平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○副議長(藤井一君) 五十二番西崎光子さん。
〔五十二番西崎光子君登壇〕

○五十二番(西崎光子君) まず初めに、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会について質問いたします。
 二〇一一年に、日本オリンピック委員会竹田会長が五輪を震災復興のシンボルとしたいと発言、招致活動の旗印になりました。その後、震災復興をオリンピック・パラリンピックの明確な目標に掲げたことが、二〇一三年九月のIOC総会で東京開催の決定につながっています。
 ところが、先ごろ行った新聞社の調査によれば、岩手、宮城、福島三県四十二市町村の首長の六割弱が、震災復興のシンボルとする開催理念も薄れていると回答しています。さらに八割強が、大会開催の建設需要の高まりによって、被災地の復興工事への影響を懸念していると答えています。実際に、東京で工事が増加するため、建築資材や労働者の不足と高騰が起こっており、復興工事の障害となる事態です。被災地からは、オリンピック・パラリンピックへの期待よりも、冷めた声やいら立ちの声が聞こえてきており、開催意義の根幹が揺らいでいるのではないでしょうか。
 東京大会の開催が五年後に迫っている中で、改めて開催都市の知事として、震災復興の後押しや世界に向けたアピールの原動力になるよう、被災地の人々が参画し、被災地への支援となるよう、復興五輪の理念を打ち出していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 子供たちを取り巻く社会状況は、物質的に豊かになっても地域との関係が希薄になり、孤立し、別の意味で悲惨さが増しています。
 国の調査によれば、日本の子供の貧困率の状況は先進国の中で厳しく、教育を受けられない子供たちや、家庭が崩壊して親の愛情を十分に受けられないで成長してきた子供たちが増加しています。幼少期における困難や逆境は、その後の成長や大人になってからの生活に多大な負の遺産をもたらすため、子供の貧困の解決に向けた取り組みが求められます。
 そこで、子供の貧困の撲滅に向けた対策を重要な政策の一つとして位置づけるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 児童養護施設に入所している児童は、その子の能力にかかわらず十八歳という年齢が来ると、社会に出て自立していかなければなりません。しかし、退所後は、社会の中でさまざまな壁にぶつかり、大学や専門学校等に進みたくても学費や生活費が工面できず断念したり、就職しても継続できなかったりする場合もあり、自立への道は非常に厳しい状況です。
 先日、世田谷区内で、社会的養護に関するパネルディスカッションが開催され、児童養護施設退所者へのさまざまな支援について議論されました。そのときに世田谷区長からは、住居の支援として、区営住宅を安く提供していくと報告がありました。
 これまで生活者ネットワークは、社会的養護については、十八歳からの施設退所後のアフターケアに力を入れていくべきと発言してきました。今後は、区市町村とも連携して、NPOや地域の社会資源を活用した支援策を進めていくべきと考えます。
 そこで、都が実施している児童養護施設を退所した児童の自立支援策について、現状の取り組み内容と進捗状況について伺います。
 都は、この四月に社会的養護施策推進計画を策定し、この中で、社会的養護に占める家庭的養護の割合をおおむね六割とするよう進めていくことになっています。
 国においては、特別養子縁組成立前の試験養育期間中の里親に育児休業を認めるべきとする報告書が出され、来年の通常国会で、育児・介護休業法の改正案が提出される見込みですが、国の動きに先んじて、千葉市や三重県など、職員が特別養子縁組する場合の育児休業を認めている自治体も出てきています。
 法改正がされない中で、現行制度では給料等の手当が出せないといった課題もあり、都にはこうした制度はありませんが、職員の中には、養育家庭が十九家庭、特別養子縁組里親が八家庭と実績があり、さらに職員が取り組みやすくするよう、環境整備を要望するものです。
 このような中で、より多くの家庭が養育家庭に登録できるよう、国に対して養子縁組里親だけではなく、養育家庭についても育児休業を利用できるよう働きかけ、養育家庭への委託を促進していくべきと考えますが、見解を伺います。
 ことし三月に出された「持続可能な資源利用」に向けた取組方針の中で、資源の消費量を抑制していくために、資源ロスの削減、エコマテリアルの利用、選択、廃棄物の循環利用を三つの柱としています。これは、持続可能な社会づくりのために重要な視点だと思います。
 私の地元世田谷区のごみの組成分析を見ますと、昨年度は可燃ごみの一六・六%、不燃ごみの五・一%がプラスチックでした。そして、世田谷清掃工場は、ダイオキシン濃度の上昇で一月から操業停止になっています。
 ごみ減量を進めるためには、さらなるプラスチックごみの削減やリサイクルを行う必要があると考えますが、都の取り組みを伺います。
 プラスチックが海に流れ出ると、波や紫外線などで細分化され、五ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、それに引き寄せられる毒性成分によって海洋汚染が深刻な問題になっています。さらに、プラスチックを鳥や魚が食べることによって、海の生態系に影響を与えています。
 プラスチックによる汚染には、化粧品や歯磨き粉などに含まれている非常に微細なマイクロビーズの問題もあります。下水道でも処理できないマイクロビーズは、アメリカでは既に規制が始まっていますが、日本ではまだ知られておらず、何の対策もとられていないのが現状です。発生抑制という観点から、プラスチック製品や容器の総量を減らし、海に流れ出ることを防ぐことが重要です。
 マイクロビーズを含めて、海洋におけるプラスチックごみの発生抑制について、どのように取り組んでいくのか伺います。
 最後に、老朽マンションの建てかえ支援についてです。
 都内では、マンションの老朽化が進み、特に東日本大震災以降、耐震性の問題など、住民の防災意識も高まっています。
 旧耐震基準のマンションは約三十六万戸と推定されており、建てかえや耐震化の必要性が出ています。老朽マンションを放置し続ければ、いずれスラム化を引き起こし、マンションの居住環境の悪化だけではなく、治安や景観など、地域社会への悪影響も危惧されます。
 マンション住民には不安が広がっていますが、高齢化により管理組合もきちんと機能していないところも多く、対策を検討するにしても、相談窓口の情報も届いていないため、実際に、どこから手をつけたらいいのか途方に暮れているという相談を聞いています。
 都は、地元自治体と連携して建てかえに向けた支援を行っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 老朽マンションの中には、郊外に立地し駅からも遠い、敷地が狭く容積率にも余裕がないなど、不動産としての価値が低く、資金的余裕がないため建てかえが難しい場合もあります。このようなマンションに住み続けるためには、居住環境をニーズに合わせて改修し、グレードアップすることも必要になっていきます。
 今後は、建てかえに加え、改修に対しても支援を行っていくべきと考えますが、見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 西崎光子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、復興五輪の理念についてであります。
 二〇二〇年大会は、全ての日本人が力を合わせ、東日本大震災を克服するための明確な目標となり、また、スポーツの持つ力によって、困難に直面した人々を励まし勇気づけるものでございます。
 だからこそ、大会と被災地復興を切り離すことはできず、被災地の復興なくして、大会の成功はないといい続けているわけであります。
 都は、震災直後からいち早く、職員の派遣、都内避難者への支援など、被災地のニーズを的確に把握しながら、総力を挙げて支援してまいりました。
 また、オリンピック・パラリンピックをにらみ、スポーツの力で被災地復興を支援する、千キロメートル縦断リレーや子供たちとのスポーツ交流など、さまざまな事業も継続し、実施してまいりました。
 都は、復興五輪という理念を常に念頭に置き、二〇二〇年までの今後五年間、こうした取り組みを継続かつさらに強化し、復興を後押しするとともに、その姿を発信し、大会成功に全力で邁進してまいります。
 続きまして、子供の貧困対策についてでございますけれども、都はこれまで、子供の将来が、その生まれ育った環境によって左右されないよう、教育支援、生活支援、保護者に対する就労支援、経済的支援の四つを柱に、生活保護世帯や生活困窮世帯、ひとり親世帯、社会的養護のもとで生活する子供たちに対する支援を行ってまいりました。
 昨年策定いたしました長期ビジョンにおきましても、安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまちの実現を、政策指針の一つに位置づけてあります。
 全ての子供は日本の未来であり、宝であります。
 今後とも、次代を担う子供たちの健やかな育ちを支えるため、子供や保護者に対するさまざまな施策を展開してまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長がお答えをいたします。
〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、老朽マンションの建てかえ支援についてでございますが、都はこれまでも、区市や関係団体と連携して、相談窓口を案内するパンフレットを作成し、セミナーなどの機会を捉えて広く周知しているほか、管理組合の求めに応じて、建築士などをアドバイザーとして派遣する制度を設けております。
 また、建てかえ事業に対する助成や仮住居の提供を行うとともに、まちづくりと連携してマンションの再生を支援する新たな制度の構築に向け、区市とともに先行モデル事業に取り組んでおります。
 今後とも、こうした取り組みを通じて老朽マンションの建てかえを支援し、良好な市街地環境の形成を図ってまいります。
 次に、マンションの改修に対する支援についてでございますが、今月初めに住宅政策審議会から出された答申では、安全で良質な住宅ストックを形成し、市街地環境の改善を図るため、改修による老朽マンションの再生も重要な選択肢の一つとされております。
 都は、答申を踏まえ、効果的な支援のあり方について検討してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、児童養護施設退所者の自立支援についてでありますが、都は、施設を退所した児童が、自立し安定した生活を送ることができるよう、入所中はもとより、退所後も継続して生活や就労に関する相談支援等を行う自立支援コーディネーターを専任で配置する取り組みを行っており、現在、五十三の施設で実施しております。
 また、NPO等と連携し、施設を退所した児童が気軽に集まり交流ができ、専任のスタッフが生活や就労上の悩みや相談にも応える、ふらっとホーム事業を都内二カ所で実施するほか、施設退所者等が働きやすい職場の開拓や就職後の職場訪問等を行う就業支援事業を実施しております。
 今後もこうした取り組みを進め、社会的養護のもとで育つ子供たちの自立を支援してまいります。
 次に、養育家庭への育児休業制度の導入についてでありますが、本年八月、国の研究会が取りまとめた報告書では、育児休業の対象となる子供の範囲は、法律上の親子関係に準じる関係であるか否かという観点から検討することが適当とし、特別養子縁組の監護期間は、法律上の親子関係の形成を目指していることから、育児休業の対象となる子供の範囲に含めることを検討すべきとしております。
 一方、養育家庭につきましては、社会的養護の制度であり、里親手当も支給されているなど、関係性が異なるという意見があったことにも留意しつつ検討すべきとしております。
 都は、より多くの家庭が登録できるよう、養育家庭の育児休業制度の利用についても、国に提案要求しており、今後も、家庭的養護の推進に向け、必要な働きかけを行ってまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、プラスチックのリサイクル等についてでございますが、都は、持続可能な資源利用の推進に向けて、資源ロスの削減や廃棄物の循環利用の促進等を施策の柱とする「持続可能な資源利用」に向けた取組方針を策定いたしました。
 その中で、プラスチックについては、レジ袋のさらなる削減や、事業系廃棄物のリサイクルのルールづくりにより、減量化や分別、再利用の促進に向けて取り組むこととしております。
 今後とも、区市町村と連携し、より効率的なプラスチックごみのリサイクル等を進めてまいります。
 次に、海洋におけるプラスチックごみの発生抑制についてでございますが、海洋におけるプラスチックごみの発生原因は、海洋や河川へのごみの投棄、また、陸域で捨てられたごみの海洋への流出等、さまざまであると考えられます。
 そのため、都は、引き続きプラスチックの再資源化への取り組みを支援するとともに、ごみのポイ捨て禁止に関する普及啓発や水域における清掃の着実な実施等により、ごみの発生抑制や適正処理に取り組んでまいります。

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