平成二十八年東京都議会会議録第九号

○副議長(小磯善彦君) 二十四番島崎義司君。
   〔二十四番島崎義司君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十四番(島崎義司君) 初めに、知事の基本姿勢について伺います。
 中国春秋時代の思想家孔子は、弟子の子貢から、食を足し、兵を足し、民をしてこれを信ぜしむと孔子が示した政治の要諦の中で、最も犠牲にできないものを尋ねられ、民は信なくば立たず、すなわち人々の信義がなければ人間社会が成立しないと答えました。
 調査報告書の一九ページ、新党改革比例区第四支部で平成二十四年に購入した書籍「論語」の一節であり、同年、同支部で購入した「孔子」の言葉であります。
 今回の知事の、自宅を経由した湯河原への公用車使用、公務として行った講演料の処理、家族旅行への政治資金利用などの公私混同問題は、単なる法律問題ではなく、都民の血税の使い方を決める最高責任者としての見識、知事としての資質、ひいては都政への信頼そのものが問われているのであります。
 今、都民が求めているのは、弁護士の法律的解釈ではなく、知事みずからの説明であります。
 昨日からの議会では、知事は謝罪と見直しを繰り返すばかりで、木更津のホテルで面談した人物の名前や時間など、我が党の質問にも全く答えておりません。ここまで説明がなされないと、本当にその元新聞記者の出版社社長なる人物と面談したのか疑われても仕方ありません。
 そこで、改めて、さきに挙げた各種の公私混同問題を含め、知事からの具体的なご説明をいま一度求めると同時に、都民の都政への信頼の現状認識についてご見解を伺います。
 次に、主権者教育等について伺います。
 十八歳からの選挙権適用に伴い、学校における主権者教育と政治的中立のあり方が問題となっております。
 これまで、私の地元の公立中学校で、一昨年、社会科教員から、核兵器はだめだから原発はだめ、戦争になるから集団的自衛権はだめと何回もいっては、感想や考えをプリントに書くようにいわれるとの生徒からの訴えによって発覚した不適切な偏向教育や、昨年九月、埼玉県の公立中学校の教員が、安全保障関連法への反対デモを取り上げた共産党機関紙「赤旗」のコピーと、安倍首相の戦後七十年談話を批判する文書を教室で配布した問題など、学校現場では政治的な中立性が疑われる事案が全国的に散見されております。
 都立学校はもちろん、都内の区市町村立小中学校の教員も教育公務員であり、教員の偏向的政治思想が児童生徒に悪影響を与えることがあってはなりません。
 そこで、小中学校を初め、全ての公立学校の教育活動全体において、主権者教育を含め、政治的中立性がしっかりと守られるよう指導していくべきと考えますが、都教育委員会の見解と取り組みを伺います。
 次に、教科書採択について伺います。
 本年三月末、文部科学省は、教員等による教科書発行者との不適切な接触及び教科書採択にかかわる不適切な対応の状況を発表しましたが、東京都は、全国の自治体の中で三番目に関与した教員等が多かったと聞きました。
 同問題は、本来、閲覧ができない検定中の教科書を教科書発行者から見せられ、意見を述べることで金銭や物品を受領したというもので、これは、教科書発行者が、自社の教科書をできるだけ多くの地区で採択してもらおうという意図から生じた行為とするのが社会的な見方であり、公正に行われるべき教科書の採択に影響しかねない重大な事件であります。
 この事態を都教育委員会は重く受けとめ、全力で再発防止に努める必要があります。
 そこで、今回の事態の都における状況と、これまでの対応及び今後の対策について伺います。
 次に、救急医療について伺います。
 平成十七年をピークに減少傾向にあった都の救急搬送件数は、平成二十二年から再び増加に転じ、平成二十七年には過去最高の六十七万三千件を記録、平成二十一年からの六年間で約九万一千件増加しております。
 中でも、高齢者の搬送件数は大きく伸びており、増加した九万一千件のうち、九割以上は六十五歳以上で占められております。今後、医療を必要とする割合が高い後期高齢者が平成三十七年にかけて大幅に増加し、約百九十八万人に達することが見込まれており、今後一層、救急需要は逼迫することが予想されております。
 一方で、救急患者を受け入れる救急告示医療機関は、平成二十一年から三百三十施設前後で推移しております。
 そこで、今後一層の増加が見込まれる救急搬送を確実かつ迅速に受けとめるため、入院患者を受け入れる二次救急医療体制の充実を図る必要があると考えますが、都の取り組みを伺います。
 私の地元である武蔵野市では、長年救急医療に尽力していた病院が平成二十六年十一月に病床を閉鎖したため、一時的にではありますが、救急患者の選定先がなかなか決まらず、他の医療圏に搬送される患者が増加した時期があったと聞いております。
 このように、救急告示医療機関が、医師や看護師の確保が困難などの理由により廃止することは、都内各地で見られることであります。
 このような中、都の保健医療計画にある、いつでも、どこでも、誰でも、その症状に応じた適切な医療が受けられる救急医療体制を確保するためには、それぞれの地域において、救急患者の搬送状況や医療機関の体制変化などの情報共有を図り、関係機関との連携を進めることが必要であると考えます。
 そこで、二次救急医療機関を中心とした地域のネットワークづくりのために、どのように取り組みを進めるのか、都の見解を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 これまで水道局は、生活に欠かせない重要なインフラとして、将来にわたり都民に安全でおいしい高品質な水を安定して供給できるよう取り組み、利根川水系については、既に一〇〇%高度浄水施設となっております。
 多摩地域でも、東村山浄水場の更新に伴い低下する施設能力相当の代替浄水施設として、私の地元の境浄水場の再構築計画を進めており、新施設は、高度浄水施設になるとも聞いております。
 この大規模な事業に対しては、地元の関心が高く、私もこれまで、市議会の自由民主・市民クラブなど、市議団と都水道局との話し合いや要望の場をつくってきましたが、ほかにも市民からさまざまな意見が寄せられていると聞いております。
 この事業を円滑に推進していくためには、地域の協力が不可欠であります。境浄水場再構築により、長年なれ親しんだ風景や環境が大きく変わることから、地域住民の意見を反映させ、地元にも貢献できる施設として整備することが必要と考えます。
 そこで、都水道局は、再構築に当たり、地域へどのように配慮していくのか伺います。
 次に、観光の一大産業化について伺います。
 東京を訪れる外国人旅行者の数は、引き続き伸びております。少子高齢化によって人口減少が進む中、こうした旅行者による旺盛な消費をしっかりと取り込んで、東京の産業の活性化に確実につなげていくことが重要であります。
 私も、地元の商工会議所などで直接お話を伺ったところ、今後のインバウンド市場の拡大を見据えて、Wi-Fiの整備やクレジット決済機器の導入、外国語でのコミュニケーションツールの充実などに取り組もうとする動きが出ております。
 一方で、その実現に向けた資金や人材が十分ではなく、都内では事業化に至らないことも多いと聞いております。
 都では、観光産業を大きく発展させていくため、企業経営の視点から、観光に関連する事業者へのサポートを今年度から展開するとしております。観光面の知識やノウハウを蓄えることで、個々の企業が力をつけ、これからの東京の経済活動の担い手としての役割を果たすことが期待されております。
 都として、観光関連の産業を発展させるためにどのような考え方で対応を進めるのか、所見を伺います。
 次に、多摩地域の観光振興について伺います。
 本年四月、新宿駅南口の高速バスターミナル、バスタ新宿に、都の観光情報センターがオープンしました。都心部の観光情報発信拠点として、国内外の多くの方々の利用が期待されていますが、東京の観光資源は多摩地域にも多く存在しております。
 多摩において、地域のさまざまな観光スポットを外国からの観光客に案内するため、観光情報センター機能を整備し、多摩地域の観光振興の起爆剤にすべきと考えますが、都の所見を伺います。
 さらに、多摩地域における観光振興には、交通手段の改善も欠かせません。多摩地域は広く、旅行地として訪問する場所同士が離れている場合が多いため、交通手段が整っていないと、限られた時間でスムーズに観光を行うことにも限界があります。
 特に多摩地域は、東西方向の交通の移動は円滑でも、南北方向の交通の利便性には課題があります。
 例えば、来年完成予定の武蔵野の森総合スポーツ施設は、イベントでの活用も期待されておりますが、武蔵野市のような北側から施設までのアクセスは、充実しているとはいえません。
 第一義的には、多摩地域の公共交通網を充実させることが求められますが、観光地をめぐる場合の交通事情などを考えると、観光スポット間を快適に結びつけることのできる動力つきレンタル自転車の活用を進めていくことも効果的との意見があります。
 こうした考え方を踏まえて、多摩における観光振興に当たり、交通手段の改善に向けた取り組みをより充実させるべきと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、動物園について伺います。
 先月二十六日、日本最高齢のアジアゾウ、はな子が、武蔵野市内の井の頭自然文化園で静かに息を引き取りました。都立井の頭恩賜公園百周年を来年五月に控え、吉祥寺観光の象徴的存在でもあったはな子を失ったことは大きな痛手であります。
 都は、園の象徴的存在の必要性と公園百周年という歴史的意義を踏まえ、地元の声を聞きつつ、今後の対応を急ぐべきと考えますが、都の見解を伺い、私からの質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 島崎義司議員の一般質問にお答えいたします。
 具体的な説明と都政への信頼についてご質問がございました。
 一連の問題に対します具体的な説明につきましては、一昨日、弁護士による調査結果をご報告したところでございます。この結果を踏まえまして、問題点にしっかりと対応していくことで、都民の皆様、都議会の皆様のご理解を得ていきたいと考えております。
 そして、そうした一歩一歩の積み重ねを信頼の回復につなげていきたいと思っております。
 まさにおっしゃられましたように、民は信なくば立たずでありまして、都民の皆様の信頼なくしては、私は知事として都政を前に進めることはできないと考えております。
 私の問題のために都政が停滞し、都政への信用は失墜をいたしております。都議会の皆様や職員に対して、まことに申しわけなく思っております。一日も早く信頼を取り戻せるよう、危機感を持って説明責任を果たしていきたいと考えております。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、公正、中立を確保した教育活動についてでございますが、児童生徒に、現実社会の諸問題について、多面的、多角的に考察し、公正に判断する力を身につけさせることは極めて重要であります。
 そのためには、教員が児童生徒に対して公正、中立な立場に立って指導するよう十分注意する必要があることから、都教育委員会は、都立高校の管理職等を対象に説明会を行うなど、さまざまな取り組みを行ってきております。
 今後とも、全ての教育活動において、さまざまな立場の意見や考え方に基づく資料を示すなど、政治的中立性を確保した適切な指導が行われるよう、教材や指導内容の取り扱いについて改めて通知いたします。
 また、学校や区市町村教育委員会と連携して、その趣旨を全教員に徹底し、各学校における教育活動の適正な実施を確保してまいります。
 次に、教科書採択に係る教員等と発行者との不適切な接触等についてでございますが、関係した校長や教員は、都内公立小中学校で延べ四百二人であり、そのうち、退職者を除く三百五人に事実確認を行い、二百三十八人を懲戒処分等といたしました。
 教科書採択は、その過程において公正性、透明性が確保されなければならず、都教育委員会は、今回の事態を重く受けとめ、区市町村教育委員会に対し服務の厳正について通知したところでございます。
 今後、さらに都立学校の教員等が遵守すべきガイドラインをよりわかりやすい内容に見直すなどして、教員等に周知徹底するとともに、区市町村教育委員会に対しても、都に準じて対応するよう強く働きかけてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、二次救急医療体制の充実についてでありますが、都は現在、救急患者を迅速に救急医療機関に搬送するため、救急医療の東京ルールを定め、搬送先の選定が困難な患者の受け入れ調整を行う地域救急医療センターの指定やコーディネーターの配置を行っております。
 また、入院が必要な救急患者のための空床を確保する休日・全夜間診療事業を実施しており、昨年一月には、救急搬送の受け入れ実績等をより評価する仕組みに再構築いたしました。
 こうした取り組みにより、三年連続で救急隊の要請に対する受け入れ率が向上し、救急搬送時間が短縮しております。
 今年度からは、医師や看護師の負担を軽減するため、救急隊からの連絡対応などの業務を補助する人材を医療機関に配置するモデル事業を実施することとしておりまして、今後とも、二次救急医療体制の充実を図ってまいります。
 次に、地域の救急医療のネットワークづくりについてでありますが、都におきましては、救急医療機関がそれぞれの専門性や特色を生かしながら救急患者を速やかに受け入れられるよう、二次保健医療圏ごとに、全ての二次救急医療機関、消防、警察、区市町村、精神科医療機関等が参加する地域救急会議を設置しております。
 この会議では、地域の特性や医療資源の状況等の情報を共有した上で、各圏域が抱える課題の対応策を検討しており、整形外科疾患や精神身体合併症など、搬送先の選定が困難になりやすい救急患者の受け入れが圏域内で進むよう、地域の実情に合った体制づくりを進めております。
 都は今後とも、地域における救急医療のネットワークづくりが一層進むよう、関係機関の連携体制の構築を支援してまいります。
   〔水道局長醍醐勇司君登壇〕

○水道局長(醍醐勇司君) 境浄水場の再構築事業についてでありますが、本事業は、浄水施設の規模拡大により、周辺環境への影響が想定されることから、事業の円滑な推進には、地元の理解を得ることが大変重要であると認識をしております。
 そのため、これまでも武蔵野市などとの連携のもと、地元からの要請にも応じて、事業の必要性や施設の配置等につきまして丁寧に説明を重ねてまいりました。
 再構築に当たりましては、災害時給水ステーションの整備などを検討するとともに、武蔵野市へ分水している管路に送水管を接続し、非常時に境浄水場から送水することで、事実上、武蔵野市への分水のバックアップを可能にいたします。
 今後も、こうした地元へのメリット等につきまして、きめ細かく説明を行うとともに、住民の皆様のご意見を踏まえながら、境浄水場の再構築を着実に推進してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、観光産業の振興についてでございますが、都内の観光事業者が東京の産業の重要な担い手として発展するためには、経営の視点からサービス提供を含むマネジメントの力を高めることが必要でございます。
 このため、都は今年度から、経営力の強化に向け、外国人旅行者に良質なサービスを提供するためのセミナーの開催や専門家の派遣のほか、コールセンターによるサポートの拡充などにより、受け入れ体制の充実を後押しいたします。
 今後は、企業のサービスレベルを高めるマーケティングの支援や実践的な技能を持つ人材育成のサポートを検討いたします。また、最新のICT技術により、企業の生産性向上を図り、新たな事業の展開を行う取り組みへの支援も検討いたします。
 これにより、事業者の経営の力を高め、東京の観光産業の発展に結びつけてまいります。
 次に、多摩地域の観光案内についてでございますが、外国人旅行者が多摩を訪れる機会をふやすため、地域の魅力ある自然や伝統的な文化など、観光に役立つ情報を提供することは効果的でございます。
 これまで都は、海外からの旅行者を多摩に誘致するため、その主要な観光スポットを多言語のウエブサイトやパンフレットにより紹介をしてまいりました。また、各地域の外国語での観光案内の説明表示の整備を支援してまいりました。
 今後は、多摩への観光客の誘致を効果的に進める上で、多摩地域のきめ細かい観光情報を幅広く集め、その提供ができる取り組みの充実を目指してまいります。そのため、多摩地域に観光情報センターの機能を持つ拠点の整備を検討いたします。
 こうした取り組みにより、外国人観光客の多摩地域への誘致を適切に進めてまいります。
 最後に、多摩地域の観光面での交通手段についてでございますが、東京の観光振興を進める上で、多摩地域の魅力ある観光スポットを効果的にめぐる仕組みづくりは重要でございます。
 このため、都は今年度、多摩地域のさまざまな観光スポットをバスやタクシーで円滑に移動するためのモニターツアーを実施いたします。
 また、観光地の間を起伏に富むコースを通って移動することが多い西多摩のエリアで、自治体や観光協会が旅行者向けに提供する電動アシスト自転車を購入する際に、経費の一部を助成いたします。
 今後は、西多摩以外の地域で、バスやタクシーに加え、自転車を有効に活用して観光地を結ぶ方法について研究を行い、施策の充実を検討してまいります。
 これにより、多摩の魅力を生かした観光振興を着実に進めてまいります。
   〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 井の頭自然文化園の今後の対応についてでございますが、井の頭自然文化園は、ニホンリスなど身近な動物の展示や触れ合いを通じて、自然を学び、豊かな感性を育むことができる動物園でございます。
 戦後初めて来日し、国内最高齢の六十九歳で永眠したアジアゾウのはな子は、子供からお年寄りまで多くの人々に愛され、わずか十日余りで献花は四千を超えております。このような多くの都民の皆様の思いに応えるため、はな子が来日した九月にお別れ会の開催を予定しております。
 また、来年は、井の頭恩賜公園が開園百周年を迎える年でもあり、園の新たな魅力の創出につきまして、地元市等の意見もお聞きしながら、鋭意検討を進めてまいります。
 今後も、地域に愛され、動物を守る心を育む動物園を目指して取り組んでまいります。

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