲市場問題については、建物と環境の安全性の問題と、盛り土等の報告がなかった手続の問題とは、しっかり区別して考えなければなりません。
 議院内閣制のもとでの小泉劇場と二元代表制の地方自治とは基本的に違う世界です。知事として、政治家として、都民の幸せのために働くことは当然ではありますが、異なった意見をすり合わせて、よりよい方向にまとめ、前に進めるのがリーダーシップだと私は考えております。
 トップがかわれば、行政の流れは、知事の政治哲学や改革の精神が自然に行政に及ぶでしょう。上命下服の世界です。今や、知事の問題意識は、都政関係者に十分浸透したと思います。二元代表制のもとでは、自分が正しいと思ってもなかなか望んだ方向に進まないこともあるでしょう。そんなとき一歩引いて、一歩下がって、悠然と見渡せば違う世界が見えてきます。
 かの国には、目には目を、歯には歯をという同害報復のことわざがありますが、我が国では、自分の考えや主張にとらわれ過ぎず、和をもってとうとしとなすの世界観があります。寛容の心と中庸の精神、それは日本人の価値観の一つです。
 そんな中、知事就任の所信表明の中で、公僕という私の大好きな言葉がありました。
 私は、かつて警察官として東京の治安と都民の安全・安心のために奉職をいたしました。当時は、東大紛争、成田三里塚闘争、連合赤軍事件、浅間山荘事件などがあった時代です。火炎瓶や硫酸瓶を浴びた同僚、殉職した同僚もおりました。
 そのときに公僕とはどうあるべきか、どう生きるべきかをしっかりと胸に刻んで、下着に名前を書き、戦場のような現場にも赴きました。社会正義の実現のために、世のため、人のためにという精神をみずからにたたき込みました。都民、国民のお役に立ちたい、この原点を忘れずに、今の政治活動に取り組んでおります。
 都庁職員や公安職の公務員は、法令に基づき、私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために、日本国憲法を遵守し、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることを宣誓し、職務に取り組んでいます。当然、全ての職員が、その使命感を持っているものと信じています。
 そこで、知事自身の公僕としての使命感について、どのように思われているのか、政治家としての見解をお伺いいたします。
 次に、顧問についてお伺いします。
 現在の都政は、東京のみならず、日本の将来をも左右する重要な課題が山積しています。そのトップリーダーである知事は、全てを一人で解決することはできません。政治家である小池百合子と、知事としての立場は異なります。まずは、約十六万人に及ぶ職員を信頼することから、リーダーシップは確立します。それが組織のトップに求められる姿勢だと私は思います。
 現在、東京大改革のもとで、さまざまな取り組みや事業が見直しされております。こうした改革や見直しを行うに当たって、重要なのは、行政の現場において汗して、仕事に向き合ってきた職員の意見に耳を傾けることです。
 かつて、後藤新平が東京市長に就任した際、美濃部達吉などの数十人の知識人を非常勤職員に任命し、執行機関である職員と大いに議論させたといいます。職員と忌憚のない議論をさせることが、都政の改革につながりました。
 本当の改革とは、短期的な結果のみを求めるのではなく、改革の過程を重視し、組織の体質を変えることだと、元副知事の青山やすし教授は指摘しています。それには、職員を信頼し、組織を活用することが求められます。現在の知事の顧問団は、こうした職員との意思疎通や情報共有を得た上で、三会場の件も含めてそうですが、知事に助言をしているのでしょうか。甚だ疑問を持たざるを得ません。
 そこで、都政におけるトップリーダーとして、職員と顧問の活用のあり方をどう考えているのか、知事の所見をお伺いします。
 次に、道徳教育についてお伺いします。
 電車に乗り、車内を見渡せば、優先席にどっかと座り、スマートフォンの画面に見入っている若者の姿を目にすることは、今では珍しくない風景となっています。また、手にした新聞に目を移せば、自分の欲望を満たすだけのために他の生命を軽んじるといった、余りにも悲惨な事件が飛び込んできます。ただ、その紙面の小ささに、社会の感覚が麻痺しかかっていることに気づかされます。
 学校では、戦後、修身の授業が行われなくなり、昭和三十年代に道徳の時間が開始されましたが、現在の社会を見れば、戦後生まれた個人主義が蔓延し、日本人本来の価値観を教えることを忌避する風潮が生まれたことを強く懸念するところです。
 しかし、このような日本の状況を憂うだけでは何も変わりません。うそをつくな、弱い者をいじめるななど、人と人との結びつきの中から学ぶ相手への気遣いや礼節、また、人間の力を超えたものに対する畏敬の念など、日本人が二千六百有余年にわたり培い、受け継ぎ、つくり上げてきた日本の財産ともいえる価値観を、世代を超えて垂直に継承させる、日本人の心を取り戻す教育が不可欠であると、私はこれまで一貫して主張してきました。
 また、時代が急速に変化する現代社会において、グローバル人材を育成する教育が進められています。外国語でコミュニケーションができるようになれば、それでいいということではありません。グローバル社会の一員として世界で活躍し、国際貢献を果たす人を育てるために大切なことは、日本人としての誇りと自覚を持ちながら、人を思いやる心、他者と協調する力、人として当たり前の資質を培っていくことではないでしょうか。
 しかしながら、道徳的価値を継承するとともに、国際社会に役立つ力を育てることは、学校だけでなせるものではありません。子供の人格形成の礎となる家庭や、さまざまな人との出会いと活動を通じて人格を磨いていく場である地域社会との連携が必要です。
 このことを踏まえ、子供たちの道徳性を育成するために、今後、家庭や地域への働きかけやコミュニケーションを強化し、学校、家庭、地域が一体的に取り組もうとする機運を高めていくことが重要であると考えます。
 そこで、小中学校において、家庭、地域社会と連携した道徳教育を一層充実すべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 水と緑の都、環境に優しいガーデンシティー東京のまちづくりを、私の政治使命のテーマの一つとして取り組んでまいりました。その視点から品川駅、田町駅周辺のまちづくりについてお伺いします。
 品川駅、田町駅周辺については、国際化が進む羽田空港の至近に位置し、本年二月、二〇二七年の開通を目途に、東京都の始発駅となるリニア中央新幹線品川駅の工事が着手されました。これに合わせ、田町駅周辺のまちづくりもスタートしております。
 東京の玄関口として、大規模な土地利用転換を中心に、全体を俯瞰したまちづくりを進め、後藤新平が抱いた情熱を受け継いで、世界に誇れる東京を代表する拠点としていくことが重要です。
 大規模な土地利用転換が予定されているJR車両基地跡地では、新駅が二〇二〇年に暫定開業予定であり、周辺では、今後、土地区画整理事業により、必要な基盤整備が進められます。
 泉岳寺駅周辺では、新駅周辺の開発を支えるための駅の改良とともに、東京都施行の市街地再開発事業が行われ、駅改良と一体となったまちづくりが進められています。
 また、同様に土地利用転換が見込まれる品川駅西口の高輪三丁目エリアでは、住民が立ち上げたまちづくり協議会に地元法人も加わるなど、まちづくりの機運が高まっている状況です。さらに、衆議院宿舎跡地を活用した環状四号線の整備など、まちづくりと合わせて基盤整備を積極的に進めていただきたいと思います。
 品川駅、田町駅周辺では、こうした開発の動きがあり、今後、建物の建設も進んでいく中、個々の地区がばらばらに開発されるのではなく、地域としてまとまりを持ったまちづくりを進めることが重要と考えますが、都の所見をお伺いいたします。
 最後に、二〇一三年九月七日、皆さん、ご記憶でしょうか。東京にオリンピック・パラリンピックが決定をした日です。そのときのために、多くの方々の、オールジャパンとしての活動がありました。
 そのときの気持ちを忘れずに、今いろいろありますけれども、オリンピック・パラリンピックをぜひとも成功させたいというふうに考えております。皆さんと一緒に、すばらしい東京オリンピック・パラリンピックを迎えようではありませんか。
 終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) きたしろ勝彦議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
 知事の公僕として、そしてまた、その使命感についてご質問がございました。また、貴重なアドバイスを賜りましたことを、まず御礼申し上げます。
 私は、知事といたしまして、常に都民の利益を第一に、そして、都民とともに進める都政の実現に向けて、改革を進めているその最中でございます。そして、都民ファースト、情報公開、税金の有効活用の三つの原則に従いまして、都民のための都政を展開していく、このことをベースにしていきたい。そしてまた、その先にこそ、都民お一人お一人の希望が花開き、東京の明るい未来が開けるものと、このように確信をし、活動いたしております。
 さきの定例会の所信表明でも申し上げました。職員にも、知事にも、都議会の皆様方にも公僕の精神が求められるところでございます。ともに都民から選ばれた公僕として、皆様とは都民のために日々全力を尽くすという思いを共有していきたいと、このように考えております。
 また、ぜひそうした皆様と、都民は何を求めているのか、都民の利益とは何かということを大いに議論をしながら、都民一人一人が輝くあすへと向けてともに進んでまいりたい、このことを私の使命感として取り組んでまいりたいと考えております。
 そしてまた、後藤新平についても何度かお触れいただきました。さきの所信表明で申し上げたその一節は、人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬようという言葉でございます。これも心に秘めて進んでいきたいと考えております。
 そして、職員、また顧問の生かし方についてのご質問がございました。私の東京大改革の大きな柱は、自律改革でございます。みずからを律すると書いて、自律改革でございます。そして、その担い手は誰かというと、その主体は、各局長を初めとする一人一人の職員でございます。このため、職員とさまざまな課題を共有して、議論を交わしながら、改革を進めていくことが重要であるということについては、認識をいたしております。
 また、これまでそれぞれの職場に埋もれていた職員の建設的な意見、これを広く都政に反映していくこと、このことを必要と考えまして、職員目安箱を設置したところでございます。職員の皆様方の日々考えること、そしてまた建設的な意見など盛り込まれ、大変参考にし、それを生かしていきたいと考えております。
 一方で、東京大改革を進めるためには、これまでの延長線ではなく、新しい視点も必要でございます。私が任命いたしました顧問などには、専門知識、そして経験に基づいて、客観的な第三者の視点から調査分析を行っていただき、私に対しましての多くの助言、提言をいただいているところでございます。また、私の指示によって、さまざまな活動をしていただいているところでございます。
 今後も、この職員と顧問の皆さんが一層協力して、大いに議論をしながら、都政の課題の解決ができるように、その工夫を重ねて、不断の改革を進めてまいりたいと考えております。
 その他の質問につきましては、教育長、そして東京都技監からのご答弁とさせていただきます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 小中学校における道徳教育の充実についてでございますが、児童生徒が、世代を超えて垂直に継承すべき道徳的価値を深く自覚し、確実に身につけるためには、学校が家庭、地域と一体となり、道徳教育に取り組むことが重要であります。
 そのため、都教育委員会はこれまでも、都内の公立小中学校が、礼儀や規範意識、公徳心等について、保護者、地域関係者とともに意見を交換し、児童生徒の豊かな心を育成することを目的として実施する道徳授業地区公開講座を推進し、その充実に取り組んでまいりました。
 今後、道徳教育に関して、保護者や地域の方々に向けた資料の作成を検討するなど、社会全体で、児童生徒に日本人としての心を育む道徳教育の一層の充実に努めてまいります。
   〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 品川駅、田町駅周辺のまちづくりについてでございます。
 都は、地元区や国、事業者などとともに策定したまちづくりガイドラインに基づき、国際交流拠点の形成に向けて開発を計画的、段階的に誘導してございます。
 開発が先行するJR車両基地跡地については、隣接する品川駅街区と一体的に都が地区計画を定め、その方針に沿って土地区画整理事業が進められてございます。
 さらに、泉岳寺駅地区で実施する都施行の市街地再開発事業におきまして、車両基地跡地との統一感ある景観形成に向けて、関係者とともに建物配置などのルールづくりに取り組んでございます。
 引き続き、まちづくりガイドラインに基づいて、地区間の連携を強化しながら、一体的なまちづくりを推進し、世界の人々が集う魅力ある拠点形成を図ってまいります。

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