平成二十八年東京都議会会議録第四号

○議長(川井しげお君) 十番やながせ裕文君。
   〔十番やながせ裕文君登壇〕

○十番(やながせ裕文君) 福祉先進都市を実現する。舛添知事の所信表明を頼もしく聞いておりました。
 このチャレンジは都民の誰もが歓迎するものであり、一刻も早い実現を望むものです。保育、子育て、介護、障害者支援など、手厚い予算が組まれ、都民福祉の向上は着実に図られているものと思います。一人一人が活躍できる社会へという知事の基本理念に賛同するものですが、それを実現し、持続していくためには、もっともっと自己改革と経済成長への取り組みが必要だという観点から質問をしていきます。
 まず、財政についてであります。
 知事は、必要なところに必要な予算をつけるといいます。当然なことといえば当然ですが、これでは財政は膨張を続けるばかりです。今後、急速な高齢化で莫大な財政需要の増加が見込まれる中、都税収入の先行きは不透明です。二〇二〇年大会までの基金が七千三百億円、それ以外の基金が一兆一千億円となっていますが、過去一年間で一兆円の税収減を体験した都政において、盤石な基盤とは到底いえないものです。
 これまで、長期の財政計画を策定するべきだ、都債発行額にキャップをはめるべきだという提案をしてきましたが、歳出の膨張を抑える仕組みが必要です。
 そこで、財政規律を保つため、目標となる財政運営上の指標が必要と考えますが、見解を伺います。
 知事には、今現在困難な状況にある人だけでなく、将来爆発的にふえる高齢者や、十年後、二十年後の都民にも目を向けた財政運営をお願いしたいと思います。
 また、歳出を抜本的に削減する改革は進んでいません。何か新しい事業を始めるには、何か既存の事業をやめなければならないはずです。
 しかし、好調な税収のもと、事業をスクラップすることへのモチベーションは低く、事業評価の三百億円は政策的経費の一%にも満たないものです。
 知事は、必要な改革を必要なときに行うといいますが、自主的な改革で大なたを振るうことはできません。目標もなく、改革の方向性が示されていないことが問題なんです。
 天下りし放題の監理団体には、さまざまな理由をつけて一千億円を超える特命随意契約が続いています。監理団体の経営目標管理制度は、前年度より低い目標を設定し評価を高く見せかけるなど、骨抜きの状態といわざるを得ません。民でできることは民でという思想のもと、まず、この監理団体のあり方から正すべきであります。就任から二年がたちました。もう庁内を熟知されていることと思います。
 知事は、この内部改革をどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 また、都民の理解をなかなか得られないのが都市外交であります。
 二十八年度十九億円が計上されており、知事の海外出張経費は五回で三億三千万円としています。一回七千万円です。知事が海外で東京の魅力を発信することは必要ですが、都民からの理解を考慮すれば、経費は最小限にとどめるべきです。出張経費などの費用の縮減に努めるとともに、都民に対して成果を丁寧に説明することが必要と考えますが、見解を伺います。
 二〇二〇年東京大会の開催費用は大丈夫でしょうか。
 昨年末には、総額一兆八千億円という金額が報道されました。しかし、先日の国会質疑でも、大会費用の総額について、現時点で組織委員会でも政府でも把握していないとの答弁がなされています。予算総額をはじくと責任を押しつけられるとでも考えているのか、誰も積極的にコスト管理に乗り出そうとしません。招致のときとは事情が変わってきているとのことですが、状況の変化に応じてコストを算出すればいいだけの話です。誰もそれをしないことこそが問題なんです。これでは、誰も責任をとらない、無責任体質の繰り返しとなってしまいます。
 知事は、三兆円は必要だと発言していますが、これは何か根拠があるんでしょうか。立候補ファイルには、大会組織委員会が資金不足に陥った場合には都が補填すると書かれており、三兆円が必要だとするならば、その大部分を都が支払わなければならない可能性があります。知事の答弁を聞いていると、国や組織委員会が払ってくれるんではないか的なニュアンスを感じますが、国立施設すら負担を求められているのですから、期待するのは間違いです。
 そこで、知事に質問ですが、現時点で大会の総費用をどれくらいかかると認識しているのか。三兆円というのであれば、その根拠をお示しください。また、その中で都が支払う費用は幾らとなるのか、その財源をどう考えているのか、知事の見解を伺います。
 また、知事は第三者的な立場からではなく、大会経費の把握や分担について、国や組織委員会をリードするとともに、都民への説明責任を果たすべきと考えますが、見解を伺います。
 二〇二〇年大会の成功は、いかに費用面でもコンパクトに実施できるかにかかっています。運営費用を低減するとともに、これ以上混乱を招かないようにリーダーシップを発揮していただきたいと思います。
 また、受動喫煙防止の条例化については、これはなぜ先送りをするのでしょうか。国の動向に関係なく、むしろ国に先駆けて、開催都市としての責務を果たすべきです。一刻も早い条例制定を望みますが、見解を伺います。
 安定した税収を得るためには、経済成長が欠かせません。
 政府は、GDP六百兆円を目指すとの意欲的な姿勢を打ち出しました。都はこれに応じ、的確な施策を全力で講じるべきです。有効な施策は、競争政策、規制緩和、民営化でしょう。
 一日九百万人以上という世界一の乗客数を誇る東京の地下鉄が一元化し、民営化されれば、莫大な富を生み出します。そして都民の利便性は飛躍的に向上します。
 しかし、懸念されるのはメトロ株の扱い。昨年、会計検査院が、国と都の売却に向けた協議がたなざらしとなっていると指摘。東京メトロ株は復興財源確保法に基づき、売却収入を東日本大震災の復興債の償還財源に充てることとなっています。この指摘を受けて、国はメトロ株をどうしていくか、注視が必要ですが、地下鉄一元化を展望し、都は安易にメトロ株を手放してはいけません。
 地下鉄一元化及びメトロ株の売却について、知事の所見を伺います。
 経済を活性化していく上で、都はその巨大な資産を生かすべきです。
 国土交通省は、日本全体の不動産資産二千四百兆円のうち、公的不動産が五百七十兆円を占め、この効率的な運営が経済の活性化につながるとして、PRE戦略を進めています。
 都では、財務局が所管する土地のうち、百九十万平米が未利用地となっており、これは東京ドーム四十個分の広さに相当します。福祉利用など検討してきましたが、目的に合った土地は少なく、そのほとんどが資材置き場など暫定利用されています。将来の行政需要を考慮するなどという理由で莫大な土地を塩漬けにすることなく、民間活用を図るべきであります。
 これらの未利用地を早期に売却することを検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 観光産業への投資を急ぐべきです。
 現在の急激な外国人観光客の伸びは円安によるところが大きいですが、為替変動や外交など、外部環境に左右されず、継続して観光客を呼び込むために、都市の魅力を飛躍的に高める、カジノを含むIRを誘致するべきです。知事の言葉でいうなら、アフターディナーの楽しみとして有効であることはいうまでもありません。
 法案審議が進んでいませんが、その成立を見越して考えたならば、検討を加速させる必要があります。プログラム法だからといって悠長に構えていては、魅力的な観光コンテンツを欲しがる都市が多数存在する中で、エントリーすることもできないでしょう。
 知事は早急に方針を示すべきであります。誘致に向けた積極的な取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 また、カジノ誘致とともに、ギャンブル依存症対策を進めるべきです。
 私は、カジノ施設は外国人しか利用できないとすることがよいと考えていますが、既に我が国はパチンコ、パチスロがまち中にあふれ、競馬、競輪、競艇、オートレースを公営ギャンブルとして実施しており、カジノの有無にかかわらず、ギャンブル依存症は大きな問題で、取り組みが必要です。
 先日、パチンコに行くため、子供を全裸にして浴室に監禁したという三十二歳母親と内縁の夫が逮捕されるという非常に痛ましい事件がありました。同様の事件は非常に多く見られており、ギャンブル依存症はネグレクトなど児童虐待を引き起こす原因でもあるのです。
 しかし、ギャンブル依存症や児童虐待は、患者や被害者の声が届きにくく、なかなか対策が進まない、予算がつきにくい課題です。また、解決には、一人一人と長期にわたって
向き合う必要があり、莫大な予算が必要です。
 昨年の会派要望では、これらの取り組みを大きく前進させるために、法定外目的税としてのパチンコ税への導入を要望しました。都には全国の一割に当たる一千店舗以上のパチンコ店が集中しており、パチンコ税は都において、平成十二年に環境対策として導入が検討された経緯があります。
 ギャンブル依存症が引き起こすさまざまな社会的な影響への対策を進めるため、都がこの問題に先駆的に取り組む意義は大きいと考えます。
 パチンコ税の導入を検討するべきと考えますが、所見を伺います。
 最後に、今週末に開催される東京マラソンについて伺います。
 記念すべき第十回目を迎える中、抽せん倍率が十倍と高どまりし、なかなか当選できないという声を多数いただいています。ランナー団体の調査でも、九回エントリーしても一回も当選していない、五回以上エントリーしてもなかなか当選できない、非常に多くの方がこういう声を届けられています。同様の課題を持つ神戸マラソンでは、二万人のランナーのうち、二千人を初出場枠として設定しています。
 東京のよさを知ってもらうこの取り組みに向けて、これまで抽せんに外れて走れなかった方が優先的に参加できるような仕組みをつくるなど、一人でも多くの方に東京マラソンを体験してもらうべきと考えますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) やながせ裕文議員の一般質問にお答えします。
 まず、行政内部の改革についてご質問がございました。
 都知事となって二年たちました。私は、東京の発展と都民生活の充実のために、長期的な視点に立った政策の種をまいてきたと思っております。
 これらの種を成果として開花させるためには、個々の事務事業や行政内部のあり方について、ご指摘のように不断の改革に取り組むことが重要であると考えております。
 そこで、平成二十八年度予算編成におきましても、事業評価の取り組みを通じて、三百二十五件の事業の見直し、再構築を図るなど、自己改革の取り組みを一層徹底しているところでございます。
 また、限りある人材の有効活用の観点から、必要な人員は、監理団体を含めまして、確実に措置をする一方、係制の廃止、それから人事管理における成績主義の一層の推進など、執行体制の強化にも努めてまいりました。
 さらに昨年末には、利害関係企業等への求職活動規制や外部有識者で構成される委員会の設置などをいたしまして、他に例を見ない厳格で透明性の高い退職管理条例を新設いたしました。
 このように、必要な予算や人員は確実に措置するとともに、時宜を得た改革も果敢に断行していくことが、現実の行政展開に依拠した私の一貫した方針でございます。
 今後とも、不断の改革に取り組みつつ、見直すべきところは大胆に見直して、世界一の都市東京の実現に向けて、都政運営に全力で取り組んでまいりたいと思っております。
 それから、二〇二〇年東京大会の経費についてご質問がございました。
 私は、ロンドン大会などの例を見て、三兆円という数字を申し上げました。いろんな数字が推測を含めて出てきておりますけれども、ご承知のように、その後のテロの脅威の増大、それから資材や人件費の高騰などで、大会を取り巻く環境が大きく変化をしつつありますし、また新たな問題も出てきております。
 そこで、我々が開催都市でありますけれども、国も組織委員会もかかわっておりますので、しっかりと責任を持って調整をしていきたいというふうに思っておりますし、ご指摘のように、不断に大会経費については精査するとともに、都民、国民に対する説明はきちんとやっていきたいというふうに思っております。
 先般申し上げましたように、私は開催都市の責任者として、関係者の先頭に立ちまして、大会準備を着実に進め、何としても大会を成功に導いていきたいと考えております。
 それから、地下鉄の経営一元化の話でございますけれども、確かに一元化というのも一つの手だというふうに思いますが、国は国で、経営一元化には課題が多いということを、そういう認識を持っておりまして、いろいろ話をしましても、関係者の間で意見の隔たりが非常に多くございます。だから、もう少し協議を継続することが必要だというふうに思っております。
 長期的には、私は、経営一元化というのは展望の中に入れていいと考えておりますけれども、今の段階で余りにも隔たりが多いと。そこでまずやるべきことは、二〇二〇年大会があります。都民の利便性、それから外国人の方もたくさん来られますので、そういう方の利便性を高めるために、できるところから地下鉄全体のサービスの向上に全力を挙げるべきだというふうに思っております。
 東京メトロ株の売却については、都としては今のところはその意向はございません。
 その他の質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔財務局長長谷川明君登壇〕

○財務局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、財政運営についてでございますが、都税収入が景気の動向に大きく影響されるという財政構造のもと、安定的に都民サービスを提供していくためには、強固で弾力的な財政基盤を堅持していくことが不可欠であります。このため、各種の財政指標も活用し、財政の健全性に常に留意して、みずからを律していく必要がございます。
 こうした認識のもとで、自己改革の取り組みを徹底し、基金や都債を戦略的かつ計画的に活用することなどにより、二十八年度予算編成におきましても、長期ビジョンを軸に積極的な施策展開を図りながら、起債依存度、起債残高といった指標は、国や地方と比較いたしまして、大幅に低い水準となっております。
 引き続き安定的な施策展開を支え得る健全な財政運営を行ってまいります。
 次に、未利用地の売却についてでございますが、都有地は都民から負託された貴重な財産でありまして、都政の喫緊の課題解決のため、最大限有効活用する必要がございます。
 都は、過去の財政再建期におきまして、不用資産の売却を進めてまいりましたが、平成十九年に今後の財産利活用の指針を策定し、現在は、都政の諸施策の実現に向け、都有地の利活用を推進しております。
 このため、特に貴重なまとまった用地につきましては、可能な限り暫定活用を図りながら、将来の需要も見通した上で、利活用の検討を行っております。
 一方、狭小地や不整形地など活用の見込みがない都有地につきましては、積極的な売却を行っております。
 今後とも、さまざまな行政需要に対し、土地の形状や立地等を踏まえ、都有地の有効活用を適切に進めてまいります。
   〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

○政策企画局長(川澄俊文君) 都市外交についてですが、二〇二〇年東京大会を成功に導き、世界一の都市東京を実現する手段として、都市外交が果たす役割は重要であり、そのために必要な予算を計上してございます。
 都はこれまで、首長相互の訪問や海外諸都市との実務レベルでの交流、協力事業を通じて、各都市の先進事例を学び、都が抱える都市問題の解決に結びつけてまいりました。
 知事の海外出張につきましては、必要な経費の精査を十分に行うとともに、その取り組みや成果については、知事みずからさまざまな機会を捉えて発信し、都庁ホームページ等におきましても、経費を含めて随時公表しているところでございます。
 今後とも、都市外交の成果を都民に還元していくとともに、迅速的確な情報発信に努めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 受動喫煙防止対策についてお答えをいたします。
 国は、昨年十一月に閣議決定した二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の基本方針において、近年の開催地における受動喫煙法規制の整備状況を踏まえながら、競技会場及び公共の場における受動喫煙防止対策を強化することといたしました。
 そのための検討チームを先月立ち上げ、受動喫煙防止措置の対象となる施設、区域の範囲などについて検討を開始しており、都もオブザーバーとして参加をしております。
 都が設置した受動喫煙防止対策検討会からも、受動喫煙の問題に地域特性はなく、全国統一的な法律での規制を国に働きかけるよう提言をいただいております。
 今後とも、国と連携を図りながら、実効性のある受動喫煙防止対策を進めてまいります。
   〔港湾局長武市敬君登壇〕

○港湾局長(武市敬君) IRについてでございますが、ホテルやリゾート施設、カジノなどを一体的に整備したIRは、海外の例を見ると、有効な観光資源となっております。
 その反面、カジノを含むIRの導入には、ギャンブル依存症など、さまざまな課題があるともいわれております。
 こうしたことから、現在、海外におけるIRの現状を調査するなど、プラス、マイナス双方の影響を十分に見きわめるための検討を行っているところであります。
 今後、国会審議の動向を踏まえつつ、引き続き検討を進めてまいります。
   〔主税局長小林清君登壇〕

○主税局長(小林清君) パチンコ税についてでありますが、新たな税を検討する際には、公平、中立、簡素の租税原則を踏まえつつ、一部の限られた個人や企業のみに特別に重い税負担を課すことがないよう配慮しなければなりません。
 パチンコに対する課税につきましては、課税の根拠を何に求めるかを初め、いわゆるギャンブルの中でパチンコに限定することが妥当であるか、また課税の仕組みをどのようにするかなどの課題がございます。
 これらの点は、昨年度の国の研究会においても指摘をされておりまして、都は今後とも、議論の動向を注視してまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 東京マラソンについてでございますが、東京マラソンのランナーの決定に際しましては、一般抽せんを行うに当たり、毎年、応募者からコンピューターにより無作為に抽せんすることで、公平を期しております。
 その上で、主催者である東京マラソン財団では、チャリティーランナー制度や、会員登録をすることによって抽せんの機会がふえる制度など、さまざまな参加形態を導入してまいりました。
 さらに、大会当日には、コースの一部を使って家族で走るファミリーランを開催するなど、より多くの人に東京マラソンを体験していただく機会をふやしております。
 今後とも財団と協力して、こうした工夫を通じ、大会の価値を高め、走る楽しみや東京の魅力を伝えてまいります。

○議長(川井しげお君) 以上をもって質問は終わりました。

ページ先頭に戻る