平成二十七年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 六十六番清水孝治君。
〔六十六番清水孝治君登壇〕

○六十六番(清水孝治君) 初めに、地方創生について伺います。
 政府は、これまで、まち、人、仕事創生の中で総合戦略を策定し、地方への新しい人の流れをつくるという方針の一環として、政府関係機関の地方移転を促進する方針を発表し、各道府県からは誘致の提案がございました。
 都内では、観光庁や消防大学校、独立行政法人日本スポーツ振興センターなど、実に十九の区市内にある延べ五十二の機関がその対象となっております。
 私は、安倍首相が掲げる一億総活躍社会の実現には、この地方創生が必要不可欠であることは理解をしております。
 しかし、同時に、こうした取り組みを進めるに当たっては、東京を初めとする大都市への人口と業務・商業機能の集中、いわゆる集積のメリットが我が国を牽引し、日本経済全体を支えているという実態にも留意しなければなりません。
 また、同じく移転誘致のあった私の地元立川市の自治大学校のように、地域の行事や住民と深い関係を築き上げ、地域コミュニティの維持に多大な貢献をしている政府関係機関があることも忘れてはなりません。
 つまり、地方創生の本分は、単に首都東京の活力をそぎ、地方に再配分することではなく、地方と東京が共栄し、日本全体を活性することにあるものと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応についてお伺いいたします。
 現在、訪日外国人旅行者数が増加する中、二〇二〇年大会に向け、都内各地で外国からのお客様をお迎えする取り組みが急務となっております。その取り組みに当たっては、駅や道路、ホテル並びにレストランのメニューなど多言語対応を着実に進め、旅行者の皆様が安心、快適に日本を楽しんでいただくための環境整備が不可欠となっております。
 その中で、都の役割としては、国や民間と連携し、多言語対応の取り組みを一つ一つ具体化していくことが重要であります。
 例えば、先月二十八日に行われたオリンピック・パラリンピックの機運醸成シンポジウムの会場では、多言語音声翻訳アプリの紹介もございました。
 そこで、お伺いいたします。
 このような多言語対応の取り組みは、都心部のみならず都内全域にわたる実施と、そのレベルアップを図る必要がございます。
 そこで、先般、府中市にあります東京自治会館に設置された多摩・島しょにおける二〇二〇年大会の事業拠点を活用し、多言語対応の取り組みを発信することも有効だと考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 次に、多摩・島しょ地域の観光振興について伺います。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会の開催や、その後にかけて、都内旅行者の増加が見込まれる中、多摩・島しょ地域へ足を運ぶ観光客が一段とふえるような流れを着実に生み出すことが多摩・島しょ地域にとっては極めて重要でございます。
 多摩・島しょ地域は、豊かな自然に加えて、地元にしっかりと根づいた農林水産業もあり、これらの産業資源を組み合わせ、観光客の誘致につなげることが必要だと考えるわけでございます。
 例えば、イタリアのトスカーナ地方では、風光明媚な田園地帯で自然と触れ合いつつ、地元食材でつくった料理を堪能できるグリーンツーリズムが定着し、世界的人気も高いと聞いております。
 都内でも、立川のウドや奥多摩のヤマメ、清流が生み出す日本酒などの地域ブランドを上手に活用した、農業や水産業を身近に感じ、多摩や島しょ地域の魅力を味わう東京版グリーンツーリズムを推進するような視点も重要になると考えます。また、そのためには、多くの観光スポットを効果的に訪問できるような交通ルートの充実も重要であります。
 改めて、都の多摩・島しょ地域の観光振興策について、知事のご所見をお伺いしたいと思います。
 次に、地域の観光関連団体への支援策について伺います。
 東京都全体の観光振興を進める上では、浅草や銀座、原宿といった著名なスポットのPRや集客対応を図るだけでなく、それぞれの地域ごとに着実な旅行者誘致に力を入れていただくことが最も重要だと思います。
 こうした中で、多摩・島しょ地域を含め、都内各地域では観光関係団体が設置され、限られた人材や体制といった厳しい状況の中でも工夫を凝らし、事業を行っております。さらなる地域の観光振興を進めるためには、今後は各団体の取り組みに一層の発展性を持たせ、新しい発想を外部からも積極的に取り入れていく、こうした努力こそが大切だと考えます。
 特に、地域の枠を超えて団体同士が協力し、お互いの観光スポットをつなぎ、都との接点をふやして事業の幅を広げていくことが重要だと考えます。
 そのために、都は、各地域の観光関連団体にさまざまな知識やノウハウを提供して新しい企画を生み出し、その実現を広域行政としてサポートする対応を進めていくべきと考えますが、都のご見解をお伺いします。
 次に、トンネルの長寿命化について伺います。
 国はもとより、東京都でも、交通、物流ネットワークを支える道路施設の高齢化が進んでおります。特にトンネルは、地域間を結ぶ重要な道路施設であり、一たび事故が発生すると、交通が寸断され、復旧に時間を要するだけでなく、重大事故に発展する危険性をはらんでおります。
 三年前の十二月に、中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故は発生をいたしました。百三十メートルを超す天井板が落下し、自動車三台が下敷きとなり、九名ものとうとい命が失われたことは、いまだ記憶に新しい惨劇でございます。
 その一方で、トンネルは、使用を継続しながらつくりかえることが困難なため、適切な維持管理により、常時、安全を保つ必要がございます。
 そこでお伺いします。
 都は、平成二十七年予算特別委員会において、トンネル予防保全計画を策定するとのご答弁がございました。このたび、十一月にその計画書が発表されましたが、都内百二十一カ所のトンネルの長寿命化を今後どのように進められていくのか、お聞かせ願いたいと存じます。
 次に、海の森公園の一部開園について伺います。
 東京湾海の森は、廃棄物と建設発生土の埋立地を約八十八ヘクタールもの緑豊かな森に生まれ変わらせるプロジェクトであり、我が党も議会でたびたび取り上げさせていただいたわけであります。
 来年度の一部開園に向けて市民参加で行ってきた植樹も本年度で終了という段階で、その整備も進んできたとのことでございます。
 先日、私も地元の農家の皆さんと数年ぶりに現地を視察させていただきました。植樹開始の当時とは違い、まだ苗木の状態であったユズリハやクロマツなどがしっかりと成木に成長し、今では立派な森を形成しており、農家の視察らしくなったなと感心をして帰ってきたわけでございます。
 一方で、海の森周辺では、現在でもコンテナ車などの大型車両が多く通行する交通密集地域であり、今後、中央防波堤外側で整備が進められているコンテナターミナルがオープンすれば、ますます交通量の増加が予想されるエリアでもございます。
 また、周辺では、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会のカヌーやボートなどの競技が開催されることも決定され、交通ネットワーク確保の必要性に伴い、南北線を初めとする道路整備が行われ、さらに、そのほか複数の競技会場の整備が予定されるなど、海の森を取り巻く環境の変化は著しく、これら整備工程の検討が進む中で、工事車両の増加や工事のふくそうが従来の想定を大きく上回り、非常に厳しい状態になるとお聞きしたわけであります。
 そこでお伺いいたします。
 我が党では、海の森の平成二十八年度一部開園を期待しておりました。しかし、予定どおり一部開園をした場合、物流や工事、そして公園利用者の車両が混在し、工事の円滑な進捗や公園利用者の安全で快適な利用を確保する上で大きな課題が生じると、現段階では危惧を抱いているわけであります。また、ことしに入り、海の森で馬術競技の開催が正式決定もいたしました。
 このような状況を踏まえ、都は、海の森の一部開園についてどう対応されていくのか、ご所見をお伺いしたいと思います。
 最後に、教育問題、不登校対策について伺います。
 都内には、不登校の児童生徒のために、子供に寄り添い、子供の自己肯定感を高める取り組みなどを行っているフリースクールなどの民間団体が少なくありません。
 不登校の児童生徒は、心の問題、家庭の問題、学習上のつまずきなど、さまざまな要因を抱えており、学校だけの支援で解決していくことは難しい状態です。また、児童生徒や保護者の中には、フリースクールなどの民間団体で支援を受けることを希望している方もおいでになります。
 こうした状況を踏まえ、現在、国では、不登校の児童生徒など義務教育段階で十分な普通教育を受けていない者に対して、フリースクールなど多様な教育の機会を確保するための法案が検討されております。
 そこでお伺いいたします。
 学校への在籍を前提とするなど一定の条件つきであるものの、義務教育の場の選択肢を拡大するといった国の潮流に沿って、都は不登校対策に当たり、民間団体と連携した取り組みを行っていくことが必要だと考えますが、都教育委員会のご所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 清水孝治議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩・島しょ地域の観光振興についてでありますが、多摩・島しょ地域は、東京の伝統野菜であるウドを初め、すぐれた味わいを持つトウキョウXなどの畜産物、新鮮な魚介類として人気の高いキンメダイ、さらには澄んだ水を使う酒蔵の銘酒など、さまざまな食の魅力にあふれております。
 こうした食材を楽しむ機会と場を、美しい景観の丘陵や渓谷、ダイビングや釣りを楽しめる海洋などの観光資源に結びつけ、旅行者の誘致に生かす視点が重要でございます。
 そのため、外国人旅行者が多摩・島しょ地域に関心を持ち、観光に訪れるよう、農林水産資源をテーマに効果の高いPRを行うとともに、民間の事業者の力を活用し、地元産の食材と観光スポット双方の魅力を生かすツアーをふやしてまいります。さらには、自然を楽しみ、快適な旅行ができるよう、交通アクセスの充実にも取り組んでまいります。
 これらの取り組みにより、多摩・島しょの自然や農林水産資源を生かした観光振興を着実に進めてまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長がお答えをいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 民間団体と連携した不登校対策についてでございますが、これまで学校や教育委員会においては、不登校の児童生徒の支援を行ってきておりますが、どうしても学校になじめず、フリースクール等民間の施設に居場所を見出している子供もおります。
 こうしたことから、都教育委員会では、民間の施設との連携も含め、不登校の児童生徒の支援のあり方について、現在、有識者による検討委員会を設置し、幅広く議論しており、年度内に最終の報告を取りまとめる予定となっております。
 今後、検討委員会での議論を踏まえるとともに、国の動向も注視し、民間の施設と教育委員会等が児童生徒の様子や支援内容等について情報交換を行う場を設けるなど、相互の連携も図りながら、個々の児童生徒の状況に応じた支援の充実を検討してまいります。
〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

○政策企画局長(川澄俊文君) 地方創生における政府関係機関の地方移転についてでございますが、地方創生は、お話のとおり、東京と地方がそれぞれの持つ魅力を高め、協力し合うことによって、ともに栄え成長し、日本全体を活性化させていくことが重要でございます。
 そうしたことから、政府関係機関の移転によって、東京の活力をそぐことや区市町村など地域に影響があってはならないと考えております。
 都内にある政府関係機関の移転につきましては、さまざまな関係者への影響について十分に考慮するとともに、国政運営や経済活動の効率性、国際競争力の低下を招くことのないよう、幅広な視点で慎重に検討することを国に要望したところでございます。
 今後も引き続き、国の動向を注視してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 多言語対応の今後の取り組みについてでございますが、二〇二〇年大会に向け多言語対応を推進し、外国人旅行者が安心して快適に滞在できる環境を都内全域で実現することは重要でございます。
 現在、都は国と連携のもと、多言語対応協議会において、官民一体で取り組みを推進しております。
 今月には、第四回協議会を開催し、「東京防災」の外国語版の作成や、スマートフォンを活用した多言語による防災情報の提供を行うアプリの先進事例などを共有するなど、災害時も含めた多言語対応の具体化を進めてまいります。
 今後は、お話の東京自治会館なども有効に活用しながら、市区町村の参考となる取り組み事例などの情報提供を充実させますとともに、その取り組みを促すため、活用可能な補助制度の紹介を行うなど、多摩を初めとする各地域の多言語対応の推進を強力にサポートしてまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 地域の観光関連の団体への支援についてでございますが、都内の各地域で、観光関連の団体がさまざまな知識やノウハウを得て、新しい発想で効果の高い事業を展開することは重要でございます。
 これまで都は、地域の団体が行う観光まちづくりの事例を都内で広く共有する冊子の作成と配布や、観光資源の開発を目指す団体への専門家の派遣などにより、各地域の観光振興に向けた取り組みのサポートを行ってまいりました。
 今後は、地域の観光関連の団体が自治体の区域を超えて協力する体制や、都の観光施策との連携を強めて効果の高い事業展開を図ることが重要であるため、質の高い情報やスキルの提供の仕組みを検討いたします。また、これによりつくり上げた企画内容の実現方策の検討を行ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、地域の観光振興の充実を目指してまいります。
〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) トンネルの長寿命化についてでございますが、都は、道路施設の損傷や劣化が進行する前に対策を行う予防保全型管理を導入し、既に橋梁で取り組んでおります。
 トンネルにつきましても、その機能を将来にわたり十全に発揮させるため、本年十一月にトンネル予防保全計画を策定いたしました。計画では、レーザー測定など最新技術を用いた調査の結果に基づき、トンネルごとの状態に応じた最適な対策を講じ、管理する百二十一のトンネルを百年後も健全な状態に保つことを目指しております。
 具体的には、劣化が進んでいる二十六のトンネルの対策を今後十年間で優先的に実施してまいります。平成二十七年度は西多摩地域の花折トンネルなど三カ所で工事に着手いたします。
 本計画に基づきトンネルの長寿命化を推進し、良質な社会資本ストックを次世代に引き継いでまいります。
〔港湾局長武市敬君登壇〕

○港湾局長(武市敬君) 海の森についてでございますが、これまで海の森は、平成二十八年度の一部開園を目指し、造成や植樹など整備を進めてまいりました。また、市民参加のイベントでは二万人を超える参加者もあるなど、都民の関心も高くなっております。
 一方、ご指摘のとおり、この地域では水上競技場を初めとする競技会場や南北線などの工事が予定されており、それらは全て二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会までに竣工させることが不可欠であります。
 そのような中で海の森を開園するためには、来園者が大規模な工事現場を安全に横断するアクセス路の確保など、複雑な工事調整が必要となり、円滑な工事の進捗に多大な影響が出るおそれがあります。
 このため、二十八年度に予定しております海の森の一部開園を見直し、二〇二〇年大会後の開園を目指してまいります。
 なお、周辺工事に影響を及ぼさない範囲で、イベントなどを通じ、都民の方々が海の森に足を運ぶことができる機会を引き続き確保していきたいと考えております。