平成二十七年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 二十七番宮瀬英治君。
〔二十七番宮瀬英治君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○二十七番(宮瀬英治君) 初めに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の施設整備について申し上げます。
 知事は、新国立競技場の整備費用として、三百九十五億円を都が負担する旨を発表されました。
 都が一定の負担をすることを否定するものではありませんが、現実に支出をするのは都民の税金です。負担金に関しては都民の関心も高く、都民の代表である都議会には、特別委員会が設置されているにもかかわらず、途中報告がなく、その情報が先にメディアに流れたことは遺憾であります。都民の納得が得られる説明を知事には強く求めます。
 知事の判断に対し、先週、外部調査会社に委託し、都民調査を行いました。それぞれ質問したところ、知事の三百九十五億円の負担判断を評価するとした都民は約三割、また、今後建設費が増大し、さらに都の負担金がふえるのはやむを得ないとした都民も約三割にとどまり、逆に、そもそも、いまだ都民への説明責任を十分に果たしていないといった都民は八割に上っております。
 知事は、こうした都民の不安や不満に対し、どのように捉え、また今後どのように対応していくのかお伺いいたします。
 次に、自動体外式除細動器、いわゆるAEDについてお伺いします。
 平成二十七年に心臓機能が停止した都内傷病者の搬送人数は約一万二千名に上ります。今後、高齢者の増加、救急車の到着の長時間化が懸念されている現在、AEDの増設、活用はますます重要です。
 一方、突然の心停止は、いつ起こるかわからないにもかかわらず、二十四時間使えるAEDの箇所は非常に少ないのが実態です。
 例えば、板橋区では区内に八百三十六台のAEDがありますが、派出所、病院など二十四時間使用可能なAEDは六十八台であり、昼間と比べわずか八%にすぎないのが実態です。
 そこで、コンビニにAEDを設置する取り組みを提案いたします。
 既に、市内のコンビニほぼ全てにAEDを設置している船橋市の実績を見ますと、AED利用時間の約半数が夜間や早朝であり、コンビニにAEDを設置した効果があらわれております。
 同様に取り組む自治体も十二道府県三十三市町村にふえ、平成二十七年、経産省においてもコンビニにAEDを設置推進することが推奨され、また、コンビニ各社や業界団体においても、行政支援があれば積極的に取り組みたいとの力強い声を、それぞれお聞きいたしました。
 また、財源に関しましても、船橋市では、市施設全てにあるAEDをリース会社と一括契約しコストを削減、その浮いた予算でコンビニへの設置費用を捻出し、新たな負担増に至っていません。
 さらには都民調査においても、全額または一部を行政が負担しても、AEDをコンビニに設置すべきだと答えた方は約六割に上りました。
 このように国の方針、他市の実績、財源、コンビニ業界、都民ニーズなど周辺状況の変化に伴い、都においても、コンビニエンスストアなど夜間に使用可能な場所へのAED配備を検討するなど、AEDの普及促進を図るべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、首都直下地震での災害拠点病院の役割について幾つか伺います。
 都では、十六万人の死傷者を想定しており、八十ある災害拠点病院の機能維持は重要です。とりわけ電力確保は最重要課題であり、都では各病院に対し、非常用電源のために、燃料確保は三日分と義務づけております。
 一方、私が全拠点病院に行った実態調査では、実際には三日分に全く満たない病院や、津波など水害が想定される海抜ゼロメートル地域の病院の非常用電源設備が、浸水しやすい地下に埋設されている病院があるなど、備蓄や備蓄を取り巻く環境に多くの課題が生じていることが明らかになりました。
 また、この九月には、関東、東北地方でも記録的な豪雨に襲われ、病院が浸水するなど大きな被害がもたらされました。
 都として早急に正確な実態把握に努めるとともに対策を講じるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 また、三日分の燃料確保でありますが、東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島三県にある四百六十八小児科医療機関への大学病院による調査では、電気が実際に使えなかった日数は平均三・八日間、宮城県に限っていえば六日間とされ、また、ついに非常用電力を喪失し、傷病者や患者に対応できなかった病院事例もございました。
 都においても、電力の復旧は発災後五日をめどとしており、備蓄が三日分では、あと二日足りません。
 三日の根拠となった厚労省の災害医療等のあり方に関する検討会の委員によれば、全国自治体の財政状況や人口密度を鑑み、一律最低ラインの三日程度としたが、東京は三日では足りない、三日程度の程度という文言には意味があると実際におっしゃっておりました。
 また、被災病院への調査によれば、震災後、備蓄を何日分にしたかの問いに対しまして、三県平均で五・四日間、宮城県では六・二日間と備蓄量をふやしております。
 一方、都の拠点病院の平均確保日数は約三・一日間であり、今後、都においても、可能な範囲で備蓄をふやす取り組みをさらに推進すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 病院の備蓄をふやすためには、スペース確保や資金的な問題があります。
 そこで、電力が回復するまでの期間、都はランニングストック方式や広域連携による燃料確保を講じていましたが、新たなランニングストック方式では、病院を対象から外し、燃料確保は国からの支援を待つ体制へと移行いたしました。
 新たな燃料確保は、いずれも国、他自治体、民間といった他者依存、また災害規模や道路状況など周辺環境によって左右され、都での維持管理、責任が持てません。
 そこで、国の燃料輸送支援体制が都に対して確実に運用されるよう万全を期すとともに、都においても、都有施設間でのストックの調整や調達などにより、都独自のバックアップ燃料体制が必要であると考えますが、所見をお伺いいたします。
 例えば、二十万リットルの燃料を保有する都立舎人公園の近くには三つの災害拠点病院が位置し、うち二つは公園備蓄燃料と互換性があります。万一、舎人公園の燃料の一部を優先的に病院に供出する取り組みです。こうした取り組みが、病院へのアンケートでは、輸送手段や安全管理の課題が解決されればという条件つきながらも、多くの病院が有効と回答しております。検討を要望いたします。
 次に、病院に殺到する傷病者を、近接地に設置された緊急医療救護所で効率的にトリアージ、応急処置することは、重症者を救うためにも重要です。
 今回の病院調査では、ほぼ全ての病院が災害訓練を行っているものの、救護所を含めた区市町村、地区医師会との連携訓練は、いまだ七割が実施されておらず、また今後も行うつもりもないといった病院もありました。
 災害はいつ発生するやもしれず、平成二十四年に都が計画を発表してから三年が経過しており、早急に対策が求められます。
 このように、災害拠点病院と区市町村、地区医師会などとのさらなる連携構築、強化すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、広報です。
 都民が政策を認知理解し、必要なときにそのサービスを享受できることは重要であります。各局が多くの事業を展開、広報活動を行っておりますが、全庁的な課題もあります。
 例えば、平成二十六年福祉保健局の調査では、各施策における都民の認知率は総じて一割や二割にとどまり、五年前の前回調査と比較しても改善が見られません。
 また、私自身、毎年定点外部調査を行っておりますが、例年総じて、都庁各局が取り組む都民向け施策の認知率は、おおむね一割から二割、よくて三割であります。
 さらに分析をすると、例えば、妊娠、育児に悩む都民の妊娠相談ほっとラインの認知率は約三割であるように、課題を抱える都民の多くが、その都の施策を知りません。その傾向は全庁的、慢性的な課題といえます。
 都には政策企画局に戦略広報担当がありますが、その役割は、知事広報とそれに伴う総合調整機能にとどまっております。
 都の各局取り組みを含めた都全体の広報予算が幾らなのか、誰も管理、把握をしておらず、また、活動を把握する全体戦略を担う部署が都にはありません。
 多くの民間企業が社長直下にその機能を担う部署を設けているように、都においても、その部署や役割を新たに創出させ、まずは、推定予算三十五億円から五十億とされる活動実態調査や、一方的なお知らせ型ではなく、ニーズを捉えた目標、効果結果指標を設けるべきと考えます。
 今後、テレビ、新聞、雑誌のパブリシティー枠、借原稿の供出、テレビ番組や公益社団法人ACジャパンとのタイアップなど積極的な展開や、都営地下鉄や広告主と連動した広告PR企画、オリンピックに合わせて設置されるまち中デジタルサイネージの利用など、都の強みや資産を生かした展開、さらには、私が実施した外部調査、都民調査では、防災以外の都の各施策を紹介した「東京防災」のような冊子が欲しいといった都民のニーズが半数を超えるなど、成功事例の横展開も検討すべきと考えます。
 私自身、民間で宣伝広報に十年携わっておりましたが、都には大きな潜在的な可能性があります。
 このように、都の政策認知における慢性的かつ全庁的な課題に対し、知事直下に、都全体や各局の広報PR宣伝活動を助言、統括し、その実態把握、効率化、改善等を担う、本来の意味での戦略を担う部署や役割を新たに設け、抜本的な改善に向けた取り組みが必要であると考えますが、知事の所見をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 宮瀬英治議員の一般質問にお答えいたします。
 新国立競技場の整備費負担についてでありますが、新国立競技場は、国が責任を持って整備を進めることが基本でございます。
 一方で、アスリートファーストや周辺のまちづくりとの調和など、私が関係閣僚会議で申し上げた都の考えが新たな整備計画に反映され、都民に大きな便益があることは明らかであります。
 今般、このことを踏まえ、遠藤東京オリンピック・パラリンピック大臣、馳文部科学大臣と会談して、財政負担をすることを決断いたしました。
 財政負担に当たりましては、国と分担し合う対象経費を明確化することで、物価騰貴や消費税率の変更以外に、都の負担が増加する要素はございません。
 この財源案につきましては、負担の考え方や都民の便益などを具体的に示しており、都のホームページに載せて公開するとともに、私も機会を捉えて説明してきております。
 今後とも、都民のご理解を得られるように、丁寧に説明をしてまいります。
 続きまして、広報の戦略的な取り組みについてでございますが、都政が担う広範な行政分野において、各局と広報にかかわる総合的な企画及び連絡調整を所掌する生活文化局とが密に連携し、時代の変化や幅広い都民ニーズを的確に捉えた広報を実施しております。
 また、本年四月には、全庁にわたる重要政策を俯瞰的に捉え、私が発信するべきトップマネジメント広報を戦略的に支える新たな体制を政策企画局の中に整えました。
 今後とも、メディアやコミュニケーションツールなどを効果的に活用しながら、都庁全体が一丸となって都政の発信力の向上に取り組んでまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、AEDの普及促進についてでありますが、都は、これまでAEDが有効に使用されるよう、都民に対し使用方法等に関する講習会を実施してまいりました。また、必要なときに使用できるよう、設置場所を示すマップを作成する区市町村を支援してまいりました。
 本年六月からは、救急医療に関する普及啓発等を行う日本救急医療財団が、都内全域を含む全国のAEDマップを公開しており、今後、使用可能な時間帯などの情報も追加することとしております。
 都は、このマップに必要な情報を登録するよう、区市町村や民間事業者に働きかけており、今後、財団の登録情報も活用しながら、夜間も含め、使用可能な時間帯等を把握し、区市町村と連携して都民に情報提供を行ってまいります。
 次に、災害拠点病院における電力の確保についてでありますが、災害拠点病院は、国の指定要件で、通常使用する電力の六割程度の発電容量がある自家発電装置を保有し、三日分程度の燃料を確保するように規定されております。
 都は、災害拠点病院に対して自家発電装置の設置への支援を行うとともに、浸水被害等においても必要な電力を確保できるよう、BCPの策定を働きかけております。
 また、各病院の自家発電装置の発電容量や運転に必要な燃料の確保状況について、毎年、国の依頼に基づき調査しており、ことしはさらに、関東・東北豪雨を踏まえ、自家発電装置の設置場所等についても調査を行っております。
 都は、災害医療協議会で災害時の医療体制を検討しており、今後とも、必要な医療体制を確保してまいります。
 次に、災害拠点病院の燃料の確保についてでありますが、都は、災害拠点病院に対して、自家発電装置の保有や三日分程度の燃料の確保を求めており、自家発電装置等の整備については財政支援も行っております。
 また、停電時に限られた電力を適切に利用するためのエネルギー管理や、近接のガソリンスタンドなどとの協定に基づく燃料の補充などをBCPに規定するよう働きかけております。
 さらに、国や石油連盟等と連絡協議会を設け、災害時に国家備蓄を活用し、燃料を確保する体制を整えており、今後とも、災害拠点病院における必要な燃料の確保に努めてまいります。
 最後に、災害時における地域の連携体制についてでありますが、都は、区市町村、地区医師会、医療機関などで構成される地域災害医療連携会議を二次保健医療圏ごとに設置し、区市町村による緊急医療救護所の設置、運営、病院と診療所との役割分担や連携の推進について、地域ごとに、その実情を踏まえながら検討しております。
 また、区市町村に対しては、災害医療に関する計画策定や、医療救護活動訓練に要する経費を支援しております。
 さらに、地域災害医療連携会議が核となり、災害医療図上訓練を実施し、負傷者の受け入れ医療機関の調整、医療救護班の要請、派遣など、関係機関同士の連携方法について検証しております。
 こうした取り組みを通じまして、今後とも、地域において関係機関の連携が進むよう支援してまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 災害拠点病院向けの燃料の確保についてでございますが、大規模災害時には、燃料を確保し、確実に病院に輸送する必要がございますが、都有施設での備蓄は輸送手段などの課題があるため、都といたしましては、都、国、石油連盟等による連携体制を新たに構築することで燃料を確保することといたしました。
 制度の実効性の確保に向け、ことし五月に、関係者で構成する連絡協議会を設置し、燃料供給体制の強化や供給訓練などについて検討を行っております。
 また、七月に要請手順を確認する図上訓練、また九月及び十一月には、災害拠点病院に配送を行う実地訓練を実施し、システム修正など必要な改善を行ってまいりました。
 引き続き、関係機関との連携を密に図りながら、燃料を病院に確実に供給できるよう取り組んでまいります。