平成二十八年東京都議会会議録第三号

○議長(川井しげお君) 十七番栗林のり子さん。
   〔十七番栗林のり子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(栗林のり子君) 初めに、児童虐待防止について伺います。
 平成二十六年度の都の虐待相談対応件数は約八千件であり、年々増加傾向にあります。残念ながら、ことしに入ってからも、連日のように幼い子供が虐待死するというニュースが後を絶ちません。
 パチンコへ行くために、六歳の息子を全裸で寒い浴室に監禁した親や、十代の娘の舌に火のついたたばこ押しつけたり、金魚の死骸を三十匹食べさせるといった猟奇的な虐待を繰り返していた母親など、耳を疑うような残酷きわまりない現状に胸が締めつけられます。
 先日の狭山市の三歳の女の子が死亡した虐待事件では、母親が昨年、三人目の子供を妊娠の際、パートナーの欄は空欄で市に届けていました。こういった場合、国や市のマニュアルには虐待リスクがあるとされております。しかし、その後の調べで、市は聞き取りをしていなかったことも判明しました。それだけではなく、乳幼児健診の未受診など、幾つかの虐待のサインに気づくチャンスを逃していたこともわかり、問題になっています。
 一つ一つの小さな兆候も、関係機関の情報を一元化すれば重大な事例の発見につながります。助けてという子供の心の声を受けとめ、この東京から犠牲になる子供をなくさなくてはなりません。
 そこで、こういった実態を踏まえ、児童虐待撲滅に向けた知事の決意を行います。
 厚生労働省の調べによると、虐待に至るおそれのある要因として、第一に、母親の発達障害傾向、産後鬱症状、低年齢、妊娠時の状況など、第二に、子供側のリスク、第三に、配偶者からの暴力等、養育環境の要因が挙げられています。
 先日、児童虐待の発生と重症化に関連する個人的要因と社会的要因についての研究を発表された国立成育医療研究センター研究所の藤原武男医師にお話を伺いました。虐待対策を効果的に進めるには、保健機関の妊娠期からのシステム的支援や児童相談所及び区市町村虐待事例報告システムの改善、また、虐待対策の地域アセスメントが重要であり、虐待は防ぐことができるという認識に立って、行政側は最新の情報を学び続けなくてはいけない、子供は声を出せないので、行政がきちんと子供を守るべきだと述べられています。核家族化や地域の人間関係の希薄化などから、ますます行政が担う役割が求められています。
 都は、我が党の提案を受け、妊娠期から出産、子育て期にわたる切れ目のない支援、ゆりかご・とうきょう事業に取り組んでいるところではありますが、児童虐待を防止するためには、さらなる拡充と新たな対策が必要であります。
 そこで、女性の心身の健康の保持と児童虐待未然防止を図る取り組みについて伺います。
 また、各区市町村の子供家庭支援センターなどの関係機関の連携と、担当者の見抜く力をつけるスキルアップも欠かせません。変化する情報の共有化や、児童相談所の担当者の専門性向上も必要です。
 また、警察から児童相談所に通告があった後の対応など、継続的な追跡調査の強化も必要です。あわせて見解を伺います。
 次に、小中学校における不登校対策について伺います。
 平成二十六年度の不登校児童生徒数は約一万人となっており、長期化するケースも少なくありません。
 私がご相談を受けた方は、小学校二年生のときに受けたいじめが原因で、中学校二年の現在まで学校に行くことができず自宅で過ごしています。本来ならば学校で多くのことを学び、友人と思い切り遊び、たくさんの経験をするのがこの時期です。少しでも同じ経験ができるよう支援をする必要があります。
 不登校の小中学生のための学習の場であり、さまざまな体験もできる適応指導教室などへ、ひきこもりがちな児童生徒が月一度でも通室できるような支援や、不登校の児童生徒に寄り添う訪問支援など、取り組みを強化するべきと考えます。見解を伺います。
 次に、子育て支援員制度について伺います。
 保育所待機児童解消対策や保育人材確保対策も含め、多様な子育て支援を担うためにスタートしたのが子育て支援員制度であります。この制度は、国の制度ではありますが、支援員研修を修了すると、地域におけるさまざまな子育て施策の担い手として活躍できる制度です。
 都は、昨年九月から研修を開始したところではありますが、地域の実情や多様な子育て支援ニーズに応じていくためには、さらなる子育て支援員の養成が急務であります。
 都は現在、子育て支援員研修を東京都福祉保健財団一カ所に委託していますが、応募者が多く抽せんとなり、受講できなかった方もいると聞いています。
 多様な子育て支援サービスの担い手を確保するために、子育て支援員の養成を拡充するべきと考えますが、見解を伺います。
 子育て支援員として認定された方が地域での保育の担い手として活躍するためには、研修直後から働く場所を円滑に見つけられることが重要です。
 先日、第一回目の認定を受けた方が住んでいる市の窓口に問い合わせをしたところ、その市では家庭的保育制度が導入されていないため、すぐに認定の資格を生かす場所がなかったとのことです。
 区市を超えて広域的に活用ができるようにする必要があります。子育て支援員の認定を受けても、活躍の場を橋渡ししなければ十分な活躍はできません。
 今後は、都内全域で子育て支援員を保育人材としてさらに活用するべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、子供を犯罪被害から守る取り組みについて伺います。
 子供たちを取り巻く環境はますます危険にさらされている現状です。子供たちの安全・安心を確保するには、地域での見守り活動だけでなく、子供自身がみずから危険を回避する力を身につけることが重要です。
 子供たちが危ない目に遭ったときにどのように行動すればいいかを教えるための防犯キーワードとして、イカのおすしがあります。知らない人についていかない、知らない人の車に乗らない、大きな声で呼ぶ、すぐ逃げる、知らせるです。このような言葉は小さな子供にもすぐに覚えられ、一生記憶に残ります。
 都はこれまでも、学校教育の場や警視庁等が実施する防犯イベントで周知してきましたが、悲しい事件が二度と起こらないよう、引き続き周知、普及するべきであります。
 また、子供が危険に遭遇した際に、すぐに行動できるよう体で覚えることも必要です。
 都は、体験型の訓練の実施など、子供がみずからを助ける力を身につける取り組みを、区市町村への普及を含め、積極的に推進していく必要があると考えます。青少年・治安対策本部の見解を伺います。
 次に、ふれあいポリスについて伺います。
 警視庁が五年ほど前から推進しているふれあいポリスは大変好評です。私の地元世田谷の高齢者クラブの新年会で毎年防犯講話をしてくださいますが、参加者が一番熱心に耳を傾けるのがふれあいポリスの防犯講話です。特殊詐欺に関するリアルタイムな情報を、高齢者にわかりやすくユーモアあふれる語りで伝えてくれます。
 警察官の制服ではなく、私服にふれあいポリスのベストと腕章といういでたちで活動し、地域の人々に親近感を与えています。高齢者などの声を積極的に聞きながら、その意見、要望などを警察活動に生かすことにより、犯罪の起こりにくい社会づくりを推進する極めて大事な制度です。
 今後さらに進む高齢社会においても大変有効な制度であると考えますが、ふれあいポリスの今後の取り組み方針について伺います。
 次に、通称DJポリスとして話題になった機動隊の広報係について伺います。
 平成二十五年六月にサッカー日本代表がワールドカップ出場を決めた際、渋谷駅前に集まった大勢のサッカーファン、サポーターに対し、心を引きつける高度な話術により、安全かつ適切に誘導したことが絶賛されたことは記憶に新しいところです。
 今後、東京で開催されるラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックなどを見据え、外国人対応などさらなる活躍の場が広がり、世界から注目されることは間違いありません。
 そういう意味では、さらなる技術向上に向けた訓練の強化充実が必要と考えますが、見解を伺います。
 最後に、特別支援学校における通学支援について伺います。
 知的障害特別支援学校の小中学部にはスクールバスが配車されていますが、高等部においては、卒業後、会社や作業所等に通勤できる力を身につけるために、一人通学を原則としています。
 しかし、障害の程度が重い生徒の通学支援としてスクールバスを配車されていますが、私の地元の都立青鳥特別支援学校には、こういった生徒に対してスクールバスの配車がされておりません。そのため、スクールバスのある遠方の学校を選択する状況が生じています。保護者も長年、バスの配車を要望され続けています。
 一人で通学することが困難な生徒も希望する学校へ進学ができるよう、まだ配車されていない知的障害特別支援学校にスクールバスを配車するべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 公明党は、どこまでも一人に光を当て、誰も置き去りにしない社会の構築を目指し、全力で都政課題に取り組むことをお誓いし、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、児童虐待でありますけれども、多くの関係者の懸命な努力にもかかわらず、痛ましい虐待事件が、ご指摘のように後を絶ちません。
 一つ一つの事件を聞くたびに非常に強い憤りを覚えますとともに、何とか救えなかったのかなと。例えば、親への支援が十分だったのか、それから、関係機関の連携をちゃんとやっていたのかと、そういう思いに駆られるわけでございます。
 この児童虐待をなくすということのためには、都民一人一人、それから地域の民間団体、学校、それから児童相談所、さらに子供家庭支援センター、警察などの行政機関、これらが連携をして力を合わせていく必要があると思っています。
 そこで、都は来年度、児童相談所の体制を一層強化するために、児童福祉司、児童心理司を大幅に増員したいと思っております。
 また、子供家庭支援センターの専門職を増員するなどして、現場の区市町村の虐待対応力の向上も図りたいと考えております。
 全ての子供は日本の未来、希望でございます。その健やかな育ちを支えることは、社会全体の責務であると考えております。東京都はその先頭に立ちまして、地域の関係機関の力を束ねながら、児童虐待の防止に全力を挙げて取り組んでいく決意でございます。
 そのほかの質問につきましては、警視総監、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔警視総監高橋清孝君登壇〕

○警視総監(高橋清孝君) 二点お答えいたします。
 まず、ふれあいポリスについてでありますが、犯罪の起きにくい社会づくりには、地域のきずなの強化と社会の規範意識向上等が重要であります。
 このため警視庁では、平成二十二年から、警察署ごとに地域実態に精通したベテラン警察官をふれあいポリスに任命し、現在、十二署で二十一名が活動しております。
 ふれあいポリスは高齢者の集いなど各種行事に参加し、高齢者や子供たちと触れ合い、地域の実情や住民の要望等を把握するとともに、地域の安全に必要な情報を発信するなど、管内住民の方々との連携を強化しているところであります。
 こうした活動は、警視庁が取り組んでいる高齢社会総合対策にも有効であることから、今後も、ふれあいポリスの活動を推進してまいりたいと考えております。
 次に、機動隊広報係についてでありますが、同係は、祭礼、花火大会、スポーツイベントなど多くの人が集まる行事の際、現場の状況に応じて、混雑した中でも聞き取りやすい声で、わかりやすく工夫を凝らした表現を用いて、人々を安全かつ適切に整理誘導する役割を担っております。
 このため、警視庁では、機動隊広報係員等を対象とした技能検定を行うとともに、広報競技会を開催しており、日ごろからさまざまな現場を想定した訓練を実施することにより、技能向上に努めております。
 今後は、こうした取り組みをさらに強化するとともに、訪日外国人のさらなる増加に対応するため、外国語による広報など、さまざまな人を安全かつ適切に整理誘導する広報の技能向上を図ってまいります。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、不登校の小中学生への支援についてでございますが、不登校対策は、不登校を未然に防止するとともに、不登校に至ったとしても、児童生徒の学校への復帰や将来の自立に向けて、個々の状況に応じたきめ細かな支援を行うことが不可欠でございます。
 このため、来年度、新たなモデル事業として、学校の未然防止の取り組みの充実とともに、区市町村教育委員会において、学校や福祉等関係機関との支援ネットワークを構築し、スクールソーシャルワーカー等を活用した支援チームにより、家庭への訪問支援等に取り組んでまいります。
 また、不登校児童生徒を支援する適応指導教室の充実を図るため、フリースクール等、民間団体の教育プログラムを試行的に活用するとともに、有識者や区市町村教育委員会から成る検討会を設置し、適応指導教室のあり方などを検討してまいります。
 これらの取り組みを着実に推進し、支援を強化してまいります。
 次に、特別支援学校のスクールバスについてでございますが、都立知的障害特別支援学校高等部の生徒については、学校卒業後に社会や作業所等に一人で通勤できる力を身につけるため、一人通学を原則としておりますが、障害の程度が重い生徒の通学支援としてスクールバスの配車も行ってきております。
 お話のあった青鳥特別支援学校及び田園調布特別支援学校の二校には、学校付近の道路事情等により、これまでスクールバスを配車してきませんでしたが、当該校等と検討を重ねてきた結果、車両の小型化や登下校時以外はバスを校内にとめておかないなどの工夫により、来年度からスクールバスを配車することといたします。
 今後も、都教育委員会は、都立特別支援学校の通学環境の充実に努めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、女性の心身の健康の保持と虐待防止についてでありますが、虐待のリスク要因には、生活のストレスや社会的な孤立、望まない妊娠、子供の疾病など多様な要因があり、区市町村では、妊娠届の受理や乳幼児健診等のさまざまな機会を通じて、支援を要する家庭の早期発見に努め、必要なサービスや支援につなげております。
 都は、こうした区市町村の取り組みを強化するため、妊娠期から家庭の状況を把握するゆりかご・とうきょう事業を開始いたしました。現在十三の区市町村が実施しており、来年度は四十一の区市町村での実施を見込んでおります。
 また、妊娠、出産、子育て、健康に関する相談窓口をインターネット広告などにより周知するほか、来年度は、妊娠相談ほっとラインの受け付け時間を拡充するなど、悩みを抱える女性を適切な支援につなげてまいります。
 次に、虐待対応力の向上と関係機関の連携についてでありますが、都は来年度、虐待対応力の向上を図るため、児童相談所に人材育成を担う児童福祉及び児童心理の専門課長を増員するとともに、新任職員の個別指導等を行う児童福祉司や児童心理司のOBも増員いたします。
 また、関係機関との連携や調整を行うために、子供家庭支援センターに配置している虐待対策コーディネーターの増員を支援するとともに、区市町村職員等の研修の充実を図ってまいります。
 現在、都内の全ての区市町村は、子供家庭支援センター、児童相談所、学校、警察、保健所等の地域の関係機関で構成するネットワークを構築しており、今後とも、各関係機関が情報の共有を図りながら、援助方針等を確認し、児童や家庭への適切な支援を行ってまいります。
 次に、子育て支援員の養成についてでありますが、都は、昨年九月から、小規模保育等の地域型保育事業、子育てひろば等で実施している利用者支援事業、学童クラブ、社会的養護等の四分野八コースの研修を開始し、年度内に合計十七回、定員千三百六十名の規模で実施することとしております。
 来年度は、より多くの支援員を養成するため、研修回数を合計二十八回にふやし、定員も八百八十名増の二千二百四十名に拡充する予定でございます。
 現在、区市町村やNPO法人などの事業者からも研修実施の希望が寄せられており、今後とも、地域における多様な子育て支援サービスの担い手を確保するため、子育て支援員の養成を積極的に進めてまいります。
 最後に、子育て支援員の活用についてでありますが、子育て支援員制度は、小規模保育や家庭的保育、学童クラブ、子育てひろばなど、地域における子育て支援の担い手を確保するために創設された認定制度でございますが、今年度から養成を開始したばかりであり、まだ十分な活用が進んでおりません。
 現在、希望者には、就労に向けたマッチングから定着支援までを行う保育人材、保育所支援センターや区市町村におきまして求人情報を提供しております。
 今後、子育て支援員が地域の実情に応じて活用されるよう、子供、子育て支援の実施主体である区市町村や事業者等に制度の周知を図ってまいります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) 子供を犯罪被害から守る取り組みについてですが、子供が安全に安心して暮らしていくためには、子供自身の犯罪被害防止能力を高めていくことは重要であると認識しております。
 これまで都は、地域安全マップづくり推進事業や子供一一〇番の家等への駆け込み体験訓練モデル事業を都内各地の公立小学校で実施し、区市町村への普及を図ってまいりました。
 これまでの取り組みにより、地域安全マップづくりの公立小学校における実施率は年々上昇するとともに、駆け込み体験訓練も区市に一定の浸透が見られるところでございます。
 来年度は、都内全ての小学校向けに教員用地域安全マップづくりマニュアルを作成、配布するなど、子供の犯罪被害防止能力を向上させる体験型の訓練等が区市町村に定着するよう、都として積極的に取り組んでまいります。

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