平成二十七年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 二番加藤雅之君。
〔二番加藤雅之君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○二番(加藤雅之君) 初めに、民間活力を活用した都市づくりについて質問します。
 今後、人口減少、少子高齢社会の到来が見込まれる中、福祉や社会保障制度の基盤強化を進めていかなければなりません。そのためには、財政制約が予想される中においても、経済を活性化して新たな富を生み出し、豊かな都民生活の実現につなげていく必要があります。
 生活の質の向上を求め、世界中がしのぎを削る中、経済活動を支える都市づくりは、官民の役割分担のもと、民間の力を活用できる分野においては最大限民間の力を活用し、効率的、効果的に進めていくことが重要です。
 都市開発においては、民間が主体となっており、都はこれまで、都市開発諸制度の容積緩和の手法等により、優良な民間プロジェクトを誘導し、都心部に不足していたオープンスペースや緑地の整備を進めるなど、地域の課題を解決する取り組みを進めています。
 例えば、南青山地区においては、都営住宅の建てかえに当たり、民間資金を活用して商業施設や福祉施設、図書館を導入するなど、にぎわいある拠点の整備を進めてきました。
 そこで、引き続き、都は民間活力を活用した都市づくりを進めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、民間を活用したバス停上屋の整備について質問します。
 本年四月、我が党の主張により、屋外広告規制の緩和が行われ、歩道幅員の比較的狭い場所には、車道と平行に広告を設置するタイプのバス停上屋が設置可能となりました。そして十一月、民間バスでは、都内で初めてとなる車道平行型の広告つきバス停上屋が誕生し、続いて私の地元墨田区でも、コミュニティバスの停留所に広告つき上屋が設置され、利用者に喜ばれております。
 事業者によると、今後都内に順次拡大していくとのことで、利用者サービスの向上と、にぎわいある景観の向上に期待が高まっております。
 私は、本年の予算特別委員会においても、都が広告を利用して税金や利用者負担なしに上屋を設置する民間主体の手法を用いて、都バスの上屋整備を拡大すべきと訴えました。
 そこで、改めて広告つきバス停上屋の整備拡大に向けての今後の取り組みについて、見解を求めます。
 続いて、居住困難者の住まい支援について質問します。
 民間賃貸住宅では、家賃の支払いや孤独死、居室内での事故等に対する家主の不安などから、高齢者の単身世帯等の入居を制限している例が多く見られます。実際、私のもとにも、単身高齢者が長年住んでいたアパートの取り壊しに伴う移転先が見つからずに苦労したとの相談を受けました。また、精神障害者が住宅を借りようとした際、福祉の窓口に行くよういわれたなどの声が届いています。
 都内のあるNPO団体は、単身高齢者や障害者が住みなれた地域でいつまでも住み続けることができるよう、空き家を活用して入居先を確保するとともに、二十四時間の見守り支援を行って、住まいの安定に努めています。
 今では、都内五区に一千二百人を超える認知症や精神障害などの生活課題を抱える単身高齢者を支援しており、こうした民間団体がふえることによって、居住困難者の住まいの確保が広がっていきます。
 そこで、都は現在、地域での居住支援の取り組みを行う区市町村には財政支援を行っていますが、生活支援等の実施主体は社会福祉協議会やNPO等の民間団体であるため、今後は区市町村に加えて、都も直接、居住支援のノウハウにすぐれた民間団体を支援し、民間の効果的な取り組みを都内全体にふやしていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、重症心身障害児者の支援について質問します。
 先日、人工呼吸や胃瘻などの医療ケアが必要な子供を預かる重症心身障害児の通所施設を訪問し、施設の方からお話を聞く機会がありました。
 ここでは、近くの医療機関等と提携し、看護師、介護士などの資格を持ったスタッフを配置し、医療、看護、福祉を連携させて子供をケアしています。保護者からも、安心して通わせることができる施設として喜ばれており、通常の子育てより負担が重い家族にとって、自宅で孤立しがちな不安を支えてくれる頼もしい存在です。
 しかし、現状では、保護者が施設の利用を週五日希望しても、近隣において利用を希望する障害児が多いなどの理由で、やむなく利用日数を調整して、他の施設にも通所させる工夫をしているとのことでした。もっと通いたいのに通えずに困っているという声も多く、医療ケアが必要な子供を地域で支える体制が不十分だと伺いました。
 医療の発達で周産期死亡率は低くなり、今後も医療ケアが必要な子供は増加することが予測されます。したがって、在宅で生活する重症心身障害児のみならず、その家族を支えていくには、通所施設やショートステイの施設を充足させていくことが必要です。
 そこで、在宅の重症心身障害児者とその家族に対して、都は、さらに積極的に支援していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都立病院における医療従事者の勤務環境改善について伺います。
 急速な高齢化の進展により、今後、合併症や複数の疾病を有する患者が増加していくことが見込まれています。これに伴い、医師や看護師等医療従事者の負担がふえていくことから、長時間勤務や交代制勤務など厳しい勤務環境にある医療従事者が、安心して働くことのできる環境の整備が重要な課題となっています。
 国は昨年十月、医療法を改正し、医療機関の管理者は、医療従事者の勤務環境改善等の措置を講ずるよう努めなければならないとされ、勤務環境改善のため、幅広い観点で人材の確保と定着対策を講ずる必要があります。
 これに対し、都は、医師に対する事務作業補助者を全都立病院に配置して負担軽減に努めています。加えて看護師についても、今年度よりモデル事業として、都立多摩総合医療センターに作業補助者を配置し、勤務環境の改善に取り組んでいることを評価いたします。
 西の都立多摩総合医療センターと同じく、東の都立墨東病院も救急医療や周産期医療などを担う都立の総合病院として、外来患者は一日約一千百名、入院患者は一日約六百名を超えるなど、都内の病院でも有数の忙しさであり、医療従事者は厳しい勤務環境にあります。
 こうした状況に対し、看護補助者が配置されれば、補助者が入院生活などの説明を患者に丁寧に行うなど、看護職の負担軽減とともに、一層血の通った医療サービスが期待できます。さらには地域の雇用の創出にもつながります。
 そこで、墨東病院への看護補助者の導入など、都立病院における医療従事者の勤務環境改善の取り組みについて見解を求めます。
 次に、在京外国人生徒の都立高校入試について質問します。
 さきの定例会代表質問において、我が党は、都立高校入試における在京外国人枠の入試倍率は依然として高い水準で推移していることから、東京都全体の募集枠を大幅にふやすべきだと提案しました。
 これに対し、都教育委員会は、平成二十八年度の募集に当たり、荒川区の竹台高校と葛飾区の南葛飾高校の二校に新たに募集枠を設けたことは評価しますが、既設の国際高校、飛鳥高校、田柄高校の三校も含め、全て区部での設置となっており、東京全体の配置から考えると偏りがあります。
 現に、多摩地域から区部にある在京外国人枠設置校に長時間かけて通学する生徒がおります。また、通学の負担を考えて、希望の全日制を諦めて定時制を選択せざるを得ないという生徒もおります。
 そこで、多摩地域においても在京外国人枠募集校を設置すべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 最後に、地域の文化資源を生かした都市の魅力向上について質問します。
 地元墨田区には、江戸東京博物館を初め多くの文化施設があり、さらに、ことし新たにたばこと塩の博物館が開館し、来年には北斎美術館が、その後、刀剣博物館も開館の予定です。区内各地にも、小さな博物館と称して墨田の産業や文化に関連する展示品を紹介、体験できる施設も数多くあります。
 これら伝統文化を発信する施設と並んで、近代的な東京スカイツリーもそびえ立ち、まさに伝統と現代が共存する独自の魅力を有しています。
 また、区では、江戸の歴史と伝統文化をテーマにした両国観光まちづくりグランドデザインの具現化など、特色ある文化振興を進めるとしており、地域の魅力向上が期待されています。
 都内には、両国や錦糸町のような地域が誇る文化資源を有効に活用すべき地域が、多数存在していると思います。
 そこで、こうした地域の取り組みを都としても積極的に支援し、東京のさらなる魅力向上につなげていくべきと考えますが、見解を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
 民間活力を活用した都市づくりについてですが、グローバル化が進展し、都市間競争が激化する中、東京が世界有数の大都市として今後も発展していくためには、民間活力を生かした都市づくりを積極的に進めていく必要がございます。
 現在、例えば都市再生緊急整備地域の特例を利用した優良な民間プロジェクトを誘導しております。これによりまして、大手町、丸の内、有楽町地区や日本橋地区、渋谷地区などにおいては、国際ビジネス拠点の形成やコンテンツ産業の育成、江戸の風情が感じられるまち並みの創出などを進めております。
 また、立体道路制度の活用とともに、都が施行者、民間企業が特定建築者となる、公と民が連携した再開発事業を実施しております。これにより、環状二号線虎ノ門地区では、国際交流の拠点が創出されております。
 今後とも、民間の創意工夫を引き出しながら、多様な魅力と活力ある拠点の形成を進め、世界一の都市東京を実現してまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 都立高校の在京外国人生徒の募集についてでございますが、都教育委員会は、都内に居住する外国人生徒に高等学校教育を受ける機会を提供するため、国際高校、飛鳥高校、田柄高校に加え、平成二十八年度の募集に当たり、新たに竹台高校と南葛飾高校に募集枠を設け、定員を三十六名ふやし、区部の五校で百十七名の募集といたしました。
 その一方で、これまで募集枠を設けてきた三校には、多摩地域から通学する生徒も在籍する実態がございます。
 このことも踏まえ、多摩地域における在京外国人枠の募集校の設置について、都内全域の公立中学校に在籍する外国人生徒の動向、在京外国人枠を設置した学校の入学者選抜の応募状況、応募生徒の居住地の状況等を十分に見きわめながら、今後、検討を進めてまいります。
〔交通局長塩見清仁君登壇〕

○交通局長(塩見清仁君) 広告つきバス停留所上屋の整備拡大についてでございますが、交通局では平成十九年度から、デザイン性の高い広告つき上屋を百基設置し、広告収入を上屋の整備費用に充てることで、景観にも配慮した上屋の整備を進めてまいりましたが、本年四月には設置要件が緩和されましたことから、広告価値の高い都心部などで改めて歩道幅員等を調査し、広告つき上屋を拡大設置する候補地の選定を行いました。現在、整備箇所及び整備順序を検討しているところでございます。
 また、民間事業者を活用いたしました広告つき上屋の整備につきましても、事業者と設置の条件等に関する意見交換を行いながら、検討を進めております。
 引き続き、お客様サービスの向上を図るため、さまざまな手法を活用いたしまして、より景観にも配慮した広告つき上屋の整備を促進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、低所得高齢者等の住まいの確保についてでありますが、都は、住宅に困窮し、日常生活に不安のある低所得高齢者等に対し、不動産関係団体や福祉関係団体等と連携して、住まいの確保と生活支援を一体的に提供する区市町村の取り組みを支援しております。
 こうした取り組みをさらに進めるためには、見守りや生活相談の担い手の確保が重要であり、そのためには民間団体の協力が不可欠でございます。
 現在、福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議におきましても、高齢期の住まい方について議論が行われており、今後、民間団体を支援する施策も検討し、民間の力を活用した低所得高齢者等の住まい確保や生活支援のための施策の充実を図ってまいります。
 次に、重症心身障害児者の在宅支援についてでありますが、都は、重症心身障害児者が地域で安心して生活できるよう、本年四月に、障害者・障害児地域生活支援三か年プランを策定し、今年度からの三年間で百三十人分の定員増を目標に掲げ、整備費の特別助成を行うなど、通所施設の設置を促進しております。
 また、家族の病気や冠婚葬祭等で一時的に家庭での療育が困難になった際に、施設等に短期間入所できるよう一定数の病床を確保しているほか、家族の休養等を目的に、看護師が自宅を訪問して、家族にかわってケアを行う在宅レスパイト事業を実施しております。
 ご指摘も踏まえまして、今後とも、区市町村や関係機関と連携し、重症心身障害児者とその家族に対する在宅支援の充実に取り組んでまいります。
〔病院経営本部長真田正義君登壇〕

○病院経営本部長(真田正義君) 都立病院の勤務環境改善の取り組みについてでございますが、質の高い医療サービスを安定的かつ継続的に提供するためには、医療人材の確保、定着を図ることが重要であると認識しております。
 そのため、診療や看護に付随する周辺業務の補助者を病院の実情に応じて活用するほか、当直明けが勤務とならない一直二勤務など多様な勤務形態の導入や、院内保育室における二十四時間保育の実施など、働きやすい環境整備に取り組んでおります。
 今後も、医療人材の確保、定着を促進させ、高度で専門的な行政的医療を提供していくため、ご指摘の点や病院の状況を考慮して、安心して働くことのできる勤務環境の整備充実に努めてまいります。
〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 地域の文化資源を活用した都市の魅力の向上についてですが、東京文化ビジョンでは、都内の多彩な文化拠点の魅力向上により、東京の発信力を強化する戦略を掲げ、両国や錦糸町なども、その重要な拠点として位置づけております。この地域は、江戸東京博物館等の江戸文化を今に伝える施設が集積しており、地元の伝統行事と連携することで、地域の魅力がさらに高まるポテンシャルを有しております。
 都はこれまでも、このような文化施設と地元が連携したイベントに対して支援を行うなど、拠点の魅力向上に努めてまいりました。
 今後は、今年度新たに開始したアーツカウンシル東京の助成制度を活用し、特徴的な文化資源を持つ地域との連携をさらに深め、地域の魅力向上策を実施してまいります。