平成二十八年東京都議会会議録第十三号

○副議長(小磯善彦君) 二十九番上田令子さん。
   〔二十九番上田令子君登壇〕

○二十九番(上田令子君) 政党が決めたのではない、組織が決めるものでもない、都民の皆様が決めた、都政史上初の女性知事誕生の歴史的瞬間に立ち会いまして、私は女性議員の本懐としてまことに誇らしく、そして、東京大改革に大きな期待を寄せるものであります。
 まず、都民ファーストの都政改革ですが、知事の改革の理念、目指すものとしてのプリンシプル、信条と課題解決のための具体策としてのソリューション、方策を改めてお示しください。
 さて、豊洲の地下空間の検証について、歴代知事や幹部の責任が問われています。ピンポイントで指し示すのは難しいと、知事も我々都議も、何より都民にも口惜しい結果となりました。
 一方、知事が旗を振っているイクボス宣言は、トップダウンで押しつけるのではなく、幹部職がみずからその内容を考える画期的なものです。ガバナンスもコンプライアンスも問われている今の都庁において、何のとがもない第一線の職員が今後モチベーション高く安心して問題提起、解決でき、局間連携はもちろん、そして、局内連携もできる組織風土醸成に向けてのトップダウン、ボトムアップをどう組み合わせていくのか、基本的なお考えをお聞かせください。
 また、前知事が補佐官を活用したトップマネジメント体制を目指し設置した政策企画局のあり方も気になるところです。早速マネジメント本部を設置しましたが、知事の補佐体制、副知事人事もあわせて十六万余りの都庁職員をどうマネジメントしていくのか、現時点での知事の考えをお聞かせください。
 議会と行政ですけれども、なれ合い、根回しで問題を表面化させず、先送りの温床となる硬直的な台本議会でいいのか、知事として議会との議論で何を目指すのか、お答えください。
 また、行政は予算主義になりがちでして、成果をフィードバックする決算なくして予算編成はできようもなく、本来は決算主義であるべきです。ついては、今般の決算審査にどう臨むのか、知事のご覚悟をお示しください。
 また、オリ・パラの予算膨張を鑑み、財政を均衡させ、予算の肥大化を防ぐための条例が必要と考えます。均衡予算と健全財政原則を条例化すれば、行政全体にマネジメントもガバナンスも効き、無尽蔵に予算がふえることをいさめられます。
 あふれんばかりのぜい肉をつけてしまった巨大な肥満都市東京のダイエットレシピとして、財政健全化を定める条例制定を視野に入れるべきと考えますが、ご所見をお示しください。
 オリ・パラ組織委員会が虎ノ門ヒルズに月額四千万円支払っていることが話題になっておりますが、職員組合事務所十二団体に、都庁舎を竣工以来、二十五年間、約千八百平米、無償貸与をしております。皆さんご存じの第二庁舎一階、コンビニと同等の貸付料をとれば、月額約五千万円、二十五年ともなれば百六十億円相当ただ貸ししているということになります。
 ちなみに、組織委員会も使用しており、月額二百三十万円お支払いをいただいております。つきましては、過去の経緯、現状と都民益の観点からご所見をお示しください。
 都市外交基本戦略についてですが、前知事が策定したものを継承していくのか、また、昨年度大幅に未執行なのに今年度三億円余りと大増額された都市外交予算につき、どの程度執行していくのか、お答えください。
 国から都庁への最後の天下りといわれる外務長と都市外交担当部長を外務省から受け入れる意義について改めてお答えください。
 都立迎賓館、延遼館について、国の既存施設やホテルなど利活用する方が常設施設を持つよりも経費が節減でき、景気貢献もできると考えます。知事選中、条件つき継続とされていましたが、計画の現状と一旦立ちどまるおつもりがあるのか、改めて知事の所見を求めます。
 子供ファーストの政策についてお尋ねします。
 まず、要保護児童、養護施設にいる子供についてですが、子どもの権利条約二十条では、特に、里親委託と定義され、都の児福審は、乳児は里親に委託すべきと答申。一方、日本の里親委託は主要国最下位の一二%、都も一二%で全国平均以下です。国の社会的養護の課題と将来像を踏まえ、都における脱施設、里親推進に向けて小池知事の意気込みをお聞かせください。
 保育園待機児童緊急対策につき保護者、事業者が期待を込めて見守っております。東京問題の長年のテーマである量の確保、重大事故ゼロに向けて、質の担保のバランスをどうとられていくのか、施策展開の実情と考え方をお聞かせください。
 前向きな対策を踏まえ、来年度予算への継続性の担保と、事業実施において間違いなくバウチャーは保護者に使われるか等、区市町村格差への対応をお示しください。
 本年七月、都立墨田工業高校で、水泳の飛び込み指導により男子生徒が首の骨を折り、現在も治療中とのことです。元気に送り出した我が子が、たった数秒の危険な指導により、重大事故となるのは公教育現場ではあってはならないことです。
 私は一般質問で、市場長も歴任、現在メトロ取締役、当時の比留間教育長に、学校災害につき、学校保健安全法二十六条に基づいた安全対策をただしたところ、明言を避けました。
 再質問でようやく比留間教育長は、同法に則していると答弁。ところが、このような事故が起こってしまいました。
 本年一月に設置された安全対策検討委員会の答申を受けての対応状況と、全ての公教育現場における再発防止策について、改めて、過去の私への答弁も整合の上、同法に基づきご説明ください。
 全国初の劣悪猫カフェ登録取り消し処分が今年度の予算審議での私の追及により下されました。都は、多岐にわたり、都民や事業者に権利を与奪し義務を求める強大な公権力、処分権限を持っています。これらの処分の多くは知事の名前で行われますが、実施していくのは個々の職員です。
 処分は、私のようなうるさい議員にいわれるまでもなく、適正に執行されるべきですが、そのために職員の意識をどのように高めていくか、考え方と取り組みについて説明してください。
 最後に、子育て支援を進める官民連携福祉貢献インフラファンドについてですけれども、モニタリング体制が重要なことから、改めてファンドの目的、組成、目論見書などの内容について確認させてください。
 予算制約が甘くなる懸念もありますことから、ファンドにおける公益について、いかなる指標によるか、ご所見を伺います。
 神は細部に宿るといいます。知事が高らかに掲げた改革マインドが、前知事が任命をしました副知事はもとより、全ての都庁十六万人の職員の心とにともり、なれ合い、先送り、隠蔽から都民ファーストの善政競争に昇華いたしますことを心よりお祈り申し上げまして、私の再質問を残しまして、私の質問を終わらせていただきます。
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 上田令子議員の一般質問にお答えいたします。
 都政改革の理念と課題解決の方法についてご質問がございました。プリンシプルとソリューションとおっしゃいました。
 私の目指す東京大改革の肝は、都政を透明化、見える化し、都民ファーストの都政を実現する、このことは何度か申し上げているところでございます。
 そのためには、職員一人一人がみずからが改革の担い手となり、そして積極的に情報公開を行う姿勢を持ちながら、仕事の進め方を見直していかなければなりません。
 こうした都庁の自己改革精神を呼び覚ます装置として、私が本部長を務めます都政改革本部を設けました。そして、各局の局長が本部員でございます。そして、その本部には、既に情報公開やオリンピック・パラリンピックの調査チームに加えて、具体的な調査や改善策の検討などを行う内部統制プロジェクトチームも設置したところでございます。また、都庁全体のガバナンスの機能強化を図るために、都庁マネジメント本部を設置をいたしております。
 今後、これらを効果的かつ効率的に活用しながら、いわゆる縦割りの弊害など、改革を進めまして、都政に対する都民の信頼を確保してまいりたいと考えております。
 組織風土の醸成とマネジメントについてのお尋ねでございます。
 私の都政運営の基本姿勢、それは常に都民優先、つまり都民ファーストにございます。都政全体をこの理念に沿って構築することが最大の目的でございます。
 組織の運営におきまして、職員のやる気を引き出す、そして、その士気を高めることは、トップである私の役目であります。そして、ともに改革を進めていく、その思いを就任の初日から職員に語ってまいりました。
 これに応じまして、先ほども申し上げましたように、全庁から三百を超える自律改革の提案がございました。そして、その取り組みを開始しているほか、働き方改革や職員目安箱の設置によりまして、職員の自律性を引き出しながら、機能的で働きやすい都庁に向けてチャレンジをしているところでございます。
 また、本部長である私のもとに、全副知事、教育長、政策企画、総務、財務及び事案に関連する局長等が一堂に会します都庁マネジメント本部を設置いたしました。それによって情報の共有、そしてまた、率直な議論の交換、これによりまして、縦割りを排除し、意思決定を行う体制を整えつつあるところでございます。
 こうした取り組みによりまして、改革意識を職員に根づかせ、そして的確なガバナンスを実現し、都政改革を推進してまいりたいと考えております。
 続いて、都議会との関係についてのお尋ねがございました。
 私は、議会と知事の間には一定の緊張関係があってしかるべきだと考えておりまして、むしろこのことが二元代表制をよりよく機能させると考えます。行き過ぎた根回しや、これによるなれ合いがあるとすれば、都民も問題だと思うでしょう。
 都政の見える化を図りながら、都民のための政策をぶつけ合う、こうした関係により都民ファーストの都政を実現してまいりたいと思います。
 決算の審査についてのご質問がございました。
 決算は、予算に計上された施策や事業の執行結果を計数的に明らかにして、行政目的が効果的、効率的に達成されたかどうかの判断材料を都民に提供するものであることはいうまでもありません。
 そして、これから始まる都議会によるこの決算審査を通じて、都としても、施策や事業の成果、そして課題を具体的に検証し、今後の予算編成に生かすなど、PDCAサイクルを踏まえた取り組みにより、都民ファーストの都政の実現を目指していくところでございます。
 浜離宮恩賜庭園におけます延遼館の復元についてのご質問がございました。
 延遼館は、迎賓機能のほか、日本文化の体験、学習の機能を有する施設として、基本設計が本年八月に完了したと報告を受けてはおります。
 建設のコスト、将来的な維持管理に係るコストなど十分に検証した上で判断することといたします。
 社会的養護についてのご質問がございました。
 子供は皆それぞれ異なる個性や能力を持ち、未来への無限の可能性を秘めております。
 全ての子供たちが生まれ育った環境に左右されずに、個性や創造力を十分に伸ばし、社会の一員として自立できる環境を整備していくことは、むしろこれは社会全体の責務といえましょう。
 東京には、さまざまな事情で親元では暮らせない約四千人のお子様がいらっしゃいます。こうした子供たちの健やかな育ちを支えることが社会的養護の役割でございます。
 私は、社会的養護のもとにある子供たちもできるだけ家庭と同様の環境において養育されることは、まさに望ましいと思います。
 子供にとって家庭は安らぎの場であります。そして、人間形成の行われる最初の場でもございます。こうした考えのもとで、社会的養護の施策展開に当たりましても、養育家庭を初めとした里親制度の活用を中心に進めていきたいと考えております。
 その他のご質問につきましては、教育長、関係局長からご答弁をさせていただきます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 水泳事故の対応状況と再発防止についてでございますが、今般、都立墨田工業高等学校において、教員の不適切な指導により重大事故が発生したことは、まことにざんきにたえないことであり、当該生徒さんとご家族に対しまして、心からおわびを申し上げる次第でございます。今後、関係者の処分につきましても、厳正に対処していく考えであります。
 都教育委員会は、この事故を受け、当該校に学校保健安全法等の法令に基づく安全対策の見直しを個別に指示するとともに、全都立高校には再発防止に向けた通知を発出し、校長連絡会等において再度周知徹底したところでございます。
 また、今後、速やかに全ての校種を対象として、体育的活動における事故防止に関する研修を実施してまいります。
 都教育委員会は、当該生徒さんの一日も早い回復を願い、当該生徒さんやご家族からの要望等を真摯に受けとめ、あらゆる支援に最大限努めてまいります。
   〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、財政健全化条例についてでございます。
 他の一部の自治体におきまして、財政破綻の懸念などを背景に条例を独自に制定し、財政運営上の原則や中長期の財政見通し、財政指標の目標値などを定めている例があることは承知をしております。
 一方で、都財政は、景気の動向に左右されやすい不安定な構造にあるため、先行きを長期的に見通し、財政運営における数値目標を掲げることがなかなか難しいという東京都特有の事情もございます。
 また、仮に目標を掲げた場合、知事の予算編成権が縛られることにもなりかねず、状況の変化に応じた弾力的な財政運営が困難になりかねないという課題も想定されております。
 こうしたことから、財政健全化条例の制定につきましては、さまざまな観点から慎重な検討が必要であります。事業評価による検証などを通じまして、強固な財政基盤を堅持してまいります。
 次に、職員団体への庁舎の使用許可についてであります。
 都の職員団体は、地方公務員法に基づき、勤務条件の維持向上を図る目的で結成された団体でありまして、適法な交渉を通じて適切な労使関係を維持することは、都政の円滑な運営にも資するものであります。また、労働組合法でも、事務室の無償供与が認められております。
 このため、新宿の都庁本庁舎におきましては、平成三年四月の庁舎設置以降、職員団体に対しまして、無償で事務室の使用を許可しているところでございます。
   〔政策企画局長長谷川明君登壇〕

○政策企画局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 都市外交についてでございますが、都市外交基本戦略におきましては、二〇二〇年大会の成功、大都市共通の課題解決、グローバル都市東京の実現という三つの目的を達成するための手段として、都市外交を推進していくこととしております。
 この基本的な理念を踏まえ、今後とも必要な取り組みは進めてまいりますが、海外出張など具体的な取り組みにつきましては、その必要性や実施方法を適切に判断してまいります。
 既にリオ大会への出張におきましては、知事からの指示のもとで、随行職員の削減や航空賃、宿泊費などの見直しにより、大幅に経費を抑制しておりまして、今後も適正な経費の執行に努めてまいります。
 次に、都市間交流の組織体制についてでございますが、都は、都市間交流を進めていくに当たりまして、専門的見地から知事を補佐するため外務長を、また、外務長を実務的側面からサポートするために都市外交担当部長のポストを設置しております。
 いずれも外務省において外交の実務経験を積んだ適切な人材を採用しているものでありまして、都市間交流の推進に必要な人事配置と考えております。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、待機児童解消に向けた施策の展開についてでありますが、都はこれまで、保育サービスの整備を進めるため、区市町村や事業者の整備費の負担軽減や、国有地、民有地の借地料補助など、独自の支援を実施しており、本定例会に提案している補正予算案には、施設整備費の高騰加算や建物賃借料補助の創設、借地料補助の上限額引き上げなどの整備促進策を盛り込んでおります。
 また、保育の質の向上を図るため、障害児やアレルギー児等、特に配慮が必要な児童への支援、第三者評価受審に対する支援、経営管理者向け研修等を実施しており、今回の補正予算案では、認可外保育施設の質の向上を図るため、巡回指導チームを編成することとしております。
 今後とも、保育サービスの量の拡大と質の向上に向け、区市町村や事業者の取り組みを支援してまいります。
 次に、待機児童解消に向けた今後の取り組みについてでありますが、今回の緊急対策は、待機児童解消に向けた取り組みの第一弾として実施するものでございます。
 年内に策定する実行プランでは、保護者のニーズや区市町村の計画、就学前児童人口の推移等を踏まえ、今後四年間の整備目標を定めることとしており、そのための新たな支援策は、国の動向も踏まえ、平成二十九年度予算案に反映させていく考えでございます。
 また、来年度には、区市町村の状況を踏まえながら、保育サービスの整備目標を改めて検証し、東京都子供・子育て支援総合計画を改定する予定であり、今後とも、区市町村と連携しながら、待機児童の解消に取り組んでまいります。
   〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 処分の適正な執行についてですが、行政処分は許認可や免許など、行政庁が行う行為のうち、直接、国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められている行為でございます。
 職員には、地方公務員法第三十二条において、職務の遂行に当たり、法令等を遵守する義務が規定されており、処分を行うに当たっても、当然法令にのっとり、適正に行われているものと認識しております。
 また、都では採用直後の段階から、法令等に従う義務についての研修を行っているほか、今後は、公益通報制度を拡充することなどにより、職員の規範意識をさらに高めてまいります。
 こうした取り組みを実施していくことにより、職員の法令遵守意識を徹底し、処分の適正な執行を確保してまいります。
   〔会計管理局長浅川英夫君登壇〕

○会計管理局長(浅川英夫君) 官民連携福祉貢献インフラファンドについてでございますが、本ファンドは、都の資金を呼び水として、民間の資金とノウハウを導入し、子育て支援施設を含む福祉貢献型建物の整備促進を目的として、本年二月に組成したものでございます。
 組成に当たりましては、都はファンドの無限責任組合員等からファンドのスキームやリスク等について、金融商品取引法等に基づく書面の交付を受け、内容を確認しております。
 本ファンドでは、一つでも多くの福祉貢献型建物の整備を通じた待機児童解消等への貢献という政策目的とあわせ、都民の税金を原資とする出資金等の確実な回収という目的も同時に実現することを目指しております。
 そのため、都は、ファンド運営に対する質問権、検査権を活用しながら運営状況を監視してまいります。
   〔二十九番上田令子君登壇〕

○二十九番(上田令子君) 都庁舎無償貸与の答弁ですが、都民ファーストの観点からすると、職員の勤務条件の維持向上を図るために、月額五千万円とれそうなところを無料というのは、都民の理解を得ないのではないかなと思います。
 私が江戸川区議会議員時代、指摘して徴収するようになりましたことから、今後徴収の検討はされないのか、また、ご指摘の労働組合法によれば、最小限の広さの事務所と定められていますが、見解を求めます。
   〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 再質問にお答え申し上げます。
 庁舎を無償で供与することについてでございますが、労使の相互理解を通じて、それが円滑な都政運営を行うことについて十分な効果が発揮されるということであれば、無償で供与する効果というものはあるであろうというふうに考えております。
 また、供与に当たりましては、適法な交渉に必要な最小限の状況に限りまして財産管理上支障がない範囲内で供与しているものでございます。

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