平成二十八年東京都議会会議録第十三号

○議長(川井しげお君) 十九番伊藤こういち君。
   〔十九番伊藤こういち君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十九番(伊藤こういち君) 豊洲市場整備問題について質問します。
 まず、一連の問題は絶対に許しがたい重大な過ちであることを断言しておきます。
 私たち都議会公明党は、これまで議会や都民に対し事実と異なる説明が行われてきたことを市場長から正式に初めて聞かされ、激しい憤りを覚える中、PTを立ち上げ、即座に三回にわたり現地視察、調査を行いました。
 その調査を踏まえ、まず指摘しなければならないことは、都が専門家会議の提言を実行しなかったのは盛り土の問題だけではないということです。それは、専門家会議の提言に記された、地下水管理を行い、地下水位の上昇を防止すること、A.P.プラス二メートル程度までに維持すること、これを現場では行っていなかったという事実であります。
 まず、地下水位の計測、監視すら行っていないことに対し、都議会公明党が現場で指摘をしましたが、都は即座に実行せず、再三の指摘でようやく地下水位の計測を始め、きのう出た結果は、専門家会議の提言、A.P.プラス二メートル程度を大きく超え、最高水位は五メートル超となっています。
 都は、専門家会議が提言した地下水の管理、つまり地下水位の計測や監視をなぜ行っていなかったのか、明らかにしていただきたい。答弁を求めます。
 また、きのうの我が党の代表質問で、地下水管理システムについて質問しましたが、工事の工程上、終盤で整備することになっていた、八月から試験運転をやっていると答弁しました。
 しかし問題は、建物が完成したことし五月から試験運転を開始した八月までの約三カ月間、排水は行われておらず、降った雨は、遮水壁によって各街区の中にたまりにたまって地下水が上昇したことは、誰の目にも明らかであります。
 さらに、試験運転は、現在まで約二カ月もやっていることになり、半分は動いているとのことですが、それでも水たまりがふえていることも確認しています。
 試験運転で一体何を管理する試験を行っているのか、システム自体のふぐあいや機能不足はないのか、疑念が湧きます。そうでないならば、すぐにでも地下水管理システムを本格稼働させるべきです。明快な答弁を求めます。
 次いで、同じく都議会公明党の現場視察、調査で初めて明らかになった、地下ピットにつながる重機の搬入口、マシンハッチについてであります。
 現地では、地下ピットの四メートルから五メートルの天井高を確認し、その用途、目的を尋ねると、重機を入れて工事をするときのためとのことでした。それならば、重機の搬入口はとのやりとりで、マシンハッチの存在が明らかになりました。
 私たちはまず、青果棟のマシンハッチを確認し、板状に並んだコンクリート製のハッチぶたのすき間を発見しました。わずかなすき間をのぞき込むと、地下ピットにたまった水たまりの水面が見えました。
 そこで疑念を持ったことは、雨が降れば、そのすき間から雨水が地下ピットに入り込み、また、万が一、ベンゼンなどの揮発性有害ガスが発生すれば、地上に拡散してしまうのではないかということです。
 また、このマシンハッチは、他の主要施設にも設置されておりましたけれども、それぞれにゴムパッキンがされていたり、そのゴムパッキン自体にもすき間があいていたりと、状態はまちまちでありました。
 そこで伺いますが、マシンハッチは、設計段階できちんと安全対策の視点がなされていたのかどうか明らかにしていただきたい。答弁を求めます。
 昨日の補償費用の問題等に対する追加の予算措置に関しての我が党の代表質問において、知事から、都の市場会計は独立採算を原則とし、行政的経費を除いては税金は充当されていないとの答弁がありました。
 この答弁は、あくまでも原則論を述べたものだと思いますが、追加の安全対策や補償費用の増加などが考えられる中、さまざまな想定が必要であります。
 市場業者の方々が置かれる厳しい状況を鑑みて、財源をどう考えていくのか、知事の見解を求めます。
 九月十日、小池知事の緊急記者会見によってこの問題が表面化した直後に開かれた東京都中央卸売市場審議会において、私は、原因究明、再発防止、安全の再構築を早急に行うよう、都に強く求めました。
 原因究明は、今後もしっかり継続していくことは当然として、私は、今やるべきことの最優先課題は、食の安全の再確認と再構築であると考えます。
 小池知事が再招集された専門家会議の平田座長を中心に、徹底的に調査を行ってもらい、その上で、専門的な知見から必要な追加の安全対策があれば、都は今度こそ、それを確実に実行するとともに、都民の目線に立って積極的に情報を公開し、都民、国民の食の安全を守っていただきたい。この問題の解決に対する知事の決意を伺います。
 次に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックとその先において、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成に向けた都の取り組みについて質問します。
 小池知事は先日の所信表明で、英語など外国語力の強化について言及されました。英語教育を充実させ、使える英語を身につけ、国際都市東京を支え、世界に羽ばたく人材の育成は、東京の喫緊の課題です。
 その取り組みの一つとして、都議会公明党は、東京都版英語村の創設を提案し、施設や教育内容など、外部有識者などの幅広い知見を取り入れながら、早期の開設を実現するよう求めてきました。
 こうした提案に応え、都は、着実に準備を進める中、過日、厳正な審査のもと、英語村の実質的な運営を担う事業者が決定されました。
 そこで、この事業者の選定のプロセスと選定理由、今後の進め方について説明を求めます。
 日常の環境から離れた別世界に身を置き、徹して外国語を学ぶ機会の究極は留学です。しかし、誰もがその機会に恵まれるわけではありません。
 かつて、私の子供は、英語村のような施設において、日々缶詰になって英語を学び、数日間のうちに英語が上達して帰ってきました。それが親として楽しみでした。
 都が準備を進める英語村において、子供の目線から見て魅力的な施設であり、教育内容も充実したものとなるよう、都は事業者任せではなく、積極的に取り組むべきです。
 また、児童生徒が誰でも利用しやすいよう、そして繰り返し学びに行けるよう、料金設定なども十分に配慮したものとすべきです。あわせて、都の見解を求めます。
 小池知事は所信表明で、私は阪神・淡路大震災を経験しましたと述べられました。私も、阪神・淡路大震災が発生した翌日、平成七年一月十八日に、友人のご両親を救出するため、神戸のまちに入りました。
 しかし、燃え広がったまち並みの先に見えた倒壊してしまったマンションから、そのご両親を救い出すことはできませんでした。
 その経験と教訓をもとに、私は、都議会において、首都直下地震の発生時でも機能する緊急地震速報の必要性や、災害時に機動力を発揮し情報収集するため、オフロードバイクの活用などを提案してきました。
 小池知事は、震災への備えとして、強力に進めるべきは道路の無電柱化であると述べられました。
 私も全く同感です。被災した神戸へ向かう道々で見かけた光景は、電柱が倒壊し、道路を閉塞させ、人も自転車も、当然、緊急車両も通行できず、救出、救助の妨げになっていたからです。
 首都直下地震発生の切迫性が高まる中、東京の無電柱化は、防災上、極めて重要な事業です。
 都はこれまで、都道の無電柱化に積極的に取り組んできましたが、私は、こうした大きな幹線道路はもとより、さらに一本、中に入った区市町村道のような生活道路こそ、早急に、強力に無電柱化を進めるべきと考えます。
 そこで、無電柱化を進める区市町村に対し、都はこれまで以上に支援策を拡充すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 私の地元、品川区は、木造住宅密集地域を多く抱え、都内でも危険度が極めて高いとされています。
 首都直下地震等による東京の被害想定によれば、大地震が東京を襲った際に、品川区では死者約八百名、そのうち約五百二十名が焼死と想定されています。
 私は、一人でも多くの命を守りたいとの思いでいっぱいであります。
 都はこれまで、災害時に甚大な被害が想定される地域の防災性を向上させるために木密十年プロジェクトを立ち上げ、特定整備路線の整備を加速しています。
 品川区でも、補助二八号、二九号が事業化され、用地取得が進められています。
 しかし、事業に協力いただく関係権利者は、特定整備路線の必要性は理解しつつも、移転や生活再建に伴う新たな負担を抱えることに大きな不安を抱え、困り果てた声が多く上がっています。
 都は、都議会公明党の提案に応え、相談窓口を設置しましたが、関係権利者の生活再建に対し、これまで以上に一軒一軒に寄り添い、安心できる支援策を拡充していくべきです。見解を求めます。
 最後に、災害から一人でも多くの都民の命を守るための東京の防災力の強化について、知事の決意を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 伊藤こういち議員の一般質問にお答えさせていただきます。
 まず、豊洲市場の追加の予算措置についてのお尋ねがございました。
 昨日も申し上げましたとおり、都の市場会計は、独立採算を原則として運営をいたしております。
 豊洲市場の安全性の確保に必要な追加工事や市場業者への補償などに関しましては、追加の予算措置が必要となる場合、その財源について会計上どのように扱うかは、まさしく課題の一つと考えております。今後十分に精査した上で判断をすることといたします。
 食の安全の再確認と再構築についてのご質問でございました。
 生鮮食料品を取り扱う豊洲市場の整備におきまして、盛り土がなされていないこと、これまで事実と異なる説明を行ってきたことなどによりまして、食の安全に対する信頼が大きく損なわれたことはまことに遺憾であります。
 こうした問題に対応するため、専門家会議及び市場問題プロジェクトチームを設置いたし、安全性を調査、検証していただいておりまして、会議の内容については、都民に対して広く公開し、正確でわかりやすい説明を行っていく所存でございます。
 また今後、会議での議論を踏まえまして、必要な対策を実施することはもとより、生活者の目線、都民ファーストの感覚を大切にしながら、積極的な情報公開を行うことで、都民の食の安全に対する信頼を取り戻してまいりたいと考えております。
 また、豊洲市場の問題解決に対する知事の決意についてもお尋ねがございました。
 二つ申し上げます。
 まず、中央卸売市場の体制を刷新をしたい。そして、新しい目で、豊洲市場の安全性の確保について、専門家会議、市場問題プロジェクトチームとともに検討してもらいたい、このように考えております。
 もう一点は、責任の所在を明確にしていくことでございます。歴代の市場長につきましては、既に退職をした者も含めまして、明確にしてまいります。
 また、その他の幹部職員につきましても、個人の特定などの行政監察手続を進めまして、退職者も含めて、懲戒処分などのしかるべき対応をとっていく、このように考えております。
 次に、区市町村道の無電柱化についてのご質問にお答えいたします。
 阪神・淡路大震災では、多くの電柱が倒れて、ご指摘のように、避難や救助の妨げになったものであります。防災性の向上を図るためには、区市町村道のような道幅の狭い道路こそ、電柱や電線をなくしていかなければなりません。
 一方で、無電柱化には多額の費用がかかるということで、区市町村道の無電柱化が進まない原因の一つとなっております。
 このため、区市町村に対します技術的、財政的な支援を行うとともに、事業者間の競争やイノベーションを促すことで、コスト削減を図ってまいりたいと考えています。
 都民が安全・安心に暮らせるセーフシティーの実現に向けまして、東京の無電柱化を強力に推進してまいりたいと考えております。
 東京の防災力の強化についてのご質問もございました。
 東京は、首都直下地震や巨大化する台風など、さまざまな自然災害のリスクに直面しております。
 そして、想定外の事態が生じても対処できるよう、あらかじめ想定し得る準備を着実に行うことが、まさしく防災対策の基本でございます。
 このために、先ほど申し上げました道路の無電柱化、木造住宅密集地域の不燃化の促進、こういったハードの対策とあわせまして、例えば、乳児用の液体ミルクについて、現行の国の規定を含めて課題を整理いたします。そして、きめの細かい災害対策を実施してまいりたいと考えます。
 また、東京の町会、自治会、消防団などの一層の活性化を図ってまいります。これによって、発災時に命を守る上で重要な、地域で助け合う共助の取り組みを促進することで、安全・安心な地域社会の創出に努めてまいります。
 こうしたさまざまな取り組みを通じまして、東京の防災力を強化して、都民一人一人がみずから率先して、地域の安全・安心を守っていくセーフシティー東京の実現を目指してまいる所存でございます。
 残余の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたさせます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 英語村に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、英語村の事業者選定のプロセス等についてでございますが、都教育委員会は、児童生徒が、外国人との会話や外国の文化等に触れる機会をふやし、英語を積極的に使う態度を身につけられるよう、教室での授業に加え、体験的で実践的な学習を行う場として英語村の整備を進めております。
 整備や運営には、民間の創意工夫や経営手法を活用することとし、ことし三月、募集要項を公表し、民間事業者から企画提案を募りました。
 選定に当たっては、外部委員も含めた委員会において審査を行い、良質なスタッフによるオールイングリッシュでの多様なプログラムの提供等、英語村の狙いを最も高度に実現できる事業者を、最優秀事業応募者として決定し、九月末に公表したところでございます。今年度末までには、事業者と基本協定を締結する予定としております。
 次に、英語村の内容の充実に向けた取り組みについてでございますが、協定の締結に当たっては、ネーティブスピーカーを豊富に活用した少人数指導や、大使館等と連携した国際交流活動、留学の疑似体験などといった、英語村ならではのプログラムの実現に向けて、事業者と具体的に協議してまいります。
 また、各学校の実態や学習の狙いに応じて、柔軟に対応できるプログラムの提供について工夫するとともに、利用しやすい料金体系等となるよう、事業者に働きかけを行ってまいります。
 今後とも、学校とは異なる環境の中で、児童生徒が生きた英語を学び、繰り返し訪れたいと思う場となるよう、平成三十年を目途とした開設に向け、着実に準備を進めてまいります。
   〔中央卸売市場長岸本良一君登壇〕

○中央卸売市場長(岸本良一君) 豊洲市場に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、地下水位の計測や監視の実施についてでございますが、豊洲市場の建設工事中におきましては、各街区とも雨水を集水するためのくぼ地を設けまして、集まった水を沈砂槽にポンプで送水した後、土砂などを除去して既設の雨水管に排水してまいりました。
 また、地盤の低い箇所に一時的に雨水がたまった場合は、必要に応じて仮設ポンプにより排水を実施してまいりました。
 このように、雨水を可能な限り地下水化しないよう努めてまいりましたが、地下水位につきましては、地下水管理システムで水位を計測することとしておりましたため、システムで計測が可能となりますまで、計測や監視は行っておりませんでした。
 ご指摘のとおり、十月三日より、システムにより水位の計測が可能となりましたことから、そのデータをホームページで公表しているところでございまして、引き続き、計測、公表してまいります。
 次に、地下水管理システムは、約四十ヘクタールの豊洲市場用地全域にわたり、地下水位を常時一定水位に管理、制御する非常に重要なシステムでございます。
 本年八月から試験運転を行っており、例えば、各井戸のポンプや処理施設の稼働状況の確認、バックアップ機能の確認、排水の際の水質確認等、自動運転に向けた調整を行っております。
 九月中旬からは、夜間を含めた連続運転の試行を行っておりまして、現在、全体の五割程度の稼働状況でございます。
 今月中の本格稼働に向け、機器の最終調整を進めており、可能な限り早期の定常運転を目指してまいります。
 最後に、マシンハッチについてでございますが、水産卸売場棟、水産仲卸売場棟、青果棟、加工パッケージ棟では、大型のマシンハッチを設置しております。
 これは建物外部から、いわゆる地下空間に通じる搬入口でございまして、地下水のモニタリング作業や、万一の際の汚染地下水の浄化作業及び設備配管の大規模改修に備えることを目的としております。
 なお、大型のマシンハッチのコンクリートぶたは、クレーンでつるして開閉するものでございまして、ご指摘のとおり、おさまり上、わずかなすき間がございます。
 このように、マシンハッチはその機能上、気密性を考慮しておりませんため、設計当時の考え方を確認するとともに、揮発性物質に対する安全性等につきましては、今後、専門家会議等の場で調査、検証してまいります。
   〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 特定整備路線についてでございますが、関係権利者の理解と協力を得て事業を進めるためには、生活再建に対するサポートが極めて重要でございます。
 そのため、移転資金の貸し付けや、代替地のあっせんに加え、民間事業者を活用した相談窓口を設置し、権利者の生活再建を支援しております。
 特に、お年寄りなどに対しましては、ご自宅を訪問して、おのおのの事情や意向を伺いながら再建計画の検討を支援するなど、手厚いサポートを実施しております。
 今後は、関係権利者の年齢や家族構成、お住まいの形態など、さまざまな事情の一層の把握に努め、ニーズに応じた具体的な生活再建策を提案するとともに、メール相談を拡充して相談しやすい環境を整備いたします。
 引き続き、権利者の要望に可能な限り応える支援を行いながら、特定整備路線の整備を全力で推進してまいります。

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