平成二十八年東京都議会会議録第二号

   午後四時六分開議

○副議長(小磯善彦君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番長橋桂一君。
   〔百八番長橋桂一君登壇〕

○百八番(長橋桂一君) 都議会公明党を代表して質問を行います。
 舛添知事の就任から二年が経過し、任期の折り返しに入りました。平成二十八年度予算案は、今後の舛添都政の方向性を示したものであり、その編成方針にある、二〇二〇年とその先の将来像の実現に向けて積極果敢な施策展開を図るとの一文に、知事のかたい決意が凝縮されていると思います。
 急速に進む高齢化の中で、二〇二〇年を境に人口減少局面に入っていく東京は、世界の大都市が経験したことのない難しい都市経営に挑んでいかなければなりません。人口減少の影響は、一過性、部分的なものなどではなく、人間の活動がダイナミックに展開されている東京は、影響の及ぶ分野も多岐にわたると予測されております。
 そうした状況下で、冷静に中長期の見通しを立てながら、現世代だけでなく、子や孫の世代も希望の持てる都市の展望を大胆に切り開いていくことこそ真の世界一の都市ではないでしょうか。その実現に当たっては、都政運営の揺るぎない哲学として、徹して都民一人一人を大切にすることを掲げるべきと考えます。およそ政治も、経済も、文化も、教育も、あらゆる活動の主体は一人一人の都民だからであります。
 舛添知事は、東京の十年後を見据えた長期ビジョンを策定し、さらにその先のグランドデザインも描きつつありますが、都民を大切にする視点を政策の座標軸に据えて運営に当たるべきと考えます。知事の所見を伺います。
 続いて、財政について質問します。
 都の来年度予算案では、福祉と保健の分野が四年連続で一兆円を超え、予算全体に占める割合が過去最高となっております。福祉と保健予算の重視は、我が党が一貫して主張してきたことであり、高く評価するものであります。
 さて、今定例会の施政方針表明において舛添知事は、明るい未来に向けた投資を今こそ果敢に実行していくとし、そのために、今後も、強固な財政基盤の維持、構築を不断に進めると強調されました。
 今後の都財政は、財政需要が一段と高まる少子高齢化と、税収にも大きく影響する人口減少の同時進行という困難な状況下で運営していかなければなりません。
 こうしたことから、まずは事業評価の一層の徹底や基金のさらなる活用を進めていく必要があります。同時に、老朽化が進む都市インフラの更新、整備等はもとより、少子高齢化や人口減少対策の分野に対して、必要に迫られてから後追い的に予算措置をするのではなく、都民の不安を解消するために、むしろこれらの分野に先手を打って重点的に投資すべきであります。こうした投資によって、関連する中小企業、福祉関連事業等の成長を促し、雇用、賃金の拡大につながるような政策展開が重要と考えます。
 そのためには、財政投資の効果的なサイクルの確立を目指しながら、必要な政策展開に対し十分な予算措置を講じることができる強固な財政基盤を構築すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、都の財政運営に関連して、新公会計制度について質問します。
 都が平成十八年度に全国に先駆けて導入した新公会計制度は、本格的な複式簿記・発生主義を採用し、官庁会計では把握することのできない資産、負債などのストック情報や、金利や減価償却費などを含む真のコスト情報を明らかにするものであり、地方自治体会計に変革をもたらす取り組みとなりました。施策の分析、監査業務の充実という点でも大きな成果を上げてまいりました。さらに制度導入以来、職員のコスト意識が高まるなど、庁内の意識改革が大きく前進したといわれております。
 新公会計制度を導入して十年を迎えた今、改めて、マクロ、ミクロの観点から、これまでの成果と今後の取り組みについて所見を伺います。
 今回、平成二十八年度予算において、福祉と保健の分野を含め、積極的な施策展開が可能となったのは、これまで都が、施策展開を支え得る強固な財政基盤の構築に取り組んできた成果であるといえます。
 その意味から、今後、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会を成功させ、その先の政策展開を実現するためには、都財政の健全性、透明性が最も必要であり、そのための原動力は、まさに新公会計制度の活用であると考えます。
 そこで、新公会計制度が都財政に果たす役割について、知事の所見を伺いたいと思います。
 次に、福祉先進都市東京のさらなる前進に向けた福祉施策の充実について、政策テーマに分けて何点か質問をします。
 まず、介護の充実であります。
 超高齢社会に突入する我が国においては、加齢に伴うさまざまな不安を軽減する対策が重要な課題の一つになっております。
 とりわけ東京は、何事をするにも地価や人件費が高いというハンディを抱えており、その上、核家族化どころか孤立の時代とさえいわれております。しかし、こうした中で組まれる東京の介護対策は、世界の大都市にとっても、必ず有益な先例となるはずであります。
 昨年十月、舛添知事が安倍首相と会談した際、新三本の矢の一つである介護離職ゼロへ国と都が緊密に連携し、一緒に取り組んでいくことが確認をされました。大いに期待をしております。
 まずは、都民が抱える介護不安の軽減に向けて取り組む知事の所見を伺いたいと思います。
 介護不安の大きな要因の一つが、担い手の不足であります。
 そのためには、介護従事者の待遇改善が重要であります。
 国のキャリア段位制度に刮目した、都のキャリアパスの推進策に期待したいと思いますが、その点については、予算特別委員会でしっかりと議論をしてまいりたいと思います。
 その上で、介護の新たな担い手の層を急ぎ開拓しなければなりません。今後、介護職の求人は、景気の回復が進むほど一層困難さを増すと危惧をされております。資格を得ていて働いていない潜在的介護職員の掘り起こしは、その難題を解く鍵の一つであります。また、元気高齢者に有償の担い手として、介護の支え役になってもらうことも一策であります。
 さまざまな人々の活用を図る都の対応について、見解を求めます。
 一方、今回、都が新たに打ち出した介護職員用の宿舎を借り上げる際の支援事業に注目が集まっております。これは、福祉避難所に指定されることを前提に働き手の家賃負担を減らし、可処分所得の増加を図る補助制度です。災害弱者にとっても安心が増すわけであり、一挙両得と評価できます。
 本事業の稼働に際しては、事業効果を一層高めるため、例えば、新規借り上げの宿舎だけではなく、既に借り上げ済みの宿舎も対象とするなど、幅広く補助を適用すべきと考えます。都の見解を求めます。
 みとりも、都民が抱える深刻な介護不安の一つであります。
 特別養護老人ホームに入所しても、終末期を迎えれば病院への転院を余儀なくされます。あるいは、在宅療養であっても、容体が悪化すれば再び入院先を探さざるを得ない状況が続いております。
 平成二十五年度に都が実施した在宅高齢者の実態調査では、都内の在宅高齢者の約六割が引き続き自宅で暮らしたいと回答しております。可能な限り住みなれた地域で生活し、最期を迎えたいというのが、多くの高齢者の率直な願望であります。しかし、今いる場所で適切な医療的ケアを受けられないのであれば、入院を選択せざるを得ません。
 医療費の高騰を抑えるためにも、暮らしの場におけるみとりを都民が安心して選択できる環境の整備と人材の育成に、都は本腰を入れて取り組むべきであります。見解を求めます。
 さまざまな事情から、どうしても在宅での介護が困難な場合は、入所施設を探すことになります。しかし、身近に入所できる施設が少ない地域もあり、入所待ちの状態が長く続いているのが現状であります。この状況を改善しないまま在宅療養を強調しても、都民の介護不安は解消できません。
 都は既に、特別養護老人ホームが大きく都内平均に比較して不足する区市に整備費補助の加算を設けています。しかし、ピッチを上げて都内全体の入所待ち状態の改善を図るためには、現在の加算地域以外にも支援の強化が必要です。見解を求めます。
 高齢者の介護施設を、短期間のうちに増床させていくためには、より柔軟な取り組みが求められます。
 国は今回、規制を緩和し、賃貸建物への特別養護老人ホームの整備を可能とする方針を表明しました。この緩和措置を最も積極的に利用すべきであるのは東京であります。
 都は急ぎ補助メニューを改善すべきと考えますが、見解を求めます。
 空き家賃貸住宅の活用に関連して、高齢者の住まいの確保について伺います。
 単身高齢者や高齢者のみ世帯で新たに賃貸住宅を借りようとする場合、孤独死や長期入院などの可能性をリスクと感じて敬遠する家主も多く、入居を断られる事例が絶えません。
 都の福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議では、住まいに関する高齢者や障害者などの不安の解消には、住まいの場の確保だけでは不十分であり、居住に伴うトラブルに対処するためのサポートが必要との指摘が示されていると聞いております。
 我が党がこの問題について、昨年末の第四回定例会の一般質問で取り上げたのに対し、都からは、民間の力を活用した低所得高齢者等の住まい確保や生活支援のための施策の充実を図ると答弁があったところであります。早急に結論を出し、高齢者の住まいの確保と住まい方の支援充実に積極的に取り組むべきと考えますが、見解を求めます。
 また、こうした課題の解決のためには、支え手となる民間NPOとのマッチングなど、地域ごとの課題に対処する居住支援協議会の働きが必要であります。居住支援協議会については、我が党が本会議や委員会質疑で繰り返し取り上げ、まず、都みずから設置し、都内区市への設置促進を求めるよう提唱してきたところであります。
 現在までの成果と今後の取り組みについて見解を求めます。
 加えて、あんしん居住制度は、見守りや、万一の場合の葬儀、残存家具の片づけなどを請け負うもので、我が党の提唱で月払いも実現をしております。
 今後一層、普及促進に向けPRに努めるとともに、区市に対して積極的な活用を求めるべきと考えます。見解を求めます。
 次に、地域医療構想について質問します。
 国は、二〇一四年六月に、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じて、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療介護総合確保推進法を制定しました。都は、団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年の医療提供体制のあるべき姿を示す東京都地域医療構想を策定中であります。
 今回の東京都地域医療構想においては、病床の機能分化及び連携を進めるために、構想区域ごとに、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の四機能別の医療需要と病床の必要量を示すこと及び都が目指すべき医療提供体制を実現するための施策が大きな柱になっております。
 まず、必要な医療体制の整備について質問します。
 都が昨年十二月に取りまとめた地域医療構想の骨子案では、都は地域医療構想の構想区域を現行の二次医療圏とした上で、二〇二五年の病床の必要量については、国の、医療機関の所在地ベースでの算定方式によると、約八千三百以上の病床が不足すると推計しております。
 今回の大きな特色は、構想区域ごとに都が地域医療構想調整会議を設置し、関係者との連携を図りながら、地域医療構想の達成を推進するために必要な協議を行うとした点にあります。地域の医療関係者が一堂に会した場で意見を聞く機会を設けるのは初めての取り組みであり、直接、医療現場の声を聞くことは大変有意義であると考えます。
 都は、この調整会議を十分に活用し、地域の関係者等の意見を聞きながら、必要な医療体制の整備を進めるべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、都が目指すべき医療提供体制を実現するための施策について質問します。
 現在、都内には、高度先進医療を有する十三の大学病院、十五の特定機能病院が集積しています。これらの高度急性期病院を核とした在宅医療に至るまでの医療機関等のネットワーク化を確立していくことが、切れ目のない患者支援につながると考えます。
 今回の東京都地域医療構想の骨子案では、目指すべき医療の姿として、二〇二五年の医療グランドデザインを掲げています。特筆すべきは、地域包括ケアシステムにおける治し、支える医療の充実を明記したことであり、評価をするところであります。
 地域包括ケアシステムにおける治し、支える医療の充実を図るためには、これまで地域の医療を支えてきた、住民に身近な中小病院の活用を図るべきと考えます。見解を求めます。
 次に、少子化対策について質問します。
 人々が安心して子供を産み、育てられる環境の整備は、やがては社会全体の活性化にも通じる大事な取り組みであります。
 しかし、介護職と同様、資格を得ながらも実際には保育士として就労していない事例が多いのが現状です。実習などに臨んだ際、理想と現実の食い違いに戸惑い、やむなく違う職種を選択する場合もあるようであります。
 都は、若い有資格新卒者などが保育現場に意欲を持って就職できるよう、受け入れ側の環境改善を促進すべきであります。
 また、同じ保育の現場といっても、その運営方針にはさまざまな違いがあります。いわば相性の相違のようなものが早期離職につながる要因の一つでもあります。
 都は、保育士を養成する専門学校などに対し、卒業予定者に対する保育所等への就職支援をより丁寧に取り組むよう誘導を図るべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 需要予測に伴う将来の経営見通しの不安も、保育施設の増加を阻む要因であります。
 大規模な集合住宅が新設された地域では急速に保育ニーズが高まりますが、子供たちの成長とともに、十年も経ずして飽和状態に移行していくことは明らかであり、新規参入をためらうのは経営判断としてやむを得ないのかもしれません。
 そうした課題を解決する一つの糸口となるのが、都内に眠る約八十万戸の空き家賃貸物件の活用であります。新規開所までに要する期間も短くて済むとともに、需要の変化などにも柔軟に対処することが可能になります。
 保育施設においても、賃貸物件の活用の積極化を図るべきであります。都の見解を求めます。
 次に、子供の貧困について質問します。
 国は、平成二十六年八月に、子供の貧困対策に関する大綱を公表しました。
 舛添知事は先日の所信表明で、貧困の連鎖という本人の努力を超えたところに存在する障壁と表現されました。親世代の経済状況が子世代の未来の可能性を阻む壁とならないよう、都としても本腰を入れて対策を講じなければなりません。
 舛添知事が、食事の提供や学習支援を行う子供の居場所づくりに取り組む区市町村に対し、都独自の補助を行う方針を表明したことは高く評価をします。
 そうした取り組みの推進には、区市町村だけでなく、子供たちが心身ともに健やかな状態で自立ができるまで粘り強く支援を続ける民間ボランティア等の協力も不可欠であります。一方、支援を受ける子供たちに対しては、支援の提供がかえっていじめなども受けるきっかけとならないよう、きめ細かな配慮も必要であります。
 都は、そうしたボランティア等を活用した子供の居場所づくりの活動が、都内全域で円滑に広がっていくよう、資金面だけでなく、人材育成や活動を展開する場の確保など、さまざまな面で区市町村をサポートすべきであります。見解を求めます。
 貧困家庭の中には、懸命に家族が支え合い、励まし合って頑張る姿も見られる反面、借金、アルコールやギャンブルなどの依存症、虐待やDV被害、育児放棄など、子供の養育には適さない環境の中で、親自身がもがき苦しんでいるケースも見受けられます。
 生活保護制度だけでなく、国や都の取り組みによって、経済面を支える制度は整いつつありますが、精神面での寄り添いや生活のリズム立て直しなどのサポートなどによって、自立に取り組む環境を整えることから対策を講じなければならない事例もあり、特段の対策が必要であります。
 都は、区市が生活困窮者自立支援法における専門相談体制を整えられるよう支援すべきと考えます。見解を求めます。
 国民生活基礎調査によると、平成二十四年の国全体の相対的貧困率が一六・一%であるのに対し、ひとり親世帯では五四・六%と、半数以上が貧困世帯となっています。
 国はこのほど、ひとり親家庭の親が就労を果たすための資格取得期間中の生活給付金だけでなく、教育機関への入学時や就職活動時の費用の貸与制度も創設しました。しかも、五年間就労すれば返還不要という画期的な制度であります。
 この事業で対象となる資格は、看護師や保育士、介護士などですが、民間育成校の入学時費用は、多い場合四十万円を大きく上回っています。上限五十万円の入学金、同じく上限二十万円の就職活動金の貸し付けにあわせ、就労継続によって返還を不要とした点は、まさに大きな朗報であります。
 都は、この制度の早期の普及、活用を都内全域で図るべきであります。また、返還免除を得られるまで、ひとり親家庭の家族に最後まで寄り添い、支える体制を整えるべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 次に、教育について質問します。
 今後、都は、幅広く有為な次世代の人材を育てるため、誰もが、いつでも、希望する教育を受けられる社会を実現していく必要があります。とりわけ、学習のおくれが顕著化する前に、基礎学力の定着を図るための特別な工夫を講じることができれば、不登校や中途退学などを減らすことにもつながります。
 都教育委員会が開発したベーシック・ドリルは、基礎学力の定着を図るための徹底した反復学習の教材として大変好評であります。
 そこで、その活用を授業中以外にも広げるなど、小中学校における基礎学力の定着を図る取り組みを一層充実すべきと考えますが、見解を求めます。
 さらに、児童生徒の基礎学力の向上を一層充実させていくためには、学校教育での取り組みに加え、放課後等の時間帯を利用した学習支援を推進することも大切だと考えます。見解を求めます。
 不登校や中途退学に悩む子供への支援も必要です。
 我が党はこの問題を積極的に取り上げてまいりました。今後は、再チャレンジのための教育の場を充実させて、中途退学への未然防止や再就学に向けた支援の強化が必要であります。
 また、都立高校への転入、編入学制度の改善を図るべきです。この試験では、募集枠にまだ余裕があるにもかかわらず、試験の点数に最低合格ラインを設定して合否を判断したり、中には、何年も合格者が出ていなかったりする高校もあるようであります。選考方法や合格ラインの設定の仕方に改善の余地があるのではないかと考えられます。
 志願者などからも、過去の試験問題の提供を受ける際、合格の目安を明らかにしてもらえれば、目標ができ、意欲も湧くし、高校選びにも役立つという声があります。
 高校入学後の生徒の進路変更の希望に応える上で、補欠募集を一層有効な仕組みとするためにも、選考基準の設定や応募資格等に関するルールづくりが必要であります。見解を求めます。
 次に、特別支援教育について質問します。
 平成二十八年度から、全公立小学校に順次、特別支援教室が導入されますが、特別支援教育の経験が少ない教員が配置されるのではと心配する保護者もいるようであります。在籍する学校で特別な指導を受けたいと望む児童数はふえており、特別支援教室の成功は巡回指導教員の専門性の向上が鍵になると考えられます。
 経験の少ない教員が巡回に当たる場合には、ベテラン教員とペアでOJT体制を構築するなど工夫すべきであります。見解を求めます。
 次に、教育の国際交流について質問します。
 昨年、ラグビーワールドカップ・イングランド大会の調査のために訪英した東京都議会の議員団は、姉妹友好都市のロンドン市議会を訪問し、市議会議長らと意見交換を行いました。その席上、我が党から参加した議員が、子供の発育に携わる教育の課題は国を超えて共有できるとして、教育分野における国際交流の意義を訴えたところ、市議会の議長も賛意を示されたと聞いております。
 既に東京都教育委員会は、公立の中学、高校の英語科教員を海外研修として米国やオーストラリアなどの大学に派遣し、派遣先の国々の教員と交流を行っています。また、都立高校では海外の学校との姉妹校交流や生徒の留学支援を行うなど、教員や生徒の往来を推進しております。
 こうした教育交流は、都教育委員会の教育力を高め、グローバル人材の育成にも大きく寄与するものであります。
 今後は、教育分野の国際交流にさらに力を入れ、着実に取り組んでいくべきであります。都教育委員会の所見を求めます。
 教育交流では、留学などの生徒間の交流は当然重要でありますが、数十年の長期にわたり学校で多くの生徒に教える役割を持つ教員こそ、進んで国際交流の経験を積む必要があると考えます。
 今後、都教育委員会は、教員が海外の教育関係者と議論し、意見交換する機会をふやすべきと考えますが、所見を求めます。
 次に、私立学校の英語科教員の指導力向上について質問します。
 今回、都議会公明党の要望を受け、都教育委員会が実施している公立の中学と高校の英語科教員の海外派遣と同様の取り組みを私立学校においても行えるよう、新たに私立学校への事業費補助が予算案に計上されました。大変有意義であり、高く評価するところであります。
 ただし、私立学校にはそれぞれの建学の精神や教育理念に基づき、既に教員の海外研修にも取り組んでいる事例もあります。私立学校にこうした支援を行うに当たっては、各学校の独自性を損なわないように配慮することが必要であります。
 画一的になることなく、各校の特色を生かしながら、教員の指導力が高められるような事業にすべきであります。都の見解を求めます。
 次に、オリンピック・パラリンピック教育について質問します。
 オリンピック憲章によれば、オリンピック・パラリンピックが目指すものは、スポーツと文化と教育を融合させ、人々のよりよい生き方を創造し、人間の尊厳を重視する平和な社会をつくることとされています。
 こうした理念に基づき、オリンピック・パラリンピックには世界中から多様な選手が参加し、開催地の子供たちはそのアスリートの姿を間近に見て、大会のすばらしさを実感することになります。
 こうした機会を最大限に生かし、オリンピック・パラリンピック教育では、その大会の意義やすばらしさを学ぶとともに、オリンピック憲章が掲げる人間の尊厳を重視する平和な社会に向けて、子供たちに多くの資質、能力を身につけさせる教育を展開すべきであります。都教育委員会の所見を求めます。
 次に、オリンピック・パラリンピックに関連して、多文化共生について質問します。
 日本に住む外国人は昨年六月の時点で約二百十七万二千人と過去最多であり、東京においても本年一月現在、約四十五万人もの外国人が暮らしています。今後も、二〇二〇年東京大会の開催を契機に、さらに増加が見込まれており、今以上に、身近に暮らす外国人が当たり前の存在になってくるものと予想されます。
 我が党はかねてより、日本人と外国人が互いの文化的違いを認め合い発展する多文化共生社会の推進を繰り返し求めてまいりました。都はこれに応じ、今般、多文化共生に関する基本的な考え方や施策の方向性を示した指針を作成したことを評価いたします。
 東京が目指すべき多文化共生社会の実現に向けた知事の認識について、改めて見解を伺います。
 本年一月現在、東京は実に百七十九カ国もの国籍の人が住む国際都市でありますが、名実ともに多文化共生社会を実現していくためには、多種多様な文化的背景やさまざまなニーズに対応するきめ細かい支援が必要であります。これには、行政が行う支援だけではなく、日本語教室や、地域に密着した相談事業の実施、居場所をつくるための交流事業などを行う民間団体の存在が欠かせません。
 しかし、これらの団体は規模も小さく、人的、経済的にも厳しい環境に置かれているところが多いのが実態であります。
 そこで、都が多文化共生社会を実現するために、このような民間団体に対して必要な支援を行うべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックについて質問します。
 昨年十二月に、新国立競技場建設の財政負担について、知事、五輪担当大臣、文部科学大臣が会談し、都が三百九十五億円程度を分担することで合意をしました。また、新国立競技場の整備事業者とデザインも決定しました。
 さらに、大会後のレガシーを見据えた都側の計画の発表や、ボランティアシンポジウムの開催など、準備が着実に開始されるようになっています。
 そこで、大会の成功に万全を期すため、六点にわたり質問します。
 第一に、オリンピック・パラリンピックの財政運営についてであります。
 都は、組織委員会の経費について、事実上、財政保証の責任を負っています。大会後になって都民に負担をかけることのないよう、組織委員会の財政計画や運営に積極的に関与すべきと考えますが、見解を求めます。
 第二に、暑さ対策についてであります。
 昨年の夏は七月から八月にかけて、連続猛暑日の記録が大幅に更新されました。二〇二〇年の大会も厳しい暑さの中で開催されることが想定されます。大会を成功させるためには、今から暑さ対策を準備し、着実に実施することが重要であります。
 そこで、暑さ対策について、都の主体的な取り組みを早期に目に見える形で実施すべきと考えます。見解を求めます。
 第三に、文化プログラムについてであります。
 リオ大会が終われば、いよいよ二〇二〇年に向けた文化プログラムが本格始動します。ロンドン大会に向けた文化プログラムにおいては、開始当初、スポーツと文化、芸術とが結びつかず、国民的な盛り上がりに欠けていたそうであります。それが徐々に認識が深まり、本大会の開催年である二〇一二年には、英国史上最大規模と評価されるほどの文化、芸術の祭典に発展したと聞いております。
 その意味では、東京においても、初年度の取り組みが重要であります。都の既存の文化事業も十分に生かしながら、都民、国民に、スポーツと文化、芸術とを一体として理解し、楽しんでもらえるだけのインパクトのある文化プログラムを期待します。
 スタート初年度の具体的な内容を早急に提示すべきと考えますが、見解を求めます。
 第四に、パラリンピックの認知度向上策についてであります。
 ロンドン大会では、テレビ放送によるキャンペーンや、百万人の子供たちにパラスポーツを体験させるイベントなどにより、パラリンピックが非常に盛り上がり、大会が成功しました。
 世界で初めて二度目のパラリンピックを迎える東京は、ロンドン大会以上の成功と、それに見合うレガシーを残さなくてはなりません。
 そのためには、まずはパラリンピックの認知度を高める取り組みを意欲的に展開するべきであります。都の見解を求めます。
 第五に、パラリンピック選手の養成策についてであります。
 二〇二〇年大会は、東京で開催される五輪であり、東京や日本の選手が活躍すれば、都民、国民は大いに盛り上がります。
 そのため、二〇二〇年には一人でも多くの地元東京出身の選手が出場し、メダルを獲得できるよう、都は強力に支援すべきと考えます。
 しかし、オリンピックのメジャー種目のような競技団体による手厚いサポートは、パラリンピックを目指す選手の場合、まだ望めない環境にあります。
 そこで、その分、都による強力な支援が必要であります。見解を求めます。
 第六に、二〇二〇年大会に向けた被災地支援についてであります。
 東日本大震災から五年を迎えますが、被災地の復興はいまだ途上であります。このような状況において、被災地で懸命に進められている復興の姿を映像などでPRし、世界の人々の熱いエールを喚起するような情報発信の工夫が必要です。
 東北の方々に喜んでもらえる、復興の希望につながる取り組みを強力に展開するべきと考えます。見解を求めます。
 都議会公明党は、この五年間、毎年何度も東北の被災地に調査チームを派遣し、支援策の検討と提案を重ねてまいりました。
 今月十三、十四日に、福島県いわき市を訪問し、甚大な津波被害を受けた沿岸部を調査し、観光や水産の関係者と意見交換をしたところであります。
 福島県いわき建設事務所には、都から技術職員が派遣されており、その活躍ぶりが高く評価されていました。
 福島県旅館ホテル生活衛生同業組合などによりますと、いわき湯本温泉への観光客は、震災前の六割ほどに戻ったそうであります。
 関東圏から来訪者が多かった小名浜の水族館、アクアマリンふくしまも、やはり六割ほどの戻り状況とのことでありました。特に水族館の副館長からは、関東圏からの教育旅行が以前のように活発化することを期待する声がありました。
 旅館ホテル組合のおかみさんたちは、着物姿でフラダンスを踊って、フラのまちをPRしたり、スポーツイベントや遠征交流を企画したりして、福島への旅行客の呼び寄せに懸命に取り組んでいます。
 都はこれまで、被災地応援ツアーにより、福島県の観光産業の復興を支援してまいりました。昨年、一部の事業者による協力金の不適正受給と返還といった状況もありましたが、この事業が担ってきた意義を踏まえれば、万全の再発防止策を講じた上で、着実に事業を進めるべきであります。
 また、地元からの要望などを十分に聞いて、施策を向上させていくことが大切だと考えます。
 被災地応援ツアーの新年度の取り組みについて、見解を求めます。
 水産業の関連では、県漁業協同組合連合会の会長から、豊洲新市場の開場に大きな関心が寄せられました。これまでも、都の中央卸売市場は、風評被害の払拭を初め、福島の県産品を積極的に支援してきております。
 今後は、水産業においても、福島県の関係者の希望につながる取り組みを大消費地東京として一段と力を入れ、展開すべきと考えます。見解を求めます。
 次いで、防災対策について質問します。
 まず、大規模水害対策であります。
 平成二十七年九月に鬼怒川で発生した水害の際、常総市では、全国から集めた最大五十一台の排水ポンプ車等による排水作業を二十四時間体制で行いましたが、浸水解消までに十日間を要したそうであります。
 中央防災会議での大規模水害に関する専門調査会では、東京の東部低地帯における利根川決壊時の被害想定として、浸水継続時間が二週間以上に及ぶと報告されています。
 地盤が海面下にあるゼロメートル地帯では、河川や海へ自然流下させることができないため、ポンプにより排水するしかありません。
 そこで都は、排水施設への燃料補給やアクセス道路の確保などを含め、非常時に迅速な対応ができるよう、大規模水害時の排水ポンプ整備運用計画の策定などに取り組むべきと考えます。見解を求めます。
 災害対策基本法は、昭和三十四年の伊勢湾台風の被害を教訓にして昭和三十六年に制定されました。当時は、富士山レーダーや気象衛星もなかったため、避難勧告や指示を発令する主体を区市町村長としました。現場の判断を尊重する狙いといわれております。
 しかし、区市町村長は気象情報の収集や災害対応の経験が少ない場合が多く、避難勧告や指示を発令しにくいといわれております。
 現在では技術が進み、水害の事前予知はある程度可能といわれており、その情報を最も早く多く把握できる機関は、現場の自治体ではなく国土交通省及び気象庁であります。
 気象庁は来年度、区市町村長の判断を補佐する気象予報士を自治体に配置するモデル事業を行うとしています。
 こうした取り組みも参考に、都は、区市町村長の適切な避難勧告、指示発令のための体制整備を支援する必要があると考えますが、見解を求めます。
 次に、帰宅困難者対策について質問します。
 東京においても、東日本大震災の体験を忘れることなく、帰宅困難者対策を新たな視点から捉え直し、より実践的な見直しを行うべきであります。
 特に二〇二〇年東京大会を四年後に控え、ふえ続ける外国人訪日客への対応が課題です。外国人が被災した場合、都内のまち並みになれておらず、パニックに陥ることが考えられます。
 特に東京では、外国人客が多い地域の広域自治体としての危機管理のあり方として、被災した外国人が避難や二次被害の回避を冷静に行えるよう、必要な情報を的確に提供できる体制を急ぎ整備するべきであります。
 そこで都は、災害発生時における外国人の帰宅困難者に対して、混乱やトラブルを最小限に抑える対策を検討すべきであります。見解を求めます。
 今後は、二〇二〇年東京大会までの間、開催期間中も含めて、都内各地ではさまざまな競技や多くのイベントが開催されます。仮にイベント中に大地震などの被害に遭遇した場合、それぞれのイベント会場の施設管理者や主催者がその場にとどまり、むやみに移動しないなど、正しい対処方法を冷静に伝える必要があります。
 今月、二月八日に、都は千代田区と合同で帰宅困難者対策訓練を実施しました。アイドルグループのライブ中に被災した際に施設側や参加者がとるべき対応について、詳細を検証するなど、さまざまな訓練が行われたと聞いております。
 そこで、この対応訓練も含め、今回実施された帰宅困難者対策訓練の成果と、今後の取り組みについて見解を求めます。
 次に、多摩の防災機能の強化について質問します。
 都の来年度予算案には、旧立川政府倉庫の取得費として約七十六億円が計上されています。旧立川政府倉庫の活用については、都民の関心も高く、取得後は可能な限り早期に活用することが求められています。
 災害時に都民を守るためには、都と多摩の自治体との連携が必要であります。旧立川政府倉庫も、両者が協力して活用してこそ取得効果が高まります。
 都は、倉庫が立地する多摩地域の市町村から丁寧に要望を聴取するとともに、市町村から防災目的で倉庫を活用する意向が示されれば、前向きに対応すべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 旧立川政府倉庫については、立川周辺のみならず、都内全域に効果をもたらす防災拠点としての活用が重要であります。
 帰宅困難者用物資の増強などの備蓄の充実を図るとともに、備蓄した物資を必要な場所に確実に速やかに輸送することであります。
 倉庫周辺には、自衛隊、海上保安庁、東京消防庁、警視庁などヘリコプターを装備する機関が集中しており、備蓄物資の輸送に当たっては、陸路のみならず、積極的に空路を活用すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、気候変動対策の一環として、再生可能エネルギーの普及拡大について質問します。
 エネルギーの大消費地東京が今後も持続的に発展していくためには、再生可能エネルギーの拡大が重要であります。
 都は先般、再生可能エネルギーの新たな目標を示したところでありますが、さらなる普及拡大に当たっては、地中熱などの熱利用も含め、都内で多様な再生可能エネルギーの導入を進めていくことが重要です。
 そこで、国の固定価格買い取り制度の見直しも進む中、普及拡大に向けた取り組みについて、知事の所見を伺います。
 次に、電力小売全面自由化について質問します。
 本年四月の電力小売全面自由化に向け、電力小売事業者の営業活動が活発化しております。
 東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーによる電気の購入を希望する消費者がふえるなど、その要望は多様化しています。
 さまざまなサービスが登場し、消費者の選択肢がふえる中、価格だけでなく、電気の環境性能にも着目した選択を働きかけることが必要と考えますが、都の見解を求めます。
 次に、中小企業支援について質問します。
 都の中小企業の大半は下請受注に主軸を置いております。発注者側の思惑などに大きく依存する体質があります。景気変動に左右されにくい強固な経営基盤に立つためには、技術力にブランド力を加味することが必要であります。
 今後の日本が経験する少子高齢化や人口減少社会においては、これまでにない新たな社会ニーズが生まれ出てくる可能性があります。
 今後は、買い物難民や介護、育児への対策、健康志向やユニバーサルデザインへの対応、物とインターネットを結びつけるIoTなど、一見無関係と思われる有形無形の事象同士を結びつけ、新しい需要やサービスにつなげる試みが大切であります。
 そうした取り組みの活性化は、下請だけに甘んじない実体経済上の強みを、都内の中小企業にもたらしていく可能性があります。
 現に都内では、流通や通販などの分野で、最新の消費者ニーズを的確に捉えたサービスを提供する企業が次々と誕生しています。新たな需要や付加価値を生み出そうとする社会的な機運の高まりを都として支援することは、都内中小企業などの活性化につながる効果的な経営支援策であります。
 まずは、今後の成長が期待される分野で、都内中小企業の活躍が広がるよう、誰もが参加できる企画、アイデアの募集を行うべきであります。
 その上で、新たな企画に対しては、広く請負主体を募って実用化を図り、都内中小企業の知恵と力を結集した新しい地元のブランドとなるような新事業を創出すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、中小企業と商店の支援策について質問します。
 個々の中小企業や商店の輝きが増すようにするためには、難しい判断に直面する経営者を手助けする施策が重要です。
 中でも、誰もが経験する事業承継という難題については、経営者の高齢化が一段と進行している都内状況もあり、これを効果的に乗り越えられるスキームの確立が求められています。長く続いた不況で経営体力も減退しているなど、経営者の交代時期に廃業や休眠化を余儀なくされる企業もあります。
 事業承継にしっかりと向き合い、円滑な世代交代を果たすためには、金融機関などの協力のほか、不採算部門の見きわめや有望部門への選択と集中など、早い段階からの計画的な準備が必要であります。
 しかし、多くの場合、日々の仕事に追われて、専門家への相談に出向くといった行動までには至らないのが実情のようであります。したがって、専門家の側から訪問して面談を重ね、信頼を高めていくべきであります。
 平成二十八年度からは、都内中小企業の事業承継を応援する取り組みについて、専門家と経営者との間で入念な情報分析や胸襟を開いた検討が可能になるよう、早期に支援を開始し、経費面を含めサポートすべきであります。見解を求めます。
 また、小売業などの商店にあっては、事業承継の機会に限らず、日ごろから不断の経営改善が必要であります。
 都はかねてから、若手商人の育成に取り組んできましたが、今後は、より実践的なプログラムとするべきです。あわせて見解を求めます。
 最後に、働き方改革について質問します。
 我が党が考える働き方改革の主眼は、若者、女性、高齢者、障害者など、あらゆる人々がみずからの希望に基づいて働き続けることのできる社会の実現にあります。
 男性も女性も能力を十分に発揮し、育児や介護といった状況になっても働き続けることができるよう、行政と企業、そして都民が結束して力を合わせ、ワークライフバランスの実現に向け世論を盛り上げ、社会全体で働き方改革を進めていく必要があります。
 今回の予算編成を通して、いかなる視点に立って都内の働き方改革を断行していくのか、改めて知事の見解を伺います。
 働き方改革の中でも、非正規雇用対策は、急ぎ成果を上げるべき課題の一つであります。
 最近の雇用情勢を見ますと、求職者を取り巻く環境は、一面、改善されつつあるものの、大企業志向が再び強まり、中小企業の人手不足は一層顕著になっています。パートや派遣社員などの社内の非正規社員を積極的に登用する動きも強まっています。
 こうした状況の中で、人材確保の必要性を感じながら、それに伴う経費負担増との間で悩み、決断できずにいる企業経営者の背中を都が後押しすることは、臨み方次第で正規職に転ずる道が開かれる社会の創出につながるといえます。
 また、昨年、我が党の働きかけにより成立した若者雇用促進法には、若手社員の育成にたけた中小企業を厚生労働大臣が認定する制度の創出が盛り込まれています。
 都がこれを活用し、若者を大切にする企業への就業をマッチングしてこそ効果的であります。
 これらの状況を踏まえ、長期ビジョンで掲げる三年間で一万五千人の正規雇用化に向け、支援の強化を図るべきと考えます。都の見解を求め、代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 長橋桂一議員の代表質問にお答えをいたします。
 まず、都民一人一人を大切にするということの視点でございますけれども、前回の五十年前の東京オリンピック、これは戦後復興ということで、とにかく経済成長を目指そうということでやった大会でありましたけれども、二〇二〇年は、よりよい成熟を目指す大会であるべきだと考えております。
 みんなががむしゃらに働いて前に進むと。しかし、成熟が深まる中では、人々の価値観も多様化しておりますので、そういう意味で、東京というまちの活動の主人公である都民一人一人が夢や希望を持って自由に活躍できるということが必要だというふうに思っております。
 きょうの長橋幹事長のご質問は、光の当たらない人に光を当てるんだと、こういう大原則を政策に掲げられている政党にふさわしい質問だというふうに思っておりますので、ぜひそういう観点を、この一人一人を大事にするということで私も生かしていきたいというふうに思っております。
 長期ビジョンにおきましても、都民が明るい未来を展望できる東京の実現を掲げまして、若者や女性、高齢者、障害者を初めとする誰もが能力を十分に発揮して活躍するという姿を描きました。
 そして、やはり芸術、文化、これに親しみながら質的な豊かさ、ただ量だけじゃなくて、質的な豊かさを享受できる、そういう社会像を示してございます。
 それから、今度、二〇四〇年を目指して、東京のグランドデザインを描いておりますけども、これは例えば、週末に住むうちが多摩にあるとか、そういうことも含めて二地域の住居とか、それから、今、人工知能などが進歩していますので、そういう先進的なアイデアをたくさんの、特に若い有識者、二〇四〇年にまだお亡くなりになっていない若い有識者の方々が、すばらしい見解、提案をなさっていました。
 そういう意味で、これまでの常識にとらわれることなく、新しい働き方、暮らし方を取り入れるということが都民一人一人に一層の豊かさをもたらしてくれると思っております。
 仕事や家庭だけではなくて、やっぱり文化とか趣味、そういう人間らしく暮らせるというゆとりのある成熟社会、これを目指したいというふうに思っておりますので、ぜひ皆さん方の協力をお願いいたしたいと思います。
 それから、財政運営でございますけれども、やはり一番大事なのは、都民が将来にわたって活力に満ちあふれた豊かで安定した生活ができるということでありますので、財源をしっかりするということであります。
 そのためには、財源とともに、仕事、子育て、医療、介護、治安、あらゆる面で都民の不安を払拭して、額に汗した努力は必ず報われるんだと、そう信じることができる社会を実現する、そういう予算を組まないといけないというふうに考えております。
 意欲と能力に応じまして、東京で働く人たちが十分に活躍できる、そして、それが東京を発展させて、働く場もそれで生まれるし、賃金も上がってくる、そういういい循環をつくりたいというふうに思っておりますので、我々も、私以下都庁の職員一丸となって、都政も自己改革をしないといけないというふうに思っております。
 そして、将来への備えを講じまして、どんな状況になっても──ご承知のように、都財政というのは非常に景気の変動を受けます。しかし、いかなる状況にあっても、都民福祉の向上を積極果敢にやっていく、そういう財政基盤を、基金というような手段を使って、今、構築しているところでございます。
 二〇二〇年、さらにその後も見据えた豊かな都民生活の未来をつくる、そういう使命を都知事として確実に果たしてまいりたいと思っております。
 それから、新公会計制度についてでございますけれども、これは公明党の皆さんが相当頑張って入れられたということをお伺いしておりますけれども、社会経済状況が大きく変化する中で、財政状況をいろんな面から把握して、一つ一つの施策の効率性、実効性を向上させるというのは、不断の分析、検証が必要なわけでございます。
 そのために、やっぱりこういう複式簿記・発生主義に基づく公会計制度を導入する、そして、年次財務報告書を出しまして、決算の分析もちゃんとやる。財政の、いわゆる横文字ですけど、アカウンタビリティー、よく見えるという、こういう充実を図っていきたいというふうに思っております。
 これがマクロなんですけれども、ミクロについていうと、先ほど申し上げましたように、自分らがやっている仕事は、ちゃんと効率上がってるのかと。だから、自己改革とさっきいいましたけれども、まさにこの点がしっかりと事業の評価につながってくる、この公会計制度が。そういう意味で、この公会計制度も効果的に活用しながら都財政を安定的なものにすると。そして、二〇二〇年、さらにその先のすばらしい東京を目指していきたいというふうに思っております。
 それから、介護の不安についてのご質問がございました。
 私の政治家としての原点は母親の介護でありますから、非常にこれを苦労しましたし、常に、介護で行き詰まって自殺したという話なんかになると、非常に身につまされる思いがあるんでございますけれども、やはり東京で生まれて、生活し、そして、老後を東京で過ごしてよかったなと、こういうことが実感できる都市でなければならないというふうに思っております。
 そのためには、まず、高齢者のための適切な住まいの確保が必要でございます。さらに、医療、介護、生活支援のサービス、これが日常生活の場で切れ目なく提供されなければならない。それから地域包括ケアシステム、これは大臣のときからも私は取り組んできました。これを確実なものにしたいというふうに思っております。
 したがって、来年度予算案では、これまでも頑張ってやってきましたけれども、さらに、地域包括ケアシステムの在り方検討会議というものの議論を踏まえて、余り議論ができていないんですけれども、多様なみとりの場、これはやっぱりしっかりやるべきだと思っていますし、それから、介護職員の宿舎の借り上げの支援、これは空き家対策にもなりますので、こういう都独自の先駆的な施策を盛り込んでいきたいと思っております。
 さらに、昨年十一月に国の緊急対策で打ち出されました特養の建物所有に関する規制緩和等を受けまして、介護施設の新たな整備促進策を展開したいというふうに思っています。土地の値段が高いですから、東京は。これが全てのブレーキになっているので、こういうことを改善したい。
 皆様ご承知のように、東京は世界に類の見ないスピードで高齢化が進んでおります。しかし、こういう成熟した都市がしっかりとこの問題に対して、高齢者が安泰できるまちにしたということが、アジアの諸国を初め、世界中のモデルになるというふうに思っております。
 さらに一言つけ加えますと、元気な高齢者を有償で介護を担わせたらどうかという話がありました。この後、局長が答弁しますけれども、これは違う答弁しますので。というのは、我々政治家の役割は、こういうときにもう一歩踏み込んで、じゃ、高齢者が働いたら年金がもらえなくなるという制度をそのままにしておいて、高齢者が働くということが一億総活躍社会につながるんですかと。だから、やっぱり年金制度というのは、相当いろいろな角度から検討しないといけない時期に来ているなという思いがありますので、政治家として、我々はこういう問題にも取り組みたいと思っております。
 さらに、多文化共生社会の実現に向けた認識についてでございますけれども、これはいうまでもなく、我々は世界をリードするグローバル都市にならないといけない、そして何よりも東京オリンピック・パラリンピックを開催するわけですから、多文化共生ができないようなまちで、私は開催できないと。
 したがって、ヘイトスピーチのようなものはやめるべきであるということを申し上げておりまして、今、ことしの一月の統計を見ますと、人口の三・三%、約四十五万人、百七十九の国籍の外国人が我が東京に住んでおられるわけです。こういう方がみんな元気に参加、活躍できる社会こそを我々は構築したいと思っております。
 そのためには、外資系で働く人材、留学生を含めて、全ての外国人が日本人と同様に能力を最大限発揮して、安心して生活を楽しめるような環境の整備が不可欠だと考えております。
 先ほど申し上げましたように、国籍とか民族に対する差別や偏見は絶対に排除する、そして、お互いに寛容な心でもって基本的な人権をしっかり守っていく、そういう東京でなければならないというふうに思っておりますし、また、東京に住む外国人には、都民として自覚を持って、しっかり生活ルールを守ってもらうと。私がきちんとごみ出しの日を間違えないように分別ごみを出しているように、あなたたちも出しなさいと。後片づけを私がしないといけないんですから、こういうことも申し上げたいと思っています。
 こういう認識のもとに、従来の生活支援を中心とした考え方だけじゃなくて、日本人と外国人が一緒に参加、活躍できる、そこまで踏み込んだ新しい考え方の多文化共生推進指針を策定したわけでございます。
 今後、この指針に示した施策を実現するために、都がリーダーシップを発揮しまして、区市町村や民間団体などと連携して、オール東京で取り組んでいくための体制を築いて、東京、そして、ひいては日本の発展につなげたいと思っております。
 次に、オリンピック・パラリンピックの財政運営の話でございますけれども、世界最大のスポーツイベントであるオリンピック・パラリンピックは、当然これはオールジャパンで取り組まなければなりません。
 大会運営業務は多岐にわたりますけれども、先ほど自民党の宇田川幹事長に対してお答えしたように、招致が決定して準備が進むにつれて、資材や人件費が高騰するとか、テロ対策にお金がかかるとか、どんどん課題が出てきているわけであります。
 したがって、どういう形で国と組織委員会と我々東京都が役割分担をするかというのは大きな課題でありますので、今のような環境の変化を含めまして、大会経費についても不断に精査をしながら、組織委員会の収支計画が合理的なものになるように、国、組織委員会、東京都で議論をしたいと思っております。幸い、組織委員会の森会長、遠藤大臣、馳大臣と緊密に連絡をとって調整を進めておりますので、これはぜひお任せいただきたいというふうに思っております。
 そういう意味で、私は、開催都市の責任者として、なすべき事業は果敢に実施して、組織委員会の運営が円滑に行われ、大会全般の準備が着実に進むように、関係者一同と協力して大会を成功に導きたいと考えております。
 次に、再生可能エネルギーの普及ですけれども、昨年十二月、パリでCOP21がありまして、新しい国際的枠組みが決まりました。特に、これから地球上の人口の六割以上が住む場所は都市ですから、この都市の低炭素化というのは非常に必要でございまして、そこで、先ほど申し上げましたように、再生可能エネルギーは、全電力の中の利用割合は現状では約九%でしかないんですけれども、二〇三〇年までに九を三〇までに引き上げるということを設定いたしました。
 さらに、これは供給だけじゃなくて、需要の面でも頑張らないといけないので、需要面では、都民の皆様にお願いして、みんなで省エネ、節電を着実にやろうということであります。
 供給面では、住宅とか空き地なんかを利用して太陽光発電を導入するとか、それから風力発電、それから地中熱の熱エネルギーを自家消費すると。いわゆる東京にあるエネルギー源を東京で消費しようと。地産地消型の再生可能エネルギーの導入を後押ししてまいりたいというふうに思っております。
 やはり最大の消費地である東京、我々がいかに再生可能エネルギーを使うかということが大きな日本全体の動きにもかかわってくるわけでありますので、そういう意味で、都の施設において、率先行動として、この四月から電気のグリーン購入を強化したいというふうに思っております。後ほど説明が局長からあると思いますけれども、そういう点を注目していただければと思います。
 こうした施策を多面的に展開しまして、低炭素エネルギーが主要なエネルギーとして活用されるような、持続可能な、サステーナブルな都市を構築していきたいというふうに思っております。
 最後に、働き方の改革でございますけれども、人々が効率的に働いて、そこで生み出した時間を有効に活用して、趣味や文化、こういうことを含めて豊かな生活を送ること、これが私は成熟した先進都市だと考えております。
 そのためには、企業の現場でだらだらと長い労働をやるんじゃなくて、効率よく、ぱっと仕事をすると。そして、そういう意味で、長時間労働の削減、それから有給休暇の取得を含めて、これまでの働き方を見直した方がいいというふうに考えております。
 こういう問題点は、今年度も開催しました公労使会議で、国や経済団体、労働団体とともに、働き方改革をやろうということを宣言したところでございまして、来年度はこうした動きを個々の企業に広めたいと思っておりますので、東京働き方改革宣言企業制度というのを創設しまして、具体的な取り組み内容、こういうことをやっているよということを公表したいと思っております。
 実施に当たりましては、そのインセンティブとして、企業への奨励金の支給に加えまして、国と連携したPRキャンペーン、それから、多様なメディアを通じた広報活動などを行いたいというふうに思っております。
 また、生産性をどうすれば高めるかというときに、専門家をちゃんと派遣して適切な助言もしたいというふうに思っておりますので、そういう意味での中小企業の支援施策にもつなげてまいりたいと思います。
 先ほどちょっと申し上げましたように、この働き方改革の面でも年金制度をどうするかというのは、これは国民的な課題だと私は考えております。こういうことを含めて、皆さん方とともに、働き方改革に向かって社会的な機運を醸成していきたいというふうに思っております。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、基礎学力の定着を図る取り組みについてでございますが、都教育委員会では、児童生徒の基礎学力の定着を確かなものとするため、都独自の学力調査を悉皆で行い、つまずきの状況を把握して、各学校の授業改善を促し、一人一人の習熟度に応じた指導を推進してきております。
 また、小学校における基礎的、基本的な知識や技能の確実な定着を図るため、昨年度、東京ベーシック・ドリルを配布し、今年度は中学校版も作成いたしました。
 今後は、ドリルを電子化し、校外においてもコンピューターやタブレットで取り組めるようにするとともに、一人一人の取り組み状況を瞬時に採点、把握できるようにしてまいります。
 こうした取り組みを区市町村教育委員会と連携して推進し、児童生徒が主体的に学習に取り組み、基礎的、基本的な知識や技能を身につけることができるようにしてまいります。
 次に、放課後等における学習支援の取り組みについてでありますが、家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身についていない児童生徒に対して、授業以外の場においても学習機会を提供することは重要でございます。
 都教育委員会は、こうした取り組みを行う区市町村を支援するため、平成二十八年度から、新たに地域未来塾事業を実施し、放課後等の学習支援の取り組みを促進してまいります。
 また、小学生の安全・安心な居場所を確保する放課後子供教室において、学習支援などの活動プログラムを積極的に導入できるよう、人材確保経費について、都独自の上乗せ補助を行ってまいります。
 今後、こうした取り組みにより、放課後等に学習機会を提供する取り組みが一層推進されるよう、区市町村を支援し、児童生徒の基礎学力の定着を図ってまいります。
 次に、都立高校における補欠募集の改善についてでございますが、現在、補欠募集を実施する都立高校では、定期考査と同等の学力検査を課すことにより、転学後の学習についていけるかを判断し、合否を決定しております。
 今後は、都教育委員会として、生徒の進路変更の希望に応え、中途退学の未然防止を図るとともに、都立高校全体で教育の機会を確保するという目的を徹底するため、補欠募集の実施方法について、さらなる改善を図ってまいります。
 具体的には、各学校が選考方法や選考基準等を設定する際の基本的な考え方を示すとともに、転学や編入学を希望する生徒の単位修得の取り扱いを明確化するなど、新たに補欠募集の実施に関する指針を本年七月までに策定し、各都立高校に周知してまいります。
 次に、特別支援教室の巡回指導教員の専門性の向上についてでありますが、巡回指導教員が適切な指導等を行うためには、特別支援教室における指導、支援方法の習得と、障害の状況等を理解する力をつけることが必要でございます。
 このため、都教育委員会は、指導経験が豊かな教員との組み合わせによる巡回を行うOJT体制の構築を、区市町村教育委員会に働きかけるとともに、今後は、各学校を巡回する臨床発達心理士等が、巡回指導教員などに対して専門的な助言を行う体制を構築してまいります。
 さらに、来年度から新たに特別支援教室の担当となる教員等に対し、実際に巡回指導を行っている教員を講師とする講習会を、本年三月に実施いたします。こうした取り組みにより、巡回指導教員の専門性を確実に高めてまいります。
 次に、教育分野の国際交流についてでありますが、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催を見据え、これからの東京、そして日本を支える国際感覚豊かな若者を育成していくためには、さまざまな国際交流の取り組みを、これまで以上に積極的に行うことが重要でございます。
 現在、都立高校では、海外からの学校訪問の受け入れや姉妹校による交流等の取り組みを行っております。また、都教育委員会は、高校生の海外留学の支援やJET青年の全校配置により国際交流を推進してきております。
 昨年九月にはカナダのブリティッシュコロンビア州と教育に関する覚書を締結したところであり、今後、こうした海外の教育行政機関との連携を深めていくことを通じて、姉妹校交流や留学生の受け入れを拡大するなど、都立高校における国際交流を一層推進してまいります。
 次に、海外の教育関係者との交流についてでございますが、学校間の国際交流を充実させていく上では、教員自身の指導力向上と異文化理解が必要であることから、平成二十六年度に開始した海外派遣研修においては、参加者が他国の教員とともに英語教授法を学ぶことに加え、現地校の教員と情報交換を行ってきております。
 また、平成二十七年度には、帰国後の報告会で、海外研修への参加者が、在京大使館の職員やJET青年と、グローバル人材の育成についてシンポジウムを行いました。
 こうした取り組みに加え、今後、海外の教員を都立高校等に招いたり、都教育委員会主催のシンポジウムへの参加を促進して、指導内容や方法等について意見交換できる機会を設定することなどにより、海外の教育関係者との国際交流を一層推進してまいります。
 最後に、オリンピック・パラリンピック教育についてでございますが、オリンピック・パラリンピックは、開催都市とその国に大きな社会変革をもたらし、とりわけ若者や子供たちを鼓舞し、勇気と感動を与えてきました。
 このため、東京二〇二〇大会を絶好の機会と捉え、フェアプレーの精神、他者への敬意といったオリンピズムの価値などを教育に生かしていくことといたしました。
 具体的には、社会に貢献し他人を思いやる心を培うボランティアマインドの育成や障害者理解、さらに、異文化を理解し、自他を認め合う豊かな国際感覚などの醸成に重点を置き、体験や活動を重視した教育活動を展開してまいります。
 こうした取り組みを通じ、全ての子供たちの心と体に、人生の糧となるかけがえのないレガシーを形成し、将来の東京、そして日本を支える人材を育成してまいります。
   〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都の居住支援協議会の成果などについてでございますが、住宅の確保に配慮が必要な高齢者等に対しまして、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、区市町村が居住支援協議会を設立し、取り組むことが重要でございます。
 都は、昨年度、不動産や福祉関係団体などとともに居住支援協議会を設立しました。また、パンフレットの作成、配布、あるいはセミナーの開催などによりまして、区市町村においても協議会が設立されるよう促してまいりました。
 これまでの江東区、豊島区、板橋区に加えまして、今年度は調布市と八王子市が協議会を設立しており、来年度は、千代田区、杉並区、日野市において予定されております。
 今後とも、全国の取り組み事例等の情報提供や活動経費の補助などによりまして、区市町村協議会の設立促進及び活動支援を進めてまいります。
 次に、あんしん居住制度の普及促進についてでございますが、単身高齢者等が賃貸住宅に円滑に入居できるようにするためには、家賃債務保証や入居後の見守りサービス、亡くなった後の家財の片づけなどを提供する制度の普及が重要でございます。
 お話のあんしん居住制度につきましては、防災・建築まちづくりセンターが実施しておりまして、センターは、都と連携して、先ほどお話ししました居住支援協議会の場や、あるいは区市町村、不動産関係団体との意見交換の場などを通じまして、区独自の取り組みの周知も含め、制度の積極的な活用を促しております。
 今後とも、こうした取り組みを通じまして、賃貸住宅の入居をサポートするこの制度の普及を促進し、高齢者の居住の安定確保に努めてまいります。
   〔財務局長長谷川明君登壇〕

○財務局長(長谷川明君) 新公会計制度導入の成果と今後の取り組みについてでございますが、都では、複式簿記・発生主義による公会計制度の導入により未収債権の実態を把握し、その整備などに向けて、平成二十年度には債権管理条例を制定して取り組みを強化いたしました。その結果、都税を除く未収債権を十九年度の百二十七億円から、二十六年度には八十九億円へと約三割減少させております。
 また、発生主義に基づく分析を通じ、例えば、河川清掃におけるごみ運搬船の更新に際し、将来にわたる経費を縮減するなど、十年間で累計約一千九百億円の財源確保を実現しました事業評価の取り組みにも寄与をしております。
 今後とも、財政対応力の堅持に向けて、日々の業務に新公会計制度も活用し、さらなる自己改革の推進や施策のマネジメントの強化に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 十三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、介護職場での多様な人材の活用についてでありますが、都は、介護福祉士等の資格を有し再就職を希望する方に対し、就職支援アドバイザーによる相談支援や、知識、技術を再習得する講座などを実施しており、来年度は、再就職支援を強化するため、二年間継続して従事すると返還免除となる再就職準備金の貸付制度を創設いたします。
 また、高齢者が福祉施設で活躍できる仕組みづくりに取り組む区市町村を支援しており、来年度は、新たに設置する福祉人材対策推進機構において、食事の配膳や清掃などのサポート業務を担うための研修や、事業者とのきめ細かなマッチングを実施するなど、高齢者の一層の活躍を推進してまいります。
 これらの取り組みにより、多様な人材がさまざまな形で福祉職場で働くことができるよう支援してまいります。
 次に、介護職員宿舎借り上げ支援事業についてでありますが、高齢者施設は、職員が交代で勤務し二十四時間体制でサービスを提供する施設であり、災害時には在宅の要介護高齢者等を受け入れる拠点にもなります。
 一方、平成二十四年に東京都社会福祉協議会が実施した調査では、災害時に地域の高齢者等を支援する上での課題として人員確保を挙げた施設が七割を超えております。
 こうしたことを踏まえまして、都は、来年度から、住宅費負担の軽減等による働きやすい職場環境の確保と、災害時の運営体制の強化を図るため、福祉避難所の指定を受けた施設等の運営事業者が、施設周辺で職員宿舎を借り上げる場合に支援する都独自の補助制度を創設いたします。
 補助要件の詳細につきましては、こうした制度の趣旨を踏まえまして、今後検討してまいります。
 次に、暮らしの場におけるみとりの環境整備についてでありますが、本人や家族の希望に応じて、自宅や施設などの暮らしの場でのみとりを実現するためには、都民一人一人がみとりについて考えておくことや、それを支える看護、介護職員等の対応力の強化等が必要でございます。
 そのため、都は来年度、都民を対象としたリーフレットの作成や講演会の開催に加え、看護、介護職員等を対象に、多職種連携の方法や家族との接し方など、みとりのための研修を実施いたします。また、みとりに対応できる個室や家族の宿泊、休憩用の居室など、みとり環境を整備するための施設改修への独自の補助も開始いたします。
 本人や家族の願う形で人生の最期を迎えられるよう、今後、暮らしの場における環境整備を積極的に支援してまいります。
 次に、特別養護老人ホームの整備費補助の加算についてでありますが、都はこれまで、都有地の減額貸付、土地賃借料の負担軽減、建築価格高騰に対する加算を実施いたしますとともに、高齢者人口に比べ整備状況が十分でない地域の補助単価を最高一・五倍に加算するなど、特別養護老人ホームの整備を促進してまいりました。
 来年度からは、加算を行う整備率の基準を、これまでの高齢者人口比一・二五%未満から二%未満に引き上げます。その結果、加算対象となる地域は、現在の二十五の区市から四十五の区市へと、大幅に拡大する予定でございます。
 今後、長期ビジョンで掲げた平成三十七年度末までに定員六万人分を確保するという目標の達成に向け、特別養護老人ホームの整備を一層加速してまいります。
 次に、特別養護老人ホームの賃貸建物での整備についてでありますが、特別養護老人ホームは、これまで運営事業者が建物を自己所有することが要件とされており、このことが地価の高い東京において、施設整備が進まない要因の一つとなっておりました。
 このため、都は、建物を借り受けて運営できるよう資産要件の緩和を国に求めてまいりましたが、今般、国は、特別養護老人ホームの建物所有要件に係る規制緩和を行う方針を打ち出しました。
 これを受け、都は来年度から、土地所有者等が賃貸目的で特別養護老人ホームを整備する場合についても、新たに施設整備費を補助することといたしました。
 今後、制度が改正され次第、速やかに対応できるよう、準備に万全を期してまいります。
 次に、高齢者の住まいについてでありますが、都は、現在、住宅に困窮し、日常生活に不安のある低所得高齢者等に対し、住まいの確保と生活支援を一体的に提供する区市町村の取り組みを支援しております。
 こうした取り組みをさらに進めるためには、見守りや生活相談を担う民間団体の確保が必要であり、来年度はこうした団体を支援する新たなモデル事業を開始いたします。
 この事業では、住まいの確保とあわせて地域の交流拠点、相談拠点を設け、地域住民の互助により高齢者等を支える取り組みも支援するとともに、居住支援を行う担い手を育成するため、研修等を実施いたします。
 今後とも、住まいに困窮した高齢者等が地域で安心して暮らせるよう、区市町村や民間団体の取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、地域の意見を踏まえた医療体制の整備についてでありますが、都は、地域医療構想の策定に当たって、地域に必要な医療機能等について区市町村と意見交換を行うとともに、構想区域ごとに意見聴取の場を設け、医療機関、医療関係団体、保険者等から、地域の課題等に関する意見を伺ってまいりました。
 現在は、昨年十二月に取りまとめた構想の骨子案に関する意見を聴取しており、これらの意見を踏まえて、来年度早期に素案を取りまとめる予定でございます。
 構想策定後は、この意見聴取の場を医療法に定める地域医療構想調整会議に改め、地域に必要な医療体制について意見交換することとしており、都は、会議での意見や医療資源の配置状況、患者の受療動向等を踏まえながら、医療提供体制の整備を進めてまいります。
 次に、地域包括ケアにおける医療機関の役割についてでありますが、地域医療構想の骨子案でお示しした地域包括ケアシステムにおける治し、支える医療の充実を実現するためには、医療と介護が連携し、地域全体で支える在宅療養の体制を整備することが重要でございます。
 そのため、都は、病院が入院早期から在宅療養生活を見据えた患者支援を行うための退院支援マニュアルを作成し、全ての病院を対象に研修を実施するとともに、地域医療を担う中小病院に対して、退院調整や地域の医療と介護の連携に取り組む看護師等の配置を支援しております。
 今後、こうした取り組みを一層進め、中小病院が多いなどの都の特性を踏まえながら、東京の医療資源を最大限に活用し、高度急性期から在宅療養に至るまでの医療提供体制の整備を図ってまいります。
 次に、保育人材の確保、定着支援についてでありますが、都はこれまで、新卒者等の未経験者を対象としたセミナーや職場体験実習、保育人材・保育所支援センターのコーディネーターによる就職相談から就職後の定着支援までを行うほか、事業者向けに、人材育成や働きやすい職場環境づくりに関する研修などを実施してまいりました。
 来年度は、新たに、卒業予定者が自分に合った就職先を見つけられるよう、保育の現場で活躍する卒業生との交流会や、保育事業者を集めた就職説明会を開催するなど、保育所等への就労促進に取り組む保育士養成施設に対し、就職内定率が全国平均より二%増加するごとに、二十六万円を支給いたします。
 また、事業者向け研修も二回から三回に規模を拡充するなど、保育人材の確保、定着に取り組んでまいります。
 次に、賃貸物件を活用した保育所整備についてでありますが、お話のように、賃貸物件の活用は短期間で保育所を整備する上で有効な手法の一つでございます。
 そのため、都はこれまで、独自に改修費等を補助し、賃貸物件を活用して保育所の整備を行う区市町村や事業者の負担軽減を図ってまいりました。
 来年度、国は、保育の受け皿拡大を推進するため、現行の公定価格における運営費の賃借料加算を実勢に対応した水準に見直すこととしており、都は、それに加え、改修工事期間等の開設前の賃借料について、独自に補助する予定でございます。
 今後とも、賃貸物件を活用した保育所整備を進める区市町村や事業者を積極的に支援してまいります。
 次に、ボランティア等を活用した区市町村の子供の居場所づくりへの支援についてでありますが、現在、生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業が二十七の区市で実施されておりまして、あわせて居場所の提供や親への養育支援などを行う取り組みも始まっております。
 都は、こうした取り組みをさらに進めるため、来年度から、学習支援と居場所の提供等を実施した上で、食事の提供や生活指導、育児相談等を、ボランティア、民間団体などと連携して実施する区市を支援いたします。
 この事業では、居場所や食事の提供に必要な改修経費を全額補助するほか、子供や親への支援を行う職員配置経費などの運営費も支援することとしており、今後とも、地域の実情に応じてボランティアなどと連携し、居場所づくりに取り組む区市町村を積極的に支援してまいります。
 次に、生活困窮者自立支援法における相談体制についてでありますが、複合的な課題を抱える生活困窮者の自立を支援するためには、自立支援相談に加え、家計相談や就労準備等をあわせて行う総合的な支援体制を整備するとともに、相談員の専門性を高める必要がございます。
 このため、都は、事業計画の作成や人材育成等に対する独自の補助や効果的な先行事例の紹介等により、区市における体制整備を支援しております。
 また、多重債務者相談で培ってきた家計診断等の専門的なノウハウを活用した研修を実施いたしますとともに、今年度から新たに精神保健にかかわる事例検討会を開催するなど、相談支援に携わる専門人材の養成を行っております。
 今後とも、研修内容の充実を図るなど、区市における体制整備を積極的に支援してまいります。
 最後に、ひとり親家庭の親に対する就業支援についてでありますが、現在、都内全ての区市町村が、ひとり親家庭の母または父に対して、看護師、保育士、介護福祉士など、就職する際に有利な資格の取得を促進するため、資格取得期間中に生活費等を給付する事業を実施しております。
 今回、国は補正予算で、この給付金の対象者に対し、養成施設の入学準備金や就職準備金を貸し付け、資格を生かして五年間就業を継続した場合に返還を免除する貸付事業を創設しており、都としては、来年度できるだけ早い時期に事業を開始し、制度周知を図ってまいります。
 ひとり親家庭の相談窓口である母子・父子自立支援員は継続的な支援を行っており、今後とも、区市町村と連携しながら、ひとり親家庭の就労自立をきめ細かく支援してまいります。
   〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、私立学校の英語科教員の指導力向上についてですが、東京の私立学校は、それぞれ建学の精神と独自の教育理念により、特色ある教育を展開しております。
 英語教育についても、海外の教育機関と連携を図るなど、各校さまざまな取り組みを行っており、英語科教員の指導力向上においても、それぞれの特色を生かした支援をすることが重要でございます。
 そのため、私立学校外国語科教員海外派遣研修事業では、都が研修内容を指定するのではなく、一定の要件を満たした各校独自の海外派遣研修に対し、教員一人当たり百万円を限度に補助することとしております。
 今後は、私学団体等のご意見も伺い、効果的なスキームとなるよう準備を進めてまいります。
 次に、在住外国人支援団体に対する支援についてですが、都内には、日本語教育や相談事業などの支援を行うNPOなどの団体が約二百五十団体あり、外国人が安心して生活するために重要な役割を果たしております。
 そのため、従来の在住外国人支援を拡充し、例えば高校、大学で必要なレベルの日本語を教え、就学を促進させるなど、外国人の活躍を推進する事業を行っている団体に対し、新たに助成を行ってまいります。
 また、こうした団体と行政が連携し、団体の活動をさらに効果的なものにするため、東京都国際交流委員会の機能を再編強化し、区市町村と民間団体のネットワークを充実させてまいります。
 これらを通じ、日本人と外国人がともに活躍できる多文化共生社会の実現に向けて、積極的に取り組んでまいります。
 最後に、二〇一六年度の文化プログラムについてですが、リオ大会直後は東京二〇二〇大会に向けて本格的に始動することをPRする絶好の機会であり、国内外から注目され、誰もが参加できる東京ならではの文化プログラムを展開する必要がございます。
 このため、都では、上野文化の森など都内各所での取り組みや大規模な芸術祭の先駆けとなる舞台芸術フェスティバルを池袋で開始するなど、秋から新たな取り組みを実施いたします。また、六本木アートナイトを、国が行うスポーツと文化の国際会議に合わせて十月に開催するとともに、東京大茶会などの事業も着実に実施してまいります。
 多彩な事業を集中的に行うことで、文化プログラムの始まりを印象づけるとともに、スポーツと芸術文化を一体的に盛り上げ、二〇二〇年へとつなげてまいります。
   〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、二〇二〇年大会に向けた暑さ対策についてでございますが、快適な大会環境の整備には、これまで推進してきた緑の増加やビルの省エネ化等のヒートアイランド対策に加えて、多様な暑熱対策を講じていくことが必要でございます。
 そこで都は、今年度、ドライ型ミストなど暑さを緩和する設備の設置を支援する事業を開始するとともに、暑さ対策に係る全庁的な推進体制を整備し、ハード、ソフト両面にわたる対策の具体的検討を行っております。
 来年度につきましては、都施設における率先的な取り組みとして、都バスの停留所にドライ型ミストを設置し、効果を検証するモデル事業を実施するとともに、暑さ対策の機運を醸成するため、打ち水などの都民参加型イベントを実施するなど、訴求効果の高い新たな取り組みを展開してまいります。
 次に、電力の小売全面自由化に向けた取り組みについてでございます。
 全面自由化を契機に、さまざまな供給事業者が電力市場に参入してくる中、再生可能エネルギーなど低炭素な電力を普及拡大していくことが重要でございます。
 都はこれまでも、エネルギー環境計画書制度により、供給事業者が計画的に電気の環境性を向上することを促し、その結果を公表してまいりました。
 今後は、消費者が環境性に着目して電気を選択するための情報を盛り込んだパンフレットの作成、配布を初め、新たに提供されるサービス内容や電源構成等の動向を調査、把握し、都民のニーズに応じた情報の発信、普及啓発に努めてまいります。
 また、新たに、全ての都施設において、電力の購入に当たっては、再生可能エネルギーの利用率を環境指標として契約相手方を選択する際の条件に含めることを推奨いたしますグリーン購入もあわせて開始をいたします。
 これらの取り組みにより、消費者の環境性の高い電気への需要を高め、供給側の一層の取り組みを促してまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、パラリンピックの盛り上げについてでございますが、二〇二〇年までにパラリンピックの認知度を飛躍的に高めることで、満員の観客を集め、大会の成功を実現していきたいと考えております。
 このため、今年度から、パラリンピック競技の体験などを通じてパラリンピックの魅力を体感できるプログラム、NO LIMITS CHALLENGEを都内各地のイベントで展開するなど、積極的なPRに取り組んでおります。
 来年度は、この実施回数を大幅にふやすとともに、多くの人が集まるまち中でのデモンストレーションや都庁展望室での展示なども行います。また、より多くの方に参加いただけるよう、専用のウエブページやSNS、テレビなど多様なメディアを通じて発信力を高めてまいります。
 こうした取り組みを二〇二〇年まで継続して実施することで、一過性に終わらないムーブメントを創出し、共生社会の実現に向けて尽力してまいります。
 次に、パラリンピックに向けた選手支援についてでございますが、都は、ことし一月及び二月にパラリンピック選手発掘プログラムを初めて実施し、二百名を超える方々がみずからの可能性を見出すべく競技を体験いたしました。
 来年度は、強化合宿など選手の競技力向上に向けた競技団体の活動に対する支援を拡充いたします。
 また、パラリンピックへの出場が期待される東京ゆかりの選手を対象として、海外遠征費や競技用具などの経費の補助、練習会へのトレーナー派遣などを新たに開始いたします。
 さらに、都内で開催される大会へのIPC、国際パラリンピック委員会公認の取得を支援し、パラリンピック出場に必要な公認記録の取得機会や選手の試合経験を増加させるなど、一人でも多くの東京ゆかりの選手が国際舞台で活躍できますよう、多岐にわたって支援を行ってまいります。
 最後に、二〇二〇年大会に向けた被災地支援の取り組みについてでございますが、昨年公表いたしました二〇二〇年に向けた東京都の取組では、スポーツの力で被災地に元気を届け、復興へ歩む姿を世界に発信する取り組みを全体の八つの柱の一つとして掲げてございます。
 都はこれまで、スポーツ交流による復興支援を継続してきておりますが、来年度は、千キロメートル縦断リレーに世界的な著名人や多くの外国人ランナーの参加を得ることで発信力を強化し、一層注目を高めていくことを企画しております。
 また、スポーツの力で復興へ歩む映像を現在制作しており、来年度、リオ大会のジャパンハウスを初め各種イベント等で国内外に発信してまいります。さらに、被災地でのリオ大会期間中におきますライブサイト、大会後のフラッグツアーの実施や、事前キャンプ誘致を共同してPRするなど、被災地と連携したさまざまな事業を展開してまいります。
 これらの取り組みを、震災の記憶を人々の心にとどめることや地域振興につなげまして、大会が被災地に希望をもたらし、将来にわたり意義のあるものとなるよう努めてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、被災地応援ツアーについてでございますが、被災地応援ツアーは、東日本大震災による被災地復興支援のため、緊急対策の一環として平成二十三年九月から実施をしております。
 今年度は、昨年度に引き続き、福島県への旅行者を対象に、宿泊二万泊、日帰り一万五千人分について、その費用の一部を助成しております。
 来年度は、現在と同様の支援に加え、都内の学校が福島に教育旅行を行う場合に、福島県の施策と連携し、経費の一部に対し補助を行ってまいります。
 福島県の観光の状況等を踏まえ、適切な支援に努めてまいります。
 次に、中小企業の新しい事業分野の創出についてでございますが、東京の発展を支える中小企業が持続的に成長していくためには、新たな事業分野における中小企業の事業化を後押しすることが重要でございます。
 このため、都は来年度、新たな需要が見込まれる新事業分野の創出に向けた取り組みを開始いたします。
 具体的には、介護分野にロボット技術を活用するなど、既存分野と新技術を組み合わせたテーマを広く募集いたします。
 新たな市場の創出につながるテーマについては、すぐれた技術や製品開発力を有する中小企業と関係機関によるプロジェクトチームの立ち上げからマーケット調査、製品化までを支援してまいります。
 こうした取り組みによりまして、中小企業による新市場への参入から事業化までを支援し、その成長を後押ししてまいります。
 次に、事業承継に対する支援についてでございますが、中小企業の円滑な事業承継を図るためには、経営者が早い段階から意識を持ち、社内体制の整備や後継者の確保、育成に取り組むことが重要でございます。
 そこで都は、来年度から、経営者が高齢である会社などを巡回するスタッフを中小企業振興公社に配置いたします。企業の現場に直接出向いて、経営状態や後継候補の確保、育成の状況等を伺い、それぞれの課題に対応した専門家への橋渡しや公社等の支援策につなげてまいります。
 また、都の支援を受け、事業承継に取り組む企業が専門家や人材紹介会社等を活用する際の経費を助成いたします。
 さらに、商店につきましては、若手商人向けの研修に実践的なメニューを盛り込み、後継者の育成を進めてまいります。
 これらによりまして、中小企業の事業承継を着実に促進してまいります。
 最後に、非正規雇用対策についてでございます。
 今年度開始した非正規雇用対策を実施する中では、人材不足を背景に、非正規社員を社内で正社員とする企業の動きが活発化していることが明らかになりました。
 そこで、この機を捉え、国と連携した非正規雇用対策を加速させるため、来年度は正社員転換を促進する助成金の規模を千五百人から六千五百人に大幅に拡充をいたします。
 また、非正規の若者を新たに正社員採用した際の奨励金を、若者応援宣言企業に加えまして、若手の採用、育成に積極的で雇用管理が優良と国が認定した企業には倍額で支給し、より雇用環境が整備された企業への就職を後押しいたします。
 こうした取り組みを初めとする総合的な対策を進め、安定した仕事につくことを希望する方の正規雇用化を促進してまいります。
   〔中央卸売市場長岸本良一君登壇〕

○中央卸売市場長(岸本良一君) 被災産地への今後の支援についてでありますが、中央卸売市場では、これまで被災産地支援研修会や市場まつりを通じて福島県産品を支援してまいりました。
 水産物につきましては、いわき市の漁業関係者と連携し、被災産地支援研修会をこれまで二回実施し、多くの市場関係者や消費者団体の方々に参加をいただいているところでございます。
 研修会では、出荷者との意見交換や検査体制の視察を行い、現地での安全・安心確保への取り組みを販売先や消費者に広く伝えてもらうことで、水産物の風評被害の解消や消費拡大に努めております。
 本年度も、三月に消費者団体を対象に被災産地支援研修会を小名浜魚市場において開催いたします。
 今後も、被災産地の要望を聞きながら、必要とされる支援を行い、被災産地の早期の復興を後押ししてまいります。
   〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 大規模水害時の排水対策についてでございますが、都民生活の早期の復旧、復興に向けては、排水施設の機能を確保するとともに、それを補完するため、都や国のポンプ車等を効果的に運用することが重要でございます。
 排水施設の機能の確保につきましては、現在、河川や下水道の排水機場等において、電気、機械設備の高所への移設や、水密化による耐水対策を推進しております。
 また、ポンプ車等の適切な配置のためには、洪水や高潮などさまざまな要因による浸水想定区域の把握が必要であり、平成二十七年の水防法改正に基づき降雨条件の設定等、検討を進めております。
 今後、浸水想定の結果等を考慮しながら、直轄河川を管理する国や、水防管理団体である区市等の関係機関と連携し、大規模水害時の排水対策について検討してまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 防災対策についての五点のご質問にお答えいたします。
 まず、避難勧告等の発令についてでございますが、関東・東北豪雨においては、一部地域の避難指示の発令が鬼怒川の決壊の後となるなど、避難勧告等を適切に発令することの重要性が改めて認識されました。
 都はこれまでも、国が昨年八月に改定いたしました避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインを区市町村に対し周知し、判断基準の整備を促しているところでございます。
 また、河川水位の予報等が発表された際は、その内容を区市町村に速やかに伝達しているほか、避難勧告等が適切に発令されるよう、随時、相談、助言を行っております。
 来年度、都は、国や直轄河川沿いの自治体等により構成されます水害対策に係る協議会への参加を予定しており、この場における検討やご指摘の点も踏まえ、区市町村が避難勧告等を円滑に発令できるよう支援してまいります。
 次に、外国人の帰宅困難者への対応についてでございます。
 外国人は言葉が通じにくいため、災害時に自力での避難等が困難な場合が多いと思われます。このため、発災時における適切な情報提供が必要になるとともに、ホテルなど身を寄せる場所のある外国人はそこで確実に保護し、行き場のない方は一時滞在施設へ的確に誘導することが重要です。
 災害時に、こうした外国人対応が円滑に図られるよう、都は事業者等に対し普及啓発を行うとともに、語学ボランティアや翻訳アプリ等を活用した訓練を実施しております。
 今後とも、外国人の帰宅困難者の安全・安心確保に向け、区市町村や民間事業者などと連携しながら、必要な対策を検討し推進してまいります。
 次に、帰宅困難者対策訓練についてでございます。
 二月八日に行いました千代田区との合同訓練は、東京駅、秋葉原駅など、駅周辺の五地区がその地域特性を最大限に生かし、総勢五千二百名の参加を得て実施いたしました。
 今回は、特にイベント開催中の発災を想定した訓練において、利用者の安全の確保や一斉帰宅の抑制など、施設管理者と利用者の双方がとるべき行動の流れを確認したところでございます。
 また、一時滞在施設の開設や、船やバスによる要配慮者の搬送など、さまざまな取り組みを同時に実施することにより、災害時の対応を複合的に検証することができました。
 今後は、こうした訓練の成果を踏まえ、都内集客施設等における発災時の的確な対応を目指し、区市町村や事業者との連携のもと普及啓発を図るなど、地域や施設の状況に応じた効果的な帰宅困難者対策を推進してまいります。
 次に、旧立川政府倉庫の活用についてでございます。
 いつ起こるかわからない災害に備えるためには、この施設を可能な限り速やかに活用することが重要です。このため、土地、建物については現状のまま取得することとし、必要な設備改修等を終えた後に使用したいと考えております。
 今後、改修工事の内容や活用のあり方などを踏まえ、具体的なスケジュールを決定する予定でございます。
 また、この倉庫は市町村の備蓄の充実や地域住民の訓練、普及啓発の場として活用することなども想定しており、現在、多摩地域の市町村に対し、これらの観点からの検討をお願いしております。協力の意向をいただいた市町村がしっかりと活用できるよう適切に対応してまいります。
 最後に、同倉庫における空路の活用についてでございます。
 この倉庫が立地いたします立川広域防災基地には立川飛行場が配置されており、一昨年二月の多摩地域の大雪の際には、この基地からヘリコプターで食料などを輸送したことがございます。
 こうした立地上のメリットを生かし、備蓄物資などを空路を活用して輸送することは、倉庫を広域防災拠点として活用する上で極めて有効であります。
 一方で、空路の活用に当たっては、被災者の救出救助との兼ね合いも含め、実際に航空機を保有、運用する各機関との連携をさらに強化していくことが不可欠でございます。
 都といたしましては、訓練や協議を重ね、災害時の総合調整力を高めるとともに、各機関への要請や物資の輸送などが円滑に行われるよう積極的に取り組んでまいります。

○副議長(小磯善彦君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時五十七分休憩

ページ先頭に戻る