平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○議長(高島なおき君) 二十八番田中朝子さん。
〔二十八番田中朝子君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○二十八番(田中朝子君) 初めに、ギャンブル依存症対策について伺います。
 ギャンブル依存症とは、パチンコ、パチスロ、競馬、競輪、競艇、マージャンなど、いわゆるギャンブルをやめたくてもやめられない、続けるためにうそをついたり、借金を重ねることもいとわない、いわゆる病的ギャンブラーを指します。
 昨年八月に発表された厚生労働省研究班の調査によると、日本国内にギャンブル依存症の疑いがある人が五百三十六万人いると推計されました。成人全体では、国民の四・八%に当たり、これはカジノがあるアメリカの一・五八%、フランスの一・二四%などに比べ、際立って高い数値です。世界的には百人に一人ですが、日本では二十人に一人がギャンブル依存症の疑いがあるということになります。
 日本のギャンブル依存症になる原因の多くは、パチンコ、パチスロであるとされ、身近なところに多くのギャンブル的要素を持つ娯楽施設があることが、海外よりギャンブル依存症割合が高くなったこの調査結果と大いに関連があるのは間違いありません。
 日本ではこれまで、ギャンブルをやめられないのは意思が弱いなど、本人の資質や性格の問題とされてきましたが、近年は、やめられない心の病気、精神疾患の一つとして認識されるようになっています。
 ギャンブル施設や公営ギャンブルが多く、ギャンブル人口も多い東京でも、相当数のギャンブル依存症が存在すると推測され、ギャンブル依存症の方やその家族に対し、専門的な支援が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 法律では、十八歳未満の者が客としてパチンコ店に立ち入ることが禁じられています。本来、年齢的に疑わしい客がいたら、警察や児童相談所等に通報したり、入店を拒むようにするべきですが、その部分が現実には曖昧になっているのは大きな問題です。
 現在、教育現場でのギャンブル依存症の防止教育はほとんどありません。しかし、中高生から大学生の時期は、依存対象との接触の開始時期であり、十年足らずで依存症になり、借金が表面化する若者が多くいることから、今後、若年層への教育は急務といえます。
 ギャンブル依存症を未然に防止するため、学校における健全育成に向けた取り組みが必要と考えますが、教育委員会の見解を伺います。
 ギャンブル依存症は、薬物依存症やアルコール依存症などの物質依存とは異なり、行動に対する依存です。そのため、明らかに健康を害する薬物やアルコール依存症などと違い、ギャンブル依存症は見た目ではわからず、本人も家族も気づかないまま、深刻な状況になっていることが多いのです。
 また、ギャンブル依存症になると、多額の借金問題、自己破産や家庭崩壊、果てはギャンブルや借金返済に使うお金を得るために、横領、詐欺、殺人などの犯罪に至る可能性も高いことから、さまざまな機関でのギャンブル依存症の早期発見を進め、GAやギャマノンなど、自助グループ等につなげることが非常に重要です。
 また、昨年、我が会派で視察したシンガポールでは、カジノを含む統合型リゾート、IRの収益の一部をギャンブル依存症対策の財源に充当し、包括的な依存症対策を実現させていました。日本においても、業界によるギャンブル依存症対策の強化を進めるべきと考えます。
 このように、日本におけるギャンブル依存症対策は、実態調査、啓発、教育、治療、業界の依存症対策等がいずれも不十分で、国を挙げての対策が急務であり、自治体レベルでも、その取り組みは必須です。
 日本でもカジノ解禁が議論される今こそ、現実的な効果が期待できるギャンブル依存症対策を進める必要があると考えますが、都は、ギャンブル依存症に対し、どのような認識をしているのか、また、今後、都としては、ギャンブル依存症対策をどのように進めていくのか、知事の見解を伺います。
 次に、病院内教育について伺います。
 ことし五月に、病気やけがで入院した子供への教育の実態を文部科学省が初めて調査し、結果を明らかにしました。この調査によれば、二〇一三年度の一年間に三十日以上の長期入院をした延べ六千三百四十九人のうち、約四割に当たる二千五百二十人に在籍校による学習指導が行われていなかったとされています。
 病気にかかって入院したということだけでも大変で不安な状態であり、その上、心ならずも学校に通えなくなった子供たちの心情を思えば、こうしたつらい状況に置かれた児童生徒に対して、学習の機会を保障することは極めて重要です。
 都では、都立特別支援学校において、このような入院した児童生徒に対する病院内教育を行っており、他の道府県よりもしっかりと対応しているということですが、改めて、現在の都の病院内教育の取り組み状況について伺います。
 一方で、入院している児童生徒の学習機会を十分に保障するためには、病院内教育を適切に受けられる環境を整えることが重要です。まずは、病院内教育という制度があることを、児童生徒や保護者はもとより、病院や区市町村の学校関係者等にしっかりと周知する必要があります。
 例えば、神奈川県で病院内教育を実施している病院のホームページには、県内全ての病院内学級一覧が載っており、一般の方にも非常にわかりやすくなっています。
 都もこうした取り組みを参考に、制度の周知を徹底することで、より多くの児童生徒が病院内教育の制度を利用しやすくなると考えます。
 また、病院内教育に関する手続面の簡素化を図ることも重要です。病院内教育を受けるには、もとの在籍校から特別支援学校への転校が必要ですが、入院と自宅療養を繰り返す場合などは、手続の負担から転校をせず、病院内教育を利用しないことも少なくありません。
 子供の入院というのは、さまざまな面で保護者にとって大きな負担になります。そうした中で、保護者に過度の負担を課す手続が必要になると、病院内教育の制度が利用しにくくなってしまうのです。
 そこで、都は、病院内教育の制度をより利用しやすくするため、利用者の目線に立って制度へのアクセス性を向上するための取り組みを進めるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 病院内教育制度は、義務教育ではない高校生に対しては、まだ多くの課題があります。
 文科省の調査では、けがや病気で長期の入院をした高校生の約七割が、療養中に学習支援を受けていないことが明らかになっています。
 高校、特に私学は復学規定が厳しいため、病院にある院内学級などに転籍する生徒の割合が、小中学生の五分の一と低くなっています。都立高校の場合は、復学のための仕組みが整えられていますが、私学の高校生が転籍できないまま長期入院となれば、在籍校で休学が長引いて、出席日数が足りず、退学を余儀なくされることもあるのです。
 また、院内学級のない病院に入院している生徒や自宅療養の生徒のための訪問教育は、授業が週に六時間のみと非常に少なく、進学や大学受験にも影響が大きくなっています。
 大学進学率が高い東京都においては、長期入院の生徒の学習の機会が失われ、不利になることのないよう、転校を伴わない制度や情報端末を使った遠隔授業など、積極的で柔軟なさらなる支援を検討していただきたいと考えます。
 当事者たちの声を受け、制度の充実を進めることを強く要望し、次の質問に移ります。
 次は、東京港の運河における航行安全上の課題についてです。
 東京都心の臨海部では、近年、開発が急速に進んでおり、九〇年代以降、それまであった倉庫や工場にかわり、高層マンションが建ち並ぶ臨海住宅街へと変貌しています。そのため、人口が急増し続けている臨海部の住環境の課題に対する新たな配慮が求められており、その一つが運河における船舶等の航行問題です。
 ここ数年、高層マンションが建ち並ぶ東京港内の運河部分での、水上オートバイなどの危険な航行やその騒音が大きな問題となっています。
 以前の水上オートバイは、燃料タンクも小さく、余り長距離は航行できませんでしたが、近年、大型化し、長距離航行ができるようになったため、東京都内のマリーナからだけでなく、千葉や埼玉のマリーナから川を下り、十台や二十台も連なって運河部分にツーリングに来る水上バイクが激増しています。
 地元住民の話によると、その一部のバイクが、運河部分での猛スピード航行、逆走や蛇行、屋形船への幅寄せ等をたびたび行い、また、その騒音などが、近年、地元住民の方々にとって大きな問題となっており、地元自治体や警察署、海上保安庁東京海上保安部などへの苦情が後を絶たない状況であるとのこと。運河部分には信号もなく、速度制限や騒音規制もないため、こういった行為を取り締まることができないのです。
 都は、こうした運河部分での水上バイクなどの危険な航行について把握しているのでしょうか。これから二〇二〇年大会に向け、運河部分を航行するレジャー利用の水上バイク等船舶に対し、新たな航行ルールやマナーを徹底させるべきと考えますが、運河部分での航行安全のために、都としては、どのような取り組みを進めていくのか伺います。
 また、お台場など、東京都の海上公園の水域内においても、水上バイクに関する問題があります。
 都の海上公園条例によれば、海上公園の水域内には、指定された船舶以外は進入禁止となっていますが、それにもかかわらず、レジャー利用の水上バイクがたびたび進入し、こちらも公園利用者から東京海上保安部への苦情が相次いでいると聞きます。
 海上公園の水域において、周囲に迷惑をかける騒音を発生する船舶や危険な航行を行う船舶等の規制が必要と考えますが、見解を伺います。
 東京都では、これら東京港の運河部分でのさまざまな取り締まりに関しては、昭和二十三年に施行された警視庁所管の東京都水上取締条例があります。
 しかし、この条例は、ほぼ六十七年前の、まだ海上保安庁ができる前につくられたままであり、現状、海上保安庁東京海上保安部にある幾つかの許可権限が、条例上は警察署長のままであったり、国際ルールにおいて船舶の追い越しは右側追い越しが原則にもかかわらず、条例では左側追い越しになっていたりと、条例と現状の乖離が非常に大きいため、所管の警視庁での現状や時代に合った条例改定が求められるところです。
 今定例会の知事の所信表明においても、舟運の活性化を図り、水の都東京を世界にアピールしていくとありました。
 これから東京港運河部分の船舶航行に関しても、警視庁や東京海上保安部、各所管部局が連携して、現状に即した新たなルールやマナーづくりに取り組み、世界に誇れる、安全で楽しめる東京港運河にしていただくことを要望いたします。
 最後に、特別養子縁組の推進について伺います。
 これまで、議会において、特別養子縁組をもっと進めていくべきという趣旨の質問を繰り返し行ってきました。特別養子縁組については、国も積極的に進めるべきという姿勢であると聞いていますが、都はこれまで、家庭的養護は進めるという答弁をする一方で、特別養子縁組については言及していない状況です。
 東京都の特別養子縁組の委託はふえている状況になく、また、中でも乳幼児への虐待や虐待死から守るセーフティーネットになるはずの新生児の特別養子縁組は、全国の児童相談所では広がっているにもかかわらず、東京都では、いまだにないのが現状です。
 そのため、新生児の特別養子縁組を望む方々の多くは、民間のNPO等の養子縁組あっせん事業者から子供をあっせんしてもらっている状況にあります。
 神奈川県横須賀市では、ことし四月から、年間四件の成立を目指して、特別養子縁組を行っている民間団体と連携して、特別養子縁組を進める取り組みを始めています。既に一件成立したとのことですが、市の担当者の話では、特別養子縁組に実績のある民間事業者の持つ専門的な知識やノウハウ、人材、ネットワークなどが活用でき、市としても非常によい影響を受けているとのことです。
 ことし三月の予算特別委員会では、特別養子縁組促進のための民間事業者との連携については、都では現時点での連携にはなかなか課題が多いとの残念な答弁でしたが、都の児童相談所単独での新生児の特別養子縁組がなかなか進む状況にないのならば、今後、都も民間団体と連携をした特別養子縁組をもっと促進していくべきです。
 都が新生児の特別養子縁組を進めていくことを打ち出せば、国全体の取り組みが進んでいくと考えます。特別養子縁組、特に新生児委託については積極的に進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 生まれたばかりの子供を乳児院から長期に施設に入所させずに特別養子縁組に結びつけられれば、特定の養育者とかかわれることで、愛着形成によい影響が出ることは間違いありません。また、何よりも、子供が将来にわたる家族を手に入れることができるのです。
 都でも、施設や行政、大人の都合を優先するのではなく、何よりも子供の福祉を最優先し、特別養子縁組の取り組みを一日も早く進めることを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 田中朝子議員の一般質問にお答えいたします。
 ギャンブル依存症についてでありますが、ギャンブル依存症は心の病であり、世界保健機関による国際疾病分類では、病的賭博として、習慣及び衝動の障害の一つに分類されてございます。
 この病は、自分が病気であるという認識が薄く、破産や家庭崩壊など、深刻な状態に陥るおそれがあることから、家族や周りの人が早期に気づき、適切な相談や支援につなげていくことが重要であります。
 そのため、都は、ギャンブル依存症の特徴や家族への助言、相談先などを盛り込んだ啓発のためのリーフレットを作成するとともに、精神保健福祉センターにおいて研修や講座を実施しております。
 今後とも、関係機関と連携を図りながら、都民の理解を促進し、早期発見や相談支援につなげていきたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長がお答えをいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、学校における健全育成の取り組みについてでありますが、公営ギャンブル等は、各種法令により年齢制限があり、学校においては法令に基づく指導を行っております。
 都教育委員会は、児童生徒の健全育成を図るため、未成年による勝ち馬投票券の購入や、十九歳未満の者のスポーツ振興投票券の購入が禁止されていることなどを各都立学校に通知し、問題行動の未然防止に取り組んでいます。
 また、ギャンブル依存症については、都立精神保健福祉センターが作成している啓発リーフレットを学校に紹介するなど、教員等が理解を深められるよう、引き続き努めてまいります。
 次に、現在の病院内教育の取り組みについてでありますが、病院内教育は、児童生徒の学ぶ意欲に応え、学習のおくれを防ぐとともに、治療への不安等の軽減を図りながら、病気に向き合う気持ちを育てる重要な意義がございます。
 現在、都では、病院内の分教室と教員が病院を訪問する訪問教育の二つの形態で病院内教育を行っております。
 都の病院内教育では、小学生から高校生までを対象に、主治医等との緊密な連携のもと、児童生徒の病状や進路の希望等を踏まえて、一人一人に寄り添ったきめ細やかな指導を行っております。
 さらに、病院内分教室では、在籍する児童生徒が充実した学校生活を送ることができるよう、病院等と連携して、さまざまな学校行事を実施しております。
 今後とも、病院内教育の意義を踏まえ、入院中の児童生徒に対する指導を適切に行ってまいります。
 最後に、病院内教育へのアクセス性の向上についてでありますが、入院中の児童生徒の学習機会を保障するためには、保護者はもとより、医療機関や前籍校と緊密に連携して病院内教育につなげていく必要がございます。
 このため、都は、病院内教育のパンフレットを作成し、医療機関に配布するとともに、毎年、区市町村教育委員会に対する説明を行い、関係者への周知を図っております。
 また、転学手続については、転学希望の申し出から始まる一連の手続を病院内でほぼ完結できる仕組みとして簡素化し、保護者の負担軽減を図っております。
 今後、こうした取り組みを継続するとともに、ホームページの内容を充実させるなど、入院中の児童生徒が必要な教育を受けやすい環境を整えてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ギャンブル依存症の方への支援についてでありますが、ギャンブル依存症からの回復には、相談機関等の助言に基づき、精神科医療など適切な支援を受けることが重要でございます。
 都では、三カ所の精神保健福祉センターにおいて、ギャンブル依存症等についての専門相談を実施し、医療機関への受診等を促しております。
 また、同じ経験を持つ仲間が相互に助け合う活動を行っている民間団体の協力も得ながら、正しい知識や適切な対応方法等を学ぶ家族教室を実施しております。
 今後とも、こうした取り組みにより、ギャンブル依存症の方やその家族を支援してまいります。
 次に、特別養子縁組についてでありますが、都は、子供の福祉を第一に考えながら、特別養子縁組を含め、家庭的養護を推進しております。
 こうした取り組みをさらに進めるため、現在、東京都児童福祉審議会の専門部会で家庭的養護についてご議論いただいており、今後、新生児委託に関する有識者のヒアリングや、新生児委託のあり方についての検討もいただく予定でございます。
 また現在、国においても、養子縁組あっせんの適切な手法や、児童相談所と民間事業者との連携のあり方などについて調査研究を実施しており、今年度中に取りまとめが行われる予定でございます。
 都としては、児童福祉審議会の専門部会での議論や国の研究結果なども踏まえながら、特別養子縁組を含め、家庭的養護を進めるための方策を検討してまいります。
〔港湾局長武市敬君登壇〕

○港湾局長(武市敬君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、運河部における航行安全についてでありますが、これまで都は、平成二十二年度に東京港の運河利用のルール・マナーのパンフレットを作成し、地元の方々と協力して、水辺のイベントなどにおいて配布するなど、普及啓発を実施してまいりました。
 しかし、港内では、一部の水上バイクやプレジャーボートが、猛スピードや右側通行を守らず逆走するなどの航行を行っており、事故も発生しております。
 このため、今年度既に、運河部での船舶の航行状況や危険な航行を行う船舶の実態等を調査しており、その結果を踏まえ、今後、関係機関と連携し、実効性のあるルール、マナーづくりの検討を進めていくこととしております。
 こうした取り組みを通じ、運河部における船舶の航行安全の確保に努めてまいります。
 次いで、海上公園の水域における船舶の利用についてでありますが、現在、都は、公園内の水域において、海上公園係船施設の利用承認を受けた船舶、当水域を航路として旅客不定期航路事業の許可を受けている船舶などに限定して利用を認めております。
 それ以外の船舶が水域に進入した場合は、これまでも、園内放送や管理用ボートからの呼びかけなどにより、水域からの退去を要請してまいりました。
 今後とも、公園内水域の適正な管理に努めてまいります。

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