平成二十八年東京都議会会議録第九号

○副議長(小磯善彦君) 七番堀宏道君。
   〔七番堀宏道君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○七番(堀宏道君) 初めに、知事の基本姿勢についてお伺いをいたします。
 昨日の我が党の代表質問でもありましたが、舛添知事就任当時、我々自民党は、東京を世界で一番の都市へという同じ目標を掲げ、ともに歩んでいけるものと考えておりました。
 しかし、知事は、徐々に議会との意思疎通をおろそかにし、時間の経過とともに、我々議会をないがしろにしてまいりました。
 我が党は、早くも平成二十六年第三回定例会の代表質問で、知事のスタンスに懸念を示しております。その後の、都市外交に過度に固執した都政運営、新国立競技場への対応、我々はそのたびにくぎを刺してまいりましたが、知事は全く聞く耳を持たず、大名行列ともいわれる高額海外出張批判などは、まさにその心配が現実のものとなったものであります。起こるべくして起こった知事のおごりそのものであります。
 知事は、これまでも何度も車の両輪という言葉を用い、一見、議会との連携を装ってきました。しかし、実際には、我々の言葉に真摯に向き合ってなどいません。我々が苦言を呈すれば反省の念を込めますが、しばらくすると、また苦言を呈さなければならなくなる。今回もまたしかりであります。いえ、もしかすると、今回が苦言を呈する最後の機会になるかもしれません。
 今回の一連の報道や調査結果には強い怒りが込み上げてまいりますし、失望感しかありません。
 一連の知事の裏切り行為は、私ども以上に都民の怒りを増幅させております。都民は、もはやあなたを信用などしていません。これまでの議会と知事の関係に対する思いや反省を込め、知事が考える二元代表制の意義と今置かれている停滞した都政の現状について、知事はどのように責任ある立場として考えているのか、見解をお伺いいたします。
 最後に、知事が引き合いに出される著名な方の格言を送ります。
 おのれを利するは私、民を利するは公、公なる者は栄えて、私なる者は滅ぶ。
 改めて、知事、賢明なご判断をご自身に下していただきたい。
 これから本来の質問に入りますが、知事への答弁は求めません。
 まず、観光施策について東京らしい目線で取り上げていきたいと思います。
 まず、インフラツーリズムについてお伺いいたします。
 さきの定例会での我が党の代表質問にもございましたが、東京には魅力あふれる観光資源がたくさん眠っております。その一つに東京の発展に不可欠な存在であり、首都東京の屋台骨を支えているインフラがあります。構造物の壮大さや、技術の粋を結集した人間の英知が詰まっており、どうしたらこんなすごいものができるのか、なぜ、このインフラが必要なのか、どんな歴史をたどったのかなど、たくさんの興味に引かれます。
 代表的なものといえば、ダムであり、橋梁であり、道路などですが、そのほかにも、地下鉄や高層ビル、下水道施設などなど、身近にあっても改めて見ることのない、東京のインフラの別の一面に光を当て、東京の魅力をさらに引き出す取り組みを促進すべきであります。
 NHKの番組にブラタモリという番組がありますが、インフラツーリズムやバックヤードツーリズムのはしりといってよい番組だと思います。番組の視聴率はすこぶる高く、それぞれの地域の特性や魅力を、歴史をひもときながら紹介する番組で、人間の持つ知的好奇心をかき立てる構成となっており、参考の一例として捉えてもよろしいかと思います。
 昨年、自民党の都議団有志で、群馬県のダム群の視察をしてまいりましたが、三つのダムとも形状が違う構造となっており、地域の形状や特性、またコストの問題など、それぞれの役割があることを初めて知りました。また、ダムマニアなるダムの魅力に魅了された人たちも数多く訪れており、放水の様子をカメラにおさめたり、ダムカードなるご当地ならではのトレーディングカードを収集したりと、楽しみ方はたくさんあるなと実感いたしました。
 また、飲食店にはダムカレーがお店の売りとなっていて、B級グルメとして大事な観光資源となっていました。
 これらの事例に学び、都内各地域のインフラツーリズムとしてアピールすれば、おもしろい展開が期待できると思います。
 東京都としては、地元の各自治体と連携しながら、インフラツーリズムやバックヤードツーリズムを後押しする施策を展開すべきと考えますが、都の見解をお聞かせください。
 次に、自然公園についてお伺いします。
 我が党の提案を受け、今年度、都は自然公園ビジョンを策定しますが、それに向け、先日、自然公園あり方懇談会が開催されました。多様な分野の有識者が出席し、活発な意見交換会が行われたようです。これを機会に、私も先日、多摩地域に広がる自然公園を改めて視察してまいりました。最初に、御岳山に登り、その後、小河内ダムや檜原村の山里の風景などを確認し、美しい景色や爽やかな空気を一日がかりで堪能してまいりました。
 すぐ近くに、これほどすばらしい自然が広がっているにもかかわらず、私の地元の人々に聞いてみても、自然公園に出かけたことのある人はほとんどいません。なぜなのかを考えると、その主な要因は都のPR不足であると考えます。
 自然公園のホームページを確認しましたが、区域や制度などの紹介が中心の行政目線そのものに思えました。さきの有識者懇談会でも、委員から、いかにもお役所がやっていますという感じのものだという指摘があったと聞いております。直接ビジュアルに訴える内容にするなど、見た人が自然公園に行ってみたいと思うようなサイトに改めるべきであります。
 その効果により、生の自然を体験することで感動がさらに深まれば、東京の豊かな自然の存在は、より多くの人に伝わっていくことでありましょう。そして、それは観光振興や地域振興にもつながるものになるはずです。
 自然公園に関するホームページを初めとした広報には、まだまだ工夫の余地が多分にあると思いますが、見解をお伺いいたします。
 さて、実際に小河内ダムを目の当たりにし、その水を育む周りの山々を眺めたときに、自然の恵みを改めて実感し、子供たちにも、この豊かな自然を味わわせたいと思いました。机上ではなく、実際の自然に触れて学ぶことは、とても重要であります。自然と触れ合う機会の少ない子供たちが、自然とのつき合い方や、その地域の文化にも興味を持つことにつながれば、すばらしいと思います。
 ビジターセンターや山のふるさと村等もあるのですから、こうした施設をもっと有効に活用し、子供たちが都内で自然環境について学べる機会を拡充すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、民泊問題の課題解決への取り組みと旅館の活性化についてお伺いをいたします。
 東京を訪れる外国人旅行者の数が急速にふえる中、多くのホテルでは受け入れの余力が少なくなり、宿泊場所をどう確保するかが都内観光の重要な課題となっております。国の方針も、今後さらに、今の倍の訪日外国人旅行者を想定しており、待ったなしの状況になってまいりました。
 こうした中で、ホテルや旅館として正式な許可がないまま、旅行者に宿泊場所を提供する民泊の動きは、確実に広がりを見せています。実際に私たちが暮らす地域の中でも、見知らぬ外国人が旅行者風の装いで頻繁に出入りする一軒家やマンションがふえている様子を肌身で感じて、不安を持ちます。
 特に、分譲マンションのような集合住宅では、一つの建物スペースの中に数多くの住人が住んでおり、その一部が民泊の場所として提供されると、昼間の出入りの物音に限らず、ごみ出しのルールが守れないことや、夜中まで大声で周囲に配慮もなく騒ぐ状況について、旅行者とマンション住人との間でトラブルが数多く発生するとの話も出ています。
 マンションの住人以外の不特定の外国人が出入りすることで、住民の間にも日々の生活への不安感が高まり、マンションそのもののステータスや資産価値も損なわれるとの意見も耳にします。
 マンションによっては、管理組合が民泊の場所として利用することを禁止する規約改正を始める動きも出ていますが、どのような規約にすれば民泊やそのトラブルに歯どめをかけることができるかは、まだ模索する段階であるかと思います。
 そこで都は、民泊が行われることで、マンションの住民生活を脅かすことがないように、マンションにおける対応を検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、旅館の活性化、有効活用についてであります。
 東京における宿泊施設の客室稼働率は、ホテルが約八割であるのに対し、旅館は六割にとどまっております。さきに述べましたように、訪日外国人の需要を取り込む上で、こうした旅館の有効活用を図り、同時に活性化を図るべきと考えます。訪日外国人の目的は、日本の文化に触れたい、日本の文化を学びたいという方々がたくさん訪れます。旅館には、和のたたずまいを残す建築物であったり、趣のある玄関であったり、畳敷きの和室や掛け軸、そして浴衣であったり、日本の文化が集約された施設といっても過言ではありません。また、すぐれたおもてなしの場でもあります。
 都では、我が党の提案を受けて、都内の旅館での外国人対応を図る取り組みを進めておりますが、より根本的なサポートのあり方を高めるための検討が必要になると考えております。
 東京の旅館が経営の観点から外国人を大いに受け入れる環境整備を整え、旺盛な観光需要の受け入れと、日本と東京の文化発信の拠点として地域の観光の核となる役割を果たし、サービスの向上と効率的な事業運営が両立できる体制づくりを進めることが重要です。
 今後、都として、旅館のさらなる活性化に向けて、より一層のサポート体制の充実に取り組むべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、井戸水利用に伴う公共下水道の不正使用についてお伺いいたします。
 先日、地元の大手企業が下水道局が設置した時間計と井戸ポンプをつなぐ配線上にブレーカーを設置し、これを操作することで、井戸の水量を実際より少なく偽り、平成三年八月から下水道料金の支払いを不正に免れていたことが発覚いたしました。
 これを受けて、下水道局は、過少納付分及び過料として平成三年から納付を申し入れ、全額と過料まで徴収することができました。
 しかし、地方自治法には金銭債権の消滅時効は五年となっており、本来であれば、五年前以前にこうむった損害については、訴訟となる可能性もありました。今回は、事業者が不正使用を深く反省し、支払いに応じましたが、今後、このようなことが二度と起こらないように対策を講じていくことが必要であると考えます。
 このことを教訓に、都内の施設の全件調査を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 また、今回の事件は、下水道料金の問題だけでなく、地下水の適切な使用という観点からも問題であります。都内では、地盤沈下防止のため、地下水の揚水規制が行われていますが、事業者の不正な揚水が見過ごされてしまうことになれば、規制があっても有名無実なものになってしまいます。
 そこで、環境局は、今回の事業者に対して、どのような対応を行ったのか、また今後同様の事例が広がり、地下水の不正な揚水がなされないよう、規制の適切な運用をどのように確保するのかについて、見解をお伺いいたします。
 以上をもちまして、私の一般質問を終わります。ご清聴、まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 堀宏道議員の一般質問にお答えをいたします。
 二元代表制の意義と都政の現状についてご質問がございました。
 この二年四カ月の間、都議会の皆様とさまざまな議論を交わす中で、東京の発展や都民生活の向上のためには、都民の代表であります都議会の皆様との丁寧かつ率直な議論の積み重ねが何よりも大切だということは常に実感しておりました。
 長期ビジョンなど都政の重要な方針策定に当たりましては、貴重な提言をいただきました。また、私の行動に疑問がある場合は、率直な苦言を呈していただきました。今振り返りますると、こうした苦言、提言は、私が都政を前に進める中で大変重要なものでございました。
 それにもかかわらず、皆様方に意思疎通がおろそかだと評価いただいたことは、まさに私の不徳のいたすところでありまして、心からおわびを申し上げたいと思います。
 今回が苦言を呈する最後の機会という極めて厳しい言葉の重みを胸に刻み込みまして、今後の都政運営に臨みたいと思っております。
 議会と知事が車の両輪である以上、私の問題により都政を停滞させることは、都民の皆様に多大なご迷惑をおかけしていることだと認識をしてございます。一日も早く都民の皆様、都議会の皆様の信頼を取り戻すため、誠心誠意、都政に向き合っていきたいと考えております。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、公共インフラを活用した観光振興についてでございますが、都民の生活や企業の活動を支える役割や機能を持つ公共インフラは重要な観光資源であり、これを活用し、効果的な旅行者誘致を進めることは重要でございます。
 このため、都は今年度より、地域の公共インフラを観光面で生かすアイデアを民間のノウハウで実現するための支援を強化しております。
 現在は、橋梁や港湾施設のインフラを対象とするツアーや多摩川の上流のダムや発電施設をめぐるルートをつくる取り組みを進めております。
 今後は、地元の自治体とも協力し、旅行者の訪れるインフラの種類やルートをふやすための工夫を行うなど、取り組みの一層の充実を検討いたします。これにより、公共インフラを活用した観光振興の効果を着実に高めてまいります。
 次に、東京の旅館の経営活性化についてでございますが、東京へのさらなる外国人旅行者の誘致を図る上で、都内の旅館の受け入れの力を高めて、良質なサービスを提供することは重要でございます。
 このため、都は今年度から、旅館における外国人旅行者の円滑な受け入れに向けて、専門家の派遣や館内表示の多言語化の支援を実施いたします。また、トイレの洋式化等の設備改善やホームページによる情報発信の支援も行ってまいります。
 今後は、旅館が地域と連携して外国人旅行者にすぐれたサービスを提供するための助言や実現に向けたサポートを検討いたします。また、旅館の業務の生産性を高めるICT機器等の設備導入や東京の旅館をブランドとして発信する取り組みへの支援も検討してまいります。これらによりまして、旅館の活性化を通じた観光振興を着実に進めてまいります。
   〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 三点のご質問についてお答えいたします。
 まず、自然公園に関する広報についてでございますが、多摩・島しょに広がる自然公園に多くの人々に訪れてもらうためには、まずその魅力を強く都民にアピールし、関心を持ってもらうことが重要でございます。
 都はこれまでも、制度の概要や催し物の紹介等を中心にパンフレットやホームページによる広報を実施してまいりましたが、これをさらに拡充していくことが必要と考えております。
 このため、より多くの人に自然公園やその周辺を訪れてみたいと思ってもらえるよう、季節の花々や生き物、風景等、人々の関心を引く魅力的な画像の掲載等、ホームページの充実等に努めてまいります。
 さらに、今後、自然公園ビジョンの策定を進める中で、国内外の多くの人々を呼び込む戦略的な広報のあり方を検討してまいります。
 次に、子供たちが自然を学べる機会の拡充についてでございますが、都は、自然公園を訪れた人々が自然を理解し、その恵みを享受してもらうために、ビジターセンター等の拠点施設を設置し、都民が自然を学ぶ場として活用してまいりました。
 しかし、その利用者層は、もとから自然に興味がある人やその子供たちに偏りがちといった課題も見られます。そこで、教育関係機関や地元自治体等と連携し、日ごろ、自然に触れ合うことの少ない子供向けの魅力ある新たなプログラムを企画、開発することにより、これまで自然に興味がなかった層の参加を促すなど、これらの施設を有効に活用してまいります。
 こうした取り組みを進めることで、より多くの子供たちが自然についても深く学べる機会を拡充してまいります。
 最後に、揚水規制の適切な運用についてでございます。
 下水道料金を不正に免れた今回の事業者に対しましては、環境局としても、規制事務を所管する豊島区と連携して、速やかに立入調査を実施いたしました。その結果、いわゆるビル用水法で禁じられている用途の一つであるトイレ等への地下水使用を可能とする設備が設置されていたことが判明いたしました。
 このため、事業者に対して直ちに是正を講じるよう指導し、事業者は指導に従い、工事を行ったところでございます。
 また、今回の事案を受け、揚水規制の遵守が確保されるよう、下水道局とも連携いたしまして、井戸を使用する事業者を対象に、不正な揚水がないか調査を実施しているところでございます。
 今後、規制に関するチラシを改めて配布するなど周知を徹底するほか、関係各局や区市との情報交換を強化するなど、規制のより適切な運用を確保してまいります。
   〔都市整備局長邊見隆士君登壇〕

○都市整備局長(邊見隆士君) マンションにおける民泊についてでございますが、外国人旅行者が増加する中、民泊における騒音など、利用者のマナーをめぐる住民とのトラブル防止は重要でございます。
 国は、民泊について実態が先行していることから、規制改革実施計画において、住宅を活用した宿泊サービスに関し、旅館業法とは別に、利用者の騒音や苦情への対応も含めた新たな法整備に取り組むことを示してございます。
 都としては、国の動向等を踏まえつつ、マンションの所有者や管理組合等が適正に管理を行えるよう、マンション管理ガイドラインへの民泊に関する内容の反映やその周知、セミナー等でのトラブル防止に関する注意喚起を行うなど、適切に対応してまいります。
   〔下水道局長石原清次君登壇〕

○下水道局長(石原清次君) 井戸水利用に伴う公共下水道の不正使用についてでございますが、本件は、井戸ポンプの揚水能力が高いにもかかわらず、使用水量を少量に偽っていたものでございます。
 そこで、まず緊急調査といたしまして、井戸ポンプの揚水能力が高くかつ使用水量が少量の事業用の井戸四十二件を対象に、平成二十八年三月から施設の立入調査を実施いたしました。その結果、四十一件につきましては不正使用がないことを確認しております。残る一件につきましては、不正な設備等がないことは確認済みでございますが、夏季限定で使用する井戸であるということでございまして、井戸使用時に改めて動作確認を行うことといたしております。
 今後は、事業用として使用している全ての井戸約五千件を対象に調査を実施いたします。その結果を踏まえ、今後も不正使用には厳正に対処いたします。

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