平成二十八年東京都議会会議録第三号

○副議長(小磯善彦君) 七十八番大西さとる君。
   〔七十八番大西さとる君登壇〕

○七十八番(大西さとる君) 知事は、ワークライフバランスを推進し、家庭環境、労働環境をよくするために週休三日制も考えるべきだと発言され、先日の所信表明でも触れられております。
 私は、この週休三日制、大賛成であり、ぜひとも導入すべきと考えます。しかし、このすばらしい施策もほとんど国民的な議論とはなっておらず、また、そうなったとしても、国の議論や法整備を待っていると、いつ実現するかわからないと考えます。
 そこで、この議論を始めるに当たって起爆剤が必要であり、都はどのようにして進めていくのか、知事の所見を伺います。
 次に、女性が活躍できる社会について伺います。
 島根県浜田市がシングルマザーを積極的に受け入れていることを知り、随分考えさせられました。お母さんにとって、職場やその近くで保育サービスが受けられれば安心で大助かりです。職場に女性向けのトイレや更衣室があるのも当たり前にしなければなりません。
 セクハラ、マタハラはもってのほかです。子育てしやすいような短時間勤務、あるいは、家にいながらにしても働けるテレワークなどの拡大などによって、シングルマザーはもとより、全ての女性が働きやすくなるのではないかと考えています。
 女性が働きやすい職場環境の整備について見解を伺います。
 子供の貧困対策の一つとして、ひとり親家庭の所得税法上の寡婦控除、これはご案内のとおり、離婚や死別によりひとり親になったとき受けられる所得控除です。しかし、この寡婦控除、未婚のひとり親家庭には適応されていません。婚姻歴があるかないかで取り扱いが変わるのはおかしなことです。
 結婚していない男女間の子の遺産相続の取り分を、結婚した男女の子の半分とする民法の規定については、最高裁は、法のもとの平等に反すると違憲判断を下しています。
 寡婦控除についても、この制度の見直しを求める動きも高まっており、自治体によっては保育料などに寡婦控除をみなし適応して減額するところも出てまいりました。
 東京都としても未婚のシングルマザーにも寡婦控除の適応が必要だと考えますが、見解を伺います。
 次に、交通政策について伺います。
 今、世界のタクシー業界は、スマートフォンを使えば、二種免許を持っていなくても素人が簡単にタクシーの営業ができるライドシェア、ウーバーの席巻で危機的な状況に置かれております。サンフランシスコでは大手タクシー会社が倒産するに至り、ロンドンやパリでもタクシー労働者の抗議によって道路が閉鎖されるなど、大きな社会問題となっています。
 ハイヤー、タクシーの労働団体だけでなく、経営者団体からも、白タク行為の合法化は、安全面からも断じて容認できず、断固阻止してほしいという要望を伺い、また、タクシー供給量の過剰、過当競争により、東京地域のタクシー運転者の給与水準は明らかに低くなっているとの指摘も受けております。
 私は、都内がタクシー供給量過剰によってタクシー適正化・活性化法に定める要件は十分あるとの認識のもと、都内を特定地域に指定するよう国に対して求めていくべきだと考えます。
 東京都として、現状をどのように認識し、どのように対応しようとしているのか、見解を伺います。
 世界の旅行者を対象としたトリップアドバイザーが行った調査で、東京はタクシーのサービスは一位、運転手の親切さは二位です。ちなみに、旅行者による都市の総合評価では、東京はパリやニューヨークを抑え世界一位であります。タクシーの高評価が貢献しています。
 東京のタクシーは、事故の減少や犯罪捜査にも役立つ映像記録型ドライブレコーダーを法人タクシーの九六%に装着。事前の登録で二十四時間駆けつけ、指示をしなくても決まった産科医に連れていってくれる陣痛タクシーには妊婦の半数が登録しています。これらは営業努力であると同時に、運行に責任を持つ体制があり、乗務員の運転経歴が明らかな事業者によるドア・ツー・ドアの公共交通として社会に役立っている取り組みであります。
 新年度予算には、環境性能が高くユニバーサルデザインのタクシー普及に六十一億円が計上されました。都がいち早く取り組んできた自動車の環境負荷低減をより一層推進するだけでなく、スーツケースを引いた旅行者、ベビーカー、車椅子の方も使いやすいタクシーを普及させるものです。
 私は、これに伴って東京のタクシーがあらゆる乗客に対応するプロの仕事として、観光、子育て、高齢、障害など各分野にも貢献することにつながる波及効果のある施策と捉え、大変期待しています。
 そこで、環境性能が高く誰にでも優しいタクシーの普及促進補助を創設した狙いについて、知事に伺います。
 タクシー業界では、TOEIC公開テスト六百点以上というドライバーの外国語研修に取り組んでおり、一定レベル以上の質が確認できるタクシードライバーについては、構造改革特区で認められた通訳案内士法の資格がなくても、有料で観光案内ができる特例ガイドの実現を求める要望もあります。
 そこで、私は、そうした特例ガイドを実現することで、観光振興の一助として東京に観光客を積極的に誘致すべきだと考えますが、見解を伺います。
 さらに、出生率の低い都市部における子育て環境づくりの一環として、現在、タクシー事業者が取り組んでいる陣痛タクシーについて、女性が安心して出産できる環境づくりの一助として、出産時にタクシーを利用した際に料金の一部が還元されるような支援を区市町村と連携して取り組むべきだと考えますが、見解を伺います。
 先日起きた長野県のスキーバス事故は大変痛ましい出来事でした。消費者がバス会社やツアーを選ぶときに、安全のコストまでカットしている事業者なのかどうか直接確認はできず、安全確保に行政が担う役割は大きいものと考えます。
 バスのサービスは、ドライバーが多くを担う労働集約型であり、労働環境はサービスの質に直結します。社会保険未加入や連続勤務など論外であり、労務管理や運行管理が適切に行われる必要があります。
 バス事業者には、運輸局が監査指導を行っていますが、旅行会社には、観光庁と連携しながら都が立入検査を行っています。私は、バス会社に発注を行う旅行会社に対して、安全性の確保を十分に踏まえて注文するように、都として対応を図るべきだと考えますが、見解を伺います。
 交通運輸関係者からは、車内人身事故撲滅の取り組みを求める要望もありました。知事はスキーバス事故に触れ、日本のシートベルトの着用率の低さを指摘しておりましたが、路線バスでも、走行中のバス車内を移動して転倒するなどの事故が多いようです。
 これに対し、各事業者は取り組みを強化しておりますが、自転車の急な飛び出しなどにより、車内人身事故に至っているケースも多くあります。
 そこで、私は、今後このような事故をなくすためにも、自転車を利用する人へ、ルールやマナーを幅広く普及するため、東京都や各事業者、警察などが一体となったキャンペーンを実施することや、バス利用者への啓発など車内事故防止対策を進めるべきだと考えますが、見解を伺います。
 最後に、伝統工芸品について伺います。
 皆さんはこのポスターをご存じだと思います。これは昨年九月に開催された第三回定例議会の告知ポスターです。これは江戸つまみかんざしといって、七五三や成人式のときなどに着物の女性が髪につける装飾品でございます。
 実はこれは、二〇一二年のロンドン・オリンピック時に開かれたジャパンハウスの受付にも展示され、オリンピック日本誘致の成功に一役買っています。
 また、このパネルは、前回の第四回定例議会のポスターで、組みひもでございます。そして、今の定例会のポスターがこれになるわけでございますが、これは江戸衣装着人形であり、昨年の第二回の切り子も含めて、今年度は続けて伝統工芸品が使われています。
 このような伝統工芸品は、次世代へと受け継ぐべき価値のある産業であり、わざを伝承していく必要があります。
 しかしながら、物によっては需要が低迷しており、事業の継続が難しいのも現状です。伝統工芸品のPRや販路の拡大など、都の積極的な支援が必要だと思いますが、都の所見を伺いまして、私の質問を終了させていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 大西さとる議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、週休三日制でありますけれども、成熟した社会におきましては、物質面のみならず、時間的にもやっぱりゆとりがなければ豊かさを享受できないと考えております。
 私がワークライフバランスということを非常に強調して、週休三日制ということを提唱しているのは、まさにこういう成熟した社会をつくりたいからでありまして、週休三日制が実現しましたら、より健康で文化的な生活が可能になるとともに、例えば育児とか介護の問題の解決にもつながるというふうに考えております。
 いろんな意見はあると思いますけど、誰かが声を上げなければ社会は変わらないと思いますので、私がこうして提唱しているわけであります。
 ただ、現実には、企業の規模とか業種によって働き方も多種多様なので、そう簡単にいかないという声も当然あるわけであります。
 そこでまず、やはり生産性を上げると。のんべんだらりとやっているから時間がかかっちゃうので、同じ仕事をやるのに短時間でやればいいわけですから、生産性の向上を図るということは非常に重要ですし、それから、やはりこれまでの働き方を思い切って改めようと、こういう企業がふえることは大変好ましいと思います。
 そこで、働き方の改革という機運を醸成するために、労使団体とともに東京都は共同宣言を行ったわけであります。来年度は、企業自身が働き方の見直しを宣言する制度を創設します。そして、具体的な取り組みを促すとともに、生産性の向上に向けた支援も行いたいと思っています。
 こうした取り組みによりまして、豊かな生活を享受できる社会を実現していきたいと思っております。
 それから、ユニバーサルデザインタクシーの普及でありますけれども、温室効果ガスを削減するためには、一日の走行距離が長いタクシー、これをハイブリッド車や電気自動車など環境性能の高い次世代型に変えていくということが必要であります。
 二〇二〇年のパラリンピック大会の成功のためには、やはり交通機関を含めて、バリアフリー化に都市全体が取り組まなければならないというふうに思っておりますので、そういう意味で、まずハイブリッド車や電気自動車、そこにスロープやリフトを装備して車椅子のままで乗っていける、こういうユニバーサルデザインタクシーを二〇二〇年までの五年間に一気に一万台ふやしていけるように、総額で六十一億円の新たな補助制度を創設したいと思っております。
 この取り組みを通じまして、地球温暖化防止に貢献するとともに、誰もが、健常者も障害者も快適に移動できる東京をつくり上げて、二〇二〇年東京大会のレガシーとして次の世代に引き継ぎたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 都内のタクシー事業の適正化についてでございますが、国は、いわゆるタクシー適正化・活性化法に基づき、利用者とタクシーとの需給バランスを確保するため、タクシー事業者に供給削減義務が生じる特定地域や、業界の自主的な取り組みを促す準特定地域を指定しております。
 都内は、平成二十六年に四つの圏域に分けられ、いずれも準特定地域に指定されております。
 都としましては、この指定に基づき、事業者や地元自治体等を構成員として設置されております協議会に参画しており、引き続き状況を見守ってまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、女性が働きやすい職場環境の整備についてでありますが、都は、女性の能力発揮を推進する社内責任者の育成やテレワークの導入等に要する負担の軽減など、ソフト、ハード両面から中小企業に対して支援をしております。
 また、良好な労働環境の整備については、事業主の理解が不可欠であり、労働相談情報センターで実施している職場のハラスメント防止や労働法に関するセミナー等を通じて意識啓発を行っております。
 今後とも、女性が生き生きと活躍できる職場環境の実現に向け、取り組んでまいります。
 次に、タクシーを活用した観光振興についてでありますが、外国人旅行者がタクシーを利用し、ドライバーから案内を受け快適に観光できる環境をつくることは重要でございます。
 現在は、外国語で有料の観光案内を行う場合、国家資格の取得が不可欠となっております。
 都は、来年度に、そうした規制の緩和を可能にする特区制度を活用し、ドライバーが都の研修を受けた後に、有料で案内業務のできる制度の導入に取り組んでまいります。
 これにより、外国人旅行者への観光サービスの向上を図ってまいります。
 次に、旅行業者への対応についてでありますが、観光旅行の移動手段となるバスの手配を行う旅行業者が、安全の確保を最優先にすることは不可欠でございます。
 都は、事故発生後速やかに、都の所管の旅行業者に対して、安全の確保と事故の再発防止の徹底を通知により要請をいたしました。さらに現在、安全確保の状況などについて、旅行業者の立入検査を行っており、その結果を踏まえ、国と協議をしながら適切に対応してまいります。
 最後に、伝統工芸品産業に対する支援についてでありますが、伝統工芸は、江戸時代から続くものづくりのすぐれた蓄積を現代に伝えるものであり、こうした特色ある産業をさらに発展させ、将来に引き継いでいくことが重要でございます。
 このため、都は、東京都伝統工芸品展を毎年開催し、実演や製作体験、展示販売を行うほか、出展支援などにより、伝統工芸品の普及促進と販路開拓を行っております。
 また、職人とデザイナー等の協働による商品開発支援も実施をしているところでございます。
 今後は、こうして開発した商品を含め、国内外の展示会出展への支援を拡充するなど、伝統工芸品産業の持続的発展につなげてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、未婚のひとり親に対する寡婦控除の適用についてでありますが、寡婦控除は、配偶者と死別あるいは離婚した後、婚姻をしていない人で、生計を一にする子がいる場合などを対象とした税法上の所得控除でございます。
 現在、婚姻歴のないひとり親について、寡婦控除の適用があるとみなして保育料を算定する区市町村もございますが、これは実施主体としての判断で行っているものでございます。
 寡婦控除の適用範囲の拡大につきましては、税法上の問題であり、婚姻歴のないひとり親は、税負担に加え、保育料を初めさまざまな制度の利用料等においても控除の対象となるひとり親世帯との間で経済的負担に差が生じていることから、都としては、婚姻歴のないひとり親にも寡婦控除を適用するよう、他の道府県とともに国に要望しております。
 次に、出産時のタクシー利用料の助成についてでありますが、子ども・子育て支援新制度では、子育て支援の実施主体は区市町村でございます。妊婦の方へのタクシー券の配布などを実施している区市町村もございますが、子育て家庭にどのような内容の支援を行うかは、地域の実情に応じ、区市町村で判断すべきものと認識しております。
 なお、帝王切開など医療保険が出産に適用された場合、この医療費は所得税の医療費控除の対象となります。その場合には、必要と認められた場合、タクシー代等の交通費も医療費控除の対象となります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) 自転車利用者への交通ルールの周知とバス車内の事故防止についてですが、都は、自転車安全利用推進計画に基づき、警視庁、区市町村、民間事業者など関係団体と連携し、キャンペーンや交通安全教室の開催、自転車安全利用リーフレットの配布などを通じて、自転車利用者に対し、一時停止の遵守等、交通ルールの周知徹底を図っております。
 また、バス車内の事故防止については、関東運輸局や各バス事業者等において安全運行対策を推進しているところでございます。
 今後も引き続き、首都交通対策協議会等の場も活用しつつ、関係機関と連携し、交通事故の削減を目指した取り組みを推進してまいります。

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