平成二十八年東京都議会会議録第四号

○副議長(小磯善彦君) 四十番神野次郎君。
   〔四十番神野次郎君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十番(神野次郎君) 最初に、中小企業連携促進ファンドについて伺います。
 将来の東京を支える企業の育成や新しい産業の創出のため、斬新なアイデアを持つベンチャー企業や、独自の技術で新たな分野に挑戦する中小企業を支援することは重要です。このような中小、ベンチャー企業に対し、研究開発期間など安定した収入を生み出すことができない時期に、都が新たに立ち上げるファンドを通じて資金を供給することは非常に有意義だと思います。
 私は、昨年の第一定例会において、官民連携福祉貢献インフラファンドについて質問しましたが、その際、都は利益の追求よりも政策の実現を重視すべきであり、また、出資金の毀損リスクはできるだけ軽減すべきであるという趣旨の発言をしました。今回のファンドにおきましても、利益の追求よりも政策を重視すべきという点は同じ意見ですが、リスクに関しては違ったアプローチが必要と考えています。
 それは、官民連携福祉貢献インフラファンドが出資をする不動産賃貸などの事業は、将来の収入が予想しやすいのに対して、本ファンドが支援をする事業は、将来の収入が見通しにくいものとなるからです。
 しかし、成果が得られるかどうかが不確実だからといって、研究開発や新規事業への挑戦を怠ってしまうと、高い技術力を得ることや新分野を切り開いて先行者利益を享受するという付加価値の高い成果は得られなくなってしまいます。そうならないように、都は積極的にこのような試みを支援すべきと考えます。
 ファンドは、中小企業の発行する株式への投資を予定していますが、これも適切であると考えます。東証一部上場の大企業の中でも、製薬会社やコンピューターソフトの開発会社といった研究開発費の負担が大きい企業は借入金が極めて少なく、事業資金のほとんどを自己資金で賄っております。新分野に挑戦する中小企業においても、事業資金は定まった期限までに返済しないといけない借入金ではなく、自己資本、つまり株主資本が必要と考えるからです。
 ただし、ファンドが株式を購入する際に注意していただきたいことがあります。既に発行されている株式を購入しても企業には新規の資金が入らないため、事業の支援には直接つながりません。原則として、企業が新たに発行する株式を購入し、企業が受け取った資金が研究開発や設備投資に利用されるように留意していただきたいと思います。
 ファンドの運営に当たり、将来の東京を支える企業の育成や新しい産業の創出という政策目的を常に意識し、思い切った投資によって中小企業の成長を後押しすべきと考えます。
 そこで、都がこのファンドを設立する意義と、どのように運営していくかについて伺います。
 次に、事業継承支援について伺います。
 東京の活力の源泉は、都内企業数の九九%を占める中小企業にあることはいうまでもありませんが、近年、その経営者の高齢化による廃業などを背景に、その集積が失われつつあります。これに歯どめをかけ、都内産業を維持発展させていくためには、中小企業の円滑な事業継承を図っていく必要があります。
 しかし、事業継承が進まない理由は、引き継ぎの方針が固まっていない、後継者探しに苦労しているなど、企業によってさまざまです。また、過大な債務の解消など、金融面からの支援が必要なケースもあります。
 こうした状況を解決するためには、個々の事業者の実態に即した的確な支援を行っていくことが必要であり、我が党は、金融機関や人材紹介会社など、さまざまな専門機関の力を活用した支援について検討を求めてきました。
 そこで、都は、中小企業の円滑な事業継承に向けてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、先週、知事がみずから公表されました女性活躍推進白書について伺います。
 この白書は、さまざまなデータや活躍する女性へのインタビューなどを通して、東京の女性の現状や課題を浮き彫りにし、多様なチャレンジを応援するなど、三つの取り組みの方向性を提言しています。
 三つの提言の中でも、ライフスタイルに合わせて柔軟な働き方が選択できるまちを目指していくことは、大都市であるがゆえに、長時間労働、長時間通勤で悩まされてきた都民にとりましても、まさしく新時代における働き方を提唱する意義深いものと評価いたします。
 さて、白書によりますと、東京都の有業者の平均帰宅時間は、男女とも全国で最も遅くなっています。また、週六十時間以上働く長時間労働者の割合も、全国よりも高くなっております。
 こうした東京の実態を踏まえて、今後、真に女性の活躍を実現するためには、家事や育児などの家庭生活の負担が女性に偏りがちであるという現実のもとに立ち、女性が出産などのライフイベントを乗り越え、家事や育児と仕事を両立できるよう、企業がより積極的に柔軟な働き方を取り入れられるような環境を整備していく必要があります。
 また、家庭においては、男性による家事や育児、介護への参画が極めて重要になってまいります。
 白書では、新時代の柔軟な働き方を東京から提唱し、社会全体での意識改革を進めていくとともに、男性の家事、育児への参画を強力に推進していくこととされていますが、この提言を実現するため、今後、どのように取り組みを推進していくのか、知事の見解を伺います。
 次に、流域下水道におけるエネルギー施策について伺います。
 多摩川は、昭和四十年代は生活排水などで汚れていたものの、今や多くのアユが毎年遡上するなど、水質は大きく改善しました。多摩川下流部における河川水量の約半分を下水処理水が占めることを考えますと、下水処理の水質改善の成果といえます。
 その中で大きな役割を果たしてきたのが、東京湾の赤潮の発生原因ともなる窒素とリンを大幅に削減することができる高度処理ですが、高度処理は、水質改善が図られる一方、導入には多くの時間と費用を要し、旧来の処理法と比べ電力使用量が多いという課題があります。
 一昨年の第一回定例会では、エネルギー価格の高騰を受け、窒素やリンの除去率が高度処理よりも若干低いものの、電力使用量が抑えられる準高度処理の既存施設への導入を進めていくとのことでしたが、現在では、高度処理と同等の水質を確保しつつ、電力使用量を二割以上削減できる新たな高度処理が導入され出したと聞いております。
 このように新しい技術を開発することによって、機能の維持向上を図りつつ、エネルギー使用量を削減する取り組みは大変重要であり、今後もしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、流域下水道におけるエネルギー使用量削減への取り組みについて伺います。
 私の地元の昭島市にある多摩川上流水再生センターでは、下水道局と産業労働局、環境局の三局が連携して、スギ花粉発生源対策で生じた多摩産の杉の未利用材からチップを製造し、汚泥焼却の際の補助燃料として活用する事業を実施しております。この事業により、都内の一般家庭千六百世帯分の都市ガス量の削減効果が得られていると聞いております。
 杉のチップを再生可能エネルギーとして活用するこの取り組みを大いに評価しており、今後拡大していくことを期待しております。
 下水処理で多くのエネルギーを使用している下水道局は、この事例にとどまらず、再生可能エネルギーを積極的に導入することで、みずからエネルギーを確保していくことも重要であると考えます。
 そこで、流域下水道における再生可能エネルギーの活用への取り組みを伺います。
 最後に、都債の発行について伺います。
 昨年の第一回定例会で、個人向けの東京グローバル都債に関して、市況を踏まえながら継続的な発行に取り組むとともに、より積極的な周知に努めていくとの答弁をいただきました。
 昨年十二月に発行された東京グローバル都債では、円建て債は前回よりも五十億円少ない百億円、豪ドル建て債は前回よりも六千万豪ドル多い一億一千万豪ドルの発行額でしたが、投資家のニーズに合わせて発行額を調整したこと、そして、プレスリリースに都が為替変動リスクを負っていないことが明記されたことを評価いたします。
 平成二十八年度予算案において、都は、投資的経費が増加する中にあっても、都債の発行を三千五百三十三億円にとどめています。平成二十八年度末に五兆八千八百三十億円となる見込みの都債残高は、毎年の償還の影響もあり、年度により多少の増減はあるものの、七兆六千億円を超えていた平成十三年度末から削減を図ってきていることがうかがえます。
 今後の人口減少に伴う人口構造の変化などを考慮すれば、発行残高を抑制し、将来世代の負担を抑えていく視点は必要といえます。また、できるだけ有利な条件で都債を発行し、利子負担を抑制していくことも重要です。
 一方で、緊急時の資金調達が行えるように都債を継続的に発行し、発行体としての存在感を示し続け、都債を購入する投資家を多数確保しておくという努力も必要と考えます。
 日銀は、平成二十五年四月に、いわゆる異次元緩和を開始し、さらに追加緩和の実施や、最近ではマイナス金利を導入したことで、長期国債の流通利回りは一時マイナスとなり、本年二月発行の十年都債も利率〇・一二六%と過去最低の金利水準での発行となるなど、まさに異次元の低金利状態にあります。この歴史的低金利のメリットを享受できるよう、都は、超長期債や外貨建て債を発行するなど、より戦略的に取り組むべきと考えます。
 そこで、現在の債券市場の状況を踏まえ、平成二十八年度はどのような方針で都債を発行していく考えなのかを伺い、私からの質問を終えます。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 神野次郎議員の一般質問にお答えをいたします。
 金融の専門家らしいすばらしい質問であったと思います。金融の件につきましては、担当局長の方から後ほどお答えいたします。私に対しては、女性活躍推進白書の提言を実現するための取り組みについてご質問がございましたので、お答えをいたします。
 かねてより、東京の活力を高めるためには、大きな潜在力を有しております女性の活躍が不可欠であるということを私は繰り返し申し上げておりました。
 そこで、現状をしっかりと分析して、どういう取り組みができるかということで、今回、自治体初となります白書をまとめたわけであります。
 とりわけ、女性が結婚、出産などの転機を迎えましても、安心して働き続けられる環境を整備していくために、柔軟な勤務制度の導入、それから男性の家事、育児への参画、これが重要だと思っております。
 そこで、長時間通勤などの分析をしましたのは、やはり、例えば在宅勤務制度の導入、これを企業に促していけば、通勤時間が無駄にならないわけでありますし、それから、参考となるような情報も提供しまして、こういう制度を入れるとこういう効果があるよ、しかしこういう課題があるよと、この検証するプロジェクトの構築を進めていきたいと思っております。
 それから、その取り組みの中で、これまでも実際に男性の育児、家事参画を実践してきた男性や団体を招聘して、いろんなイベント、こういうことをやっておりますので、さらにそれを展開しまして、参加される方々に、実際どうすればいいかというようなノウハウも提供していきたいと思っております。
 今後とも、企業や男性の具体的行動を促すことによって、男女ともライフスタイルに合わせて柔軟な働き方が選択できるような社会の実現に向けまして、積極的な施策展開を図ってまいりたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、中小企業連携促進ファンドについてでございますが、中小企業がみずから有するすぐれた技術やノウハウを生かして新分野に挑戦するためには、事業化に向けた外部資源の活用や多様な資金調達手段が必要でございます。
 このため、都は来年度、中小企業と大学、大企業等との連携を促進する新たなファンドを創設いたします。
 具体的には、有望な技術と市場ニーズを把握できる目きき力を持つ運営事業者を選定し、さまざまな主体とのマッチングや販路拡大等の成長支援など、経営と資金の両面から中小企業をサポートしてまいります。あわせて、運営事業者への定期的なモニタリングなどを行い、リスク管理を適切に実施してまいります。
 この仕組みにより、中小企業の意欲的な取り組みに対する積極的な投資を促進し、将来性のある企業の育成や新しい産業の創出を図ってまいります。
 次に、中小企業の事業承継への支援強化についてでございますが、都内中小企業が培ってきた技術やノウハウを次代へ承継していくためには、企業が抱える課題に対し、さまざまな専門機関を活用した支援の充実を図る必要がございます。
 このため、都は来年度、中小企業振興公社に巡回相談員を設置し、企業からの相談や申し込みを待たずに、公社から支援を働きかける取り組みに着手するほか、支援企業が人材紹介会社等を活用する際の経費を新たに助成いたします。
 また、財務上の課題を解決することにより事業承継が進む企業に対し、金融機関と弁護士等の専門家が連携をして、計画の策定から実行までを継続的にサポートしつつ、必要な資金を融資する都独自の金融支援を開始いたします。
 こうした多面的な支援により、中小企業の事業承継が円滑に進むよう取り組んでまいります。
   〔下水道局長石原清次君登壇〕

○下水道局長(石原清次君) まず、流域下水道におけるエネルギー使用量の削減の取り組みについてでございますが、当局では、従来から、水処理や汚泥処理の設備更新にあわせ、省エネルギー型の設備を積極的に導入しております。
 水処理では、ご質問にあった、水質改善と省エネルギーの両立を図る新たな高度処理の導入を進めておりまして、今年度は浅川水再生センターにおいて既存の土木躯体を活用することにより、費用を抑えつつ設備を整備いたしました。
 今後、多摩川上流水再生センター等に順次導入し、平成三十二年度までに準高度処理施設も合わせた高度処理の割合を八割程度まで向上させてまいります。
 汚泥処理では、汚泥の水分量を一層削減して、焼却時の補助燃料を不要にする新たな脱水機と高温省エネ型焼却炉を組み合わせ、従来型の焼却炉よりも電力や補助燃料を大幅に削減する焼却システムを順次導入してまいります。
 次に、流域下水道における再生可能エネルギーの取り組みについてでございますが、太陽光発電は、今年度、南多摩水再生センターのメガワット級の施設など三カ所で二千キロワットの施設が完成いたします。今後、平成三十二年度までに、合わせて約四千五百キロワットの施設を整備してまいります。
 また、小水力発電は、多摩川への放流落差を活用できる南多摩水再生センターで来年度工事に着手いたします。
 さらに、多摩川上流水再生センターなどにおいて、焼却炉の更新にあわせ、これまで技術的に未利用であった低温域の汚泥焼却廃熱を活用した発電を導入いたします。
 これらの取り組みにより、平成三十二年度までに一般家庭約一千七百世帯に当たる電力を確保してまいります。
 今後とも、再生可能エネルギー活用の拡大に最大限努めるとともに、省エネルギーのさらなる推進に取り組んでまいります。
   〔財務局長長谷川明君登壇〕

○財務局長(長谷川明君) 都債発行の考え方についてでございますが、都債の発行に当たりましては、資金調達の安定性と調達コストの低減を両立することが重要と考えております。
 このため、地方債市場での基幹年限である十年債は毎月定期的に発行し、調達の安定性を確保しております。一方で、市場環境に応じて、償還年限が十年未満の中期債や三十年の超長期債など、多様な都債を機動的に発行し、調達コストの低減を図っております。
 お話のように、低金利環境では、金利負担を長期間低位に固定できる超長期債が有用であり、加えて、外債発行につきましても、さらなる低コストの可能性が期待できます。
 来年度におきましても、金利の動向をしっかりと見きわめ、市場環境を踏まえながら戦略的に都債を発行し、安定的かつ有利な資金調達を図ってまいります。

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