平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○副議長(藤井一君) 九十番小宮あんりさん。
〔九十番小宮あんり君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○九十番(小宮あんり君) 私たちの暮らすまち東京は、日々変貌を遂げています。一昔前には想像もつかなかったようなまち並みも生まれています。また、多くの人々の努力によって、緑豊かな環境が保全され、再生されています。私たちはその歩みをさらに一歩進め、東京を世界一の都市にしていかなければなりません。そのチャンスが、五年後に迎えるオリンピック・パラリンピック大会の開催です。
 今回は、大会の成功に向けた取り組みと、それを契機として、子供や若者、働く女性、お年寄りや障害のある人など、東京に暮らし、東京の活力を支える全ての人にとって、東京が安心して豊かに暮らせるまちとなるための取り組みについて伺います。
 東京オリンピック・パラリンピック大会は、多くの都民に、国際交流や異文化理解の促進、障害者への理解を深めたり、ボランティア精神を醸成するなど、さまざまな機会を提供します。だからこそ、都民に身近な区市町村で大会成功への機運を高めることが重要です。
 都は今年度、大会成功に向けた区市町村支援事業を創設しました。この支援事業を活用して、小学生がトップアスリートから指導を受けるスーパーキッズ講座や、障害者サポーター育成事業など、さまざまな取り組みが実施されています。
 来年、リオデジャネイロ大会が終われば、次はいよいよ東京です。都としても、区市町村支援事業を拡充し、都内各地で大会成功への機運をさらに盛り上げていくべきと考えますが、所見を伺います。
 また、今、パラリンピック大会への関心が一層高まっています。ロンドン・パラリンピックは二百七十万人の観客を動員し、それまでの最高、北京大会の百八十万人を大きく上回りました。私たちはそのバトンを受け継ぐとともに、この大会を障害のある人に優しいまち東京をつくる大きな機会としなければなりません。
 これまで私たちは、障害者スポーツの裾野の拡大に力を入れてきました。それにあわせ、今後は、パラリンピック競技の種類や内容など、基本的な知識の普及はもちろんですが、五年後の期待の星となる選手を発掘し、育てていくことが重要です。
 しかし、オリンピックに比べ、パラリンピック競技の組織は盤石といえず、日本代表レベルの選手でさえ十分に活動できないといった声を聞きます。
 一人でも多くの障害者アスリートがパラリンピックに出場し、広く都民、国民に感動と喜びを与えられるよう、開催都市として、今から積極的に選手を発掘、支援していくべきと考えます。見解を伺います。
 さて、今回のオリンピック・パラリンピックのキーワードの一つに、環境があります。世界中から集まる人々に、緑豊かな美しい東京を見てもらいたい。そのために重要なのが、東京の貴重な自然を守る都立公園です。昨年十二月に発表された東京都長期ビジョンでも、生態系に配慮した都立公園の整備を進めることが掲げられました。
 杉並区の和田堀公園には、昭和三十年代につくられた和田堀池があります。地元の方々がひょうたん池と呼んで愛するこの池の水質を守るために、水を循環する設備の改修や池の清掃活動などが行われてきましたが、池の水を常に美しく保つということは簡単なことではありません。また、地元の理解のもと、公園を流れる善福寺川で行われている、水害対策のための河川改修事業においても、周辺環境への配慮が求められています。
 和田堀池は、絶滅危惧種のカワセミが飛来し、希少な植物と多様な生き物を育む貴重な環境です。安全なだけでなく、自然に優しいまちづくりを進める、そうした観点からも、和田堀公園における生物多様性の保全の取り組みについて伺います。
 東京の緑を守るという観点から、もう一つ重要な都市の農地について伺います。
 先日、杉並区井草地区でトウモロコシの収穫体験に参加しました。子供たちは目を輝かせて土をいじり、初めて見る畑のトウモロコシを、歓声を上げて収穫していました。都心に残された農地には、防災兼用井戸も整備され、いざというときには都民の命を守る水を供給するなど、重要な役目を担っていますが、その面積は減少を続けています。
 私はかねてより、都市の農地は私たちが積極的に守っていかなければ失われてしまうと主張してきました。ことし四月に成立した都市農業振興基本法により、その一歩は踏み出されました。あわせて、生産、加工、流通を促進する取り組みへの支援にも力を入れるべきです。
 国の基本法では、学校給食で、地元の農産物の利用を促進することがうたわれています。しかし、都内では、近所に農地がない小中学校も多く、入手先の情報も不足し、都内産農産物を使う具体的な指針もありません。
 一方で、私のもとには、地元の生産者から、農地のない区の給食にも新鮮な野菜を、農産物を届けたいという声が届いています。身近でとれ、生産者の顔の見える、安心・安全な食を子供たちに提供するために、都は、学校給食の関係者と生産者を結び、都内でできた農産物の活用を進めるべきです。都の所見を伺います。
 子供たちの笑い声は、どんな時代でも、どんな場所でも、まちの元気の源です。東京においても、もちろんそれは変わりません。
 都知事は所信表明において、改めて待機児童ゼロに全力で取り組む決意を述べられました。その前提条件となるのが、保育人材の確保です。女性が働きながら子供を産み育てる環境を整備するには、施設はもちろん、人材の確保が急務であると、保育事業者の方々からも伺っています。
 都は、潜在保育士の掘り起こしや保育士の宿舎借り上げ支援、保育士等キャリアアップ補助などさまざまな対策を講じてきました。それらに加えて、四月に施行された子ども・子育て支援新制度により、都が実施する一定の研修を受けて認定を得た人が、子育て支援員として子育て事業に携わる制度が創設されました。年齢や経験の有無にかかわらず、人材の裾野を広げる注目すべき制度です。
 これは国の制度ですが、都は実施に当たり、国の枠組みでは認可外保育施設とされている認証保育所にも、保育の質の向上のために活用すべきと考えます。さまざまな人材を生かすことで、待機児童という、東京が直面する課題に柔軟に応えて、若い世代が安心して働き、子供を育てることのできるまちをつくるため、子育て支援員研修の現在の取り組み状況を伺います。
 我が国の生活は豊かになり、医療は充実して、世界一の長寿国となりました。これから大事なことは、元気で長生きするお年寄りをふやすことです。
 十年後には、六十五歳以上のお年寄りの五人に一人が認知症になるといわれています。都はこれまで、二次保健医療圏に一カ所ずつ、地域拠点型の認知症疾患医療センターを指定し、専門医療相談や診断を行うとともに、人材育成や医療と介護の連携に取り組んできました。
 しかし、認知症の人は、遠方まで診断や治療に行くことが難しいため、都は、一歩進んで、全ての区市町村へ地域連携型の認知症医療センターを設置することとしました。これにより、身近な地域に、認知症の人と家族を支える体制が構築されました。
 しかし、認知症疾患医療センターが活動を進める上で極めて重要なのは、区市町村との連携です。どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 また、認知症の人が住みなれた地域で暮らし続けるには、本人への支援だけでなく、家族や地域の人々の認知症への理解が大切です。本人や家族の思いに寄り添い、支えられる環境をつくるため、認知症とはどういった症状で、どんな介護が必要か、世代を問わず、広く都民全体に普及啓発する活動が欠かせません。
 そこで、認知症の人や家族に優しいまちをつくるために、その普及啓発に関する都の取り組みについて、知事の所見を伺います。
 最後に、全ての人にとって、人に優しいまちづくりのシンボルとなる、道路の無電柱化について伺います。
 都は昨年、新たな無電柱化推進計画を策定し、センター・コア・エリアと呼ばれる、いわゆる都心部の都道の無電柱化を、東京オリンピック・パラリンピック大会までに完了させるとともに、環状七号線を平成三十六年度までに完了させることとしています。災害時に大きな役割を果たす道路の無電柱化は重要です。
 一方で、地域の方々からは、生活道路として日々利用している身近な道路、区市町村道の電柱をなくしてほしいという要望をいただきます。
 三月の予算特別委員会で、私は、そうした区市町村道の無電柱化を一層促進すべきであると訴え、当時の都技監からは、幅の狭い区市町村道の課題である地上機器の設置場所の確保に向けた推進策を検討すると答弁をいただいております。
 そこで、区市町村道における無電柱化の促進に向けた、都の現在の取り組みについて伺います。
 以上、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の成功へ向けた取り組みと、それを契機とした人に優しいまちづくりについて伺ってきました。
 東京には世界でも有数のインフラが整備されています。しかし、インフラが東京をつくっているのではありません。東京をつくっているのは人です。だからこそ、まちに合わせた生活を人に強いるのではなく、東京が人に優しいまちに生まれ変わるべきです。そのために、今後とも、都民の声に謙虚に耳を傾け、都政を進めていくことをお願いし、質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 小宮あんり議員の一般質問にお答えいたします。
 認知症への理解を進める普及啓発についてでございますが、認知症の方は、記憶障害や認知障害から不安に陥り、その結果、周りの人との関係が損なわれることも少なくないわけであります。しかし、周囲の理解や気遣いがあれば穏やかに生活することができるといわれております。
 このため、都は現在、都民の方々に認知症に対する理解を深めていただけるよう、認知症シンポジウムの開催や、認知症サポーターの養成への支援などを行っております。先日開催しました今年度のシンポジウムでは、実際にサポーター養成講座を受講していただき、参加した都民の方からは、認知症の方への接し方などがよくわかったなどと多くの声が寄せられました。
 また、昨年度は、できるだけ多くの都民に認知症の基礎知識や早期診断の重要性について知っていただけるように、認知症の普及啓発用のパンフレット、知って安心認知症を作成し、新聞折り込みで、都内全域に配布をいたしました。
 今後とも、さまざまな機会を通じて、認知症に関する普及啓発を進め、認知症の方とその家族が、地域の中で安心して暮らすことができるような社会を実現していきたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、二〇二〇年大会に向けた区市町村支援についてでございますが、大会を成功させるためには、都と区市町村が一体となった取り組みが必要であり、都では今年度、区市町村が実施するソフト事業に対しまして補助制度を創設いたしました。多くの区市町村では、この補助制度を活用し、オリンピアンを招いた講演会やスポーツ教室など、大会を契機とした、主にスポーツ振興を目的とする事業を行っております。
 一方、来年のリオ大会を機に、国内での盛り上げも本格化することから、区市町村においては、地元選手の応援イベントなど機運醸成に係る事業を拡大していくとともに、文化プログラムに関する事業など新たな分野での取り組みに対するニーズがございます。
 こうした区市町村の意欲的な取り組みに的確に対応できるよう、今後の支援策について検討してまいります。
 次に、パラリンピックに向けた選手発掘についてでございますが、二〇二〇年大会を満員の観客で盛り上げるには、日本選手の活躍が不可欠でございます。
 都といたしましては、東京の選手が数多く大会出場を果たせるよう、東京都長期ビジョンに基づき、今年度から初めての試みとして、パラリンピックに向けた選手の発掘事業を行います。
 この事業は、競技団体が一堂に会する中、障害のある人が競技体験を通じてみずからの適性を見出すとともに、競技団体側もアスリートの原石を発掘し、その後の育成につなげるものでございます。この準備に当たりましては、東京都レベルの障害者競技団体のみならず、健常者や全国レベルの競技団体からも協力を得て、その連携のもとに進めております。
 本事業をスタートラインとして、一人でも多くの選手がパラリンピックという世界の大舞台で最高のパフォーマンスを披露し、多くの人に深い感動を与えられるよう、積極的に支援を行ってまいります。
〔建設局長佐野克彦君登壇〕

○建設局長(佐野克彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都立和田堀公園の生物多様性の保全についてでございますが、和田堀公園は、都心では珍しいカワセミやコサギが飛来し、キンランが生息するなど、善福寺川沿いの自然豊かな緑の拠点として、散策や自然観察等で多くの都民に親しまれております。
 都は、三十一公園で多様な生物が生息する公園づくりを推進しており、希少な生物等の生息空間を整備保全するため、順次、保全管理計画の策定を進めております。
 このうち、和田堀公園では、例えば水質改善を進めている和田堀池と川沿いの斜面をカワセミの生息環境の保全重点地区とすることなどについて、本年八月から地域の方々と検討を始めております。
 今後、その成果を保全管理計画にまとめ、和田堀公園の環境づくりに積極的に取り組んでまいります。
 次に、区市町村道における無電柱化についてでございますが、都内全域で無電柱化を図っていくためには、比較的道幅の狭い区市町村道の事業を一層促進することが重要でございます。
 このため、都は、実際に事業を予定している複数の区とともに、課題の一つとなっている地上機器の設置場所について、民地や公共空間、都道の活用など、実施に向けた具体的な方策を検討してまいりました。
 今後は、これらの成果を踏まえ、地上機器設置の手法を示した手引を新たに作成し、区市町村向けに開催している研修に盛り込むなど、技術的な支援を拡充してまいります。
 引き続き、都がリーダーシップを十分に発揮し、区市町村と連携しながら、無電柱化の推進に積極的に取り組んでまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 学校給食への都内産農産物の供給についてでございますが、都内産農産物を学校給食に使用することは、小中学生が生産者を身近に感じ、食への理解を深めるとともに、地産地消を進める上でも有効な取り組みでございます。
 このため、都は、平成二十三年度に農業者、NPO法人等の協力により、とうきょう元気農場を開設し、昨年度はそこで生産した農産物を、農地のない区など十六区、百八十八校の学校給食へ供給をいたしました。
 加えて、今後は、農業者の生産状況や学校側の利用ニーズなど需給情報の共有化や、広域的な集配送システムの確立等、安定的な供給体制の構築に向け、JAや流通事業者、学校関係者等と連携して検討を進めてまいります。
 これらの取り組みにより、都内産農産物の学校給食への一層の供給拡大を図ってまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、子育て支援員についてでありますが、子育て支援員制度は、小規模保育や家庭的保育、学童クラブ、子育てひろばなど、地域における子育て支援の担い手を確保するため、分野ごとの専門的な研修を受講し、必要な知識や技術を修得した方を子育て支援員として認定する国の新たな制度でございます。
 都は、できるだけ多くの方に研修を受講していただけるよう、「広報東京都」やホームページなどにより、広く都民に周知いたしますとともに、都独自の制度でございます認証保育所で働いている方々に対しても、関係団体を通じて受講を呼びかけ、今月から約千三百人を対象に研修を開始いたしました。
 今後とも、地域における子育て支援サービスの人材確保とさらなる質の向上を図るため、子育て支援員の養成を進めてまいります。
 次に、認知症疾患医療センターと区市町村との連携についてでありますが、お話のように、身近な地域で認知症の方とその家族を支える体制を構築するためには、認知症疾患医療センターと区市町村との連携が不可欠でございます。
 そのため、今回指定したセンターは、区市町村とともに、かかりつけ医や地域包括支援センター、介護事業者、家族会など、認知症の方の支援に携わる関係者のネットワークづくりを推進することとしております。
 また、専門的視点から、地域包括支援センター等の相談に対応いたしますとともに、区市町村や医師会等が開催する研修会や勉強会に講師を派遣し、医療や介護従事者など、地域において認知症対策を担う人材の育成を支援してまいります。

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