平成二十七年東京都議会会議録第十七号

○副議長(小磯善彦君) 八十九番三宅正彦君。
〔八十九番三宅正彦君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○八十九番(三宅正彦君) 初めに、観光施策について伺います。
 最近の外国人旅行者の急増などを受け、観光振興の進め方を速やかに見直し、柔軟に施策を展開することが必要になっています。
 こうした中、知事は、先日の所信表明において、今後の観光施策の方針となるアクションプログラムを来年度を目途に策定し、毎年度の見直しを行うことを表明しました。
 東京の観光を取り巻く環境の変化に迅速に対応する上で、中長期の方向性はしっかりと見据えながらも、有識者による議論等を踏まえ、臨機応変な施策展開を方針に盛り込むことは重要です。
 その一方で、方針には、各地域や観光関連の業界の声を十分に反映することも大切です。
 例えば、これからの外国人旅行者の受け入れに対応するには、都内の旅館の利用についても、一定の期間、継続して地道に後押しすることが必要です。旅館は、日本の生活を体感できるすぐれた宿泊施設ですが、PRや多言語表記など改善すべき部分は多いとの業界の意見があります。こうした声を確実に方針の中に反映し、新しい施策を打ち出していくべきです。
 こうした観点から、都はどのような考え方で対応を進めていくのか、知事の所見を伺います。
 次に、将来の社会資本整備を担う人材の確保に向けた取り組みについて伺います。
 現実の建設工事現場では、労働環境の未整備が原因となり、新たに就業する人材が少なく、技術者の高齢化が進んでいます。
 このため、我が党では、昨日の代表質問において、将来の社会資本整備の担い手に夢を与え、これまでのイメージを転換し、女性や若者にとっても働きがいと魅力ある環境づくりに向けた取り組みについて質問したところ、平成二十七年度中から、都が発注する工事の中で、週休二日制確保に向けた取り組みなどモデルとなる事業を順次実施していくとのことでありました。
 都発注の工事は、土日、祝日等を考慮した工期を設定していると聞いていますが、実際の現場では、休日がとれていない実態があります。週休二日制を確保することは、若者の入職を促進させ、将来の担い手を確保するために極めて有効な方策と考えています。
 そこで、建設現場における週休二日制確保に向けた取り組みについて伺います。
 また、人材確保の取り組みとともに、代表質問で取り上げた工事発注時期の平準化に向けた取り組みの重要性についても質問したいと思います。
 都の工事は、行政組織特有の年度を単位とした仕事の進め方により、発注時期が九月から十二月に集中しており、それが年末からの道路工事の増加など、いまだに都民生活に影響を与えています。
 加えて、発注時期の集中は、工事が少ない時期の過当競争のおそれや、工事が集中する時期の人手不足に伴う入札参加の断念や現場環境の悪化など、特に規模の小さな建設事業者にとって、経営を不安定にする一因ともなり、現在の、そして将来における都の持続的な社会資本整備において課題となっています。
 都は、集中する時期の発注件数を分散する、いわゆる平準化に向けて、今後、ピークを下げる数値目標を設定するとのことですが、既に計画された工事もある中で、具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、島しょ医療について伺います。
 都民の健康と命を守ることは都の責務であり、誰でも、いつでも、どこでも医療を受けることができる医療提供体制の整備は、医療行政の重要課題です。
 都は現在、二次医療圏を原則とした構想区域ごとに、二〇二五年の医療需要と病床の必要量等を定める地域医療構想の策定に取り組んでいますが、各圏域の状況を見ると、区中央部、その周辺部、多摩地域、島しょ地域では、それぞれの地域特性が異なっています。
 島しょ地域は厳しい医療環境にあり、特に急性期医療については、都立広尾病院を初めとした本土の医療機関との連携が不可欠です。
 都は、地域医療構想の策定に当たり、こうした地域の実情を十分に踏まえるとともに、区市町村や地域の医療関係者等の意見を十分に聴取することを要望します。
 また、救急患者は日々発生しており、現在行っている具体的な連携をさらに進めることも重要です。都では、島しょの診療所や病院と広尾病院との間で、画像伝送システムを活用して、島しょ医療機関が専門医の助言を受けられる環境を整備しておりますが、我が党が推進している超高速ブロードバンドの全島への整備を見据え、さらにシステムの利便性を高め、島しょ地域の住民の安全・安心を確保していくことが重要です。
 画像伝送システムは、今月中には更新されると聞いていますが、現在の利用状況と新システムの導入により期待される効果について伺います。
 次に、島しょ地域の都立高校の充実について伺います。
 寮がある大島海洋国際高校を除く六つの都立高校は、いずれの学校も在籍する生徒数が定員を下回っており、今後もこの状況が続くと見込まれます。
 島の高校には、習熟度に応じたきめの細かい指導や、島の自然を教材とした環境教育などの特色があります。大島高校を一例に挙げますと、同校には、生徒が育てている伊豆大島特産のツバキの園庭がありますが、東京オリンピック・パラリンピック大会を控えて、外国人来島者がふえることを見据え、同校では、来年二月の国際優秀ツバキ園の認定を目指したさまざまな取り組みを行っています。
 島の各高校では、このように島ならではの特色を生かした教育活動を行っていますが、例えば島の高校で島外の生徒を受け入れて生徒数をふやすことで、島内と島外の生徒が切磋琢磨する機会がよりふえれば、各学校の取り組みは、ますます充実すると思います。それには、島外の生徒を受け入れやすい環境を整えることが必要です。
 これまで我が党は、受け入れを進めるため、町村との積極的な協議を求めてきました。
 こうした中、都教育委員会は、この九月に、来年の入試から、神津高校においてホームステイ方式により受け入れていくことを決定しました。そして、先月末に公表した都立高校改革推進計画・新実施計画(案)の骨子では、島しょ高校の改善に向け、島外の生徒の受け入れを進めていくとしています。
 そこで、島の高校の活性化、ひいては島しょ地域の振興のため、島の高校での島外の生徒の受け入れを拡大していくべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、大島海洋国際高校について伺います。
 大島海洋国際高校は、船を活用した航海実習、寮生活、海洋教育という三つの教育環境を生かし、海や船を素材とした課題を発見、探求する高い志を持ち、社会でたくましく生きていく人材の育成を目標としています。
 実習船を活用した航海実習は、生徒の進路希望に応じて、三年間を通して体系的に学べる教育カリキュラムが組まれています。
 しかしながら、同校の最大の特色である航海実習が、二年続けて当初の予定どおりに実施できていない状況にあると聞いています。同校の生徒の多くは、自分の将来の進路やつきたい職業を考え、親元を離れてまでこの学校を選び、入学しています。
 このことを考えると、入学前に予定した教育カリキュラムは、決められたとおりに実施される必要があると思います。
 また、実習の延期によって、他の学習や部活動だけではなく、進路の選択や大学受験の準備などにも影響を与えてしまうことも考えられます。
 そこで、大島海洋国際高校の特色である航海実習を安定的に実施していくための運航体制を確保すべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、小笠原の津波に備えた都道行文線について伺います。
 島しょ地域の道路は、島民の生活や産業活動を支えるとともに、災害時には避難路となる重要な基盤施設です。今年度末には、神津島の都道において、二つの港を新たに結ぶ代替路が完成するとのことであり、防災力の強化につながる道路整備が着実に進められています。
 また、島しょ地域では、津波による被害防止も喫緊の課題であり、国土強靱化を積極的に進めるため、我が党は、津波対策として避難路の強化などを政策提言しています。
 小笠原村の父島では、近い将来発生するといわれている南海トラフ巨大地震により、二見港周辺で最大十メートルの津波が到達すると予測されています。ことしの十月には、小笠原村長や村議会議長などが知事に対し、津波対策として、父島の都道行文線の整備要望を行いました。
 巨大地震に伴う津波被害に備え、住民や観光客の迅速な避難を実現するため、防災性の高い道路を早期に整備していくことが重要と考えます。
 そこで、小笠原村父島における都道行文線の整備について見解を伺います。
 次に、ヘリポート整備について伺います。
 小離島で大規模な災害が発生した場合、村営ヘリポートが住民の避難や救援物資の輸送基地として重要な役割を担うことになります。
 しかしながら、各島の村営ヘリポートは、自衛隊などの大型ヘリが利用するには手狭であり、駐機スペースもなく、老朽化や耐震性能の不足も懸念されています。
 このため、現状のままでは一刻を争う救援活動に支障を来しかねず、ヘリポートの拡張整備は、小離島において極めて切実な問題となっていますが、村は財政基盤が弱く、技術者もいないなど、独自に取り組むには多くの課題があります。
 このため、島しょの防災力を向上させるため、ヘリポートの拡張整備に対し、東京都はどのように支援を行っているのか伺います。
 最後に、島しょ地域の生態系や農作物に影響を及ぼす野生生物について伺います。
 大島町ではキョンが野生化し、アシタバなどの農作物に食害が発生しており、また、利島村では森林病害虫であるエダシャク類が大量に発生し、幼虫によるツバキ林の食害が深刻な状況となっています。
 このように島しょ地域においては、島の生態系や、基幹産業である農業に大きな影響を及ぼす野生生物が問題となっています。
 こうした状況を踏まえ、我が党は七月に、キョンの防除対策、ツバキ林における病害虫対策について、都の取り組みを強化するよう要望いたしました。
 とりわけ、ツバキ油の生産が全国の六割を占める利島村での病害虫の被害は、島民の生活を揺るがしかねない重大な問題です。
 都は、エダシャク類の防除について積極的な対策を講じ、利島村のツバキ林の保全に取り組むべきと考えますが、見解を伺いまして、質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 三宅正彦議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の観光施策の展開についてでありますが、オリンピック・パラリンピックの準備が進む中、想定を上回る勢いで急増する外国人旅行者を迎え入れる速やかな対応が必要となっております。また、そうした外国人の旺盛な消費が、さまざまな事業者の活動やサービス提供のあり方に影響を及ぼしております。
 東京の観光を一大産業に飛躍させるためには、こうした変化に対して、将来を見据えつつも、機動的かつ戦略的に対応できる方策をいち早く打ち出していかなければなりません。
 このため、都は、中長期的な視点を持ちながら、迅速な対応を図るための施策を総合的かつ体系的に盛り込んだアクションプログラムを策定いたします。
 このプログラムの策定に当たりましては、幅広いジャンルの有識者に、最新の知見や情報を持ち寄って議論いただくとともに、審議会の意見も加え、効果的な施策の構築に反映してまいります。
 ご提案の旅館の利用につきましては、情報発信の力を高めて誘客に結びつくPRなどを確実に行うことに加え、館内の多言語表示をふやし、設備の改善等を行う場合の新たな支援をきめ細かく展開してまいります。
 観光産業の振興に向け、実効性ある計画に即し、状況の変化に応じた施策を柔軟に展開することで、世界一の観光都市東京の実現を目指してまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、島しょの都立高校の充実についてでございますが、島しょの高校での島外の生徒の受け入れにより、島外の生徒は豊かな自然に囲まれた教育環境で学べるとともに、島内の生徒も切磋琢磨の機会が増加いたします。このことは、学校の活性化はもとより、島の振興にもつながるものと考えております。
 このため、都教育委員会は、神津島村と連携し、島外の中学生のニーズをはかるためのショートステイ事業などの取り組みを進め、平成二十八年度入学者選抜から、ホームステイにより神津高校で一名の受け入れを開始いたします。
 今後は、島外の生徒の受け入れ拡大に向け、神津島村との協議をさらに進めるとともに、他の島の町村との協議もより一層積極的に進めてまいります。
 あわせて、ホームステイに係る保護者負担の軽減など、町村と連携して必要な支援策を検討してまいります。
 次に、大島海洋国際高校の航海実習についてでございますが、航海実習は、船の安全運航に関する知識や技術のみならず、規律、秩序を重んじ、相互に協力する精神の習得など、国際社会に貢献できるたくましい人材を育成するため、必要不可欠な教育であります。
 航海実習を安全かつ十分な教育内容とするためには、航海士、通信士、機関士等の資格を有する船員で運航する必要がありますが、この間、船員の突発的な病気などにより運航体制が組めず、航海実習の予定を変更せざるを得ない状況がございました。
 現在、即戦力の船員を確保するため、平成二十八年二月採用に向けて手続を進めているところでございます。早急に運航体制を整えるとともに、今後も必要な船員を確保、育成し、航海実習を着実に実施してまいります。
〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、建設現場における週休二日制確保に向けた取り組みについてでございますが、建設産業において若手技術者を確保、育成し、将来にわたり社会資本の整備及び維持管理を安定的に行うためには、入職しやすい環境づくりが不可欠でございます。特に、労働環境の改善に関する週休二日制の確実な実施が重要でございます。
 そこで、建設局では、来年一月以降に公表する案件から週休二日制のモデル工事を試行することといたしました。このモデル工事は、受注者が作成する計画に基づき、局の監督員が休暇取得状況を確認するとともに、工事完了後、受注者の意見等を聴取し、課題を把握するものでございます。
 今後とも、将来の建設現場を担う人材確保に向け、建設業界と連携して入職しやすい環境づくりに積極的に取り組んでまいります。
 次に、小笠原の都道行文線の整備についてでございますが、小笠原村では、一たび津波が発生すると、二見港周辺の都道湾岸通りを含めた中心市街地一帯が甚大な被害を受けるおそれがございます。この島内の生命線である都道湾岸通りが寸断されると、集落や避難所が孤立し、救助、救援活動に大きな支障となります。
 都道行文線は、高台を通り避難所間を結ぶことで、津波から島民の命を守る路線でございます。
 都は今回、村議会全会一致の要望も受け、未開通の約一キロメートルを早期に整備し、都道湾岸通りの代替路ともなるダブルルートを確保することといたしました。
 小笠原は、世界自然遺産であることから、島内の自然環境や景観に十分配慮し、早期事業化に向け、鋭意必要な調査を実施してまいります。
〔財務局長長谷川明君登壇〕

○財務局長(長谷川明君) 工事発注時期の平準化に向けた取り組みについてでございますが、発注時期の平準化は、事業者の受注環境を安定させるとともに、計画的かつ着実に事業を実施する上で重要でございます。
 現在、月ごとの発注件数は、年間で最大約六倍の開きがあり、そのピークを下げるためには、設計業務を含めた発注の前倒しや、年度をまたいだ工期設定をしていくなどの取り組みが必要となります。
 これらを具体化するため、年間約六千件の工事を対象として、平準化に向けた庁内連絡会を立ち上げ、十二カ月未満の工事への債務負担行為の適用や、ゼロ都債工事と組み合わせた技術者配置準備期間の設定などを積極的に活用しながら、全体としての数値目標について検討をしてまいります。
 こうした平準化の取り組みを進めることで、都民生活を支える社会資本の将来にわたる持続的な整備につなげてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 島しょ医療用画像伝送システムについてお答えをいたします。
 都は、平成六年に、都立広尾病院と島しょの医療機関を結ぶ画像伝送システムを整備し、エックス線写真等の画像を通じた専門医による診療支援を行っており、昨年度の使用実績は千五十一件となっております。
 今月から稼働する新たなシステムでは、現在、都が全島整備に取り組んでいる超高速ブロードバンドの活用を視野に入れ、機能の充実を図っております。
 具体的には、専門医と島しょの医師との間で、画像を同時に見ながら書き込みができる機能を追加するほか、操作性や画像表示能力についてもレベルアップし、よりきめ細かな診療支援が可能となります。
 今後とも、本システムを効果的に活用し、島しょにおける診療水準のさらなる向上に努めてまいります。
〔港湾局長武市敬君登壇〕

○港湾局長(武市敬君) 小離島におけるヘリポート整備への支援についてでありますが、空港のない小離島において、災害が発生した際の島民の避難や災害救援物資の輸送の拠点として、ヘリポートは極めて重要な施設であります。
 このため、村のヘリポート拡張整備事業に対しましては、さまざまな支援を行うことが必要と認識しております。
 現在、都は、島しょでの大規模工事で蓄積した技術、経験を生かし、御蔵島村が進めているヘリポートの整備工事を受託しており、今後は、利島村が行う新たなヘリポートの設計業務に対しても技術支援を行ってまいります。
 引き続き、島の安全・安心な生活を支えるヘリポートの拡張整備に対し、村を積極的に支援してまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 利島村のエダシャク類の防除についてでございますが、都は、今般の利島村における深刻なツバキ林被害を受けて、森林病害虫の生態や防除に精通している専門家等から成る対策会議を設置し、効果的な防除対策等について検討を行ってまいりました。
 その結果、卵からふ化した直後のトビモンオオエダシャクの幼虫に対し、重点的に薬剤散布を行うことが効果的であるとわかりました。
 このため、都は今後、利島村や地元農業協同組合等関係機関と緊密な連携を図り、幼虫が発生する来春に向け、ツバキ林の薬剤散布に対する技術的、財政的支援を行い、利島村のツバキ林の保全にこれまで以上に積極的に取り組んでまいります。