平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○議長(高島なおき君) 十八番遠藤守君。
〔十八番遠藤守君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十八番(遠藤守君) 東京の経済と雇用を支える中小企業支援について、初めに二点質問をいたします。
 まず、マイナンバー制度についてであります。
 本定例会にも関連条例が提案されているとおり、いよいよ来月から社会保障・税番号制度であるマイナンバーが各個人に通知され、来年一月から利用が開始されます。
 社会保障や税金などの手続を十二桁の番号で効率的に処理する、この新たな社会インフラは、都民生活の利便性向上にもつながるものと期待をされております。
 その一方で、私のところには、地域の中小企業経営者から、制度開始が迫っているが、何をどう対応したらよいのかわからないといった不安の声が数多く寄せられております。また、先日、我が党が行った都の来年度予算編成に向けた団体ヒアリングにおいても、幾つもの団体から同様の懸念が出されました。
 実際、今後、事業者には、マイナンバーの取得や利用、提供、保管等に際して、個人情報の漏えいや紛失を防ぐための安全管理を徹底することが求められます。
 これまで国や都では、テレビ等のメディアの活用やリーフレットの配布などで制度の周知を図ってきましたが、今後はマイナンバーの利用が拡大されることから、気軽に相談できる、いわゆるヘルプデスクやフリーダイヤルを使った専用電話などがあると大変心強いと思います。
 そこで、都内中小企業の不安を解消し、事務が滞りなく進むよう、あらゆる手だてを講じるべきであると考えますが、都の見解を求めます。
 第二は、職場におけるメンタルヘルス対策を進めるストレスチェック制度についてであります。
 厚生労働省の調査によれば、仕事によるストレスが原因で精神障害を発病したとして、労災認定された数は、平成二十六年度には四百九十七件、さらに勤務問題が原因で自殺をされた方の数は年間二千人を超える状況が続いております。
 こうしたことから、国は、メンタルヘルス不調を防止するための新たな仕組みとして、本年十二月より、従業員五十人以上の事業場にストレスチェック制度を義務化いたしました。
 制度の概要をごく簡略に述べます。まず、従業員全員にストレスチェックのための質問票が配布され、従業員が記入します。医師等がそれを評価し、本人から申し出があれば面接指導を行います。その後、面接指導を行った医師等から事業者に意見がなされ、その意見をもとに事業者はストレス軽減のための取り組みを行うものであります。以上が概略であります。
 都内の事業場がこれを実施し、職場の環境改善等に効果的に役立てていく必要がありますが、一部の現場からは戸惑いの声も聞かれております。
 ストレスチェック制度の円滑な実施に向け、企業への効果的な情報提供をすべきと考えますが、産業労働局長の答弁を求めたいと思います。
 この点に関連して、つけ加えておかなければならないことがあります。それは、ストレスチェック制度で明らかになった医師の診療が必要な方が、適切な医療が受けられるように、医療提供体制にも十分留意すべきであります。また、この場合の治療に当たっては、安易に薬物療法だけに頼らず、幅広い選択肢が提供されるように、都として環境整備に努めるべきであります。
 次いで、高齢者支援について伺います。
 まず、残薬対策についてであります。
 高齢化に伴い我が国の医療費は年々増加し、平成二十六年度は前年度より七千億円増加し、初めて四十兆円台となることが確実になり、医療費の抑制は喫緊の課題となっております。
 こうした中、医師から処方されたものの飲み忘れなどで患者の手元に残っている、いわゆる残薬は、国の調査で年間約五百億円に上るものと報告をされております。
 一般的に高齢者は、複数の医療機関を受診し、何種類もの薬が処方されており、重複した処方や飲み合わせにより重大な副作用を生じるケースも発生しております。
 以上のことから、都議会公明党は昨年七月、薬局での残薬調整を市民レベルで展開し、成果を上げております福岡市薬剤師会の取り組みを調査してきました。取り組みの発端は、福岡市薬剤師会と九州大学が共同して、二〇一二年に行った試験実施にあります。
 これを踏まえ、現在、市内で行われている運動は次のとおりであります。すなわち、節約の約、この字に薬という字を当てた節薬バッグとネーミングされた小さな袋を市民に薬局で無料配布しております。市民は、自宅にある残薬をその袋に入れて薬局に持参し、薬剤師が医師と相談の上、調剤により残薬を減らす取り組みであります。
 福岡市薬剤師会が行ったアンケートによれば、患者の約七割、処方医の大半がこの取り組みを評価しておるそうであります。
 薬局で残薬状況を確認することは、薬の無駄をなくすだけでなく、適切な服薬にもつながります。残薬を減らし、高齢者が重複なく薬を服薬できるよう、薬局での取り組みを促進すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 高齢者支援の第二は、互助の取り組みについてであります。
 高齢者が住みなれた地域で生活を続けられる社会環境を整えていくことは、豊かな超高齢社会を構築するポイントであり、それを具体的に導く手だてが地域包括ケアシステムであります。
 このシステムの土台となるのが、町会、自治会を初めとする地域のボランティアや住民による地域貢献活動である互助の取り組みであり、その担い手をふやしていくことが極めて重要であります。
 こうした中、実際に地域活動に取り組んでいる団体からは、もっと多くの方に互助の活動に参加してもらいたいといった意見や、互助の活動を広げていきたいが、どうしたらよいのかわからないといった悩みが寄せられております。
 こうした声に応える取り組みとして、今注目をされているのが、プロボノという活動であります。これは、組織としての活動にふなれな個人や経営基盤の弱い団体に対し、これまでの仕事での経験やスキルを生かしてアドバイスするボランティア活動のことであります。
 都には、多くの企業が立地し、ビジネススキルや専門知識を持った人材が集積していることが強みであります。この強みを生かして、地域貢献活動の課題解決に取り組んでいくことは、地域包括ケアシステムにおける互助の構築と担い手づくりを進める上で非常に有効と考えます。
 このプロボノも活用するなど、多様な地域貢献活動の拡充を促していくべきと考えますが、福祉保健局長の見解を求めます。
 次いで、がん教育について質問をいたします。
 六月の第二回定例会代表質問で、都議会公明党は、児童生徒を対象にしたがん教育の推進を提案いたしました。これまで三カ月という短期間でありますけれども、この間の教育庁、そして病院経営本部の精力的な取り組みにより、具体的な前進があったと聞いております。
 そこで、教育長並びに病院経営本部長に現在までの取り組みと今後について、それぞれ報告を求めたいと思います。
 最後に、精神障害者施策について質問をいたします。
 都内の精神障害者保健福祉手帳の所持者数は約九万人、精神科病院に一年以上長期に入院されている方は、約一万二千人おられます。
 障害の特性上、精神障害のある方は、他人とのコミュニケーションがとりにくく、周囲とのトラブルを生じやすい。さらに、精神障害は特別なものといった偏見が払拭されておらず、患者を支えるご家族は、地域で生活する上で心身ともに多大な苦労を抱えておられます。
 精神障害のある方が地域に受け入れられ、地域の人々とともに安心して暮らせる社会を実現していかなければならないと思いますが、まず、この課題に対する舛添知事の基本的な認識をお伺いしたいと思います。
 障害の有無や種別にかかわらず、全ての都民が住みなれた地域で暮らせるのが当たり前の社会であり、福祉先進都市の実現を目指す東京が、こうした社会づくりをリードするのは当然であります。
 我が党はこれまで、精神疾患のある方の社会復帰支援や医療と福祉の連携強化など、支援の充実に努めてまいりましたが、家族の皆さんの高齢化を鑑みるに、地域で支える体制づくりを加速化するべきであります。都の見解を求めます。
 このことに関連しまして、最後に意見を申し述べます。
 私はこれまで、多くの家族に面会し、その切実な声に耳を傾けてまいりました。このような声でありました。
 精神障害のある方は、就労自体が難しい上に、障害特性ゆえに中途で離職をする割合が高い傾向にあります。また、病気を発症しても本人に病識がないことから受診がおくれてしまい、その結果、障害年金をもらえないケースもあるということであります。さらには、経済的理由から医療が中断されると、病気の再発や悪化につながります。
 これらはいずれも年金を主な収入源としている高齢のご家族にとって、生活困難につながっております。
 手当や年金制度など障害者の所得保障は、基本的に国の役割でありますが、こうした窮状を鑑みるに、あらゆる機会を通じて国への働きかけを一層強めるべきであります。
 その一方で、国と異なり現場を持つ都として、所得保障を長年求めてこられたご家族の切なる願いに応えるべきと申し上げ、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 遠藤守議員の一般質問にお答えいたします。
 精神障害者が安心して暮らせる社会の実現についてでございますが、精神障害は、疾病と障害が共存する特性があるため、症状の変化に的確に対応できるよう、保健、医療、福祉が連携して精神障害者を支える体制を整備することが重要であります。
 こうした考えに立ちまして、都は、病院と地域をつなぐコーディネーターの配置、病院と就労支援機関が連携した就労への支援、地域移行や定着支援を担う人材の育成など、さまざまな施策を展開しております。
 また、障害や障害者に対する都民の理解を深めるため、区市町村と連携して、子供に対するユニバーサルデザイン教育や、地域住民を対象にワークショップを開催するなど、心のバリアフリーを推進しております。
 障害のある人もない人も、社会の一員として互いに尊重し支え合いながら、ともに生活する社会こそが、私が目指す世界一の福祉先進都市東京の姿でございます。
 今後とも、精神障害者が地域で安心して暮らすことができる社会の実現に向け、障害の特性を踏まえた施策の充実に全力で取り組んでまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) がん教育の現状と今後の取り組みについてでございますが、文部科学省は、学習指導要領の改訂を見据え、平成二十七年三月、全国全ての学校でがん教育を展開していく方針を示すとともに、がん教育の目標、具体的内容や配慮事項等についての検討結果を公表いたしました。
 今後の学校教育において、児童生徒が、がんについて正しく理解していくためには、まず指導する教員自身が、がんについての理解を深めることが重要であります。
 このため、都教育委員会は、来月十月七日に、都内公立学校の教員を対象として、がんの専門医による特別講演会を開催するとともに、国の動向を踏まえ、学校における実践研究や指導内容、方法等についての教員研修を進め、児童生徒の健康教育を一層充実してまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、マイナンバー制度への対応についてでございます。
 本制度の導入によりまして、企業は従業員等のマイナンバーを安全に管理することが求められております。とりわけ中小企業がこれに円滑に対応するためには、国や地方自治体などによる情報提供や相談など、きめ細かなサポートが必要でございます。
 このため、都は、中小企業からの問い合わせ等に対応できるよう、区市町村に対して説明会を実施いたしました。また、中小企業に対しては、中小企業振興公社においてセミナーを開催し、制度の概要等を周知するとともに、相談窓口において個別の相談にも応じております。
 今後、制度導入後に中小企業が抱えるさまざまな課題を速やかに解決できるよう、ご提案の趣旨も踏まえ、相談窓口の充実について検討するなど適切に対応してまいります。
 次に、職場におけるメンタルヘルス対策についてでございます。
 本年十二月から従業員五十人以上の事業場で義務化されるストレスチェック制度が円滑に実施されることは、職場環境の整備を一層進める上で重要でございます。
 都は、企業向けセミナーを開催し、新たな制度について広く普及啓発を行っております。また十一月には、経営者団体等と連携し、制度を活用した職場環境改善などに関するシンポジウムを開催いたします。
 こうした機会を活用し、産業医を初めストレスチェックを行うスタッフを対象とした研修会や、制度の実施に関するさまざまな相談に対応するサポートダイヤルなど、専門機関の情報についても提供してまいります。
 今後とも、ストレスチェック制度の円滑な実施を支援し、職場のメンタルヘルス対策を推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、適切な服薬のための薬局の取り組みについてでありますが、高齢者に正しく薬を服用していただくためには、薬局が患者の服薬情報を把握した上で、副作用や重複処方残薬等の有無を確認し、指導を行うことが重要でございます。
 このため、都は、高齢者等に適切な助言が行えるよう、薬局を対象とした研修を行いますとともに、街頭相談やおくすり講座を通じて、都民に薬局の活用方法等を周知してまいりました。
 また、国の薬局、薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業を活用して、医師や訪問看護師等と連携し、在宅で療養する高齢者を薬剤師が訪問して服薬指導を行うモデル事業を実施しており、昨年度は対象者の約八割で残薬が減るなどの改善が見られました。
 今後とも、高齢者の正しい服薬を支え、薬の重複処方や残薬を減らす薬局の取り組みを一層促進してまいります。
 次に、地域貢献活動への支援についてでありますが、都はこれまで、民生委員や自治会、町会による見守り活動やボランティアによる配食サービスなど、高齢者を地域で支える取り組みを行う区市町村を支援してまいりました。
 今後、高齢化が進行する中で、こうした地域貢献活動を拡充するには、担い手づくりが重要でございます。
 そのため、今年度から、ビジネススキルや専門知識を有した企業人等のボランティア活動であるプロボノを活用し、NPOなど地域で活動する団体の広報や組織運営を支援いたしますほか、これまで地域とのかかわりが薄い方々も、ボランティアや支え合い活動に踏み出せるよう、セミナーの開催やウエブサイトによる情報発信を行ってまいります。
 こうした取り組みにより、区市町村や地域で活動するさまざまな団体を支援し、地域貢献活動の充実を図ってまいります。
 最後に、精神障害者を地域で支える体制についてでありますが、都は、精神障害者が地域で安心して暮らせるよう、グループホームや日中活動の場など、地域生活基盤の整備を進めますとともに、区市町村障害者就労支援センターの設置を促進し、障害者の地域での就労を支援しております。
 また、地域移行と地域定着を支援するため、都内六カ所の地域活動支援センター等にコーディネーターを配置し、病院と地域の支援機関とのネットワークを構築するとともに、医療機関、保健所、障害福祉サービス事業者等から成る地域生活移行支援会議を開催し、地域移行に必要な情報交換や事例研究を行っております。
 今後、こうした取り組みを一層進め、精神障害者を地域で支える体制を強化してまいります。
〔病院経営本部長真田正義君登壇〕

○病院経営本部長(真田正義君) 都立病院におけるがん教育の取り組みについてでありますが、がんの専門病院である駒込病院は、治療はもとより、若い世代ががんに関する正しい知識を身につけ、みずからの健康を考え、がん患者に対する理解を深めるきっかけとなるがん教育に携わることも重要な役割と認識しております。
 このため、本年六月から、地元の文京区が実施するがん教育の授業に医師を派遣し、小中学生及びその保護者を対象に、がんの基礎知識や予防と早期発見の大切さ、命の大切さについて、四回の授業を行ってまいりました。
 今後は、地元区に限らず、近隣区においても、がん教育を初め、予防から治療に至るまでのがんに関する講演を行うなど、都におけるがん専門病院として普及啓発に努めてまいります。

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