平成二十八年東京都議会会議録第九号

○副議長(小磯善彦君) 四十一番木村基成君。
   〔四十一番木村基成君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十一番(木村基成君) 舛添都知事のこれまでの会見、先日の所信表明や昨日の答弁は、一切、私の心には届きませんでした。むしろ、憤りが増幅しています。
 密室の中の考えや判断は、しょせん、自分に都合のよい解釈でしかあり得ません。東京に吹く大風への対処を間違ってはならないのです。
 以前、舛添都知事が、私の地元である中央線東小金井駅北口周辺の開発状況を目の当たりにして、このままではよくないから、しっかりやろうという趣旨のことをおっしゃいました。
 私は、あのとき、今まで動かなかったものが、もしかしたら舛添都知事のもとで動き出すのではないかと感じ、あなたを信じたのです。
 しかし、都知事を信用できなくなくなった今、舛添都知事、あなたに東京の未来について質問する意義が一切なくなったのです。
 また、当選後の舛添都知事に対して、私は、幾度となく残念な思いをしてきました。それは、人の思いを受けとめられないこと、そして何よりも、世界で一番の都市を目指す東京都の長であることの覚悟を感じることができないのです。
 私たちが暮らす東京は、江戸開府以降、江戸三大大火、関東大震災や東京大空襲など、多くの命が犠牲になって今日があるのです。今を生きる人、これから生まれてくる命、亡くなった命、その全てが大切なのです。自分だけが大切だという考え方のあなたに、連綿と続く東京の命を守る、その覚悟があるはずがないのです。
 都民、そして都議会議員からの信用を全て失った現状において、都政運営への影響をどのようにお考えになるのか、また、取り返しがつかない状態の収拾についてどうお考えになるのか、知事、お答えください。
 知事は、二年前の選挙戦で、多摩の振興なくして東京の発展なしとスローガンを掲げ、多摩振興の意思を示しました。
 多摩担当の副知事を設置し、現場視察も行い、多摩地域の問題に真っ正面から向き合ってくれる知事が誕生したと、どれだけ期待したのか、あなたはわかっているのですか。
 しかし、いつの間にか多摩地域からは足が遠ざかり、美術館ばかりをめぐり、湯河原通いを指摘されると、奥多摩より近いと豪語する始末です。多摩に住む都民にとっては、たった一人しかいない都知事から放たれた言葉に失望と憤りを感じています。
 多摩地域には、財源を初めとする諸課題があり、観光客誘致は多摩の活性化につながる大命題なのです。都知事には、東京全体への目配り、愛情がありません。都知事の軽薄な言葉や思考が、一連の問題における根源の一つではないでしょうか。
 そこで、都知事には、みずからの言葉とその重みについての見解を求めます。
 なお、これ以降、質問の一切は、先ほど申し上げた理由のとおり、知事ではなく、関係局長に回答を求めることといたします。
 初めに、観光政策について伺います。
 観光の一大産業化を目指す上で、国際会議等のMICEを開催することは、国内外の人の交流、情報の流通、集客の向上など、国際的な東京の都市としての競争力向上につながります。
 そうした背景から、世界のさまざまな都市では、MICE誘致を経済戦略と位置づけており、誘致の競争が激しくなっていると聞いております。
 都では、MICE誘致を進めるためにさまざまな施策を戦略的に打っていることは承知しております。大型の会議施設や受け入れ人数の多いホテルがある都心と日帰りでの観光が可能な多摩地域を組み合わせるような着想も行っております。多摩地域でのMICE開催の本格誘致はこれからであり、多摩でMICEを開催できるような取り組みを行う必要があると考えます。
 多摩におけるMICEの特徴は、国際会議を大学などで開催していることであります。行政には、宿泊施設や観光ルートづくりを含め、地元が一体となって協力する体制をつくり上げる後押しをしてほしいと考えます。
 東京を世界一の観光都市に育てていくためには、MICEの分野においても、多摩エリアでの観光振興に力を入れていくべきだと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、地域の魅力を生かす観光振興について伺います。
 東京には、文化や伝統的な建築物のほか、食や自然などの魅力のある観光資源が数多くあります。地元の自治体は、地域の特色をアピールするなどして誘致に努力していると思います。各地域が観光に力を入れ始めている現状では、ほかの地域よりも一層の工夫をしないと、観光客誘致の成果が上がりにくいと思います。
 例えば、姉妹都市や友好都市と共同で物産展や観光PRを行うことも一つのやり方だと思います。また、映画やテレビのロケ地、歴史上の人物などのテーマでイベントを開催するなど、積極的な展開が必要だと考えます。
 都が、地元自治体の観光資源を生かす取り組みの充実を図るとともに、都外の市町村との協力を深める工夫を引き出すような仕組みをつくり上げるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、観光関連団体の活動強化について伺います。
 観光客を誘致するには、観光協会など、地元の観光関連団体の努力も大変重要です。旅行者の興味や関心を集める事業を行うには、市場のニーズをしっかりと把握しなければなりません。
 観光振興は、地域の商業や工業において、旅行者による買い物などを通じ、大きな経済効果をもたらすことから、経済団体も観光協会の事業のあり方に注目しています。
 地域における旅行者誘致の取り組み内容のレベルを上げる必要があると思いますが、そのためには、観光関連団体への支援充実と、新しい観光振興に乗り出す団体をふやす取り組みも必要だと考えます。
 都として、それぞれの地域での観光振興をどのようにサポートする考えであるかを伺います。
 次に、多言語対応の取り組みについて伺います。
 昨年度の訪日外国人旅行者は初めて二千万人を突破しました。また、昨年、東京を訪れた外国人旅行者数も過去最高の一千百八十九万人となりました。
 都はこれまで、多言語対応の一環として、新宿駅の案内サインの改善策をまとめるなどしてきました。こうした多言語化は、訪日外国人だけでなく、在住の外国人の利便性向上にもつながると思うのです。
 二〇一九年にはラグビーワールドカップが行われ、二〇二〇年にはオリンピック・パラリンピック東京大会が開催されます。今以上に多くの外国人が日本に訪れます。
 多摩地域においては、東京スタジアムがラグビーワールドカップ及びオリンピック・パラリンピック東京大会の会場となり、多くの外国人が訪れることが予想されます。
 多摩地域における多言語対応の取り組みを加速させるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、火山対策について伺います。
 平成二十八年熊本地震は、首都直下型地震の発生が懸念される東京にとって、災害のリスクを再認識する機会となりました。東京は地震以外にも火山への備えが必要な地域です。
 特に島しょ地域には、日本にある百十の活火山のうち二十一の活火山があります。現に、伊豆大島、三宅島では、過去にたびたび噴火災害に見舞われており、直近の噴火から大島では三十年、三宅島では十六年が経過するため、次の噴火に備え早急な対策が求められます。
 そこで、都の火山防災対策について見解を伺います。
 さらに、今回、公立大学法人としての中期目標が示された首都大学東京が火山災害対策の研究に新たに取り組み、専門的知見を活用して都の施策に反映させるという貢献が考えられると思いますが、所見を伺います。
 また、島しょ地域において、住民の命、財産を守るためには、火山噴火以外にも、南海トラフ地震を想定した津波など、あらゆる災害に備えることが必要です。とりわけ、地域住民が協力して迅速に避難するためには、自助、共助の要素を盛り込んだ防災訓練を行う必要があります。
 そこで、島しょ地域での防災訓練について伺います。
 島しょ部における火山噴火の懸念に加え、富士山についても、一たび噴火すれば首都圏に大きな影響を及ぼすといわれております。
 直近の大噴火である江戸時代の宝永噴火では、江戸に数センチの火山灰が降ったと見られており、降灰への対策は重要な課題です。
 そこで、都の富士山の降灰対策について伺います。
 次に、障害者雇用について伺います。
 私は、さきの予算特別委員会において、障害者のジョブコーチ制度などについて質問をいたしました。
 誰もが輝く一億総活躍社会の実現のためには、障害のある方が、その障害の特性に応じた働き方や仕事について、やりがいや生きがいを感じながら、職場で活躍できる社会にしていくことが重要だと思います。
 企業側が、障害者雇用について必要な理解をした上で受け入れることはもちろん、障害者自身も、企業での働き方についてしっかりと準備をした上で就業を開始することが重要です。
 そのためには、企業での職場体験を行うことが効果的ではないでしょうか。職場体験の機会を充実すべきと考えますが、都の所見を伺います。
 最後に申し上げます。
 東京は、いつ火山や地震などの災害に見舞われるかわからない状況なのであります。これ以上、都政を停滞させることはできません。
 都民を初め、議会が怒っているのは、都知事の政治資金への認識が一般常識とは大きく異なっていることであり、しかるに、都政に対する認識も大きくかけ離れているということであります。
 都知事のいうところの第三者からの説明を聞いて、さらに大きくかけ離れているということが明確になりました。あなたのいう第三者というのは、あなたを守るための盾でしかないんです。
 都知事には、この日本全国で吹く大風を認識して、早急に結論を出していただきたいと思います。あなたは政治家じゃないですか。政治家だったら、出処進退でしょう。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 木村基成議員の一般質問にお答えをいたします。
 信用失墜が都政運営へ及ぼす影響と事態の収拾についてご質問がございました。
 都政は、都民の皆様からの信頼や都議会の皆様との真摯な議論を土台に発展していくものでございます。今回の一連の問題や、これまでの私の姿勢によりまして、都民の皆様、都議会の皆様に私の言葉が届かなくなってしまった現状が都政の停滞を招いていることについて、心からおわびを申し上げたいと思います。一連の問題につきまして、今回の調査結果を踏まえまして、しっかりと対応してまいります。
 私の姿勢について、覚悟が感じられないという厳しいご指摘もいただきました。
 千三百六十万人もの都民の生命と財産を守りながら、世界一の都市を目指して都政を前に進めていくために、生まれ変わった気持ちで、一歩一歩理解を得ていきたいと思っております。
 都議会の皆様と再び都政の車の両輪を担い、都民生活の向上に向けて、ともに走り出すことができますよう、地道に努力をしてまいりたいと思っております。
 都知事の言葉のその重みについて、厳しいご指摘がございました。
 湯河原の事務所への公用車使用をめぐりまして、私の発言が多摩にお住まいの多くの都民の皆様に失望と憤りの念を生じさせましたことに対しまして、心からおわびを申し上げたいと思います。
 今回の事態を契機に心を入れかえ、都知事としての言葉の重みをしっかりとかみしめ、みずからの言動を律していきたいと考えております。
 私は、知事就任以来、東京を世界一の都市に押し上げるためには、多摩地域の発展が必要不可欠という姿勢で、観光振興や防災対策を初め、多摩の振興に力を入れて取り組んでまいりました。この思いは今でも変わりません。
 今後は、ご指摘の東京全体への目配りを怠ることなく、魅力にあふれ、夢と希望に満ちた多摩地域の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、多摩地域でのMICE開催についてでございますが、東京の観光振興を図る上で、多摩地域においても、MICEの開催効果を高めていく取り組みは重要でございます。
 都は今年度より、都心での国際会議の後で多摩を観光で訪れ、魅力を感じていただくため、その豊かな自然や伝統のある文化に触れる観光コースのほか、地域ならではの農業や林業を体験するツアーをつくってまいります。
 今後は、多摩でMICEが数多く開催されるよう、会議や宿泊の施設等を確保できるエリアを重点的に支援する拠点に位置づけ、会場周辺のにぎわいづくりや誘致に役立つPR活動等へのサポートを検討いたします。
 こうした取り組みによりまして、MICEを都心のほか多摩にも着実に誘致し、東京への旅行者の増加に結びつけてまいります。
 次に、地域の多様な観光資源の活用についてでございますが、地域のさまざまな観光資源を生かし、旅行者の誘致を進めるため、都はこれまで、東京の区や市が、地元の伝統文化や自然、景観などのテーマを選んで、地域の多様な魅力を生かして行う観光振興の取り組みに対し、必要な経費の一部を助成してまいりました。
 今年度は、自治体に対する支援の規模を昨年度の倍にふやすとともに、都外の他都市との連携を新たにテーマとして加えました。これにより、自治体が協力して行うイベントやアンテナショップの開設などの旅行者誘致の取り組みに結びつけてまいります。これらを通じて、地域の多様な魅力を生かした観光振興の一層の充実を図ってまいります。
 次に、地域の観光関連団体への支援についてでございますが、都内の各地域で、観光関連の団体が新しい知識や人材を確保し、効果の高い事業を進めることや意欲的に旅行者の誘致に取り組む団体をふやしていくことは、東京の観光振興を図る上で重要でございます。
 都は今年度より、観光関連団体の課題の解決に役立つオーダーメードの研修を実施いたします。また、大学の観光学部の学生を観光協会に派遣することで、都政と連携した取り組みなどを対象にノウハウや人材の提供を行ってまいります。これにより作成した計画の実現に要する経費に助成も実施いたします。
 今後は、地域ごとの魅力ある観光資源を開発する上で、活躍が期待できる観光関連団体への支援や新たな団体の設立へのサポートの充実を検討いたします。こうした取り組みにより、都内各地域の観光振興を適切に進めてまいります。
 最後に、障害者の就業支援についてでございますが、障害者雇用を推進するためには、職場体験実習の機会を提供し、企業には障害特性等について、また、障害者には職場での働き方等について理解を促すことが有効でございます。
 そこで都は、職場体験の機会の確保に向け、専任アドバイザーが受け入れ企業を開拓するとともに、面談会を開催し、マッチングを行ってまいりました。あわせて、障害者や企業が安心して実習できるよう、実習生の保険料の補助や実習先企業に対する助成金の支給を行ってまいりました。
 こうした取り組みをさらに進めていくため、今年度は、アドバイザーを増員したところであり、企業開拓や受け入れ準備支援を強化するとともに、面談会の回数をふやし、より多くの職場体験の機会の提供を進めてまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長塩見清仁君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(塩見清仁君) 多摩地域における多言語対応の取り組みについてでございますが、都は、ラグビーワールドカップ二〇一九及び二〇二〇年東京大会に向けて、多言語対応を推進するため、昨年、東京国際フォーラムで、全国の自治体等を対象にフォーラムを開催するなどを通じまして、そのノウハウを提供してまいりました。
 来月には、多摩地域で初めて、府中にある東京自治会館におきまして、都内市区町村及びその関係団体職員を対象にフォーラムを開催いたします。
 今回のフォーラムは、お話にありました訪日外国人への取り組みが在住外国人にも役立つという視点も踏まえまして、観光や公共交通に加え、災害対応や地域の情報提供などもテーマといたしまして、先進事例を紹介するとともに、最新のICTの展示も行ってまいります。こうした取り組みによりまして、多摩地域を初め都内全域で多言語対応を一層推進してまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 災害対策についての四点のご質問にお答えいたします。
 まず、火山防災対策についてでございます。
 都はこれまで、気象庁と連携して火山活動状況の観測を行ってきたほか、伊豆大島、三宅島については、噴火後、降雨時に発生しやすい火山灰の泥流や土石流対策として砂防施設等を整備してまいりました。
 また、昨年十二月、改正活動火山対策特別措置法が施行されたことを受け、本年四月、伊豆諸島の火山ごとに、知事を会長といたします防災協議会を設置し、島しょ地域の実情に沿った避難場所、経路などを盛り込んだ避難計画の策定に向け、協議を行っております。
 伊豆大島、三宅島については今年度中に避難計画の策定を行うほか、八丈島などほかの島についても順次避難計画を策定するため、火山専門家や地元自治体等と精力的に協議を進め、火山防災対策を積極的に推進してまいります。
 次に、首都大学東京の火山災害対策研究についてでございます。
 災害対策を初めとする都の政策課題に、都が設立した大学である首都大学東京が教育研究面から貢献していくことは重要なことでございます。
 これまで大学では、首都直下地震を想定した総合防災対策研究プロジェクトや、都市における局地的集中豪雨に関する研究など、都の施策と連携した取り組みを進めてまいりました。
 ご提案の火山災害対策に関する研究については、減災など都民生活の安全・安心に寄与するものであり、都政の課題の解決に貢献するという第三期中期目標の趣旨に合致するものと考えます。
 今後、この中期目標を受けて法人が作成いたします中期計画に反映できるよう調整をしてまいります。
 次に、島しょ地域での防災訓練についてでございます。
 島しょ地域は、その地域特性から孤立化が懸念されるため、都におきましては、毎年秋に島しょ地域の町村と合同で、自助、共助を重点とする防災訓練を実施しております。
 ことしは、火山噴火に伴う大島町の全島避難から三十周年となる十一月二十一日に、大島町及び利島村と合同で防災訓練を実施いたします。
 具体的には、あらゆる災害を想定し、島民による避難所への避難や、自力での避難が困難な要支援者等の避難誘導などの訓練を実施いたします。また、噴火災害を想定し、船舶を活用した島外避難訓練を行う予定でございます。
 今後とも、災害時に島民による迅速かつ適切な避難行動がとれるよう、地元自治体等と連携した訓練を実施してまいります。
 最後に、富士山の降灰対策についてでございます。
 富士山噴火による降灰は、国の富士山火山広域防災対策基本方針によれば、南関東一円に影響を及ぼすとされ、その対策は都にとって重要な課題と認識しております。
 そのため、都は、平成二十一年に東京都地域防災計画を修正し、富士山降灰対策の項目を設け、区市町村や道路管理者、ライフライン事業者等の役割を明確にいたしました。
 また、噴火の影響が都を越えて広範囲に及ぶことから、都は、九都県市首脳会議を通じて、国に対し対策の指針を示すことなどを要望しております。
 国は、富士山の降灰による大都市の社会インフラ等への影響調査に着手し、今後、対応策について検討するとしており、都といたしましては、関係自治体と連携し、国に引き続き総合的な降灰対策を求めてまいります。

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