平成二十七年東京都議会会議録第十三号

   午後五時三十五分開議

○副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十五番中村ひろし君。
〔五十五番中村ひろし君登壇〕

○五十五番(中村ひろし君) 初めに、都における平和施策の推進について伺います。
 九月十九日、国会で安全保障関連法案が可決をされました。多くの憲法学者が憲法違反と指摘をし、報道でも多くの国民が反対をしている中、審議を打ち切っての強行採決はまことに遺憾です。こうした状況だからこそ、都が平和施策を積極的に推進することは重要です。
 知事は、第一回都議会定例会の施政方針演説で、都は、オリンピック・パラリンピックの開催都市として大きな責任を有している、平和で基本的人権が尊重される社会を守る姿勢を貫いていくと述べました。
 知事就任以来、都市外交、人権施策、男女平等参画等、これまで停滞していた事業が推進されていますので、同様に平和施策も推進する体制を強化し、取り組んでいただきたいと思います。
 オリンピック・パラリンピックは、まさに平和の祭典であり、その開催都市として平和への取り組みを進め、それを積極的にPRしていくことも必要と考えます。
 都は、毎年三月十日に平和の日記念事業を実施していますが、戦後七十年を迎え、戦後生まれが都民の大多数を占めるようになった現在、さきの大戦の悲惨さを学び、そのとうとい犠牲の上に今の平和があることを一人一人が深く胸に刻むとともに、平和の意義を確認し、平和意識の高揚を図っていくことが必要です。
 二〇二〇年大会の開催が決まった都市だからこそ、平和のための取り組みを進めていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 都は、東京都長期ビジョンに掲げる世界一の都市東京を人権の視点から実現するため、十五年ぶりに東京都人権施策推進指針を見直し、先月公表しました。
 新たな指針では、人権課題が複雑化、多様化していることを踏まえ、取り上げる人権課題をふやし、課題ごとに現状、施策の方向性を示したほか、重点プロジェクトとして、今後新たに取り組む事業を掲げた内容になっています。
 オリンピック・パラリンピック東京大会開催まで五年を切った今、都が人権施策の基本的考え方を明確に示したことは、時宜にかなったものであると評価します。
 今週の日曜日に改めて東京都人権プラザを訪問し、常設展と企画展としてホームレスへの理解を進めるための写真展を拝見しましたが、こうした展示をより多くの方に見ていただきたいと思います。
 人権施策の推進体制の強化や、第三者機関である人権施策推進会議に幅広い意見が反映されることも期待します。とはいえ、現状は、ヘイトスピーチが社会的問題になるなど、世界一になるにはまだまだ課題も多いので、いかに指針の理念を実現させるかが重要です。
 今後、人権啓発を中心とした取り組みを強化していくべきと考えますが、都は、本指針に基づき、どのように展開していくのか伺います。
 舛添知事は、前回と今回の定例会の施政方針において、東京都長期ビジョンでは余り前面には出ていませんでしたが、ゆとりについて強調されました。成長一辺倒の時代から成熟社会への変化の中では当然の考え方ともいえます。
 一方、国の経済最優先の政策では格差が拡大していき、生活の現場の声を提案していかなければ、経済的に豊かな人だけがゆとりを享受できる社会になってしまいます。都民が何を求めるかを把握し、生活の質の向上を目指す必要があります。
 知事は、どのような考えでゆとりを前面に出し、どう実現していくのか伺います。
 次に、高齢者施策について質問します。
 高齢化問題は深刻ですが、民間の研究機関が発表した、特別養護老人ホームが足りないから地方へ移住させるという提言は、知事がいうように、いささか乱暴な議論です。とはいえ、楽観できる状況ではないのも事実です。
 都は、住みなれた地域に住み続けるための地域包括ケアシステムの実現に取り組んでいます。知事も施政方針で、NPO法人などさまざまな民間団体や人材が集まる東京の特性を生かして、大都市ならではの地域包括ケアシステムの構築を進めると述べました。
 都の強みでもありますが、人間関係の希薄さは弱点でもあります。財政の問題もあり、介護保険法が変わり、要支援の方のサービスが地域や住民に任されるように転換されてしまいました。
 支え合いといっても簡単ではなく、ボランティア活動をする住民をしっかりバックアップする仕組みをつくることや、NPOなど事業として行う市民活動を支援すること、また同時に、困難事例については、公がこれまで以上にしっかりと支えることがないと成り立ちません。行政が本気にならなければできませんし、相応の覚悟も必要です。住民がNPOを立ち上げ、体制を整え、継続的に事業を行えるようにするのは大変なことです。
 今後、地域包括ケアシステムの在り方検討会議における議論の中間のまとめをつくるとのことですが、改めて、知事のいうところの、東京の特性を生かした大都市ならではの地域包括ケアシステムとは何か、課題と取り組みについて知事に伺います。
 都は、介護施設の待機者の解消のために施設整備を推進していますが、介護施設をつくっても介護人材が不足するとの意見があります。
 介護職場とはいえ、大きな施設から小さなヘルパー派遣の事業者までさまざまありますが、介護報酬を公で決めているのであれば、基本的には待遇にそれほど差が出ないはずです。
 公の制度としての待遇改善を国に求めると同時に、各職場において、キャリアなどに応じた適正な報酬が支払われていないのであれば、待遇改善を求める取り組みも必要です。
 都は、介護職員の処遇に関する課題をどのように認識し、問題解決を図るのか伺います。
 次に、道路整備について質問します。
 現在、都は、関係市区町とともに第四次事業化計画を含む新たな都市計画道路の整備方針を策定中とのことです。
 この都市計画道路の中には、未着手で現道が全くないものと、既定の幅員には足りていませんが、現道として車道などが確保されている、いわゆる概成路線があります。また、都市計画道路ではありませんが、現道として一定の機能を有する道路もあります。
 舛添知事が主張するディモータリゼーション社会を実現させていくためにも、こうした道路整備は必要ですが、最大限にその効果を発揮させていくためには、歩行者空間や自転車レーン、まちづくりと一体となった取り組みなどの視点で進めていくべきと考えます。
 都市計画道路については、広域交通や防災の観点から優先順位をきちんと決めて整備を進めていくべきと考えます。
 住民からは、現在全く存在していない未着手の道路について整備をしてほしいという声は余り出されておらず、むしろ狭い道路を拡幅してほしいという声が聞こえてきます。こうした路線についてもしっかりと整備をしていくべきだと考えます。
 そこで、現在策定中の整備方針において、優先整備路線をどのように選定をしていくのか伺います。
 次に、防災に関連して質問します。
 今月は、北関東で集中豪雨による水害が発生し、調布市の震度五弱を初め、都内全域に及ぶ地震が起きるなど、自然の脅威を再認識させられる出来事が続きました。各地で防災訓練が行われ、最近では、避難場所に避難するだけではなく、校舎や体育館等の避難所の運営を行う避難所訓練も行われています。
 ところが、改めてバリアフリーになっていないことに気づかされます。都内の公立学校については、多くが災害時の地域住民の避難所に指定をされています。
 国立教育政策研究所の学校施設の防災機能に関する実態調査によれば、都内の避難所指定を受けている公立学校のうち、体育館や校舎等にスロープや多目的トイレを設置している学校は、ともに約六割となっています。
 こうした状況を踏まえ、障害のある方や高齢者にも利用しやすいよう、学校の体育館等のバリアフリー化を進めていく必要があると考えます。
 そこで、都立学校のバリアフリー化の推進及び市区町村立学校の整備に対する支援についての所見を伺います。
 先般の台風十八号に伴う豪雨では、一部自治体において、避難指示を出す判断がおくれたことや、住民への周知メールが送られなかったり、市境を越える避難が想定されていなかったことなど、さまざまな課題が浮き彫りになりました。
 伊豆大島や広島での土砂災害を受け、内閣府がことし、避難マニュアルを改定し、各市区町村は水害時の避難のあり方の見直しなどに取り組んでいるものの、大規模な水害が発生した場合には市区町村だけの対応では限界があることは、今回の水害を見ても明らかです。
 住民の避難については、地域の実情に詳しい市区町村が責任を負うものの、市区町村を超えた広域避難への対応など、都が果たす役割も大きいと考えます。
 都の見解を伺いまして、質問の方を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 中村ひろし議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、ゆとりある成熟社会の実現でありますが、二〇二〇年東京大会は、経済成長の中で開催された前回の大会とは異なりまして、成熟社会の中での大会でございます。
 今回の大会を契機としまして、東京、そして日本は、さらなる高みの成熟を目指さなければならないと考えております。
 経済成長が引き起こしたマイナスの遺産を克服し、目指すべきは、持続的な成長とゆとりある暮らしを両立させた社会であります。
 そのために、長期ビジョンの中にも、例えば国際経済都市の創造、渋滞のない大都市を目指す取り組み、パラリンピック開催に向けたバリアフリー環境の構築、ワークライフバランスの実現など、ゆとりある成熟につながる施策を数多くを盛り込んでございます。
 東京を落ちついたまち、安全・安心に暮らし、誰もが人生を楽しむことのできる、ゆとりある成熟都市にしていくため、先進的かつ具体的な施策を展開し、二十一世紀の新たなベクトルを示していきたいと考えております。
 続きまして、東京の特性を生かした地域包括ケアシステムの構築についてでありますが、二〇二五年には、実に都民の四人に一人が高齢者となり、ひとり暮らしの高齢者も増加いたします。また、要介護、要支援者は約七十七万人になりまして、今後十年間でおおむね二十万人の増加が見込まれております。
 一方、元気な高齢者もふえ、その中には、豊富な経験と知識を持つ人材が数多くおります。また、東京には企業やNPOなど、多様な事業主体が活発に活動しておりまして、高度な医療を提供できる医療機関も集積してございます。
 こうした東京の特性を踏まえまして、本年三月に策定した東京都高齢者保健福祉計画では、介護サービス基盤の整備、介護人材や高齢者の住まいの確保などを重点分野に、さまざまな施策を盛り込みました。
 また現在、福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議、これを開いておりますけれども、ここでは幅広い視点から議論を行っていただいておりまして、今後、その議論も踏まえながら、大都市東京にふさわしい高齢者施策を展開していきたいと考えております。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長がお答えをいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 避難所となる公立学校のバリアフリー化についてでございますが、避難所指定を受けた公立学校は、非常災害時に、高齢者や障害者を含む多様な地域住民が避難生活を送る施設としての役割を果たす必要がございます。
 このため、都教育委員会は、都立学校について、校舎、体育館等の改築、改修時に合わせて計画的にバリアフリー化を進めております。また、公立小中学校についても、区市町村に対し、他の自治体の学校施設の整備状況に関する情報提供を行うなど、バリアフリー化の促進を働きかけております。
 今後も引き続き、こうした取り組みを通じて、公立学校のバリアフリー化を推進してまいります。
〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 都市計画道路の整備方針についてでございますが、都市計画道路は、都市活動を支え、交通の円滑化や災害時の救急救援活動などに大きな役割を果たす重要な都市基盤でありまして、計画的かつ効率的にネットワークを形成することで、その機能が発揮されます。
 現在検討中の整備方針におきましても、こうした広域的なネットワークとの整合性を考慮しながら、骨格幹線道路網の形成を初め、地域のまちづくりへの貢献や、ゆとりのある歩行者空間の創出などの視点から、十年間で優先的に整備する路線を選定してまいります。
 引き続き、関係区市町とともに検討を進めて、年内には優先整備路線などを盛り込んだ新たな整備方針案を公表いたします。
〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 平和に関する取り組みについてですが、都は、戦争の惨禍を再び繰り返さないことを誓い、三月十日を東京都平和の日と定め、毎年、東京都平和の日記念行事として、東京空襲犠牲者やその遺族の方々等を招いて式典を開催するとともに、三月十日に合わせ、東京空襲資料展等を実施しています。また、年間を通じ、東京空襲犠牲者名簿も収集しております。
 さきの大戦で戦争の惨禍をこうむった歴史を持つ都民の方々にとって、恒久平和の実現は最大の願いであり、この願いは、オリンピック憲章にうたわれている平和な社会の推進と共通するものでございます。
 オリンピック・パラリンピック大会開催都市として、引き続き、平和の日記念事業等を通じ、平和の大切さをアピールしてまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、今後の人権施策の展開についてでございます。
 オリンピック・パラリンピック東京大会の開催に当たり、人権尊重の理念が広く浸透した社会の実現が重要でございます。
 都はこれまでも、人権週間を中心にさまざまな啓発に取り組んでまいりましたが、新しい人権施策推進指針では、重点プロジェクトといたしまして、大型啓発キャンペーンの実施、東京都人権プラザにおける展示事業の充実などを挙げております。
 来月九日から三日間、大型イベント、ヒューマンライツ・フェスタ東京二〇一五を東京国際フォーラムにて開催し、多様な文化、価値観、生活習慣等について理解を深めるとともに、人権について考える場といたします。
 こうした取り組みを計画的に実施することにより、人権が尊重される都市の実現を図ってまいります。
 次に、水害時における避難のあり方についてでございますが、災害時の住民の避難は市区町村の役割ではあるものの、荒川や利根川など大河川が氾濫した場合の市区町村を超えた広域の避難については、都が調整を図ることが重要でございます。
 このため、都は昨年七月、東京都地域防災計画を修正し、従来明確に位置づけられていなかった広域避難の枠組みを整理し、市区町村間の総合調整など、都が果たす役割について明らかにいたしました。
 さらに、本年三月には、都内関係自治体による意見交換の場を設け、住民の安全かつ効果的な避難が可能となるよう検討を進めているところであり、今後、具体的な広域避難の方策について整備を図ってまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 介護職員の処遇についてお答えをいたします。
 介護職員の処遇における一番の問題は、キャリアパスの仕組みが十分でないことでございます。
 そのため、都は国に対し、介護職員のキャリアパスを早急に整備、普及するよう繰り返し提案要求してまいりました。
 また今年度から、都独自に、国のキャリア段位制度を活用して、職責に応じた処遇を実現するキャリアパスの導入に取り組む事業者への補助制度を開始し、補助要件として職員の段位に応じた手当の支給などを義務づけております。
 国に対しては、介護報酬の介護職員処遇改善加算について、基本部分に組み込むなど恒久的なものとするよう提案要求も行っており、都としては、今後とも介護人材の確保、定着に向けた取り組みを進めてまいります。

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