平成二十八年東京都議会会議録第四号

○議長(川井しげお君) 一番小林健二君。
   〔一番小林健二君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○一番(小林健二君) 初めに、観光振興について伺います。
 知事は、さきの施政方針表明において、観光を一大産業へと高め、その広い裾野を生かしていくことで、東京のさらなる成長につなげていきたいと述べられました。
 この言葉の実現のためには、東京の各地域にあるさまざまな観光資源の価値を生かし、充実させていくことを通じて、観光客を誘致していく取り組みが重要であると考えます。
 例えば、国際的にも評価の高いクールジャパンの代表格であるアニメは、まさしくコンテンツとしての文化的な部分と産業としての側面の両方を持ち、これを観光資源として育て上げる価値は高いものと思います。
 フランスの観光が、すぐれた芸術性を持つパリというまちを磨き上げることを通じてレベルを高めていったように、東京においても地域のすぐれた部分をしっかりと見出し、その充実を通じて多くの旅行者を誘致する努力が重要になると思います。
 こうした考えに立ち、地域における観光振興について、知事の所見を伺います。
 東京の観光資源のうち、アニメを活用した施策の充実は必須の取り組みであります。都では、民間企業から提供を受けた絵コンテ、原画、セル画などのアニメ資料を約五万点保管するアニメアーカイブ事業に取り組んでいますが、私は、昨年の経済・港湾委員会の質疑において、これら保管されているアニメ財産を広く公開していくことを要望いたしました。
 アニメの制作過程で生み出されるセル画は国内外で人気があり、こうした貴重なアニメ資源を広く公開、展示し、観光振興に役立てていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、文化芸術振興について伺います。
 本年は、いよいよ二〇二〇年に向けて、文化プログラムが本格的に開始される年となります。文化の力を国内外に発信する絶好の機会であり、この取り組みをスタートとして、文化芸術によって立つ国、そして東京都を実現していかねばならないと考えます。
 昨年の第一回定例会の一般質問で私は、文化を活用した地域振興の活性化を質問いたしました。
 都では、本年度より、地域の文化資源を発信する取り組みに対する助成制度を立ち上げましたが、この制度の周知が行き届いておらず、活用実績が乏しいという課題があります。
 さらに、地域における文化の発信力を高めていくためにも、制度の周知に努め、より幅広い分野において多くの団体から利用されるよう取り組んでいくべきと考えます。見解を求めます。
 東京文化ビジョンでは、社会や都市の課題に芸術文化の力を活用するとの戦略が盛り込まれております。
 民間では、認知症の方々に対する絵画鑑賞や音楽療法による脳の活性化への取り組みや、東日本大震災の被災地の方々を文化芸術の力で励ましていこうとの取り組みなど、文化芸術が社会において極めて重要な役割を果たしております。
 都では、こうした民間の活動を支援するため社会支援助成事業を創設し、初年度は特に障害者を対象とした活動に対し重点的に助成を行ったと聞いておりますが、高齢者の生きがいを創出する取り組みや子供の自発性を引き出す取り組みなど、社会課題の解決に資する文化芸術活動は多様であります。
 障害者や高齢者、子供などが抱える問題に対し、文化芸術ならではの力で解決をもたらすような取り組みを都としてしっかり支援していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、若者の命を守る取り組みについて伺います。
 東京都において、みずから命を絶った方は、平成二十三年の二千九百十九人をピークに減少傾向に転じているものの、年代別では四十代以上の減少幅に比べて若年層が減っていない実態があります。特に東京は、年齢構成の割合で三十代以下が三割を超え、全国より多くなっており、三十歳以下の死因の一位が自殺であります。
 東京で若者の自殺がなかなかとまらない、先日のニュース番組ではこのように報じられました。
 都では、自殺総合対策東京会議を設置し予防対策を推進していますが、世界一の都市東京を目指すには、若者が躍動して活躍できる東京を実現していかねばなりません。
 悲しくも死を選択した胸中を軽々に推しはかることはできませんが、若者がみずから命を絶ち、大切な未来が閉ざされることのないよう、社会で守り育む連帯が必要であり、都としても、地域社会における若者の自殺予防対策を喫緊の課題として強化していくべきであります。見解を求めます。
 さらに、若年者のうち、児童生徒が命を絶つ報道が頻発しております。以前私は、みずから命を絶った中学生のお子さんを持つお母様にお話を伺う機会がありました。お子さんを亡くされた悲しみ、悔しさ、どうにも整理がつかない心の葛藤、慟哭の思いは察するに余りあるものでした。
 この世に絶望し、泣きながらみずからの命を絶った子供たちに、また、あの世界に生まれてみたいと思ってもらえるような世界をつくること、それこそが私たち残された者全てに託された責務ではないか、これは新聞に掲載された、お子さんを自殺で失ったご家族の手記の一文です。
 未来の宝である児童生徒が、余りにも若くして死という選択をしたことを私たちは重く受けとめて、子供の変化を鋭敏に感じ取り対応できるよう、教育現場における取り組みを一層強化していくべきであります。見解を求めます。
 次に、若年性認知症対策の強化について伺います。
 私は、平成二十五年の予算特別委員会において、日ごろお世話になっているご夫婦のご主人が若年性認知症を発症し、ご家族が日々ご苦労されている実態と、若年性認知症家族会の方からお聞きしたご要望を紹介いたしました。その際、多摩地域における若年性認知症総合支援センターの設置、受け入れ施設の整備、自治体職員のスキルアップ、就労支援、以上四点にわたって課題を提示し、実情に沿ったきめ細かな支援策を検討していくべきと質問いたしました。
 都議会公明党が提案し、ワンストップの相談窓口として全国初の取り組みとなった若年性認知症総合支援センターも設置から四年が経過し、多くの相談と支援の実績を重ねていると聞いております。
 今後、総合支援センターが蓄積したノウハウをさらに生かし、より身近な地域で必要な支援を受けられるよう、総合支援センターの多摩地域への設置と自治体職員に対する若年性認知症へのスキルアップに取り組んでいくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都立高校における障害のある生徒への配慮についてお伺いします。
 先日、私は、練馬区難聴児者を持つ親の会の方よりお話を伺う機会がありました。現在、多くの聴覚障害児童生徒は補聴器や人工内耳を使用していますが、どんなに補聴しても一〇〇%聞こえるわけではなく、言葉や文章が不完全に聞こえているのが実態だとのお話がありました。
 練馬区では、介助員制度があり、区立小中学校において聴覚障害児童生徒が必要とする情報保障、例えば手書き文字通訳やパソコン文字通訳を利用した場合、通訳者に対し謝礼金となる助成を区が負担する制度があります。
 現在、都立高校にも聴覚障害のある生徒がおり、マイクを活用して聞きやすくしたり、座席の配慮などを行っているそうですが、練馬区の介助員制度は高校生には適用されないため、情報保障を利用する場合、保護者が通訳者への謝礼金を自己負担しており、保護者負担は決して軽くはないとのお話でありました。
 そして、都立高校においても、聴覚障害生徒が健常の生徒と同じ情報を得られるための方策を検討してもらいたいとのご要望もいただきました。
 本年四月より障害者差別解消法が施行されます。この法律においては、地方公共団体に対し、不当差別の禁止及び合理的配慮の提供を法的義務として課しております。
 さきに紹介した事例も踏まえて、本法律の施行を機に、都立高校においても障害者差別を解消する取り組みをさらに推進していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、海岸漂着物対策について伺います。
 昨年のエルマウ・サミットの首脳宣言において、初めて海ごみ問題が取り上げられました。都においても、東京都廃棄物審議会において海ごみ対策の必要性が答申されましたが、二〇二〇年に向けて日本の美しい海や海岸を世界にアピールするには、着実に海岸漂着物、海ごみ対策に取り組んでいく必要があります。
 とりわけ、海ごみの中のプラスチックやその微細化により発生するマイクロプラスチックは、海洋生物が誤って摂取することによる生態系への影響が世界的に危惧されており、その抑制への対策が急務であります。
 都は昨年度、海岸漂着物関係の調査を実施し、東京湾内におけるマイクロプラスチックの存在を確認したと聞いておりますが、こうした調査結果を踏まえ、水辺の魅力を高めていくためにも、海岸漂着物や海ごみの発生抑制に積極的に取り組んでいく必要があると考えます。見解を求めます。
 最後に、都市計画、練馬城址公園について伺います。
 都は、平成二十三年に改定された都市計画公園・緑地の整備方針において、避難場所として首都東京の防災機能の強化を目的に、新たに重点化を図るべき公園として練馬城址公園が位置づけられました。計画区域の大部分を占めるのは、長年地元で親しまれてきた遊園地のとしまえんであります。
 整備方針が発表されてから四年が経過する中、私も、としまえん周辺の住民の方々とお会いするたびに、公園はいつ整備されるのか、どんな公園になるのか、としまえんはどうなるのかとの声を多く耳にします。
 巨大な敷地に検討されている新たな都立公園だからこそ、練馬区も住民も関心は高く、関心が高いからこそ、練馬区はもとより、地域住民の意見も丁寧にお聞きし、十分に調整していくことが重要であります。
 今後の練馬城址公園の取り組みを伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 小林健二議員の一般質問にお答えをいたします。
 地域における観光振興についてお尋ねがございました。
 東京は、いうまでもなく江戸の伝統と先端技術が生み出す活力が共存するとともに、おのおのの地域にすぐれた文化や芸術のほか、豊かな自然、それから食べ物、観光地としての魅力を高めております。
 こうした魅力を活用して東京に観光客を呼び込むために、各地域の身近な場にある文化的な資源などを効果的に使いまして、それらを観光振興に結びつけるということが重要であります。
 そのため、ご指摘ありましたようなアニメなどのコンテンツを活用して、新しい観光資源を生み出すような地域のアイデアを、民間の力で実現する取り組みを充実してまいりたいと思っております。また、そうした観光まちづくりの事例を取りまとめて、効果的な情報提供も行いたいと思っております。
 こうした取り組みによりまして、地域の観光振興、これを活性化して、東京への旅行者誘致を着実に進めてまいりたいと思っております。
 それから、芸術文化、これはいろんな社会的な課題の解決に役立つのではないかというご指摘でありますが、まさにそのとおりだと思っております。
 芸術文化には、人間の心を豊かにして、クリエーティビティー、創造性を引き出すとともに、言葉を超えまして人々の理解や共感を育むような無限の可能性が秘められていると思います。
 例えば不登校とかひきこもり、それから例に出されたような高齢者の孤立とか障害者の自己実現など、こういう社会問題の解決に向けて、芸術文化というのは非常に大きな役割を果たしていると思います。
 演劇であるとか、舞踊であるとか、アートなど、さまざまな取り組みが教育や福祉や医療などの現場で行われますように、本年度、都は、芸術文化による社会支援助成、こういう制度をつくりました。この助成制度を活用して、例えば障害のある若者とプロの劇団が一緒に演劇をやっていくと。そのことを通じて、参加した方々が、頑張って生きていくんだ、こういう自信を取り戻した例もございます。
 これからは障害者に限らず、子供、高齢者と芸術文化をつなぐ活動に取り組む団体などが大きな成果が上げられるように、この制度を積極的に活用してまいりたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、子供の命を守る取り組みについてでございますが、子供がかけがえのない命をみずから絶つことのないようにするためには、学校や家庭が子供の悩みや不安を適切に把握するとともに、関係機関等と連携して、その解消に向けた支援を行うことが重要であります。
 これまで都教育委員会は、自殺予防のため、学校が配慮すべき事項を具体的に示した資料の配布、スクールカウンセラーによる面接、二十四時間対応の電話相談、緊急時における心理職の派遣などの対策を講じてきております。
 今後は、これらに加えて、全公立学校の校長や各職層を対象に、自殺予防を目的とした新規の研修を実施するなど、教職員が保護者や地域の関係者等と一体となって、子供の様子の変化に迅速に対応できるようにして、社会全体で子供の命を守る取り組みの一層の強化を図ってまいります。
 次に、都立高校の障害のある生徒への配慮についてでございますが、都教育委員会は、これまで入学者選抜において、生徒の障害状況に応じた検査方法等の配慮を行うとともに、入学後には施設のバリアフリー化や授業における座席の配慮、ICT機器等補助器具の整備などを進めてまいりました。
 平成二十八年四月一日に施行される障害者差別解消法では、障害者から社会的障壁を取り除く必要について意思の表明があった場合、過重な負担にならない範囲で合理的配慮を行わなければならないと定められております。
 このため、都教育委員会は、法施行に向け、都立学校における合理的配慮の具体例等を新たにハンドブックとしてまとめ、都立学校に示すとともに、ご指摘の事例も踏まえ、学校と連携して障害のある生徒やその保護者と十分に話し合いながら、適切な対応を一層推進してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) アニメを活用した観光振興についてでございますが、東京を訪れる旅行者をふやす上で、アニメを観光資源として活用するための施策を展開することは重要でございます。
 これまで都は、アニメの放映のため制作された資料を保管し、イベントへの貸し出しを行うとともに、地域がアニメをテーマとする観光ルートを作成する場合にサポート等を行ってまいりました。
 来年度は、秋葉原にある東京アニメセンターにコーナーを設け、ご指摘の都の保管するアニメ関連の資料展示を実施いたします。また、アニメを活用した観光ルートの作成を引き続き支援するとともに、都内アニメクリエーターのビジネス支援を行い、その魅力を理解し、東京を観光で訪れる旅行者の増加にも結びつけてまいります。
   〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 東京地域芸術文化助成についてですが、東京には、下町、山の手、多摩など各地域に個性ある文化資源が存在し、その魅力を広く発信することが東京全体の文化価値を高めていくことにつながります。
 そこで、都は本年度、アーツカウンシル東京による東京地域芸術文化助成を創設し、木場の木やりや府中のおはやしなど、地域の無形民俗文化財の活動等を対象に支援し、広報の充実などが図られました。
 来年度は、アニメ産業が集積する練馬やポップカルチャーのコンテンツが豊富な秋葉原、さらに市民による映画祭が盛んな調布など、現代的な文化資源を持つ地域においても制度の活用が図られるよう、関係団体への働きかけや区市町村に対する説明会の開催などさまざまな工夫を行い、支援の幅を広げてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、若者の自殺予防対策についてでありますが、都は、自殺総合対策の取り組み方針において、自殺リスクが高い若年層への支援を重点施策とし、若者向け相談窓口案内の作成などを行うほか、区市町村や民間団体が実施するゲートキーパー養成等の取り組みを支援しており、来月には、若者がストレスに立ち向かう方法などを若者みずから考えてもらうよう、大学生とともに企画、運営した講演会を開催いたします。
 来年度からは、コンビニエンスストア各社の協力を得て、孤立している児童生徒などの見守りを実施する予定であり、悩みを抱え、行き場のない子供たちが気軽に立ち寄れる場のあり方についても検討を行ってまいります。
 今後とも、関係団体等と連携して、若者の自殺を予防するさまざまな施策を積極的に推進してまいります。
 次に、若年性認知症対策についてでありますが、働き盛りの世代で発症する若年性認知症の方への相談支援には、医療や介護だけでなく、就労に関する支援や障害福祉サービスなど、多分野にわたる制度を活用した総合的な対応が求められております。
 このため、都は、本人や家族からのワンストップの相談窓口である若年性認知症総合支援センターを設置するとともに、活用できる支援策を取りまとめたハンドブックを作成して、区市町村等における相談対応力の強化を図ってまいりました。
 さらに、来年度は、新たに多摩地域にも若年性認知症総合支援センターを開設いたします。また、センターのこれまでの相談、支援事例を分析してノウハウを取りまとめた相談対応マニュアルを作成し、区市町村に提供するなど、身近な地域での支援の充実を図ってまいります。
   〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 海岸漂着物対策についてでございますが、海岸漂着物対策を確実に進めていくためには、海岸や水面清掃等の着実な実施とともに、海岸漂着物の発生源となる海ごみを減らしていくことが重要でございます。
 都は、平成二十六年度に調査を行い、海ごみを削減するには、陸域におけるごみの発生抑制対策が効果的であることが裏づけられました。
 そのため、都は、昨年十一月にシンポジウムを開催し、プラスチックによる海洋への影響や陸域における環境NGOの取り組みなどを広く都民に紹介いたしました。
 今後、陸域におけるごみの発生抑制やマイクロプラスチック、海岸漂着物問題に関するパンフレット、ポスターを作成するとともに、来月には、電車内広告等を活用した周知を実施するなど、普及啓発に積極的に取り組んでまいります。
   〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 練馬城址公園の取り組みについてでございますが、練馬城址公園は、民間遊園地としまえんを計画区域に含む面積約二十六・六ヘクタールの都市計画公園であり、このうち約二十一・九ヘクタールを平成三十二年度までに事業に着手する優先整備区域に設定しております。
 公園の事業着手に当たりましては、東京都公園審議会の審議を経て、公園内の利用区分を明確にするゾーニングを行い、各エリアの園路や広場等の配置を定める整備計画を策定することとしております。今年度は、計画策定に必要な地形や植物の分布等の調査分析を進めております。
 今後、地元区との意見交換等の機会を設けるとともに、広く都民の意見も聞きながら、整備計画の検討を進め、豊かな緑と区域内を流れる石神井川を生かした水と緑のネットワークを形成してまいります。

ページ先頭に戻る