平成二十八年東京都議会会議録第三号

○議長(川井しげお君) 八十八番中屋文孝君。
   〔八十八番中屋文孝君登壇〕

○八十八番(中屋文孝君) 初めに、臨海副都心について伺います。
 臨海副都心開発は、昭和六十年代、都心部の地価高騰を背景に、東京が抱えていたさまざまな都市問題を解決するため、広大な更地であった土地に理想の未来型都市を新たに創出していくという大きな夢に向かって計画されたものであります。
 この夢のある開発を強力に進める起爆剤として、平成八年、世界都市博覧会の開催を計画し、着々と準備が進められてきたものであります。
 しかしながら、平成七年に、青島都知事が就任した直後、突如として博覧会の中止を決定し、都民、国民の大きな夢が一瞬にして消滅したという、いわくつきの苦い思い出があるのです。
 都市博中止決定後も、我が党は、この臨海副都心が持つポテンシャルを生かし、開発を推進すべきと提案し、歴代知事も、その重要性を認識して、企業誘致や、にぎわい創出などの取り組みを進めてきたところであります。
 こうしたことを、長年にわたって積み重ねてきた結果、二年連続で、海外でも有名な世界最大級のダンスミュージックフェスティバル、ウルトラジャパンの誘致に成功し、昨年は、海外からの観光客も含め、三日間で約九万人もの集客につながっております。
 訪日外国人観光客の獲得は、日本の力強い経済を取り戻すための最重要な柱の一つです。東京が厳しい都市間競争に打ち勝ち、日本の経済を牽引し続けるためには、臨海副都心に魅力あるイベントを数多く呼び込むとともに、日本の伝統文化などのエンターテインメントも取り入れ、まちのにぎわいを高めていくことが重要であります。
 さらに、この地は、世界一の国際観光拠点へと進化可能なポテンシャルの高い地域であることから、最先端技術を生かし、日本ならではのおもてなし環境の整備を進めていくべきであると思います。
 そのため、今後も、多数の大型ホテルのほか、国際的な大型イベントをさらに誘致し、大人から家族連れまで、全ての人々がにぎわいを楽しめるまちを創出し、臨海副都心が世界一のリゾート地としての価値を高めていく必要があると考えますが、舛添知事には、ここで大きな夢を語っていただき、知事としての所見を伺いたいと思います。
 次に、観光振興について伺います。
 海外から訪れた観光客が、東京の多様な魅力を体験する上で、情報を簡単に入手できる環境を整えることは大切であります。特に外国人の旅行者は、言葉が理解できずに戸惑うことも多く、浅草や上野などの観光スポットで、案内の標識に多言語表記をふやしたり、情報収集に役立つインターネットを使える環境を充実していくことは不可欠であります。
 多言語による案内標識やインターネットへ接続するためのWi-Fiの利用が可能なエリアは整備されつつありますが、新たな情報提供のツールであるデジタルサイネージの導入も含めて、外国語を用いた情報提供体制の充実を、これまでにも増してしっかりと進めていくべきと思います。
 こうした取り組みは、短期間で集中して行うことで、効果がより一層高まることも期待できるため、二〇二〇年の大会開催を見据えて、これからの時期に重点的に力を入れていくことが重要となります。
 東京を訪れた観光客が快適に観光を楽しめるよう、まち中での観光情報の提供に向けた基盤整備について、来年度より、より早く具体的にどのように取り組みを進めるのか、所見を伺います。
 パラリンピック大会のレガシーとして、障害の方も、高齢者も、車椅子を使いながら旅行へ気軽に出かけられるような機会を広げ、定着させる努力は大切であります。
 今でも、浅草のような有名な観光地では、国内外から数多くの人が観光バスで訪れており、今後の高齢社会の進展も考えると、車椅子にも対応した新しい形の旅行の普及が、より一層重要になります。
 先般、我が党が、昨年の第四回定例会で、リフトつき観光バスの導入支援に加え、バスの駐車場から観光スポットまでの安全な移動の確保に向けた総合的な提案を行ったところです。車椅子の利用者が不便を感じることなく安心して旅行を楽しむためには、観光地での地域を挙げた受け入れ体制をしっかりとつくり上げていくことが重要です。
 こうした視点に立ち、リフトつき観光バスの導入による快適な旅行環境の整備に向け、都は具体的に来年度からどのように取り組みを進めるのか、お考えを伺います。
 東京は、かつては水の都ともいわれ、大小さまざまな河川から、人や物資の輸送が盛んに行われ、観光地も川べりに開けるなど、水と舟運とが都市の活動の基礎をつくり上げていたといっても過言ではないと考えております。
 例えば、浅草は、江戸時代には隅田川沿いに寺院や見せ物小屋などが数多く建ち並び、大変なにぎわいがあり、現在でも灯籠流しなど、さまざまなイベントが催されております。
 こうした中、水辺に着目して、東京のまちづくりを進める発想が改めて見直されて、観光資源として活用を進める動きも、各地域で着実に出てきているように感じております。特に、舟運を通じて、昔ながらの魅力を残す都内の河川のポテンシャルを引き出すとともに、それに加え、水上交通のかなめとなる船着き場や、その近隣に旅行者が立ち寄るようなルートを、地元からの話などを十分に聞きながらつくり上げていく取り組みこそ必要になるものと思います。
 そのため、水辺のエリアの状況に詳しく、にぎわいの創出を前向きに進めていこうとする地域の観光関連団体などと協力しながら、着実な取り組みを進めていく必要があると思いますが、都の見解を伺います。
 次に、テロ対策について伺います。
 フランスのパリで発生した同時多発テロ発生後も、世界各地では爆弾テロなどの事件が後を絶ちません。
 四年後にはラグビーワールドカップ、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックといった世界的なスポーツの祭典が順次開催され、味の素スタジアムや新国立競技場などの各種競技会場には、各国の要人や何万人もの観客が集まります。こうした場所で、一たびテロのような事件が起これば、多数の傷者が発生し、火災も起こるかもしれません。今から、万が一の事態に備え、念には念を入れて準備をしておくことが非常に重要であります。
 東京の消防力は、先般、エアハイパーレスキューが発隊いたしましたし、車両、資器材も充実しており、日本で随一の能力を持っております。また、生業の傍ら、日夜、災害対応に当たっている消防団といったすばらしい組織もあります。
 そこで、同時多発テロに対応するため、各消防部隊を統制し、的確に素早く活動できる体制を整えるとともに、味の素スタジアムなどを使い、エアハイパーを初めとした部隊が実際の場面を想定した訓練を実施するなど、具体的な取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 続いて、治安対策についてです。
 都内の刑法犯認知件数は、平成十四年をピークに、街頭犯罪などが大きく減少し、平成二十七年は、十三年連続減少して十四万八千件と戦後最も治安のよい状況となっております。こうした背景には、警察の取り締まりに加え、防犯ボランティア団体による地道なパトロール活動等によるところが大きな要因として考えられます。
 都内の防犯ボランティア団体は、平成十五年から約二十六倍に増加し、現在、四千団体が活動しています。都でも、これまでリーダー育成や防犯カメラの設置補助など、防犯ボランティア団体に対する取り組みや支援を進めてきたことが団体数の増加につながりました。
 今後、東京は、三年後にラグビーワールドカップが、そして四年後には東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック大会が開催され、都民生活においても、ハード、ソフトの両面でさまざまな変化が生じます。
 このような状況下では、地域においての警察や行政などとの連携や情報発信、共有が何よりも重要です。そのため、行政が地域で活動するボランティア団体をしっかり把握して連携を深め、地域の防犯情報を共有し、効果的なパトロールがなされるよう、活動の組織化が最重要になってまいります。
 防犯団体の重要性を考えますと、今後、さらにレベルアップしていくための取り組みも続けていただきたいと思います。時には、警視監である廣田本部長みずからが、防犯ボランティア団体と交流して、団体の意欲と結束を高めていくということも検討していただきたいと思います。
 そこで、防犯ボランティア団体が効果的な活動を行えるよう、連携と情報の発信、共有を進めるとともに、さらなる活性化への取り組みが必要と思いますが、どのような展開をしていくのか、伺います。
 最後に、障害者スポーツについて伺います。
 これまでの我が党は、障害のあるなしにかかわらず、誰もが身近な地域でスポーツを楽しめる環境づくりの一環として、特別支援学校の活用を提案してまいりました。また、私が委員を務める東京都スポーツ振興審議会においても、障害者スポーツの場の確保を重要な課題として、特別支援学校の活用の意義について、議論を重ねてまいりました。
 そこで、まず初めに、特別支援学校の障害者スポーツの拠点化に向けた取り組みについて、都の所見を伺いたいと思います。
 次に、特別支援学校を障害者スポーツの拠点とするため、都教育委員会は、どのように支援を改善していくのか、どのようなメリットがあるのか、お考えをお聞きして質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 中屋文孝議員の一般質問にお答えをいたします。
 臨海副都心についてでありますけれども、この地域は、都内でも先進的なエリアとして、日本最先端の技術を活用した音楽と連動した動きのあるイルミネーションの整備とか、国際的にも注目される大型イベントを実施するなど、まちのにぎわい創出に取り組んでまいりました。
 また、ここに来られる多くの外国人が、言葉の壁を感じることなくまちを楽しめますように、このエリア全体で利用できる無料のWi-Fi、それからデジタルサイネージなど、多言語環境の整備も進めて、まち全体の魅力向上にもつながっております。
 ただ、ちょっと欠けたものがあります。それは、光が足りない、もう少しライトアップする。おっしゃいましたけれども、船、もう少しこれを活用する。それから、食事の後の、つまり夜九時半、十時過ぎてから後のエンターテインメントが何もないと。先にエンターテインメントやったら、その後、御飯食べにいくところがない。こういうことをやらないと、リピーターが来ないというふうに思ってますので、この点は後ほど、産業労働局長がお答えすると思いますけれども、そういう観点から、今、有識者会議において、集中的に議論をして、近いうちにそういう方向を出しますので、そういうことによって、この臨海副都心を世界に誇れるエンターテインメント性の高い、そして最高のデートスポットにしたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長がお答えをいたします。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 特別支援学校を活用した障害者スポーツ拠点事業についてでございますが、都教育委員会は、本事業において、さまざまな障害者スポーツ団体が特別支援学校の体育施設を利用しやすくなるよう、体育館の壁の緩衝対策や床の研磨など、必要な改修を行い、利用環境の向上を図ってまいります。
 また、特別支援学校の児童生徒が、スポーツ団体との交流を通してスポーツに興味を持つことによって、みずからスポーツに取り組む習慣を身につけ、卒業後の豊かな生活につなげていくことを目指していきます。
 都教育委員会は、関係局と連携し、障害のある児童生徒が多様なスポーツに親しみ、将来の夢や希望を膨らませることで、パラリンピック東京大会に向けた障害者スポーツの機運を盛り上げてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、観光情報の提供に向けました基盤整備についてでございますが、海外から東京を訪れる旅行者が必要な情報を確実に入手できるよう、さまざまな情報通信基盤や案内表示を速やかに整備していく必要がございます。
 これまで都は、都立施設で無料のWi-Fiサービスを提供するとともに、多言語の観光案内標識を設置し、旅行者の情報収集をサポートしてまいりました。年度末には、上野等のエリアでもWi-Fiやデジタルサイネージによる情報提供を開始いたします。
 来年度は、都内の観光案内標識を約千五十基から千二百基にふやすとともに、浅草等の外国人旅行者の多い地域で無料のWi-Fiアンテナ約百六十基を集中的に整備し、デジタルサイネージも二十六基設置をいたします。
 こうした取り組みによりまして、観光情報を提供する基盤の整備を強力に推進し、旅行者を迎え入れる環境の充実を図ってまいります。
 次に、リフトつき観光バスの導入についてでございます。
 パラリンピック大会のレガシーとして、車椅子の利用者が観光バスにより都内で観光を楽しむことができる環境の整備を進めていくことは重要でございます。
 これまで都は、施設改修を充実する観点から、車椅子を使用しながら快適に宿泊をできる環境の整備に向けまして、スロープの導入、あるいは手すりの設置などの費用を助成してまいりました。
 来年度は、これに加えまして、車椅子のまま乗りおりのできるリフトつきの観光バスを導入する事業者に対し、通常の性能の車両に比べて増加する費用に対して助成を行います。また、駐車場所や観光スポットへの円滑な移動ルートの整備のほか、地域での受け入れ機運の醸成に取り組む区市町村等への支援も実施いたします。
 こうした取り組みによりまして、高齢者や障害者の快適な観光を実現してまいります。
 最後に、水辺のにぎわい創出に向けた取り組みについてでありますが、東京の水辺の空間を観光資源として活用する上では、地元の意見を十分踏まえ、河川や湾岸に沿ったエリアに、にぎわいを生み出す取り組みを進めることが効果的でございます。
 これまで都は、水辺の魅力等を生かし観光客の誘致に取り組む地元自治体のイベント等の開催に必要となる経費に対して助成を行ってまいりました。
 来年度は、地域の観光協会などが、水辺の周囲に集客を図るためのイベントや船着き場と近隣の観光スポットとを結ぶルート整備に取り組む場合の経費に対しまして助成を行います。また、川岸や水辺ににぎわいを生むためのオープンカフェや、観光PR施設の設置等のハード整備につきましても同様の補助を行う仕組みといたします。
 こうした取り組みにより、水辺の魅力を生かした観光振興を着実に展開してまいります。
   〔消防総監高橋淳君登壇〕

○消防総監(高橋淳君) 同時多発テロに対応するための取り組みについてでありますが、東京消防庁では、従来のハイパーレスキューに加え、空からの迅速な部隊投入や空中消火ができるエアハイパーレスキューを発隊させ、消防活動体制を強化いたしました。
 また、同時多発テロを踏まえた新たな対応要領の策定に加え、ICTを活用し、消防部隊のリアルタイムな映像情報等を一括管理する警戒システム等の導入を検討しております。
 今後はさらに、ラグビーワールドカップ等の開催を見据え、エアハイパーレスキューを初めとした消防部隊が消防団や関係機関と連携し、競技会場等における実災害を想定した大規模な訓練を実施するなど、テロ災害への対応に万全を期してまいります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) 防犯ボランティア団体への施策展開についてですが、地域における安全・安心は、地道な防犯活動等を行う担い手があってこそ初めて確保されるものでございます。今後も、地域における一層の安全・安心を確保するためには、連携と情報の発信、共有が必要であると考えております。
 都では、ポータルサイト、大東京防犯ネットワークを通じて約七百団体の状況を把握しておりますが、来年度は、サイトを再構築し、地理情報を活用した情報発信やメール配信を通じた情報の共有など、積極的に情報支援を行うこととしております。
 今後も引き続き、防犯団体のレベルアップに向けたリーダー育成を実施するほか、私自身も直接、防犯ボランティア団体に対し、取り組みの促進を積極的に働きかけるなど、地域の課題解決と安全・安心の向上に全力を尽くして取り組んでまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 特別支援学校の障害者スポーツの拠点化に向けた取り組みについてでございますが、都は来年度、都立特別支援学校を障害者スポーツの拠点の一つとして位置づけ、区部や多摩の地域バランスなどを考慮して、五校をモデル校として選定いたします。
 これら該当校につきましては、施設管理を委託することで学校の負担を軽減いたします。また、競技用備品の設置やスポーツ指導者等の人材活用により、誰もが気軽に障害者スポーツを楽しめる場とするとともに、競技団体の活動拠点としても活用してまいります。
 さらに、在校生にとりましても、施設を利用する選手との交流などを通じまして、スポーツに触れる機会がふえるよう、都教育委員会の協力を得ながら整備を進めてまいります。
 今後、こうした特別支援学校の活用を順次拡大することで、障害者スポーツの場のさらなる確保に努めてまいります。

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