平成二十八年東京都議会会議録第十三号

   午後六時五分開議

○議長(川井しげお君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四番和泉ひろし君。
   〔四番和泉ひろし君登壇〕

○四番(和泉ひろし君) 私は、小池知事と同じ日に初当選を果たしました台東区選出の和泉ひろしでございます。都議会での初質問に当たり、まず知事の基本姿勢についてお伺いをいたします。
 現在、都は、多くの課題を抱えております。いうまでもなく豊洲新市場整備の課題解決は急務でありますが、他に例を見ない速度で進展する高齢化問題、いつ襲いかかるかもしれない首都直下地震や豪雨などの風水害への対策、もはや誰もが異国のこととは考えないテロの脅威への対策、交通対策、景気対策も離島対策も抱えております。日本が抱える課題の全てが巨大都市ならではの重層的な装いを加えて、東京にあるといっても過言ではありません。
 それに加え、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを成功させなければなりません。それは世界に対する約束であるからであります。
 知事は、この全てに対して行政の長として責任を負っております。そして、私たち都議会と二元代表制のもと、車の両輪として都政を前に進めていかなければなりません。知事は、こうした課題にいかに向き合い、対処されるおつもりなのでしょうか。
 私は、十四年間に及ぶ台東区議会時代に、仕事の成果を上げるのは財力だけではなく、人であるということを学びました。どんなに予算があっても、執行に工夫がなければ成果は上がりません。職員の創意工夫があれば、より大きな効果を生むことができます。
 都には十六万五千人の職員がおり、福祉、医療、防災を初めとして、都民お一人お一人を目の前にして、それぞれの現場で職務に当たっている職員、彼らの声が上がるように、彼らの声を生かすようにしなければならないものと考えます。
 テレビの画面の中からはさまざまなお考えは伺いますが、この機会に改めて知事にお伺いをしたいと思います。知事は行政の長として、この都庁組織をどのように運営し、課題解決に当たっていかれるのか、基本的なお考えをお伺いいたします。
 次に、世界遺産の活用について伺います。
 今定例会のポスターにも採用していただいた上野にある国立西洋美術館が関係各位の十年にわたる努力の結果、去る七月には東京で初めての世界文化遺産に登録されました。地域の皆さんを初めとする関係者の喜びは非常に大きく、より多くの来訪者の受け入れに向けてさらなる努力を続けられております。
 また、その保全に向けて、バッファゾーンも含めた環境整備にご尽力をされております。
 海外からのお客様が文化の森から上野、浅草のまちを回遊し、その流れが二十三区、三多摩や近隣の他県まで広がるのであれば、すばらしいことなのではないでしょうか。
 特に東京周辺の関東エリアには、日光、富岡など、さまざまな世界遺産もあります。上野の国立西洋美術館を起点にして、それらを結びつけ、見学して楽しむような旅行ルートを都としてつくり上げ、さらなる回遊性向上を図り、各地が協力してもてなし、受け入れることは地方への貢献にもつながるのではないでしょうか。
 こうした考えを踏まえ、都として対応を今後進めるお考えをお持ちかどうか、お伺いをいたします。
 観光施策を進めていく上で重要な位置を占める旅館等のサポート強化について伺います。
 海外から東京に訪れる旅行者が急激にふえる中、宿泊場所の確保が難しくなり、法律に定めのない民泊も広がり、社会的に問題となる状況が出ております。これに対しては断固たる措置が必要と考えます。
 そのような状況の中、都内には数多くの旅館があり、まずはその利用者をふやすことにより宿泊場所の確保を図ることは十分に可能であると考えます。東京の旅館が海外からの観光客を呼び込むためには、旅館そのもののイメージを海外にしっかり配信するとともに、旅館が近隣の飲食店などの店舗や観光協会、観光連盟などと協力し、地域を挙げて誘客を行って宿泊者の増加を図り、まち全体のにぎわいにつなげることも重要です。
 これらを旅館が全て独自に行うことは難しく、旅館同士で話し合い、ノウハウを共有することなども大切です。
 また、個々の旅館や外国人旅行者の利用が進む簡易宿所では、施設の内装や外装のほか、設備の導入などを新たに行って集客につながる整備を行うことが必要ですが、そのための経費を低コストの資金で賄うという経営上のテーマも解決しなければなりません。
 おもてなしの心で海外からのお客様をお迎えしようとする旅館等のサポート強化について、お考えをお伺いいたします。
 上野恩賜公園周辺は、江戸時代の建造物や史跡などの歴史的資源が存在し、自然環境にも恵まれた地域であります。先ほどの西洋美術館を初め、我が国を代表する博物館、美術館、動物園、音楽ホールなどの文化施設や芸術大学などが集積しており、まさに文化資源の宝庫といえます。成田国際空港からのアクセスも良好であるため、海外からの観光客にとっても大変魅力的な地域であります。
 この日本の文化施設の集積する上野恩賜公園を訪れる国内外の多くの皆様は、現在、スマートフォンを利用して観光情報など、さまざまな情報を集めておられます。施設によってはフリーWi-Fiが整備されておりますが、館外に出ると途絶えてしまいます。利用者の利便性を考えるとき、点ではない面としての通信環境の整備が必要と考えます。
 他の都立公園と同様、広域避難場所にも指定されておりますので、災害時の情報収集などにも大変効果があるものと考えます。また、万一の際の緊急通報時にも安心・安全に寄与するものであります。公園を所管する都として、上野恩賜公園全体にWi-Fiを面として積極的に整備するべきものと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、他の都立公園に対してのお考えもあわせて伺います。
 こうした上野の観光拠点としてのポテンシャルをより生かすためには、上野恩賜公園を東京の顔となる文化の森、自然豊かな森としてさらなる充実をさせることが求められます。
 仄聞するところ、JR上野駅公園口再整備が計画されていると伺いました。その機を捉え、上野駅からわかりやすく安全に移動できる歩行者動線と観光客が集い、にぎわう空間を公園口周辺に確保することや、景観に配慮して、周辺道路を含む公園一帯の施設整備に木材を活用し、日本らしさが感じられる木の風合いを生かすことで、上野の魅力を一層高めていく必要があると考えます。
 地元の自治体、関係団体としっかりと連携して進めていただきたいと思いますが、都としてのお考えを伺います。
 次に、待機児童対策について伺います。
 補正予算計上により新たな対策が示されましたが、待機児童解消に向け、さまざまな保育サービスを拡充するためには、施設整備だけではなく、保育士の確保も重要と考えます。
 既存の施設においても、深刻な状況は慢性的な保育士不足であります。規制緩和を進めても、絶対数が不足しております。保育士確保の手段として、資格ある人間を保育の現場に誘導しようとする施策は一定の理解はできますが、それぞれ個別の事情を抱えて他の職業についておられる方も多い状況であります。一定の年齢になると、体力的に現場を離れたいと思っている保育士も多いと聞いております。
 急がば回れではありませんが、意欲あふれる若い人材が保育士養成施設へ入学し、卒業すれば、最短二年間で保育士となり、保育の現場で働いてもらうことが期待できます。そのため、一人でも多くの若者が保育士に魅力を感じ、養成施設へ入学するよう支援するとともに、卒業生を保育所等への就職につなげていくことが重要です。
 喫緊の課題であることは十分に理解はしておりますが、短期的な課題解決とあわせて、同時に、中長期的な方策も進めていかなければならないものと考えます。
 そこで、保育士を目指す若者への支援について伺います。
 最後に、都営地下鉄浅草線のリニューアルについてお伺いをいたします。
 都営地下鉄は、現在、一日二百六十万人の利用者があり、首都東京の都市活動を支える公共交通機関として重要な役割を担っております。
 先日、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で視覚障害者の方がホームから転落し死亡するという痛ましい転落事故が発生いたしました。二度と繰り返してはいけない事故であります。交通局においても、こうした事故を我がことと捉え、安全の確保に一層万全を期すべきことはいうまでもありません。
 また、今後の高齢化の進展や共生社会の形成を見据え、一経路のみのエレベーターによるバリアフリー化にとどまらず、ユニバーサルデザインのさらなる推進も欠かすことはできません。利用者の非常に多い駅においては、エスカレーターの設置は大変有効な手段であるものと考えます。ホームドアの全駅設置も急務であります。
 さらに、国際観光都市として東京が発展するためには、多言語案内表示の徹底など、外国人旅行者にとって使いやすい環境を整えることも重要です。さまざまな方策を持って、さらなる魅力の向上を図る必要があります。
 都営浅草線は、羽田、成田の両空港をダイレクトに結んでおり、その役割は今後さらに重要なものになると考えます。これからリニューアルを行うと聞いておりますが、実施に当たっては、現下の課題はもとより、五年後、十年後の事業環境の変化も見据えてしっかり取り組むべきものと考えますが、見解をお伺いして質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 和泉ひろし議員の一般質問にお答えいたします。
 私には、都庁組織の運営についてのお尋ねがございました。
 職員に組織の目標を示し、その能力と自律性を発揮させながら、縦割りを排除して全体を総括する。そのことはトップである私の目標であり、重要な役割、役目でございます。
 職員の自律性の発揮につきましては、東京大改革に託された都民の思いをしっかりと受けとめて、改革をみずからのものとして進めていくことを就任の初日から職員に対して語ってきたところでございます。
 既に都政改革本部において、自律改革については、都民ファースト、情報公開、そしてワイズスペンディング、つまり、税金の有効な活用について、全庁の各職場から既に三百を超える提案をいただいております。そして、具体的な取り組みを開始しているところでございます。
 一方で、都庁の組織運営の強化も不可欠であります。巨大組織の弊害を排すべく、常に情報と課題を共有し議論を行う、そして、意思決定が有効に機能する体制を構築するために、どうすべきか。その意味で、都庁マネジメント本部を先週設置したばかりでございます。
 こうしたことから、全ての都庁組織に改革意識を浸透させつつ、全庁がこれまでの延長線ではない新たな発想で連携がとれた施策展開を行う都民ファーストの都政運営を実現してまいりたいと考えております。
 残余のご質問については、関係局長よりご答弁させていただきます。
   〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、世界遺産を活用した観光振興についてでございますが、東京と各地との連携による観光振興を図る上で、都内や近県にある世界遺産を活用することは効果的でございます。
 これまで都は、隣接する千葉など三県と協力し、各地域の自然や文化財などの観光資源について、海外メディアを招いてPRを行ってまいりました。また、関東地方を中心とする十一の都県などが協力して、海外向けのウエブサイトにより観光情報の発信を行ってまいりました。
 これらに加え、今後は、世界遺産となった国立西洋美術館を中心として、関東の都県の世界遺産をめぐるルートづくりを検討し、多くの観光客を他の地域と連携して受け入れてまいります。
 こうした取り組みによりまして、東京と日本各地とが協力する観光振興の成果を確実に高めてまいります。
 次に、都内の旅館等のサポートについてでございますが、旅館等の宿泊施設は、旅行者が快適に観光を楽しめるよう、さまざまなサービスを提供する上で重要な役割を果たしてございます。その充実を図っていくことが必要でございます。
 このため、都は今年度より、旅館等のホームページの多言語化のほか、テレビで国際放送を見られる設備の導入や、トイレの洋式化等に対する助成を行っております。
 また、旅館等に専門家を派遣し、外国人旅行者へのサービス向上に向けた取り組みへの支援を開始いたします。
 今後は、都内の旅館がそれぞれの地域の魅力を活用して、旅行者誘致に取り組むとともに、相互に協力して効果的なイメージ発信ができる仕組みや、施設のハード面の充実に必要な資金繰りへの支援を検討し、宿泊施設の機能強化を通じた観光振興を着実に進めてまいります。
   〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都立公園へのWi-Fiの整備についてでございますが、来園者が観光情報や災害情報を容易に入手できる環境を整備することは有効であり、平成二十七年度から公園内にWi-Fiの設置を順次進めております。これまで外国人旅行者が多く訪れる日比谷公園や、防災上重要な公園である小金井公園など、三十六公園で導入してまいりました。
 上野恩賜公園では、JR上野駅公園口の広場と動物園の表門広場で整備した二カ所のほか、公園内の文化施設等においてもWi-Fiが設置されており、多くの観光客などに利用されておりますが、その利用可能なエリアは限られているのが現状です。
 今後、上野恩賜公園を初めとする都立公園において、さらなる利便性の向上のため、利用状況やニーズを踏まえ、Wi-Fi設備の増設を検討してまいります。
 次に、上野恩賜公園及びその周辺のさらなる充実についてでございますが、上野をさらに魅力あふれるまちとするためには、観光客が楽しんで回遊できるような環境整備が重要でございます。そのため、上野恩賜公園につきましては、竹の台エリアの広場などにおいて再整備を進めてまいりました。
 今後は、二〇二〇年東京大会までの完成に向け、公園口周辺エリアが風格あるメーンエントランスとなるよう、地元区やJR東日本と連携し、上野駅公園口の移設に合わせまして、その前面道路の広場化などの実現に取り組んでまいります。
 また、公園の再整備や周辺道路の改修に当たりましては、多摩産材等による公園内の木製ベンチや周辺道路における木製横断抑止柵の設置など、木材を活用した施設整備について検討してまいります。
 こうした取り組みを通じて、上野周辺の魅力を一層高めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 保育士を目指す若者への支援についてのご質問にお答えをいたします。
 都は、現在、保育士を目指す若者を初め、保育の仕事に興味、関心を持つ方を対象に、現役の保育士を交えたワークショップや、保育の仕事の魅力に関する講演会、就職相談会などを一体的に行うイベントを開催しております。
 また、昨年度から都内の高校生を対象に、保育の仕事の意義ややりがいを伝えるための職場体験を実施しており、今年度は定員を三百人から七百人に拡大しております。
 さらに、保育士養成施設の学生の保育所への就職を促すため、保育所等に五年間勤務した場合に返還を免除する修学資金の貸し付けを行っており、今年度からは就職説明会などを積極的に行う施設への支援も開始をいたします。
 今後とも、保育人材を確保するため、保育士を目指す若者への支援に積極的に取り組んでまいります。
   〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 都営浅草線のリニューアルについてでございますが、都営地下鉄では、今回の転落事故を重く受けとめまして、さらなる安全対策をしっかり行いますとともに、高齢化や国際化の進展等も見据え、どなたにも利用しやすいサービスを提供していく必要があると考えております。
 こうした考え方に加えまして、浅草線では、羽田、成田を結ぶ路線の特徴を生かし、東京と世界を結ぶ地下鉄という統一的なコンセプトでリニューアルを進めてまいります。
 具体的には、ホームドアについて、大門駅と泉岳寺駅への先行整備に加えまして、全駅整備の早期実現を目指してまいります。
 また、快適な駅空間の創出に向け、駅のデザインガイドラインを来年度策定いたします。
 車両につきましては、平成三十三年度までに全二十七編成を更新し、各車両にフリースペースや優先席の手すり、多言語対応の液晶モニターを設置することなどによりまして、浅草線の魅力をより一層高めてまいります。

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