平成二十八年東京都議会会議録第九号

○議長(川井しげお君) 五番山内晃君。
   〔五番山内晃君登壇〕

○五番(山内晃君) 最初に、都政課題について各局長に答弁を求め、その後、知事に基本姿勢を伺います。
 まずは、障害児について伺います。
 医療技術の進歩や女性の高齢出産により、今後、何らかの障害を持たれた子供が増加していくといわれております。
 先日、私の地元品川にある障害者を受け入れる施設でイベントが開催され、参加した際、子供が重症心身障害児の母親から、受け入れ施設の不足と施設で医療従事を担う医師、看護師の不足について、切実な思いで語られました。
 平成二十四年四月に児童福祉法が改正され、重症心身障害児を対象とした通園事業が児童発達支援として法定化されるなど、障害者への対応は大きく前進しております。
 しかし、先ほどのような切実な声があるのは事実であります。特に、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複する重症心身障害児の多くの方は在宅で生活をしており、介護されるご家族は日々、大変な苦労をされております。とはいえ、愛する子供を思う親の気持ちは何物にもかえられないことを我々はちゃんと理解し、重症心身障害児が地域でよりよいサポートのもと、家族とともに生活できる環境を向上させていかなくてはならないと考えます。
 そこで、重症心身障害児へのサポートについて、都の取り組みを伺います。
 都の支援が必要なのは重症心身障害児だけではありません。
 障害者総合支援法の見直しが進み、改正案の中でも新たな課題として注目をされている医療的ケア児についてですが、たんの吸引や経管栄養など医療的ケアが必要な子供が在宅で暮らすケースが増加しております。今の制度では想定外とされ、親たちが十分な支援を受けられず孤立したり、幼稚園などに通えず、居場所が見つけられないことが多々あると伺っております。
 現在、特別支援学校に通う子供たちだけでも、八年前から比べ一・五倍の約九千人が国内で医療的ケアを必要とされております。
 医療的ケア児は、就学前の施設への受け入れ先について大きな課題があると伺っております。例えば、重症心身障害児は障害者のくくりですが、医療的ケア児の大半は障害者というくくりではないため、行政から施設への給付金に大きな差が生じるため、運営上、施設側から受け入れを断られるケースがあるということであります。
 また、地域における相談体制の整備とそのマンパワーの確保も必要であります。
 障害児の日常生活や施設への受け入れ先、就学に関することなど、障害児の家族の切実な思いを受けとめ、適切な支援につなげていくことが重要であります。障害者総合支援法施行三年後の見直しに伴い、今般成立した改正児童福祉法においても、医療的ケアを必要とする障害児が適切な支援を受けられるよう、医療、保健、福祉等の連携促進に努めることとされたところであります。
 そこで、今後、いわゆる医療的ケア児への支援に向け、都はどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 都営地下鉄の安全・安心の確保、テロ対策について伺います。
 ことし三月、ベルギーの地下鉄で卑劣かつ残忍なテロ行為が発生しました。輸送密度が高い東京の地下鉄で万が一テロが発生すれば、多数の利用客が巻き込まれる事態となります。
 そうした中、今回のサミットの警備を見ますと、乗降者数の多いターミナル駅では、警備員が巡回するなど厳重な警戒がなされていました。一方で、周辺の乗降客の少ない駅は、改札等の係員の配置も少なく、そこからテロリストが侵入するのではないかという不安を感じたところであります。
 テロ対策の全容を公開することは危機管理上問題がありますが、日ごろから異常を見逃さない体制を構築し、テロの発生を未然に防止することや、仮にテロが実行された場合には迅速かつ的確に対応するための対策を講じていくことが重要と考えますが、見解を伺います。
 輸送障害等が発生した際、外国人旅行者への案内について伺います。
 過日、日本の都心で最も混雑するJR山手線とJR京浜東北線が秋葉原駅付近において、支柱倒壊事故で九時間余りも不通となりました。その際、駅や車内で案内放送が日本語のみでの対応だったため、外国人旅行者が戸惑ってしまったようです。
 通常とは異なる状況のときに、外国人旅行者に対し正確な情報を知らせてあげることが外国人旅行者に対する親切なサービスであり、不可欠だと考えますが、見解を伺います。
 次に、固定資産税について伺います。
 大規模な建築物の固定資産税評価についてですが、都は、今後も都内で十万平米を超える建物が増加していくことを見据え、それらの評価方法を見直す検討会を新たに立ち上げました。
 私の地元西品川一丁目地区でも、延べ床面積十八万平米の複合用途のビルが平成三十年竣工予定で、都市基盤の整備と地域の防災性向上が期待をされております。こうしたまちづくりを後押しするためにも、大規模建築物の評価方法をわかりやすく見直すことが必要だと考えます。
 オフィスやホテルなどの入った十万平米を超える建物は、先進的な建築技術を取り入れた数万点の資材が使用されており、規模や用途にかかわらず、資材価格を積み上げる現行の方法は非常に複雑で、評価額が決定するまで時間がかかるようです。
 今回の見直しに当たっては、学識経験者による検討だけではなく、制度の適用を受け、最新の建築の現場を熟知している事業者の考えを聞くべきだと考えます。耐震構造を初め、建築技術の動向や、時間とともに建物の価値がどう変わっていくかなど、事業者の知見を生かしていくことが重要だと考えます。
 こうした事業者の意見を固定資産税評価の見直しにどのように反映させていくか、都の見解を伺います。
 次に、日本の職人わざ、とりわけ左官職人のすぐれたわざの承継について伺います。
 日本建築においては、古来より左官職人がこてを巧みに用いて壁を塗り上げてきました。中でも、しっくいが用いられた壁は湿気の多い日本の風土に合ったものであり、天然素材からできているために有害物質を含まない健康壁ともいわれ、評価が高まってきております。
 一方で、左官職人については、その技能を受け継ぐ人材が減少するとともに、高齢化が進んでおり、これまで培われてきたすぐれた技能の継承が大きな課題となっております。
 このような課題を解決し、次代を担う若者にすぐれた左官職人のわざを継承していくために、都として積極的な取り組みを考えますけれども、見解を伺います。
 ところで、知事、今回、私は一般質問で障害児施策、また東京のテロ対策について、都の方針を知事に求めるはずでした。
 厚生労働大臣を経験された豊富な知識で、増加していくといわれる障害児に対し、今後一層の支援の充実が必要だと考えたからであります。障害者施策について、都に対する期待が大きいため、知事から今後のビジョンについて答弁をしてもらいたかった。
 テロ対策については、オリンピック・パラリンピックを控え、東京の安全・安心を最優先とし、都民、国民のみならず、今後増加する外国人旅行者が東京で楽しい時間を送っていただくための整備について、知事の所見を聞いておかなくてはならない、そのように思いました。
 ところが、今回の騒動により、みずから都民の信頼を失っていると発している知事にそのような重要課題の答弁を求めることは不可能と判断をし、残念でなりません。
 疑惑騒動については、ご自分で招いたことであります。ですから、ご自分で都民一千三百万人に説明責任を果たすべきだったのではないでしょうか。なぜ第三者の手をかりなくてはならなかったのか。理解不可能であります。
 リーダーにとって最も重要な能力、それは危機管理であります。危機管理については都民から高いレベルで求められているものでありますが、知事は毎週のように湯河原に通い、首都東京に対する危機管理意識の低さをまさに露呈いたしました。
 そんな知事は、四月のアメリカ出張でも如実に示されました。熊本地震の際、国難を顧みず、出張日程を予定どおりこなしました。ワシントンDCのイベントでは、赤いベントレーのオープンカーに乗り、にこやかに手を振る知事のご満悦な姿に多くの都民、国民が衝撃を受けたはずであります。
 海外出張優先、危機管理は二の次。知事が発する都民の安全・安心はまさに口先だけ。知事は危機管理をどのように考えているんですか。お答えをください。
 危機管理の意識を問われ、政治と金について指摘をされる知事を当選させてしまった有権者は、大変後悔をされているはずです。この人だったら間違いない、そう思って投票し、当選され、期待も大きかった。ところが、このような事態になるなんて誰もが予想していなかった。誰もが裏切られたと思っているはずです。
 頭脳明晰な人は、人をだますのが上手だといいます。知事は人に裏切られた経験がありますか。信頼を裏切るということはどれだけ傷つけられることか。信頼を取り戻すことは一朝一夕でできることではありません。
 職場とは、互いが信頼し合い、初めてよい仕事ができ、結果につながります。
 先日、都庁職員にインタビューをする報道番組で、トップリーダーがスキャンダルで騒がれ、そんな人のもとでよい仕事ができるわけがないと切実に訴えておりました。内部からそのような声が出るのはまさに異常事態であります。
 都職員は、二〇二〇年大会や福祉、防災、都市整備、教育などさまざまな課題を克服し、世界で一番の都市東京を実現させ、次の世代にすばらしい東京を残していくことを使命だと思い、日夜仕事に励んでいただいております。都の現状は、停滞どころか後退してしまっていると私は危惧をいたしております。
 東京を世界で一番の都市にすると訴えてきた都知事と職員の信頼関係について、知事はどのようにお考えですか。お答えをください。
 都民の声に耳を傾けるということを知事はどのように受けとめますか。
 政治家の仕事は有権者の声を聞くことが重要で、それを実現することが何より大事であります。私も一都民として、今後、知事に期待をし申し上げること、それは知事、みずからけじめをつけることであります。もうこれ以上、都政を後退させてしまうことに我慢の限界であります。都民の期待を裏切ってきた知事。冷静に都民の声に耳を傾け、そして現状を直視してください。知事にとって、それが今最も重要なことではないでしょうか。
 知事は、信頼を回復し、議会と真摯な議論をしていきたいなどとおっしゃっておりますが、本気でそのようなことを思っておられるのでしょうか。見識を疑います。真摯な議論とおっしゃっておりますが、何を議会と議論するつもりなのでしょうか。お答えをください。
 都議会自民党は、昨日の代表、そして本日の一般質問において厳しい指摘をし、今後も都民、そして議会が、納得がいくまで手を緩めることなく追及をしてまいりますことを皆様にお話し申し上げ、以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 山内晃議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、危機管理についてご指摘がございました。
 危機管理の重要性は十分に認識しているつもりでございましたが、私の行動が都民の皆様に不安を与えたとすれば、まことにざんきの念にたえません。危機管理意識が低いとのご指摘も当然だと思っております。
 湯河原につきましては、危機管理上もさまざまなご批判をいただいたところでありまして、事務所は売却いたします。
 また、アメリカ出張でのパレードは行事に組み込まれていたものでありましたが、被災者の方々を初め、国民の皆さんを大変不快な気持ちにさせてしまいまして、大変申しわけなく思っております。ご指摘のとおり、予定を切り上げることをもっと検討すべきでございました。今後は、海外出張の必要性自体を厳しく精査してまいりたいと思っております。
 私の行動が都民、国民の皆様の目にどう映っているか、このことにもっと思いをいたし、行動を律していきたいと考えております。
 知事と職員の信頼関係についても厳しいご指摘がございました。
 私は、就任に当たって、職員への挨拶で、皆さんは一人一人が都庁の代表であって、都知事の分身であることを肝に銘じて日々の仕事に取り組んでもらいたいと述べました。職員にこうした意識で仕事をしてもらい、成果を上げていく組織とするためには、ご指摘のとおり、互いの信頼関係が不可欠でございます。それにもかかわらず、職員の信頼を失いつつあることは、まことにじくじたる思いでございます。改めて日々の職員の仕事ぶりに感謝いたしますとともに、ともによい仕事がしたいと思ってもらえるように、一連の問題にしっかりと対応してまいります。
 知事としての信頼の回復についても、またご指摘がございました。これ以上、都政を後退させてしまうことは我慢の限界というご指摘を厳しくいただきました。大変重く受けとめたいと思っております。このような事態を招いていますこと、改めまして心からおわびを申し上げたいと思います。
 都民の皆様から多くの厳しいご批判をいただいていることも十分に承知してございます。そうした中ではありますけれども、私は、就任以来、都議会の皆様と交わしてきた議論を踏まえまして地道に都政の発展に努力をして成果を上げていくことで、一歩一歩、皆様方の信頼を回復したいと考えてございます。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、重症心身障害児に対する支援についてでありますが、都は、重症心身障害児が地域で安心して生活できるよう、障害者・障害児地域生活支援三か年プランにおきまして、平成二十九年度までの三年間で百三十人分の定員増を目標に掲げ、整備費の特別助成を行うなど、通所施設の設置を促進しております。
 また、家族の病気等で一時的に家庭での療育が困難になった際に施設などに短期間入所できるよう、病床を確保しているほか、家族の休養などを目的に、看護師が自宅を訪問して家族にかわってケアを行う事業を実施しておりまして、NICU等から退院を予定している家庭に対しましては、在宅への移行に向けた看護指導などを行っております。
 今後とも、区市町村や関係機関と連携し、重症心身障害児とその家族への在宅支援の充実に取り組んでまいります。
 次に、医療的ケアの必要な障害児への支援についてでありますが、都では、障害児やその家族の相談に対応し、適切なサービスにつなげられるよう、相談支援を担う人材の養成を進めますとともに、地域における相談、助言等の中核となる児童発達支援センターの整備を促進しております。
 また、NICU入院児の在宅療養への円滑な移行を促進するため、周産期母子医療センターへのコーディネーター配置を支援しているほか、地域の短期入所事業所などでの障害児の受け入れを進めるため、障害者支援施設等に看護師を配置する区市町村を支援しております。
 今後、改正児童福祉法の趣旨も踏まえ、医療的なケアが必要な障害児が適切な支援を受けられますよう、人材の確保、育成を図り、保健、医療、福祉の連携を進めてまいります。
   〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営地下鉄のテロ対策についてでございますが、鉄道事業者として、テロの未然防止に努めますとともに、テロが発生した際には、関係機関と連携し、的確な避難誘導等により、被害を最小限にとどめることが重要でございます。
 そのため、専門家の助言を得ながら、駅員のセキュリティー意識の向上を図るとともに、駅員や警備員による巡回警備をより一層強化してまいります。あわせて、引き続き駅の監視カメラの増設を重ね、さらに映像を自動的に解析し不審者等を検知する新しい技術の実証実験を行ってまいります。
 また、爆発物やNBCテロに対処する訓練につきましても、警察、消防など関係機関と連携いたしまして、テロの類型に応じた対応手順に基づき、より実践的な内容で行うなど、ハード、ソフト両面からテロ対策を強化し、輸送の安全確保に全力で取り組んでまいります。
 次に、輸送障害発生時の外国人旅行者へのご案内についてでございますが、都営地下鉄では、改札口に設置しております運行情報表示装置で、他社線を含む遅延情報等を四つの言語で提供するとともに、今年度から、外国人利用者が多い駅ではコンシェルジュが英語で輸送障害等の案内放送を行っております。
 今後は、コンシェルジュを配置していない駅や地下鉄車内におきましても、駅や乗務員に配備を進めておりますタブレット端末を活用いたしまして、多言語での案内放送を充実させてまいります。
 さらに、Wi-Fi等の通信環境が使えない場合でも、輸送障害等の情報を音波の活用によりまして、お客様に選択いただいた言語でスマートフォンへ同時にご案内を可能とする新技術の実用化に向けた実証実験を行ってまいります。
 今後とも、外国人旅行者を含め、どなたにも安心して都営交通をご利用いただけるよう、正確な情報の確実なご案内に積極的に取り組んでまいります。
   〔主税局長小林清君登壇〕

○主税局長(小林清君) 大規模建築物の固定資産評価についてでありますが、都は、近年増加している大規模で用途が複合的な建築物の評価方法を見直すため、建築、不動産鑑定、法律等の専門家から成る検討会を本年四月に設置いたしました。
 今回の見直しに向けた検討は、昭和三十八年に定められました現行の評価方法の改正につながるため、新たな制度の適用を受けることになる納税者の方々から広範なご意見をいただくことは、税制に対する理解を得ていく上でも重要であると考えております。
 このため、来月開催する検討会では、都市開発の事業者の方々からヒアリングを実施し、建築技術の進歩の動向を初め、現行の評価制度の課題や、今後のあり方などについて幅広い観点から意見交換を実施いたします。
 こうした議論を十分踏まえまして、簡素、迅速で納税者にわかりやすい制度の構築を進めてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 左官職人の技能継承についてでございますが、東京のものづくりの持続的な発展のためには、これまで培われてきた技能を確実に次の世代に引き継いでいくことが必要でございます。
 都は、次代を担う人材を育成するため、職業訓練において、左官工事も含めた住宅の内外装に必要な知識、技能を修得できる科目を設置するとともに、都内に勤務する優秀な技能者を東京マイスターとして表彰し、技能者の社会的地位の向上を図っております。
 さらに、卓越した職人わざを現場の若手職人にわかりやすく伝えるために、そのわざを動画に収録し、DVDの配布やウエブサイトでの公開などにも取り組んでおり、今年度は左官の職人わざを取り上げてまいります。
 今後とも、こうした取り組みを通じ、左官業を担う職人の技能継承を支援してまいります。

○議長(川井しげお君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時十分休憩

   午後五時三十八分開議

○議長(川井しげお君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事舛添要一君。
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 斉藤やすひろ議員の質問のうち、今回の調査についての答弁につけ加えをさせていただきます。
 弁護士は、前知事から紹介されたものではございません。

○議長(川井しげお君) 発言は終わりました。

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