平成二十八年東京都議会会議録第三号

○議長(川井しげお君) 二十三番舟坂ちかお君。
   〔二十三番舟坂ちかお君登壇〕

○二十三番(舟坂ちかお君) 初めに、空き家対策についてお伺いをいたします。
 都内には八十二万戸の空き家が存在し、この中には、老朽空き家など地域の住環境に悪影響を与えているものがある一方で、腐朽、破損のない利用活用可能な空き家は六十六万戸あります。
 住宅は使われないと、老朽化の進行は早まります。空き家を積極的に利活用する意識を持たないまま放置してしまうと、いざ利活用しようと思ったときには、修繕に多額の費用がかかってしまうことになってしまいます。また、空き家を抱え、どうしてよいか相談する先もわからず、空き家をそのままにしておくという所有者が相当数存在しております。
 空き家の適正管理や利用活用を進めるためには、所有者に管理の重要性を周知するとともに、きめ細かな助言を行うことが重要と考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、オリンピック・パラリンピック大会についてお伺いいたします。
 二〇二〇年に開催されるオリンピック・パラリンピックでは、二百以上の国、地域から選手が参加するとともに、監督やコーチ、メディアなど大会関係者、観客など、多くの外国人の方が東京を訪れます。
 こうした外国からの来訪者を案内する役割を担うこととなるのがボランティアであり、大会運営上、果たす役割は非常に大きいと考えます。
 特に、日本は外国からの来訪者にとっては、言葉の障壁が厚いと考えられているのではないでしょうか。選手はリラックスして競技に集中し、観戦に訪れた観光客は安心して東京観光を楽しむ。そのためには、まず、東京の顔となるボランティアの方々と円滑なコミュニケーションをとれることが重要となります。
 ロンドン大会では、英国に在住する多くの語学ボランティアが、選手村や競技会場、メディアセンターなど、さまざまな場面で活躍し、世界各国からの選手や来訪者に丁寧に接していたとのことです。日本選手団についても、在英の日本人ボランティアがサポートし、好評を得ていたと聞いております。
 二〇二〇年大会においても、ボランティアが選手や大会関係者、観客に対し、さまざまな外国語で適切に対応していくことが必要であると考えますが、外国語での対応が可能なボランティアをどのように確保していくのか伺います。
 二〇二〇年大会の期間中、多言語によるボランティアの案内により、東京を訪れた外国からの旅行者には、大会会場のみならず、都内のさまざまな場所で、東京の滞在を楽しんでいただくことを願っております。
 しかし、快適な滞在には、安全・安心が確保されていることが大前提となります。その点、東京は世界の大都市と比較して治安のよい都市としても知られております。オリンピック・パラリンピックの招致に際しても、この点は大きな強みであったと聞いております。
 一方、世界の注目が東京に集まるオリンピック・パラリンピックの開催に当たっては、悪意を持った者から標的とされる危険も十分に考えられます。これまで日本において当たり前だったことが、二〇二〇年にそのまま通用すると考えるわけにはいきません。しかも、今や、テロなどのリスクは、比較的警備の緩やかなターミナル駅や公園、美術館など多くの人の集まる場所にも存在します。
 二〇二〇年大会を史上最高の大会にするためには、大会を訪れる人々が、交通機関や観光施設などさまざまな場所で、安全・安心面でも東京はすばらしいと実感できる万全なセキュリティー対策が必要です。
 二〇二〇年大会に向け、都はどのようにセキュリティー対策に取り組むのかお伺いをいたします。
 次に、東京水道の魅力を発信する取り組みについてお伺いをいたします。
 私は、金町浄水場を初め、一〇〇%高度浄水処理された東京の水は世界最高だと考えております。水道水が飲める国は世界では数少ないにもかかわらず、東京でおいしい水がいつでも身近に飲めることが、余り知られていないように見受けられます。
 折しも二年後の二〇一八年には、水の関係者が一堂に会するIWA世界会議、いわゆる水サミットが日本で初めて東京で開催をされ、二〇二〇年には、東京オリンピック・パラリンピックが控えております。
 それらを見据え、国内外の多くの方々に東京の水道の魅力を発信する取り組みが必要だと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 水道局では、今月、新たな取り組みとして、東京水道イノベーションプロジェクトを発表いたしました。その中の施策に、水筒などに水道水を補給する装置を、人が多く集まる施設などPR効果の高い場所で広めていく、ボトルディスペンサー設置モデル事業があります。
 都民の水分補給に一役買うとともに、水道水は、製造や輸送にかかわる二酸化炭素の発生が極めて少ないなど、環境への優位性を発揮し、安全でおいしい東京の水道のすばらしさをぜひ感じてもらいたいと思います。
 そこで、このボトルディスペンサー設置モデル事業の今後の展開についてお伺いをいたします。
 また、このプロジェクトでは、東京の都市力向上や国内外への貢献といった視点に基づく施策が盛り込まれております。こうした施策は、世界一の都市を目指す東京にとって、極めて有意義だと考えます。
 このため、幅広い施策で構成されたこのイノベーションプロジェクトをしっかりと推進していくことが重要だと考えますが、今後の具体的な取り組みをお伺いいたします。
 次に、災害に強いまちづくりについて伺います。
 私は常日ごろ、自然災害に脆弱な環境にある下町や城東地域の都民の命と財産を守ることが重要と考えております。城東地域は、東京、日本の近代化の原動力となり、工業化を推し進め、地下水を利用し、生産性を上げ、日本の経済成長に貢献してまいりました。当時は、自然環境への影響についても危機感が薄く、産業優先の声が圧倒的に強かった背景もありますが、地盤沈下対策はおろそかでした。そのため、海抜ゼロメートル以下の地域が多く存在し、水害が発生する危険性が高くなっております。
 また、葛飾区、墨田区、足立区などの荒川沿いには、木造住宅密集地域が広がっており、災害時には特に甚大な被害が想定されております。世界一の都市東京の実現には、東京全体の安全・安心の確立が不可欠と考えます。
 そこで、災害に強いまちづくりについて、知事の見解をお伺いいたします。
 次に、スーパー堤防について伺います。
 かつて、スーパー堤防は不要と声高に訴えた政党がありました。確かにスーパー堤防が完成するまで長い時間がかかりますが、これを克服せず、無駄なこととして大切な政策を放棄してしまいました。このような政党には、地域の人々の命と財産を守ることはできません。
 自民党は、都民の生命、財産を守り、次世代に安全で安心のできる都市を引き継いでいくために、さらに努力してまいります。
 東部低地帯は、国と都が管理する河川に囲まれており、それぞれの区間でスーパー堤防が連続することにより、多くの都民の生命、財産を守ることになり、その効果ははかり知れません。
 また、都が進めるスーパー堤防は、国よりも小規模ではありますが、背後の公園等と連携すれば、津波、高潮の際には避難場所となるなど、単独でも効果を上げます。
 そこで、都のスーパー堤防整備の取り組みについてお伺いをいたします。
 最後に、鉄道立体化について伺います。
 連続立体交差事業は、踏切による交通渋滞を解消するなど、地域の交通環境を根本的に改善します。私の地元、京成本線の連続立体交差事業は、葛飾区内においては、四ツ木駅から青砥駅間を事業中であり、昨年末、工事説明会を開催し、事業は着実に進んでおります。
 一方、京成高砂駅から江戸川駅間の鉄道立体化については、平成二十年から検討を進めているとのことですが、いまだ事業化されてはおりません。京成高砂駅付近は、一時間に五十分以上閉まっている、いわゆるあかずの踏切があり、まちの健全な発展が阻害されております。
 また、大地震や大規模な風水害などの災害時には、列車の緊急停止などに伴い、長時間にわたって踏切が閉鎖され、緊急車両の通行や住民の避難に支障を来すおそれがあることから、防災性の向上にも資する連続立体交差事業に取り組むべきであります。
 そこで、京成高砂駅から江戸川駅間の鉄道立体化に向けた取り組み状況についてお伺いをし、私の質問といたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 舟坂ちかお議員の一般質問にお答えします。
 まず、東京水道でございますけれども、東京には世界一の水道システムがあると、私は常々申し上げております。蛇口をひねっただけでおいしい水が飲める、これはもう東京の大きな魅力であります。
 ご指摘のように、二〇一八年の水のサミット、IWA世界会議、さらに、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会を見据えた施策展開が、この水の魅力を発信するために非常に必要だと思っております。
 そこで、例えばタップウオーター、タップウオーターというのは蛇口という意味ですけれども、タップウオーターステーションを、IWA世界会議の会場であります東京ビッグサイトと、それから現在建設中の武蔵野の森総合スポーツ施設に設置をしたいと思っています。そこにいろんな方が来られて、蛇口をちょっとひねるだけでこの水が飲めると、こういう試みであります。
 また、我々は江戸時代から玉川上水、こういうすばらしい水道の歴史を、世界に冠たるものでありますけれども、持っておりますので、これはぜひ、玉川上水をめぐるバスツアーのようなものを、それからまた、水に関する絵を集める展覧会のようなものも考えたいと思っております。
 こういう取り組みを通じまして、国内外の多くの方々が、東京の魅力を水を通じて再発見すると、こういう取り組みを行いたいと思っています。
 続きまして、災害に強いまちをどうしてつくるかということでありますけれども、いつも申し上げておりますように、安全・安心の確保、これは東京の発展の大前提でございます。首都直下地震、大規模水害、いつ起こるかわかりません。さらに災害に強い都市づくりを進めていきたいと思いますが、ご指摘のように、区部東部には水害の危険性が高いゼロメートル地帯が広がっております。引き続き、防潮堤や護岸、スーパー堤防の整備などに取り組みまして、都民の生命や財産を守っていきたいと思っております。
 荒川沿いを初め、木密地域では、不燃化特区の取り組みや特定整備路線の整備を推進しております。これに加えまして、延焼遮断帯の内側の区域において、生活道路の計画的な整備を図りまして、沿道の建てかえを推進すると。そのことによって、燃えない、そして地震があっても倒れない、こういう市街地につくり変えていきたいと思っております。
 このような取り組みを着実に進めまして、自然災害への備えを確かなものとして、世界一安全・安心な防災都市を築き上げていきたいと考えております。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 空き家所有者への助言などについてでございますが、空き家の適正管理や利活用を進めていくためには、その立地や住民のニーズなど、地域の実情を把握している区市町村の役割が重要でございます。
 このため、都は今年度、区市町村が行う実態調査や、調査を通じた空き家所有者への情報提供などの取り組みにつきまして、財政支援を開始いたしました。
 今後は、空き家の適正管理や利活用に関するリーフレットの配布、ホームページでの公表など、所有者への周知に取り組んでまいります。
 また、区市町村の相談窓口におきまして、具体的な助言を行えるように、不動産や建築などの団体と協定を締結いたしまして、専門家を派遣する体制を構築するとともに、来年度からは、その相談業務に要する費用の助成を実施いたします。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、二〇二〇年大会における外国語での対応可能なボランティアの確保についてでございますが、世界中から東京を訪れる選手や大会関係者、観客をおもてなしする上で、さまざまな言語に対応する語学ボランティアの活躍が必要不可欠でございます。
 今週末に開催されます東京マラソンでは、七百名を超える多言語対応のボランティアが、スタート地点などで外国人ランナーをサポートする予定であります。
 現在、官民さまざまな関係団体が参加する東京都ボランティア活動推進協議会におきまして、大会関連ボランティアの裾野拡大などに関する検討を進めており、この秋を目途に、その戦略を策定いたします。
 協議会には、在日外国人の関係機関、留学生が在籍する大学なども参画しておりまして、東京マラソンでの経験を生かしながら、大会における語学ボランティアの育成や活用について検討を重ね、戦略に反映させてまいります。
 次に、二〇二〇年大会のセキュリティーについてでございますが、都は開催都市の責務として、交通機関なども含め、都内全域において、国内外から大会を訪れる全ての人の安全・安心を確保していく必要がございます。
 このため、現在、庁内横断的な安全・安心部会におきまして、治安、サイバーセキュリティー、災害、感染症の四つの視点から、大会時に想定されるさまざまなリスクの洗い出しを進めております。
 今後は、国にも参加を求め、検討体制を強化いたします。また、鉄道事業者等、幅広い関係機関と連携して、リスクに対応した訓練を重ね、二〇一八年までに対処要領を策定いたします。
 さらに、その翌年に開催されますラグビーワールドカップでの経験も踏まえた検証、見直しを行い、二〇二〇年大会に向けた危機管理体制を構築してまいります。
   〔水道局長醍醐勇司君登壇〕

○水道局長(醍醐勇司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ボトルディスペンサー設置モデル事業についてでありますが、このモデル事業は、都民に外出先でも安全でおいしい東京の水を飲んでいただくとともに、飲料容器を使い捨てせず、マイボトルを持ち歩くなど、環境に配慮した身近な行動に結びつけることを目的としております。
 水道水には、ミネラルウオーターなどのボトルウオーターと比べまして、製造、輸送にかかわる二酸化炭素の発生は極めて少ないという優位性がございます。
 こうした優位性や水質に関する情報をPRする機能につきまして、東京水道仕様のボトルディスペンサーに持たせた上で、水の科学館など水道局の施設を初め、都立のスポーツ施設等に今後幅広く設置してまいります。
 次に、新たなプロジェクト推進の具体的な取り組みについてであります。
 今月始動いたしました東京水道イノベーションプロジェクトでございますが、都市力の向上や国内外への貢献、水道文化の継承などを柱にした新しい戦略でありまして、この取り組みを着実に推進していく必要があります。
 このため、本プロジェクトで示した各施策の具体的なロードマップを今後策定するほか、関係機関と連携して推進体制を確立するとともに、都民参加の仕組みを新たに構築するなど、さまざまな取り組みを展開してまいります。
 IWA世界会議や、二〇二〇年東京大会、さらにその先の将来を見据えまして、多様な主体との連携のもと、本プロジェクトを推進し、世界一の東京水道システムをさらに進化させ、国内外へ発信していきます。
   〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都のスーパー堤防整備についてでございますが、都のスーパー堤防は、地震に対する安全性と河川環境の向上を目的として、川沿いの開発等と一体的に、奥行き最大六十メートルの盛り土を行うものでございます。
 整備対象は、東部低地帯の隅田川、中川、綾瀬川など五河川であり、平成二十六年度までに約十六キロメートルが完成し、現在、三キロメートルで実施中でございます。
 例えば、完成した中川の東立石地区では、葛飾区の公園と一体的な整備を行うことにより、防災活動拠点を形成し、さらに、防災船着き場が設置されるなど、地域の安全を守る一翼を担っております。
 今後とも、都民の命と暮らしを守るため、国のスーパー堤防の整備促進を引き続き求めるとともに、地元区の施設整備や開発等との連携を積極的に図りながら、都のスーパー堤防整備を着実に進めてまいります。
 次に、京成本線京成高砂駅から江戸川駅間の鉄道立体化についてでございますが、連続立体交差事業は、数多くの踏切を同時に除却することで、交通渋滞や地域分断を解消するとともに、防災性の向上にも寄与する、効果の高い事業でございます。
 本区間は、都市計画道路と三カ所で交差し、二カ所があかずの踏切であるなど、鉄道立体化による踏切解消が必要な区間であると認識しております。
 都は、平成二十年に事業候補区間に位置づけ、事業範囲や構造形式などの検討を進めてまいりました。本区間の鉄道立体化には、京成高砂駅付近にある約四・三ヘクタールの車両基地の取り扱いが課題となっており、現在、その移転について検討をしております。
 引き続き、地元区や鉄道事業者と連携し、鉄道立体化に向けて積極的に取り組んでまいります。

○議長(川井しげお君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時二十分休憩

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