平成二十八年東京都議会会議録第十三号

○議長(川井しげお君) 三十番田中朝子さん。
   〔三十番田中朝子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十番(田中朝子君) まず初めに、保育サービスの拡充についてお伺いいたします。
 小池都知事が当選後すぐに、現在東京都の喫緊の課題である待機児童問題に対し、非常に具体的な内容の待機児解消に向けた緊急対策と、それに伴う補正予算案を出されたことは高く評価をいたします。
 特に、保育園の整備や場所の確保、保育人材の確保に加え、これまでほとんど都の支援がなかった利用者支援が柱として入れられたことは、都民の目線や立場に立ったものだと評価するものです。
 これを踏まえ、都のこれからの保育サービスの拡充についてお聞きをいたします。
 初めに、在宅子育て家庭への支援についてです。
 今回の補正予算案の中には、一時預かりを継続的に利用した定期利用保育の促進が含まれています。本来この一時預かりは、在宅子育ての保護者のレスパイトを目的にした支援です。
 しかし、実際、パート等短時間の働き方で保育園に入れない方々が現実このような使い方をしていることが多いことから、定期利用保育の促進自体は、待機児童対策の緊急性を考えれば十分理解できますが、一方、これによって、一時預かりの本来の利用者である、在宅で子育てをしている方々が実際に一時預かりを利用しようとしたときに、あきがなくて利用できないということになっては本末転倒です。
 保育園利用家庭より、在宅子育て家庭において児童虐待が多いのは調査により明らかになっており、核家族が多い東京では在宅子育ての保護者への社会的支援は重要です。
 待機児童対策はもちろん最重要ですが、約半分を占める在宅で子育てをしている方々への支援も忘れてはならず、さらに充実させていくべきです。
 そこで、在宅子育て家庭への支援にかかわる都の取り組みについてお伺いをします。
 次に、休日、夜間保育への支援についてです。
 大都市東京においては、保育サービスを利用する保護者の職業や働き方は多様であり、サービス業や医療職、介護職など、夜間や休日に働いている保護者は少なくありません。
 しかし、現在、安心して預けられる夜間保育、二十四時間保育や休日保育は非常に少なく、多くの保護者は二重保育、三重保育を強いられ、その確保が困難で仕事をやめてしまう方も多いのです。
 それまで養ったキャリアを生かし、仕事と子育てを両立させたいと思う保護者が、働く時間や曜日にかかわらず保育サービスを利用できるよう、大都市ならではの多様な保育ニーズへの対応が都には求められています。
 保護者の多様な働き方のニーズに応えられるよう、休日保育や夜間保育の取り組みも進める必要があると考えますが、現状と都の見解を伺います。
 休日保育や二十四時間保育、夜間保育は、大都市東京の実情を反映した保育サービスとして必要であり、国や都の支援の充実を要望しておきます。
 次に、都政の透明化、情報公開について幾つかお聞きをいたします。
 初めに、公益通報制度です。
 都政改革本部の情報公開調査チームにおいて、我々民進党都議団が小池都知事へ政策提言させていただいた公益通報制度が検討されていることは評価いたします。
 以前所属していた公営企業委員会で、不正等が発覚した際、私は何度か完全な外部通報窓口や調査機関の必要性を訴えました。
 東京都には、職場の不正行為、セクハラ、パワハラなどを都の職員が安心して通報できて、通報の処理の適正が担保される完全な外部通報窓口や調査機関がありません。大阪市では、外部委員や弁護士、公認会計士等から構成されるコンプライアンス委員会があり、職員や関係者だけでなく、一般市民までが相談でき、調査、解決までできるようになっています。
 今回、豊洲の盛り土問題もあり、都でも勇気ある内部告発者をしっかりと守るために、完全な外部委員によるコンプライアンス委員会を立ち上げ、二十四時間いつでも気兼ねなく相談でき、調査、解決までの権限を持たせる外部相談窓口を設置しなければなりません。
 本当に機能する内部通報制度にできなければ、設置する意味がないわけですが、今、検討されている公益通報制度は、具体的にどのような形で、いつまでに外部相談窓口を設置するのか伺います。
 次に、口ききの文書化と公開についてです。
 行政運営には、公正性、公平性が求められ、口ききや働きかけによってゆがめられることがあってはなりません。そのため、議員や関係業者、職員OBなどの働きかけの内容を記録し、公開する制度を持つ自治体が多くあります。
 有名なところでは、鳥取県や高知県、佐賀市や熊本市を初めとし、最近では大阪市が二〇一二年から市職員に対する議員や業者からの口ききや要望について、全てを記録して文書に残し、情報公開の対象にしています。
 先ほどの公益通報制度も、この働きかけの文書化も、不正防止のみならず、何より職員の方々を不正から守る仕組みであることはいうまでもありません。
 職員への働きかけなどを防いで、行政の透明性や公平性を高めるために、また、都政の情報公開の一環としても、議員や関係業者、都のOB等からの働きかけの文書化と公開を都政改革本部で検討し、都でも仕組みをつくるべきと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、入札について伺います。
 豊洲市場の土壌汚染対策の盛り土が行われていなかった主要三施設の建設工事の再入札の平均落札率が九九・九%であり、また、いずれも一つのJVのみの入札だったことが報道されました。
 また、高い落札率をめぐっては、五輪競技施設でも調査チームの報告書で指摘された海の森水上競技場や有明アリーナの落札率も約一〇〇%に及び、こうした高い落札率が費用の高騰の一因にもなっています。
 入札に関しては、さまざまな条件や状況があるため、一概に高い落札率が適正でないとまではいえませんが、一方で、一つのJVのみの入札で一〇〇%近い落札率では、企業間の競争は働かず、そもそも入札という手段が適当であったのかという疑問を感じざるを得ません。
 今回の入札に関するさまざまな報道により、都民に疑念を持たれることのないよう、いま一度、都の契約や入札のあり方を検討するべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催費用、施設整備の妥当性について伺います。
 都政改革本部の二〇二〇年大会調査チームから知事に提出された報告書には、総費用が三兆円を超える可能性など、費用の膨張が指摘され、三施設の大幅な見直しを求められました。また、都、国、組織委員会の全体を統制する仕組みがなく、費用膨張を防ぐために都などが計画や予算を一元管理すべきと厳しい指摘がなされています。
 施設の見直しでいえば、ロンドン大会のときも、東京と同じような理由で見直しを行った結果、三つの施設の建設を取りやめ、既存の施設の活用に変更しています。
 また、同じように費用が膨張したロンドンは、オリンピック・デリバリー・オーソリティーという施設の予算管理や進行管理を一元的に担う組織をつくっています。東京大会に向けても、これ以上の開催費膨張を抑えるために、思い切った施設の見直しや、都と国、組織委員会を管理する組織が必要であると考えますが、この報告書の内容に対し、都はどのように考えているのでしょうか。
 また、今後、費用や施設、とりわけ国と都と組織委員会の全体の統制を誰がどう担うのか、調査チームの指摘に対し、どのような方向性で取り組まれるのか、知事にお伺いをいたします。
 最後に、豊洲市場です。環境アセスメントについてお伺いいたします。
 二〇一一年八月に正式な評価書として公表された豊洲市場の二度目の環境アセスには、高さ四・五メートルの盛り土をすると明記されています。
 しかし、公表二カ月前の六月には、主要建物の基本設計書に盛り土をしない地下空間が既に記載されており、環境アセスは実態と異なる前提のまま公表されたものであることが明らかになりました。
 公表後も、環境アセスは十一回の変更届がなされており、その中には建物や建築に関する変更申請もあったにもかかわらず、盛り土ではなく地下空間にした変更は行われていません。なぜ盛り土から地下空間にした変更が行われていないのでしょうか。
 最新の地下水モニタリング検査結果の速報値で、基準値を超える値が出ていることもあり、今後の環境アセスについては変更で対応するのか、それとも再度やり直すのか、お伺いをいたします。
 環境アセスで盛り土の変更だけが行われなかったことや、報告書にもあるとおり、建物下に盛り土せず地下空間を置く方針を決めた二〇一一年九月以降の都議会での答弁で、二十六回も敷地全体に盛り土するなど事実と異なる説明を繰り返したこと、また、建築的に正当な理由で地下空間を変更したとされているにもかかわらず、公表しなかったこと等から見ると、これをガバナンスの欠如とのみ結論づけるのは不自然で、明らかに何かを隠す意図があったと思われても仕方がないのではないでしょうか。
 誰が、いつ、どこで、何を決めたのかだけでなく、なぜ、何を隠したかったのかの理由がわからなければ、本当の事実究明にはならず、豊洲市場の万全な安全の確保はできません。事実の究明がなければ、最新のモニタリングの結果もある中、豊洲市場に対する風評被害がますます広がっていってしまいます。
 今後、たとえ安全だと証明されたにしても、安心ができなければ、事業者や都民の豊洲市場に対する信頼は到底得られないのではないでしょうか。食の商売は理屈ではないからです。都は、今後どのようにして、この失われた信頼を取り戻していくのか、知事にお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 田中朝子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、東京オリンピック・パラリンピックについての報告書の指摘に対して、その対応はどうかというお尋ねがございました。
 都政改革本部のオリンピック・パラリンピック調査チームの報告では、大会準備に関するガバナンスが不十分であり、また、大会準備全般の推進体制を見直さなければ、開催総費用は三兆円を超える可能性があるとの指摘がございました。
 この指摘につきましては、まず重く受けとめたいと思います。そして、今回の報告を起爆剤として、都民の理解による大会の成功という原点に立ち戻る、そして、都としてとるべき最善の方策を検討してまいりたいと考えております。
 また、報告書でも提言されておりますそのほかの課題についても、関係者、関係局において早急に検討を進め、その結果を受けて総合的に判断してまいりたいと思います。
 都政の信頼回復についてお尋ねがございました。
 生鮮食料品を取り扱う豊洲市場の整備において、盛り土がなされていないことや、これまで事実と異なる説明を行ってきたことなどによりまして、食の安全に対する信頼が大きく損なわれたことは、まことに遺憾でございます。
 失われた信頼を回復するには、正しい情報を発信することが何よりも重要でございますが、それには、まず裏づけとなる科学的な知見が必要でございます。地下水モニタリングで環境基準の超過を確認したことを含め、専門家会議や市場問題プロジェクトチームにおいて、それぞれの専門分野の知見をもとに調査、検証していただくことといたしております。
 そして、こうして得られた科学的情報を、タイミングを逸することなく、広く、そしてわかりやすく発信していくことによって、都政への信頼を回復し、さらに、あわせて風評被害の懸念も解消していきたいと考えております。
 その他の質問につきましては、関係局長よりご答弁させていただきます。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、在宅で子育てをしている家庭への支援についてでございますが、区市町村では、保健師等による家庭訪問、子育てひろばや子供家庭支援センターでの育児相談のほか、保護者が病気や育児疲れなどの場合に子供を預かる一時預かりやショートステイ、育児支援ヘルパーの派遣など、さまざまな取り組みを行っておりまして、都は包括補助等で支援をしております。
 また、昨年度から、区市町村が全ての子育て家庭の状況を妊娠期から把握し継続した支援を行えるよう、保健師等の配置や育児パッケージの配布を行うゆりかご・とうきょう事業を実施しております。
 今後とも、在宅で子育てしている家庭を初め、全ての子育て家庭が状況に応じて必要なサービスや適切な支援を受けられますよう、区市町村の取り組みを支援してまいります。
 次に、休日保育や夜間保育についてでありますが、平成二十七年度末現在、休日に保育を実施する認可保育所や小規模保育等は六十七カ所となっており、また、午後十時まで開所する保育所等は六十五カ所、このうち二十四時間開所している認可保育所は三カ所となっております。
 国の公定価格には、事業者が保育士等を休日や夜間に配置するための加算制度が設けられております。
 また、都は独自に、保育サービス推進事業により、休日保育や夜間保育など、保育サービスの向上に取り組む事業者を支援しております。
 今後とも、都は、区市町村が地域の実情や保護者のニーズに応じて多様な保育サービスを展開できるよう支援してまいります。
   〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、公益通報制度の見直しについてですが、公益通報とは、公益通報者保護法に基づき、職務遂行上の法令違反行為を通報する制度であり、都では平成十八年から運用を開始しております。
 今回、都政改革本部の情報公開に向けた調査で、都においては通報先が内部窓口のみであり、通報者が職員に限られる等の課題が浮き彫りになりました。
 こうしたことから、制度を拡充し、新たに弁護士による外部窓口を設置するとともに、広く法令違反行為を対象として都民からの通報も受け付け、対応状況を公表することといたしました。新たな制度は、準備が整い次第、速やかに実施する予定であり、今後適切に運用しつつ、利用しやすく実効性の高い制度を目指してまいります。
 次に、いわゆる口ききの文書化と公開についてですが、都政改革の三つの原則である、都民ファースト、情報公開、ワイズスペンディングを推進するため、都政改革本部に情報公開調査チームや内部統制プロジェクトチームなどを設置いたしました。
 都政改革本部では、第三者の視点を入れ、行政の透明性や公平性を高めるような、全庁的視点に立った幅広いテーマについて検討を進めてまいります。
   〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 入札契約制度についてでございますが、公共工事や物品役務サービスを行う公共調達の実施に当たりましては、透明性、競争性、品質確保を原則とし、市場動向や、その時々の状況変化に対応した入札契約制度を構築してまいりました。
 二〇二〇年東京大会競技施設、豊洲市場の建設工事では、いずれも参加資格を満たせば誰でも入札に参加できる一般競争入札を採用してございます。
 特に競技施設では、価格以外の技術的な要素を評価して工事の質を高める技術提案型総合評価方式をあわせて採用するなど、施設の特徴や施工条件等に応じた適切な入札方法を選択するよう努めてきたところではございますが、今後、都政改革本部等での議論を通じまして、都民ファーストの観点で、よりよい入札契約制度となるように努めてまいります。
   〔中央卸売市場長岸本良一君登壇〕

○中央卸売市場長(岸本良一君) 豊洲市場に係る環境アセスメントについてでございますが、なぜ盛り土についての変更が行われなかったのかという点につきましては、自己検証報告においても十分に解明できませんでしたが、手続に問題があったものと重く受けとめております。
 今後、専門家会議の検証を踏まえた上で、環境を保全するための措置を含む変更届を提出してまいりたいと考えておるところでございます。

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