平成二十七年東京都議会会議録第十七号

○副議長(小磯善彦君) 十二番小松久子さん。
〔十二番小松久子君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○十二番(小松久子君) 初めに、若者の政治参加について伺います。
 このたびの公職選挙法改正による参政権の拡大は、女性参政権が保障された一九四五年以来、実に七十年ぶりのことです。
 二〇一六年参院選は、高校生でも投票できる最初の選挙となり、これまで語られることのなかった主権者教育やシチズンシップ教育が注目されていますが、学校だけではなく、地域がともに取り組むことによって、子供自身も地域のかかわりを意識します。
 例えば、子供も支払う消費税は国の政治が、地域の小中学校の問題は自治体の政治が決めていること。自分の日常生活と政治が深く結びついていることを知り、投票によってそれを変え得るということを学ぶ、このような取り組みは、子供が参加型民主主義を理解し、実践するために必要な知識、スキル、価値観を身につけ、行動的な市民への成長を促すものと考えます。
 海外では、政治におけるリテラシー教育が進んでおり、その事例を知事はよくご存じと思います。新たに約二百四十万人の有権者が誕生するこの機会に、若者たちに東京都知事として政治参加を促すメッセージを発信することは、大きな意味があります。
 例えば、タウンミーティングや語る会などの手法で、若者と知事が直接対話するようなイベントの開催などは、啓発活動に大きく貢献するのではないかと考えます。
 公職選挙法が改正され、選挙権年齢が二十歳以上から十八歳以上に引き下げられましたが、このことについて知事の所見を伺います。
 これまで、新成人となって最初の選挙では投票しても、二回目以降の選挙では投票に行かず棄権する若者が多い傾向にあります。
 十八歳選挙権がスタートするこの機会に、若者世代の投票行動を引き出すための思い切った啓発活動が必要と考えます。見解を伺います。
 さて、高齢者のひとり暮らしや高齢者のみの世帯が急増しています。
 高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けるには、居住の場の確保に加え、見守りを含む生活支援を一体的に考えていくことが求められます。
 都は今年度から、こうした取り組みを行う区市町村を支援する、生活支援付すまい確保事業を実施し、私の地元の杉並区がこの事業の第一号として取り組んでいます。
 生活支援付すまい確保事業を杉並区以外の区市町村にも広めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 都では、地域包括ケアシステムのあり方について議論が進められ、在宅でのみとりのふえることが確実な状況です。
 そのような中、家族介護にかかわる問題に目を向けると、在宅で、高齢者を初め障害者や難病患者などの介護を担う家族への負担が大きく、介護疲れやストレスが原因で心中や殺人など、最悪の事態も起きています。
 在宅介護を担う家族への一層の支援が必要と考えます。都の見解を伺います。
 先日の新聞に、介護殺人を犯してしまった家族介護者の半数が不眠状態にあったという記事が掲載され、専門家のコメントとして、介護保険制度は介護する側を支援する視点が欠けているとありました。同感です。
 介護者の中でも、特に十代から三十代で祖父母や父母の介護を担うヤングケアラーの問題は深刻です。
 介護のために学業が続けられなくなり、就職できない、あるいは内定を返上し、離職せざるを得なくなり、介護が終了した後も復職できない場合、容易に貧困に陥ります。結婚の機会も持てず、若いがゆえに地域とのつながりがなく、生活経験の乏しさによる困難が多く生じ、新たな社会問題となっています。
 イギリスでは、このような問題解決に早くから着手し、国も自治体も、さまざまな公的支援を行っています。
 家族介護を担うヤングケアラーについて、まずは実態を把握する必要があります。
 世田谷区では昨年、調査が行われていますが、都としても、この問題に光を当て、支援策を講じるための実態調査を実施するよう要望いたします。
 ところで、きょう十二月九日は、一九七五年のこの日に、国連の障害者権利宣言が採択されてからちょうど四十年目に当たります。
 二〇一三年六月の障害者差別解消法成立を受け、翌年一月に日本が国連の障害者権利条約に批准したのは、条約に署名してから七年後のことでした。それまで保護されるべき対象とされてきた障害者を権利の主体として捉えるという発想の転換を迫る障害者差別解消法が成立して、初めて批准が可能になったのだといえます。
 法の理念である障害者と共生する社会にしていくには、全ての人の受容、知識、寛大さが必要であり、一般の人の意識が変わることが重要です。来年四月一日にいよいよ法が施行されます。
 そこで質問です。
 都は、障害のある人もない人も、ともに暮らせる社会の実現に向け、差別解消法が円滑に施行されるよう、準備を進める必要があると考えます。この取り組み状況について伺います。
 国では、対応指針を示している省庁がまだ一部にすぎない状況ですが、区市町村の現場では、あと四カ月を切った施行を前に、対応の準備に追われています。
 例えば、障害児の就学相談で、選挙の投票所で、緊急時や災害時など、具体的な場面で障害者への合理的配慮の提供が行政に義務づけられることになるからです。
 しかし、自治体により進捗にばらつきがあります。都は国の動きを待つのでなく、全庁挙げて積極的に取り組み、ガイドラインなどを示す必要があります。
 最後に、エネルギー対策について伺います。
 現在パリで開かれているCOP21で、CO2削減に向けた枠組みづくりの議論が大詰めを迎えています。東京都でも、環境基本計画の中間のまとめで、CO2を二〇三〇年までに三〇%程度削減する新たな目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入拡大が示唆されました。
 都民の多くは、電力の大消費地である東京が、電力供給の多くを都外の電源、特に原発に依存してきたことを、福島第一原発の事故によって改めて認識しています。原発に頼らず、気候変動対策にも資する再生可能エネルギーの導入を拡大していくことが重要です。
 再生可能エネルギーの普及拡大に向けた都の取り組みについて伺います。
 二〇一六年四月から、電力の小売全面自由化が始まります。全ての家庭や事業所で電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになり、エネルギーシフト推進のチャンスと考えます。消費者が電源を選択するためには、電源構成や環境負荷の表示が必要です。
 電力の小売全面自由化を踏まえ、都民、事業者による再生可能エネルギーの電力の選択を促す仕組みづくりを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 来年一月からは電気事業者の変更申し込みの事前受け付けができるようになるため、事業者による消費者への勧誘が本格化していくと思われます。何か契約をしないと電気がとまる、電気不足や停電しやすくなると誤解している人もいるようです。集合住宅の管理会社から系列会社への契約変更の案内が届いたが、どうしようなどの声も寄せられています。
 事業者間競争の激化とともに、今後は、契約に関するトラブルの発生が懸念されます。環境行政だけでなく、消費生活行政の観点からも、電力の小売全面自由化に向けた取り組みが必要であると思います。
 所見を伺いまして、都議会生活者ネットワークを代表しての質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 小松久子議員の一般質問にお答えいたします。
 選挙権年齢の引き下げについてでありますが、今回の法改正は、現行憲法において初めてでありまして、七十年ぶりとなる選挙権年齢の引き下げであります。将来を担う若い世代が選挙を通じて社会に適切に参画していくことは、大いに意義のあることでございます。
 今回の改正で、全国で二百四十万人の若者が新たに選挙権を持つことになります。そうした若者たちが政治や社会のあり方などに関心を持って、みずから学ぶことなどが期待されます。
 一方、有権者としては、正しく権利を行使するためには、公職選挙法上のルールなどを理解することが重要であります。教育現場での主権者教育等も充実させていく必要がございます。
 今後とも、広く都民に周知を図っていくなど、都選挙管理委員会において、関係機関と連携しながら、的確な対応を行ってまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
〔選挙管理委員会事務局長安藤弘志君登壇〕

○選挙管理委員会事務局長(安藤弘志君) 若い世代に対する選挙に関する啓発についてでございますが、今般の公職選挙法の改正によりまして、新たに選挙権を得る対象が高校生を含む年齢層になることから、現在、都選挙管理委員会におきましては、都内の高校などと連携して、選挙の制度や重要性への理解を図り、選挙への参加を促すため、選挙出前授業や模擬選挙などの取り組みを進めております。
 今後とも、こうした取り組みを初め、ホームページやSNSなども活用しながら、若い世代に対する選挙に関する啓発に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、生活支援付すまい確保事業についてでありますが、都は今年度から、住宅に困窮し、日常生活に不安のある低所得高齢者等に対し、住まいの確保と生活支援を一体的に提供する区市町村の取り組みを支援する事業を開始いたしました。
 この事業を実施している杉並区では、地域の不動産関係団体や社会福祉協議会等と連携して、高齢者等を対象に、アパートの空き室のあっせんと入居後の安否確認などをあわせて行っております。
 今後、福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議での議論や杉並区の取り組みも踏まえながら、住宅確保と生活支援を一体的に提供する取り組みを推進してまいります。
 次に、家族介護者への支援についてでありますが、高齢者等を在宅で介護する家族は、心身への負担感や社会からの孤立を感じることが多いといわれております。
 そのため、介護保険制度では、家族介護支援事業を地域支援事業の一つに位置づけており、区市町村は、介護者同士の交流やリフレッシュの機会の確保、介護教室の開催など、さまざまな取り組みを実施しております。
 これに加え、都は、区市町村の先駆的な取り組みや地域の実情に応じた独自の取り組みを包括補助で支援しているほか、家族介護者のレスパイトに有効なショートステイ、小規模多機能型居宅介護など、在宅介護を支えるサービス基盤の整備を進めております。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、在宅で介護を行っている家族を支援してまいります。
 最後に、障害者差別解消法の施行に向けた取り組みについてでありますが、都はこれまで、障害のある人もない人も互いに尊重し、支え合いながらともに生活する社会の実現を目指し、心のバリアフリーや情報バリアフリーの推進など、障害者施策を推進してまいりました。
 また、来年四月の法の施行に向けては、現在、庁内の体制整備について検討を進めるとともに、障害への理解促進と法の周知等のために職員向けの説明会を開催し、区市町村に対しても逐次、情報提供を行っております。
 今後、職員が適切に対応するための要領を作成するとともに、国の対応指針等を踏まえ、民間事業者や都民に対して普及啓発を行うなど、関係局とも連携して、障害者の方の意見も聞きながら、必要な準備を着実に進めてまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、再生可能エネルギーの普及拡大についてでございますが、都は電力の大消費地の責務として、一層の省エネ、節電とともに、再生可能エネルギーの普及拡大に取り組むことが重要であると認識しております。
 先般公表した東京都環境基本計画のあり方について(中間のまとめ)では、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた施策の方向性として、東京の特性を踏まえた都市型再生可能エネルギーの利用促進や多面的なアプローチによる広域での導入拡大が必要としております。
 都は今後とも、東京ソーラー屋根台帳による情報発信や駐車場の上部等の未利用区間を活用した太陽光発電の普及拡大、都市型バイオマス、太陽熱、地中熱の導入促進など、多面的な施策展開を図ってまいります。
 次に、電力の小売全面自由化に向けた取り組みについてでございますが、電力の小売全面自由化により、供給事業者の参入は活発化し、家庭などの需要家の選択肢が多様化する中で、低炭素な電力の供給を拡大していくことが重要でございます。
 消費者が再生可能エネルギー電力を積極的に利用することで再生可能エネルギーの供給拡大を促すため、都はこれまでも、キャップ・アンド・トレード制度における低炭素電力選択の仕組みなど、需要側の取り組みを推進してまいりました。
 今後も、需要家、供給事業者の意向等を踏まえつつ、エネルギー環境計画書制度による情報発信や、消費者の選択意欲を喚起する普及啓発などを行い、電力の小売全面自由化を契機とした需要、供給両面からの再生可能エネルギーの普及拡大に努めてまいります。
〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 電力小売全面自由化における消費生活行政の取り組みについてですが、来年四月の電力自由化により電力会社の選択が可能となりますが、情報収集や交渉力で劣る消費者が契約トラブルに巻き込まれることが懸念されます。
 このため、都として、消費者が安心して選択ができるわかりやすい情報提供と消費生活相談における適切な対応が重要となります。
 そこで、電力会社の選択方法や生活への影響等について、一月発行の都の消費生活情報誌やSNSなど、多様な媒体を活用して情報発信してまいります。
 また、区市町村を含め都内の消費生活相談員を対象に、契約時のトラブル等に関する研修を今月実施し、相談機能の充実も図っております。
 都は、こうした取り組みを着実に進め、消費生活行政の面からも、電力自由化に備え必要な対策を講じてまいります。

○議長(川井しげお君) 以上をもって質問は終わりました。