平成二十八年東京都議会会議録第九号

   午後一時開議

○議長(川井しげお君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川井しげお君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川井しげお君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第九号、東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例外条例一件、知事より、東京都監査委員の選任の同意について外人事案件五件がそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(川井しげお君) 昨日に引き続き質問を行います。
 七十番きたしろ勝彦君。
   〔七十番きたしろ勝彦君登壇〕

○七十番(きたしろ勝彦君) まず最初に、昨日の我が党の代表質問において、前代未聞の再質問を行う事態が発生いたしました。知事、この事態を重く受けとめてください。加えて、ひな壇に並ぶ理事者の皆さんの気持ちにも、十分しんしゃくされることを望みます。
 かつて、日本の常識は世界の非常識といわれました。これはまさに、今の知事と都民と議員との認識の違いを投影している言葉であります。
 知事、ノブレスオブリージュ、ご存じだと思います。一千四百万都民の代表であり、十六万職員のトップリーダーです。都のかじ取りを任せられている重責です。そのリーダーとして発信する言葉の大切さは、十分承知されていると思います。
 先日、来日されたオバマ大統領のトップリーダーとして、広島でのスピーチは感動的でした。言葉はみずからの考えを伝える言霊です。影響力があります。一方、知事の答弁、報道に対する発言、同じ場所に立つ者として、そして選挙で応援をした一人として、情けないの一言に尽きます。
 知事としての矜持をお持ちでしょうか。政治は最高の道徳ともいわれます。トップリーダーは高い倫理が求められます。私は、元警視庁警察官です。公のために尽くす公僕としての使命感を持っています。社会正義を今も求めて、みずからを律したいと思っています。
 責任には、法的責任、政治的、道義的責任があります。政治にかかわる人間には、この全ての責任があるわけです。特に、トップリーダーには強く求められるものであります。
 公私混同に対する説明責任を果たすチャンスであった三回にわたる記者会見は、せこいいいわけばかりで、恥ずかしい限りです。知事は、恥ということを知っているんでしょうか。
 かつて、疑惑の総合商社といわれた議員がいましたが、今の知事は、疑惑の総合商店といわざるを得ません。
 自民党は、日本人の心、魂を持った政党です。血も涙もあるグループです。だからこそ、自民党は前日に、説明責任を果たすよう緊急要望をいたしました。それにもかかわらず、一日の所信表明では裏切られた思いであります。一般常識を持つならば、その緊急要望の意味合いがわかったはずです。そして、所信表明の言葉は、この件に関して、知事は罪悪感すら持っていないのだと感じました。
 その結果、火に油を注いだ結果にしかなりませんでした。人間性にも疑問を持たれるようになってしまいました。このことが、オリンピック・パラリンピックに影響があってはなりません。
 私は、都議会議員としてこの十年間、戦後教育の義務なき自由や、履き違えた個人主義の教えにより、行動の基準を善悪ではなく損得に置き、自分さえよければという人々が利己的で刹那的に振る舞う風潮に、警鐘を鳴らし続けてまいりました。
 本来、我々日本人は、勤勉で礼儀正しく、節度をわきまえた、世界に誇る道徳観の持ち主でありました。この日本人のあるべき姿を取り戻すために、私は全身全霊をささげてまいりました。しかるに、このたびの知事の言動は、私が憂えてきた戦後日本人のあしき姿の戯画そのものであります。
 礼儀や節度、公徳心など、世代を超えて継承すべき道徳的価値について、都民の範となるべき知事という立場に鑑みれば、大いなる裏切りです。とりわけ、この国の未来を担う子供たちへの影響ははかり知れません。
 知事は就任時に、万民の上に位する者、おのれを慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を努め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思うようならでは、政令は行われがたしという西郷隆盛の遺訓を、どのような思いで述べられたのか、不思議でなりません。理解できません。
 定例会見で信頼を失ったと表明した一千三百万の都民、十六万の都職員のトップリーダーを悲しく思うのは、私だけではありません。しかるべきときに身を切る覚悟が必要だと思います。
 このことを強く、強く指摘し、トップリーダーとしての道義的責任についてどのように考えているのか、知事の考えをお伺いいたします。
 次に、道徳教育について伺います。
 昨今のいじめ問題や、スマートフォンを介しての人間関係のトラブルなど、社会の基盤である人と人とのかかわりを崩壊させるような出来事が多発していることに、大変な危機感を感じています。
 我が国の長い歴史の中で、私たち日本人は、人間の力を超えたものに対する畏敬の念や、人と人との結びつきの中から学んだ相手への気遣いや礼節など、世界に誇る日本の精神文化を築いてきました。しかし、戦後の教育により、履き違えた個人主義が蔓延し、自分さえよければという風潮が、社会の中であたかも権利のように主張されているように思います。
 改めて、日本が古くから培ってきた価値観の重要性を再認識し、いま一度、日本人としての心を取り戻すための取り組みが必要だと考えます。
 そのため、私はかねてより、人が人として生きる上で大切な道徳性を育成する教育を、学校の教育活動全体の中核として充実させることが不可欠であることを繰り返し主張してきました。
 こうした中で、平成二十七年三月の学習指導要領の一部改正により、特別の教科道徳が新たに位置づけられ、我が国の教育の一つの転換期となったことは、記憶に新しいところです。
 私が十年間かけて主張し続けてきたことがようやく実を結ぶことになり、大変うれしく思っています。今後もますます道徳教育の重要性が増し、その取り組みは注目を浴びることと思います。
 私は、昨年の第二回都議会定例会でも、日本人としての心を取り戻す教育の重要性について述べるとともに、道徳教育の推進について都教育委員会の決意を尋ねました。その際、道徳の教科化に向けて、道徳教育を一層推進していくとの前向きな答弁があり、その後の積極的な取り組みを高く評価しています。こうしたことを契機として、さらなる道徳教育の充実を願っています。
 そこで、小中学校における今後の道徳教育の推進について、都教育委員会の決意と取り組みについてお伺いをいたします。
 続いて、防災教育について伺います。
 四月には、熊本県と大分県を中心とした大地震が発生しました。多くの住宅が倒壊するなど、今も多数の被災者が避難所での生活を余儀なくされています。一日も早い復興のため、我が党としても全力で支援をしてまいりたいと思っています。
 さて、東日本大震災のときに、釜石の奇跡として注目された岩手県の学校では、津波が来たら一人一人がてんでんばらばらになって早く高台に逃げるという先人の教えを、津波てんでんこという言葉で表現し、日ごろから防災教育を重ねてきたことで、多くの子供たちの命が助かりました。
 この事例から、私たちは貴重なことを学びました。東京都においても、子供たちが適切な防災行動を自然に身につけるため、日ごろからわかりやすい言葉や親しめる音楽、身体を使った表現などを取り入れ、子供たちの興味、関心を喚起する防災教育に取り組んでいくことが大切であると考えます。
 特に、幼稚園や小学校低学年の早い段階に基本的な防災行動を繰り返して身につけておくと、中高校生や大人になっても、発災時に自然と体が動くことになります。
 このことは、例えば大地震が起きたとき、より安全な場所への退避や出口の確保、初期消火など、今、何をすることが必要なのか、その時々の状況に応じ、みずからの判断によって身を守る行動につながっていくのではないでしょうか。さらに、こうした防災教育は、園児や児童を通して、家庭にいる保護者への啓発になることも期待できます。
 今後、幼稚園や小学校低学年の早い段階から、安全に身を守る行動について、子供たちが親しみながら学べる防災教育を進めていくべきと考えます。都教育委員会の見解を伺います。
 現在、東京都では、二〇四〇年代の社会を見据えて、都市づくりのグランドデザインの検討が進められているところであり、昨今、動きの出てきた品川駅周辺のまちづくりについて、私の所見を述べます。
 品川駅周辺は、今後、リニア中央新幹線やJR新駅などの整備が進み、日本と世界を結ぶ広域交通結節点として、その役割がますます強まっていきます。一方、都心部とのアクセスは十分といえず、潜在的ニーズがある中、四月に国の答申が出され、都心部・品川地下鉄構想が位置づけられたことは、大変喜ばしいと思っています。今後、周辺のまちづくりに弾みがつくよう、実現に向けて取り組んでもらうことを要望いたします。
 当地域でのまちづくりには、舟運の活性化の視点も欠かせません。臨海部各地と広域的に舟運でつながることで、運河等の水辺を有するまちの魅力はさらに増すと考えられます。
 都民や観光客にとって、舟運が身近な観光や交通の手段となるよう、都は舟運の活性化に引き続き積極的に取り組むとともに、舟運の魅力を広く発信することを求めます。
 また、高輪地区には、古くからの神社仏閣もあり、泉岳寺などには多くの外国人観光客が訪れています。JR車両基地跡地開発や泉岳寺駅前の市街地再開発を行う際は、こうした歴史的資源や崖線の緑などに配慮し、駅と既存のまちの間の交差点周辺に広場を設けるなど、地域とのつながりやにぎわいを創出されることを望みます。
 さらに、環状四号線は、道路予定地の一部になっている高輪議員宿舎跡地について、地元と連携を図りながら地域のまちづくりに寄与するよう、活用方策の検討を進められるよう求めます。
 以上で終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) きたしろ勝彦議員の一般質問にお答えをいたします。
 トップリーダーとしての道義的責任についてご質問がございました。まさにおのれを慎み、品行を正しくした上で、言葉を尽くして、みずからの信念や行動を広く伝え、人々の理解を得ていくことが何よりも重要と考えております。
 厳しいご批判をいただきましたけれども、これは言葉を尽くして説明責任を果たすことができていない現状をあらわしている。真摯に反省をいたしております。
 そして、このご質問は、言葉を尽くせない政治家は身を切るべきだというご指摘であるとして、重く受けとめたいと考えております。
 強くみずからを戒め、しっかりと問題に対応していきたいと思っております。そのことが道義的責任を果たしていく第一歩でもあると考えております。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、小中学校の道徳教育の推進についてでありますが、道徳の教科化に伴い、児童生徒に道徳的価値を自覚させ、実際に行動することができる力を身につけさせるためには、子供たちが主体的に道徳上の問題を発見し、その解決策を話し合う、考える道徳、議論する道徳の授業を実践することが重要でございます。
 そのため、都教育委員会は、道徳教育の核となる指導力のある教員を養成する講座を実施するとともに、道徳の教科化に対応した東京都道徳教育教材集を全国に先駆けて作成するなどの取り組みを推進してまいりました。
 今後、主体的、協働的で深い学びのある道徳の授業の実践事例を示すとともに、全ての区市町村に指定した道徳教育推進拠点校の成果を全都に普及するなどして、道徳教育のより一層の充実に努めてまいります。
 次に、子供が親しみながら学べる防災教育についてでございますが、いつ、どこで起きるかわからない自然災害から身を守るためには、発達段階の早い時期から日常的に防災教育を行うことで、子供たちがみずから考え、判断し、行動する力を身につけさせていくことが極めて重要であります。そのため、都教育委員会では、発災時等にとるべき行動について、子供たちに親しみやすい表現を用い、小学校向けの防災教育教材に掲載するとともに、避難訓練等の機会を通じ、指導の徹底を図ってまいりました。
 今後、こうした取り組みに加え、都教育委員会が指定した安全教育を推進する幼稚園において、園児がなれ親しんだ歌や体操を取り入れ、繰り返し学べる防災行動について研究するとともに、その成果を、都内全ての公立幼稚園と学校の教員を対象とした講習会で普及してまいります。

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