平成二十八年東京都議会会議録第十三号

○議長(川井しげお君) 二番加藤雅之君。
   〔二番加藤雅之君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○二番(加藤雅之君) 初めに、豊洲市場問題について質問します。
 昨日の我が党の代表質問では、施設設計を請け負った設計会社と都庁側のカウンターパートナーからの聞き取りを、真相究明の突破口とすべきだと指摘をいたしました。
 九月三十日に提出された自己検証報告書の三三ページには、豊洲新市場建設工事の基本設計の起工書が掲載されています。決裁に関与した職員の中には、設計会社と具体的な折衝を行った実務のキーパーソンがいるはずです。
 都の設計業務委託においては、設計会社は都庁側と密接な連絡をとり、その打ち合わせの記録を残すことになっています。
 まず、この打ち合わせ記録を取り寄せ、キーパーソンからの聞き取りとあわせ、分析を急ぐべきであります。
 また、記録内容は、相手方の個人名など、了解を得られない事柄を除いて、情報公開すべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 次に、今回の問題に限らず、風評被害を防ぐためには、常に正しい情報を正しく発信していく必要があります。通常、多くの都民は、テレビや新聞等のマスコミ報道で情報を得ております。また、ふだん都民が聞きなれない専門的な言葉や、技術的な考え方も多用されるため、ともすれば、都民にはわかりにくく、誤解を招きやすい嫌いもあります。
 そこで、都は、正確かつ必要な、わかりやすい情報発信を随時行っていくことが肝要であり、知事の定例記者会見など、さまざまな機会を通じて情報発信体制を一層充実させていくべきであります。見解を求めます。
 次に、正確な情報発信という点に関連して、昨日の代表質問で行われた質疑の内容について質問します。
 今まで行ってきた土壌汚染対策工事は、不透水層や液状化対策にさらなる汚染をもたらすような影響を与えていないという認識でよいのか、また、地下ピットがある現状の確認、評価に関する質問に対し、いま一度、専門家会議で確認していただくとの答弁がありましたが、具体的にはどのような確認を行うことを意味しているのか、あわせて市場長に明快な答弁を求めます。
 次に、環境施策について質問します。
 都は、次世代エネルギーとして有望な水素エネルギーの普及に向け、さまざまな施策を推進しています。例えば昨年、燃料電池自動車や水素ステーション導入への補助制度を設け、ことし五月には、福島県や国の研究所との間で水素の活用に関する連携協定を締結しました。
 また、この夏、水素社会の将来像などを楽しく学べる施設、水素情報館東京スイソミルをオープンさせ、夏休みの一カ月間に入館者数が二千人を超えるなど、大盛況と伺っています。
 国では、原発事故で甚大な被害を受けた福島県復興の柱として、同県に世界最大級の水素製造工場を民間と協力して建設し、二〇二〇年までに稼働させる予定であります。
 都としても、東京スイソミルを単なる学習施設としてだけでなく、水素社会への実現に向けて、日本のすぐれた技術を広く発信するとともに、再生可能エネルギーや水素エネルギーで復興を目指す福島県の方々にも、水素エネルギーを利用する未来の姿を示し、希望あふれる将来像を描いていくことも必要と考えます。
 そこで、東京スイソミルの今後の活用方法について、知事の見解を求めます。
 次に、大気環境の改善について質問します。
 都は、平成十五年からのディーゼル車規制などの対策を着実に進めてきたことにより、東京の大気環境は、かつてより大幅に改善されました。
 その一方で、残された大きな課題が微小粒子状物質、PM二・五の削減です。
 PM二・五の主な原因物質である揮発性有機化合物、いわゆるVOCは、乾きが早い特性から、塗料など幅広い分野で利用されており、環境省の調査では、VOC排出量の約四割を塗料が占めています。
 このため、PM二・五の削減対策として、早急な低VOC化、脱VOC化が強く望まれます。
 また近年、中国からの気流によって運ばれる、いわゆる移流の影響も懸念されており、国家間の対策も課題です。
 今後、都として、東京二〇二〇大会を環境先進都市として迎えるためには、より一層の大気環境を改善していく必要があります。
 そこで、PM二・五の削減対策を効果的に進めていくために、PM二・五の排出実態をしっかり押さえ、施策を展開していくべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、都営地下鉄駅のトイレの質向上について伺います。
 本年の第一回定例会でも我が党はこの問題を取り上げましたが、トイレは日常生活を送る上で必要不可欠であり、とりわけ、外出先のトイレの快適性を向上させることは、都民の仕事や日々の暮らしの質を高める上で重要と考えます。
 国においても、女性が輝く社会づくりのための「暮らしの質」向上検討会で、女性が暮らしやすい社会の象徴として、トイレの質の向上が大きく取り上げられています。
 こうした中、都営地下鉄では、高齢者や障害者など、誰もが使いやすいトイレとなるよう、これまでバリアフリー機能を充実させた誰でもトイレを全駅に設置していることは評価します。
 そこで、今後さらに増加が見込まれる外国人旅行者のおもてなしや高齢者のためにも、都営地下鉄駅のトイレの利便性や快適性を高める取り組みを一層推進していく必要があると考えますが、見解を求めます。
 次に、小型無人機、いわゆるドローンの災害対応時の活用について質問します。
 ドローンは、新たな可能性を秘めた技術であり、防災分野を含め、今後さまざまな分野で利活用されることが期待されています。
 本年四月に発生した熊本地震においては、国土地理院や通信事業者がドローンを活用して被害状況の把握などを行っていました。
 また、防災システム研究所の山村武彦所長から、海外では真っ先にドローン先発隊が被災状況を偵察し、生存者確認や火災発生の危険性有無等に使用するなど、災害対応時の有効な情報収集ツールの一つとして活用しているとお聞きしました。
 荷物配送への活用も脚光を浴びておりますが、私は、とりわけ大規模地震等災害発生時に重要な情報収集ツールとしてドローンが有効と考えます。都の見解を求めます。
 次に、水防法改正に伴う高潮対策について質問します。
 時間雨量五十ミリを上回る豪雨が全国的に増加しているなど、近年、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化しています。また、海外においては、いわゆるスーパー台風の発生など、これまでの想定を超える気象に伴う水害が発生しています。
 国は、こうした事態に対応して、昨年、水防法を改正し、想定し得る最大規模の洪水、内水、高潮に対する避難体制等の充実強化に向け、浸水想定区域を指定、公表することを都道府県知事に義務づけるなど、水害対策を強化しました。
 我が党は、昨年の本会議において、関係部局が連携して水害対策を進めるべきと主張し、都は、関係五局から成る連携会議を早急に立ち上げ、対策を検討していると聞いています。
 この水防法改正において重要なのは、これまでの洪水にとどまらず、高潮への対策が新たに創設されたことです。高潮は、台風等により高くなった海面から水が押し寄せ、海岸だけでなく、河川を遡上し、深刻な水害につながるおそれがあります。
 そこで、都は、水防法の改正を踏まえ、高潮対策として、これまで取り組んできた堤防等のハード対策に加え、都民の避難行動につながる浸水想定区域図の作成等、ソフト対策を早急に講ずるべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、規制緩和について質問します。
 今定例会に示された待機児童解消に向けた緊急対策では、清掃事務所など、事務事業移管で都から区市等に譲与した財産については使途が制限されていましたが、指定用途に支障がない限り、待機児童解消を目的とした保育施設の早期設置のため、無償で速やかに用途変更が認められることになったことは評価します。
 一方で、清掃事務所が位置する喫緊の課題が必ずしも待機児童問題に限定されるわけではありません。例えば、地元墨田区のリサイクルセンターは、駅近くの繁華街にあり、防犯拠点に利用したいとの要望があります。また、他区でも、地域ケアシステムや子供の貧困対策施設などに活用させてほしいとの要望を聞いております。
 そこで、地域の緊急課題解消のため、清掃事務所などの譲与財産の使途制限解除を待機児童問題以外にも速やかに認めるべきと考えます。見解を求めます。
 最後に、産業振興について質問します。
 東京は、伝統や文化、産物など、海外の人を引きつける多様な魅力を持っています。その中の一つ、私の地元墨田区にも多くの産地が集まる伝統工芸品は、東京の歴史とたくみのわざの奥深さが詰まった世界に誇るべき資産です。
 加賀友禅などが有名な金沢市は、創造都市ネットワークというユネスコの都市間連携の枠組みに参加しています。手仕事のまち金沢をPRするとともに、同じ工芸分野に属する世界二十都市とのネットワークを生かし、フォーラム、ワークショップの開催や人材交流などにより、地元の工芸品の発信に取り組んでいます。
 こうした仕組みをうまく使って海外とのつながりをつくっていくことは、区市町村が産業の活性化を図る上で、一つの有益な知恵であります。
 PRの方法はさまざまであり、都道府県と区市町村のレベルでも異なりますが、重要な点は、内にとどまらず、世界に向けて発信することです。海外市場にアプローチをかけ、コネクションをつくり、東京の伝統工芸品の魅力を積極的に売り込んでいくべきと考えます。
 見解を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
 水素社会の実現に関連して、東京スイソミルの活用についてのお尋ねがございました。
 環境先進都市東京を実現していくためには、利用段階でCO2を発生しない水素エネルギーの活用を進めることは重要であります。
 東京スイソミルでは、子供たちを中心として、自転車で発電した電気での水素製造、そして、燃料電池自動車への試乗などを実際に体験することで、水素社会の安全性や将来性に対する理解を深めてもらうというものであります。
 また、福島県から子供たちをこの施設にバスなどで招待をして、新しいエネルギーの姿を体験してもらう、そして、福島が水素で復興する、その未来の姿を感じてもらいたいと考えております。
 さらに、水素エネルギーに関する日本の最先端の技術や研究開発の動向などをパネルなどでわかりやすく解説したり、セミナーやシンポジウムを実施することで、民間事業者の取り組みを加速させていきたいと考えます。
 今後、この東京スイソミルを幅広く活用して、水素の持つ大きな可能性について発信をして、広く都民に理解していただくとともに、世界をリードする日本の環境技術の発展へとつなげてまいりたいと思います。
 残余の質問につきましては、関係局長から答弁をさせていただきます。
 ありがとうございました。
   〔中央卸売市場長岸本良一君登壇〕

○中央卸売市場長(岸本良一君) 豊洲市場に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、キーパーソンからの聞き取り、分析についてでございますが、今回の調査報告につきましては、いまだ不十分でございますことから、お話の点も踏まえ、各局とも連携し、ヒアリングを行うなど、適切に対応してまいります。
 また、お尋ねの資料の情報公開につきましては、個人情報や企業の事業活動情報などが含まれていることも考えられるため、こうしたことにも配慮しながら、相手方の了解が得られることを前提に取り組んでまいります。
 次に、正確かつわかりやすい情報発信についてでございますが、連日、豊洲市場に関するさまざまな問題が報道され、多くの都民や消費者が食の安全に対して不安を感じておられることと思います。
 こうした不安が誘発する風評被害を防止するためには、正確な情報を継続して発信することが必要でございます。
 このため、従来から行っておりました豊洲新市場施設内外の空気測定等に加えて、今週から地下水位を測定して公表するなど、情報提供内容の拡充を図ったところでございます。
 今後も、正確さとともにわかりやすさにも配慮しながら、都民への情報提供の場の拡大に努めてまいります。
 最後に、専門家会議の確認についてでございますが、不透水層や液状化対策の安全性については問題がないと考えております。
 今後、開催する専門家会議の主な検討事項といたしましては、地下ピットがある現状の確認、評価、リスク管理上必要な施策の検討となっております。
 中央卸売市場といたしましては、こうした事項に加え、これまで行われてきたさまざまな土壌汚染対策につきましても、専門家会議委員の知見から、その実施状況の確認をお願いしたいと考えております。
   〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、PM二・五対策についてでございますが、PM二・五の環境基準の達成に向けては、原因物質である揮発性有機化合物、いわゆるVOCや窒素酸化物などの削減が重要でございます。
 このため、都は、平成二十年度時点の原因物質の排出実態調査を行い、工場等におけるボイラーなど燃焼機器の高効率化や、低公害、低燃費車の導入促進、塗装関連業界等に対する環境負荷低減のためのセミナー開催などの対策を進めてまいりました。
 今後、原因物質別や、工場、自動車等の発生源別の排出実態について早急に調査を行いまして、これまでの対策の効果を検証するとともに、より一層のVOCの削減など、効果的なPM二・五対策につなげてまいります。
 次に、清掃事業用地の他用途への利用についてでございますが、都は清掃事業の移管に際し、都区協議会の決定に基づき、区に原則無償で清掃事業用地を譲渡し、二十年の用途指定を付したところでございます。
 しかしながら、今般、待機児童解消に向けた緊急対策として、指定した用途に支障がない限り、保育施設の早期設置のため、無償で速やかに用途変更を承認することといたしました。
 今後、保育施設整備以外に都と区が連携して新たな施策を展開していく際には、清掃事業用地に用途変更の必要が生じた場合、施策の緊急性や当該区の清掃事業が確実に遂行できるのかなどの事態を把握した上で、関係局と協議をしてまいります。
   〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 都営地下鉄駅のトイレについてでございますが、都営地下鉄では、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、清潔感と機能性を備えたトイレへの改修を計画的に進めてございます。
 具体的には、トイレの出入り口の段差の解消、手すりやベビーチェアの設置、鏡と荷物棚を備えたパウダーコーナーの設置、お客様からの要望が強いトイレの洋式化などに取り組んでおります。
 また、温水洗浄便座について、既に設置を進めております誰でもトイレに加え、今年度から、一般のトイレにも設置を開始し、まずは、東京二〇二〇大会までに、大江戸線環状部とその内側にある駅を中心に整備を進め、できるだけ早期の全駅整備を目指してまいります。
 今後とも、全てのお客様がより一層便利で快適に都営地下鉄をご利用いただけるよう取り組んでまいります。
   〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 発災時におけるドローンの有効性についてですが、大規模地震等の災害発生時には、正確な被害状況を迅速に把握し、円滑な初動対応を行うことが重要でございます。
 そのため、都は、発災直後から、東京スカイツリー等に設置した高所カメラや、警視庁、東京消防庁等のヘリコプターからの映像を活用し、俯瞰的に被害状況等の情報収集を行うこととしております。
 ドローンについては、国が官民合同の協議会を立ち上げ、利活用が期待される分野として災害対応や物流等を挙げるとともに、機体性能、災害時における運用ルールなどの課題を含めた検討を進めております。
 都としては、国や民間の動向を注視しつつ、こうしたドローンなど最新技術の活用を含めて、災害時の情報収集体制を強化してまいります。
   〔港湾局長斎藤真人君登壇〕

○港湾局長(斎藤真人君) 水防法改正を踏まえた高潮対策についてでございますが、高潮から都民の生命や財産を守るためには、東京を第一線で防護する海岸や河川堤防等の施設整備に加えて、近年の大型台風の発生等の状況を踏まえ、万一の際にも、都民が的確な行動をとれるよう、情報をわかりやすく提供していく必要がございます。
 このため、本年九月に有識者で構成する高潮浸水想定区域検討委員会を設置し、これまでの想定を超える高潮により浸水が予測される区域や深さ、その継続時間等の詳細な調査、分析を鋭意進めているところでございます。
 今後、関係部局と連携して浸水想定区域図を新たに作成し、公表するとともに、避難行動等の目安となる特別警戒水位の設定についても検討を進め、安全で安心できる防災都市の実現を目指してまいります。
   〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 伝統工芸品の海外への発信についてでございますが、ものづくりのすぐれた蓄積を今に伝える伝統工芸品を海外へと普及させていくことは、歴史、文化や技術の力といった東京の多様な魅力を伝える上でも重要でございます。
 都は、デザイナーと職人が共同開発した伝統工芸の新しい商品等について、九月にフランスで、来年二月にドイツで開催される見本市への出展支援に取り組んでおります。
 また、若手職人が、世界のデザイン動向や市場ニーズを捉えた商品を企画できるよう、必要な知識やスキルを学ぶ講座を開くとともに、十一月には五名の職人をニューヨークに派遣し、現地のバイヤーや美術館関係者等との交流機会を提供するなど、活動を後押ししてまいります。
 こうした海外に向けた取り組みへの支援を通じまして、東京の伝統工芸の魅力を世界に向け強力に発信してまいります。

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