平成二十七年東京都議会会議録第十七号

○副議長(小磯善彦君) 六十七番小松大祐君。
〔六十七番小松大祐君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○六十七番(小松大祐君) 初めに、障害者施策について質問をいたします。
 障害者にとってスポーツ活動は、身体機能の維持向上といったリハビリテーション効果だけではなく、外出機会の増加や社会活動への自信の回復など多くの効用が期待され、積極的で豊かなライフスタイルの獲得につながるものであります。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の決定以降、障害者スポーツに対する理解や支援の機運の高まりを感じています。
 一方で、障害者がスポーツを行う機会は、健常者に比べ著しく低いのが実情です。施設の不足、指導者や補助者の不足など、環境づくりはまだまだ課題が山積しています。
 こうした中、障害者スポーツセンターの老朽化に伴う改修工事が計画されています。二〇二〇年大会に向けて非常に重要な時期に、施設利用ができないという状況にあります。
 障害者スポーツの未来にとって、パラリンピアンの活躍が与える影響は極めて大きいものです。都は、この間の施設確保に対して一層の努力が必要だと考えます。
 例えば、我が党が以前から伝えている特別支援学校の活用の取り組みをさらに加速していく必要があります。
 また、昨年の一般質問でも提起をさせていただきましたが、都内にある大学や企業の施設の活用の働きかけをより積極的に行うなど、展開をさらに進めることが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 選手の強化や大会ボランティアの取り組みについては、既に取り上げてまいりました。
 しかし、パラリンピック競技には、競技補助者の存在を忘れてはなりません。
 例えば、陸上競技では、視覚障害のある選手とともに走る伴走者がいます。その伴走者の存在が、選手自身のパフォーマンスにも大きく影響します。同時に、障害者スポーツがさらに発展、浸透していく際に、競技補助者の存在は必要不可欠なものであります。
 こうした競技補助者への支援についての取り組みも今後の重要な課題と考えますが、都の見解を伺います。
 障害者が、個性や才能を生かしながら社会に参加、貢献できる環境を整えていく上では、スポーツのみならず、芸術文化を通じた自己表現の場や人々との交流の機会を設けることも有効です。
 先日、障害者とアーティストが一緒に絵や音楽をつくり上げていく活動の場を見る機会がありました。
 その制作の過程において互いが刺激し合うことで、アーティストは新しい世界観に触れ、障害者は潜在的な能力や可能性を引き出されているように見受けられました。
 作品発表の場の拡充など、障害者アートの普及啓発に対する支援はもちろんのこと、こうしたアーティストとの交流を推進することで、障害者の社会参加の機会をふやすだけではなく、共生社会の構築にもつながるものと考えます。
 都が二〇二〇年大会に向けた文化プログラムを先導するリーディングプロジェクトの一つとして実施する障害者アートプログラムTURNにおいては、こうした考えを生かした展開を進めることが必要と考えますが、知事の見解を伺います。
 障害者が芸術の才能を生かして社会に参加し、貢献していくためには、学齢期においての芸術教育やすぐれた才能のある児童生徒の発掘が重要であると考えます。
 例えば、都立矢口特別支援学校の卒業生である書道家の金澤翔子さんは、その類いまれなる書の才能を早くから見出され、鍛錬を積むことにより、現在では海外でも個展を開くまでになっています。
 特別支援学校において、すぐれた芸術の才能を早期に発掘し、その才能を広く社会にアピールする取り組みを進めるべきと考えますが、都の教育委員会の見解を伺います。
 さらに、特別支援学校の児童生徒がスポーツや芸術に関する能力の伸長を図り、生涯にわたってスポーツに親しんだり、芸術活動を通じて自己を表現したりするためには、障害者スポーツや芸術に関する教育の充実を図る必要があります。
 そのため、スポーツや芸術の専門家を学校に招き、教員が積極的に専門家からのアドバイスを得て教育の充実を図っていくことが重要であると考えます。都教育委員会の見解を伺います。
 二〇二〇年大会終了後には、障害の有無を超えて、ともにスポーツに親しみ、障害のある人たちの芸術作品がまちじゅうにあふれている。そんな東京であってほしいと思います。
 例えば、児童生徒の作品をラッピングした特別支援学校のスクールバスの運行を実現するなど、身近なところからの取り組みに着手するよう要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、都営地下鉄のバリアフリー化について伺います。
 都営地下鉄は、エレベーター等によるホームから地上までのワンルートを全駅で確保しただけではなく、三田線、大江戸線全駅にホームドアを設置するなどの取り組みを積極的に進めてまいりました。
 二〇一二年大会の開催都市ロンドンでは、ハード面での整備はこの東京よりもおくれているともされましたが、駅員に手助けを気軽に求められるインターホン、ヘルプポイントが各所に設けられるなどの対応が充実していたことから、パラリンピック大会参加者には非常に好評だったと聞いています。
 都営地下鉄においても、さまざまな障害をお持ちの方がご自身で都営地下鉄を利用する際、必要に応じ、お客様をより適切にご案内や介助ができるよう、現場職員の対応力を向上させることはもとより、利用者に対しても啓発を促進していくことも必要だと思います。
 また、障害者のニーズを事業に生かすためには、例えば点字ブロックの日とされている三月十八日などに駅係員と特別支援学校の生徒が一緒に駅構内を移動する機会を設け、意見をじっくり聞いてみる。また、こうした活動を都民に広く啓発、PRしていくことなども検討すべきと考えます。
 そこで、職員の対応力を高め、ソフト面でのバリアフリーを向上させるための交通局の取り組みを伺います。
 次に、都市基盤整備について伺います。
 知事のいう、東京を交通渋滞のない世界初の大都市とするためには、三環状道路の完成だけではなし得ないと考えます。そうした観点から二点質問いたします。
 私が住む世田谷区では、平成二十五年度から連続立体交差事業に着手している京王線の笹塚駅から仙川駅間において、井の頭通りなど二十五カ所が、一時間当たりに四十分以上遮断する、いわゆるあかずの踏切であります。慢性的な交通渋滞が発生しています。
 このような道路交通のボトルネックとなっている踏切が、都内にはいまだ千を超えて残されています。そのうち二百カ所以上があかずの踏切で、交通渋滞や地域の分断だけではなく、救助、救援活動の妨げとなるなど、安全で快適な都市活動の阻害要因となっています。
 これらの課題の抜本的な対策として、連続立体交差事業のより一層の推進が必要不可欠と考えます。
 そこで、連続立体交差事業の効果と取り組みについて伺います。
 我々は東日本大震災から、自然災害による被害を極小化し、都市機能の迅速な復興を実現するためには、道路ネットワークの形成が極めて重要であることを改めて学びました。
 申し上げるまでもなく、都市計画道路は都市活動を支える最も基本的な都市基盤であり、これまで都は、区部環状道路や多摩南北道路などの整備を進めてまいりました。
 しかし、都市計画道路ネットワークの形成はまだ道半ばの状況であり、引き続き道路整備を推進することが重要でありますが、東京都と隣接県や区部と多摩で連絡する都市計画道路の整備が進んでいないところが多く存在しています。
 例えば、私の地元世田谷区においても、補助二一九号線と隣接する多摩の三鷹三・四・三号線がいまだ事業化されておりません。
 道路整備のおくれにより、地域の交通混雑がいつまでも解消されないことや、住宅街を通り抜ける車両が増大していくこと、救援、救護ルートが確保できないことなど、さまざまな懸念があります。
 現在策定中の新たな都市計画道路の整備方針において、こうした点を踏まえ、どのように対応していくのか見解を伺います。
 連続立体交差事業や道路ネットワークの構築の際には、こうした行政境にまたがる課題が数多く存在します。
 解消に向けて、都がみずから取り組むべき箇所、あるいは地元自治体間で調整すべき箇所があります。このような場合は、広域自治体である東京都がより積極的にリーダーシップを発揮して、地元区市との調整を推進すべきと意見を表明し、次の質問に移ります。
 次に、農業振興について伺います。
 本年四月、都市農業の安定的な継続と良好な都市環境の形成に資することを目的に、都市農業振興基本法が制定されました。
 これは、我が都議会自由民主党が、これまで都市農業の振興と農地保全のための法律の制定を主張してきたことが、ようやく実現されたものであります。
 多くの農業者から、この法律は都市の中で農業を営む者にとって大きな励みになるとの喜びの声を聞いております。
 現在、国において、この基本法に基づく基本計画の策定作業が進められていることから、我が党では、去る十一月十六日、都内農業者の声を国に伝えるため、都選出の国会議員を交え、生産者団体との都市農業に関する意見交換会を開催いたしました。集まった農業者からは、農地の保全や後継者の確保、オリンピック・パラリンピックへの農産物の提供などさまざまな意見が出ました。
 都は現在、東京農業振興プランに基づいて各種振興施策に取り組んでいるところでございますが、農業を取り巻く環境が大きく変化している中、こうした意見も踏まえ、今後の東京農業の施策の方向性を改めて示すべきと考えますが、所見を伺います。
 また、東京のみならず、日本の農業を取り巻くもう一つの大きな環境変化として、TPPの問題があります。
 私の地元でございます世田谷区は、小規模な農業者の方が数多くいらっしゃいます。江戸野菜はもとより、沖縄野菜やブドウなどさまざまな種類の農産物を生産し、個人直売所やJAの共同直売所などで販売をしています。まさに地産地消の典型的な地域であり、区民の方からも大変に喜ばれております。
 しかし、本年十月のTPPの大筋合意を受け、農業者の中には、直売などを中心とする都市農業であっても、安い輸入農産物がたくさん入ってくれば、長期的には経営に影響が出てくるのではないかと心配する方も数多くいらっしゃいます。
 こうした農業者の懸念を払拭し、都市農業を維持、発展させていくためには、大消費地を抱える東京のメリットを生かして、新鮮で安全・安心な農産物を効率的に生産し、農業者の経営力を強化することが大切です。
 都内産農産物の競争力を高め、農業者の収益力を向上させるためには、これまで以上に東京農業の特性を踏まえた生産技術の開発が必要と考えますが、所見を伺います。
 この十五年で、都内の農業者は一万九千人からおよそ一万人まで半減をしました。まさに危機的な状況にあると思います。
 こうした中、来年、平成二十八年は、東京の農業において大きな転換点を迎えます。
 知事におかれましては、この機を逃さず、ぜひ都内農地に赴いていただき、農業者から直接声を拾っていただきたい。そして、関係大臣、関係省庁に対して東京都の主張を先頭に立って全力で主張していただくことを期待しまして、壇上からの質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 小松大祐議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者の芸術文化活動の推進についてでありますが、東京は二回目のパラリンピック競技大会を開催する世界で初めての都市でありまして、大会に向けて、パラリンピックの機運を醸成し、障害の有無にかかわらず、互いの個性や多様性を認め合える社会を実現していく必要がございます。
 こうした社会の実現に向けて、アーティストが福祉施設等を訪れ、障害者と共同して創作を行うことは、障害のある方々の喜びや自信につながります。また、作品の発表を通じて社会に価値観の変革をもたらすことが期待できる点からも大変意義があります。
 そのため、都がリーディングプロジェクトとして実施する障害者アートプログラムのTURNでは、東京藝大教授であります日比野克彦氏の監修のもと、アーティストと障害者が、互いの交流を通じて、造形やパフォーマンスなど幅広い創作活動に取り組んでまいります。
 こうした活動から生まれた成果を多くの人々に発信するため、来年三月に、東京都美術館において、作品の展示やシンポジウムなどを実施するTURNフェスティバルを開催いたします。
 リオ大会以降本格的に展開します文化プログラムにおきましても、こうした取り組みを充実させ、誰もが芸術文化を享受できる社会基盤の構築や共生社会の実現につなげてまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別支援学校の芸術教育の推進についてでございますが、障害のある児童生徒が芸術を学ぶことは、創作の喜びを味わい、豊かな情操が培われるとともに、生涯を通じた芸術への取り組みにつながることからも重要であります。
 このため、都教育委員会は、平成四年から、特別支援学校の児童生徒による音楽、演劇、造形美術、写真等の作品を発表し鑑賞し合う機会として、総合文化祭を毎年開催してまいりました。
 さらに、東京藝術大学の協力を得て、特別支援学校の児童生徒が制作したすぐれた芸術作品を見出し展示する、アートプロジェクト展を来年二月に初めて開催いたします。
 これらの取り組みを通して、児童生徒の芸術活動への意欲喚起や才能の早期発見と伸長を図るとともに、広く都民へ障害者アートに関する理解を促進してまいります。
 次に、スポーツ及び芸術教育の充実についてでございますが、議員ご指摘のとおり、特別支援学校へスポーツや芸術の専門家を招聘し、教員が最新の技術や指導方法を積極的に学ぶことにより指導力を高めることは、教育の充実に極めて有効でございます。
 都教育委員会は、平成二十三年度から、芸術系大学と連携し、芸術教育に力を入れている学校に専門家を派遣して、美術教員の指導力向上に努めてまいりました。
 また、今年度からは、障害者スポーツ推進校に、専門性が高く指導力のあるアスリートや障害者スポーツ指導員を招聘するなどして、体育教員の指導力向上に取り組んでおります。
 今後は、こうした推進校等において得られた知見を活用して、教育内容、方法の充実を図れるよう、体育科や美術科の教育研究団体と連携した研修などにより、他の特別支援学校へ普及させてまいります。
〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 都市計画道路の新たな整備方針についてでございますが、都はこれまでも、区部の放射五号線とそれにつながる多摩地域の東八道路など、広域的な連携強化を図る道路ネットワークの形成に取り組んでまいりました。
 現在策定中の新たな整備方針では、首都直下地震の切迫性を踏まえるとともに、骨格幹線道路網の形成を見据え、都県境を越えた道路網を拡充し、区部、多摩の連携を一層強化するなどの観点から、十年間で優先的に整備する路線を選定してまいります。
 引き続き、隣接県市や地元区市町と連携しながら検討を進めまして、年内には優先整備路線を盛り込んだ整備方針案を公表し、年度末までに新たな整備方針として取りまとめます。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害者スポーツの施設確保についてでございますが、障害のある方にとって、継続的にスポーツを行う場所を確保することは大変重要なことでございます。
 このため、都は昨年度、区市町村立スポーツ施設のバリアフリー化を促進するための補助制度を開始いたしました。
 また、特別支援学校の体育施設を障害者のスポーツ活動の拠点の一つに位置づけ、一層の活用の促進が早期に図られますよう、現在、教育庁とともに精力的に検討を進めております。
 さらに、大学の体育施設におきましては、障害者競技団体が行う練習会や大会に貸し出している先進事例がございます。
 こうした取り組みを他の大学や企業に積極的に紹介することで、施設開放に当たっての懸念を払拭するなど、その取り組みの社会貢献的な意義を理解していただくよう、都として実効性のある働きかけを行ってまいります。
 次に、障害者スポーツ競技におけます競技補助者への支援についてでございますが、ご指摘のとおり、選手にとって競技補助者は、日ごろから一緒に練習を重ね、ともに大会に臨む極めて重要な存在でございます。
 国際大会などに出場する際、こうした競技補助者の遠征費は選手が自費で賄うケースもあり、トップアスリートでさえ経済的な負担感が大きいと聞いております。
 また、二〇二〇年の東京パラリンピック開催を契機に、これから本格的にスポーツを始めようとする障害者にとりまして、競技補助者の有無は、新たな一歩を踏み出すに当たり大変重要な要素となります。
 都は今年度から、競技団体が行う活動への支援を開始したところであり、選手にとって不可欠なパートナーでございます、この競技補助者への支援も含めまして、競技力向上に向けて積極的に取り組んでまいります。
〔交通局長塩見清仁君登壇〕

○交通局長(塩見清仁君) 都営地下鉄におけるソフト面のバリアフリー化の取り組みについてでございますが、これまで交通局では、施設、設備の改善などハード面の取り組みに加えまして、各職場で自主的に工夫を凝らしたサービス改善活動を継続的に行うことで、お客様の立場に立ったサービスの意識の向上を図っております。
 また、高齢者や障害をお持ちのお客様が安心して快適に都営地下鉄をご利用いただけるよう、車椅子などを使用した疑似体験研修を実施するほか、介助技術を習得するサービス介助士の資格を、千人を超える駅係員等に取得させております。
 今後は、こうした取り組みを拡充いたしまして、職員の実践的な対応力を高めるとともに、広く心のバリアフリーの推進にもつながるよう、ご指摘の特別支援学校との連携などを通じまして、その取り組みを広くPRするなど、より一層ソフト面のバリアフリー向上に取り組んでまいります。
〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 連続立体交差事業の効果と取り組みについてでございますが、本事業は数多くの踏切を同時に除却することで道路ネットワークの形成を促進し、交通渋滞や地域分断を解消するとともに、地域の活性化に資する極めて効果の高い事業でございます。これまでに四十三事業を実施し、三百九十五カ所の踏切を除却いたしました。
 これらの効果として、例えば、京急空港線では、第一京浜の踏切で七百八十メートルの渋滞が解消され、交通の円滑化が図られました。また、JR中央線では、三鷹─立川駅間の十三キロメートルで地域分断が解消され、武蔵小金井駅周辺では、本事業を契機に再開発事業が進むなど、地域の発展に寄与いたしました。
 現在、西武新宿線や京王線など七路線九カ所で事業を進めており、今後、おおむね十年で四十八カ所の踏切を除却いたします。
 引き続き、地元区市や鉄道事業者と連携し、連続立体交差事業を積極的に推進してまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、今後の東京農業の施策の方向性についてでございますが、東京の農業、農地は、新鮮で安全・安心な農産物を提供するとともに、防災や環境保全等の多面的な機能により、豊かな都民生活と快適な都市環境に貢献をしてまいりました。
 しかしながら、その生産基盤である農地の減少や農業者の高齢化に加え、TPP協定を見据えた農産物の一層の競争力向上といった課題がございます。
 一方で、都市農業振興基本法の制定や、二〇二〇年大会に向けた農産物の活用と魅力発信など、東京農業が持つ可能性や潜在力をさらに発揮する好機が訪れております。
 そこで都は、年度内に農林・漁業振興対策審議会を開催し、力強い東京農業の実現に向けて、多様な担い手の育成や農業、農地の多面的機能の発揮、都市農地の保全などの施策について、新たな視点から検討してまいります。
 次に、農産物の生産技術の開発についてでございますが、都内産農産物の競争力を高め、農業者の収益力の向上を図るためには、限られた農地でも品質の高い農産物を安定的に生産する技術の開発が不可欠でございます。
 このため、農林総合研究センターでは、ICTを活用した栽培環境の最適化により、小規模な農地でも多収量で高品質な農産物を生産する先端技術に加え、消費者から多くの品ぞろえが求められる直売農家が、収穫時期を容易に調整できる野菜の苗の長期保存技術など、経営改善に資する技術開発に取り組んでおります。
 今後、こうした技術を農業者に広く普及させるとともに、消費者ニーズや地域の特性を踏まえた生産技術の開発を一層推進することにより、収益性の高い農業経営を支援してまいります。