平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○議長(高島なおき君) 五十四番新井ともはる君。
〔五十四番新井ともはる君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○五十四番(新井ともはる君) まず初めに、教育政策についてお伺いします。
 時代に必要な力というのは、日々変化をしていきます。今後、時代の変化によって、新たな価値観や生き抜くための力、多様性に対応できる人間力、アクティブラーニングなど、これからの教育は、さまざまな能力や学びが問われると考えております。
 中央教育審議会は、新たな学習指導要領の改訂を含めた具体的な議論をスタートし、大学入試センターにおいても、知識の活用力を見る新共通試験を導入するよう文部科学省へ答申するなど、教育が大きく変わろうとしております。
 世界が急速にグローバル化をする中、知識の活用力や思考力、判断力、表現力などを多面的に身につけた総合的な人材が求められています。
 これからの時代に向けた新しい学びについて、知事の見解をお伺いいたします。
 本年四月、高校遠隔授業合法化を受けて、全国の高校で遠隔授業による正規授業が可能となりました。これまで、遠隔授業を受講しても単位として認めてもらえなかったものが、一定の条件を持てば単位として認められるようになりました。
 私は、遠隔授業の活用で、より専門的な知識を有する指導者の学習指導等が可能となり、確かな学力を保障し、教育水準の向上が図れる可能性があると考えております。
 そこで、高等学校等における遠隔教育が学校教育法施行規則に位置づけられたことについて、都教育委員会はどのように対応するのか、見解をお伺いいたします。
 SNSなど新しい情報サービスは、近くにいない友達でもインターネット通話やチャットなどが行え、知らない人と新しい友達になります。さまざまな機能がございますが、使い方を間違えれば、生活や今後の将来に不利益を与え、思わぬトラブルに巻き込まれることがございます。
 近い将来、ソフトや情報機器の進展によって、今までは思いつかなかったような機能や特徴を持った新しい情報サービスが生まれる可能性もございます。
 私は、情報サービスがどんなに変化しても、時代を通じて変わらない不易の対応が求められると考えております。
 そこで、新しい情報サービスに対応した情報リテラシーや情報モラルを学校においても指導すべきだと考えますが、都教育委員会の取り組みについてお伺いいたします。
 平成二十四年の文部科学省の調査では、通常の学級に在籍し、知的障害はないものの学習面で著しい困難を示す児童生徒は、小学校で五・七%、中学校で二%在籍していることが、結果がわかりました。
 学習障害の児童生徒の中には、教科書を目で追って読むことが難しく、内容の理解に時間がかかってしまったり、答えたい内容はわかっていても正しく表記できないといったような、能力があるにもかかわらず、十分にその能力を発揮できていない児童生徒がいます。
 このような児童生徒は、決して学ぶ力がないというわけではございません。学習をする際に、困難のある部分を補うことで、ほかの児童生徒とともに授業を受け、学べるようになります。
 例えば、東京大学先端科学技術研究センターでは、DO-IT Japanというプログラムを行っております。これは、聞く、話す、読む、書くことに困難のある小中学生、高校生が、テクノロジーを活用することにより、高校、大学へそれぞれ進学するともに、その後の就労へ移行し、将来、社会のリーダーとなることを目指すプログラムです。
 そこで、小中学校の通常の学級に在籍する学習障害の児童生徒に対し、積極的にICT機器を活用して、学習を支援すべきだと考えますが、都教育委員会の見解をお伺いいたします。
 来年四月、障害者差別解消法が施行されます。この法律は、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的とし、障害者の権利利益を侵害しないよう、行政機関などに年齢や障害の状態に応じて合理的配慮の提供を定めています。
 一人一人の障害の状況や教育的ニーズはさまざまです。障害のある子供が、学習上の困難を改善し、障害の有無にかかわらず生き生きと活動できる環境が求められております。
 障害のある子供が充実した教育を受けるためにも、どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 次に、サイバー攻撃についてお伺いいたします。
 本年一月に施行されたサイバーセキュリティ基本法に基づき、我が国のサイバーセキュリティ戦略を策定する組織として、内閣にサイバーセキュリティ戦略本部、同時に内閣サイバーセキュリティセンター、NISCが設置されました。
 先月、就任されました高橋警視総監は、NISCの前身であります内閣官房情報セキュリティセンター副センター長を歴任されております。東京オリンピック・パラリンピックを見据えた対策について、サイバーセキュリティー政策に関する総合調整、官民一体となったさまざまな活動を期待しております。
 一度発生すれば国民生活及び社会経済活動に大きな被害を与えるサイバー攻撃について、警視庁では、オリンピックを見据えた各種対策を推進し、サイバー攻撃の予兆を観測するためのサイバー攻撃検知システム等の導入に向けた各種調査研究に取り組まれていると聞いております。
 このような取り組みを効果的に実施するためには、官民一体となった協力体制を構築することが必要不可欠でありまして、以前から、警視庁では、民間と協力するためのサイバーテロ対策協議会を立ち上げて取り組んでいるところですが、この協議会の現況と今後の展望について見解をお伺いいたします。
 次に、サイバー犯罪についてお伺いします。
 インターネットバンキングの不正送金被害は、昨年一年間で一千八百七十六件、被害額は約二十九億円と過去最悪を記録しており、その手口はますます悪質、巧妙化しております。
 全世界におけます検出台数の国別割合を見ても、日本は、これまで連続して一位だったアメリカを抜いて初めて世界一位になってしまいました。オンライン銀行詐欺ツールの脅威が、この一、二年でいかに急速に国内に入り込んできたかがわかります。
 警視庁サイバー犯罪対策課では、主に日本を標的としていると見られるウイルスの感染端末に関する情報を入手し、世界で約八万二千台、うち国内で約四万四千台の端末を特定しました。ネットバンキングウィルス無力化作戦と名づけ、セキュリティー事業者の協力を得て、ウイルス感染端末の不正送金被害を防ぐための対応策を講じたと聞いております。
 そこで、インターネットバンキングのユーザーを狙った不正送金を行うマルウエアの最近の特徴及び総務省が実施している官民連携による国民のマルウェア対策支援プロジェクト等との連携、成果について、見解をお伺いします。
 最後に、ライフサイエンスビジネスについてお伺いいたします。
 資源が乏しい我が国では、ものづくりの技術力を生かして、産業の活性化をしていかなければ、経済が成り立ちません。創薬を初めとするライフサイエンス産業は、付加価値の高い製品を製品化する産業であり、我が国の経済成長への貢献が期待される産業です。
 また、急速に高齢化が進展する東京において、革新的な医療品などが開発されることで、都民、国民の健康長寿を実現することができます。
 一方、こうした分野では、日本は国際的に高い基礎研究力を有しているものの、その成果を製薬企業などにつなぐ体制が不十分なことから、必ずしも製品化に結びついていないのが実情でございます。
 東京には、ライフサイエンス関連企業が、また、大学などの研究機関、医療機関などといったさまざまな機能が集積しております。この集積を最大限に生かし、東京がライフサイエンスビジネスの活性化をリードしていくべきだと考えております。都の取り組みについてお伺いいたします。
 超高齢化社会の到来や人々の健康志向の高まりを背景に、我が国のライフサイエンス分野においても、ベンチャー企業の活躍により、イノベーションが起きるのではないかと私は期待しております。
 しかし、すばらしいアイデアを有するベンチャー企業であっても、創業期には事務所の設置や機器の整備などのさまざまな経費がかさむため、その負担が大きいと聞きます。また、製品やサービスの提供を開始しても、取引先を確保し、事業を軌道に乗せることは容易ではございません。
 都は、ライフサイエンス系ベンチャー企業が、こうした苦悩を乗り越え、飛躍的に成長できるよう、しっかりと手助けをしていく必要性があると考えますが、所見を伺い、質問を終わりにします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 新井ともはる議員の一般質問にお答えいたします。
 これからの時代に向けた教育についてでございますが、グローバル化の進展など変化の激しい時代を担う子供たちには、みずから課題を発見し、解決する能力、さらに、既存の概念にとらわれない発想力、企画力など、一人一人が社会的に自立し、未来を切り開いていく力を身につけてほしいと思っております。
 そのためには、基礎学力の徹底を図るとともに、ご指摘のように、アクティブラーニングの活用などによりまして、思考力、判断力を伸ばしていくことは重要であります。
 二〇四〇年代の東京のグランドデザインを考えたときに、今の子供たちが、まさにその時代を支えることになります。総合教育会議におきましては、こうした子供たちの教育について、教育委員会と議論をしておりまして、新たな時代にかなった先駆的な教育制度の構築に向けて大綱を作成していきたいと思っております。
 教育は、国家百年の計でございます。長い目で将来を展望し、東京を、そして日本を担う人材を東京発で育成していきたいと考えております。
 そのほかの質問につきましては、警視総監、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔警視総監高橋清孝君登壇〕

○警視総監(高橋清孝君) 二点お答えいたします。
 初めに、サイバーテロ対策協議会についてでありますが、警視庁では、平成十三年、警察と重要インフラ事業者が一体となってサイバーテロ対策を強力に推進するため、サイバーテロ対策協議会を設立しました。現在は、情報通信、金融、鉄道、電力、政府・行政サービス等の十三分野から六十九の事業者が参加しております。
 協議会におきましては、これまでに総会を十八回開催し、民間有識者による講演、参加事業者間の意見交換や情報共有等を行うとともに、この協議会の枠組みを通じ、警視庁では、個別訪問によるサイバーテロの脅威や情報セキュリティーに関する情報提供等を行っております。
 また、サイバーテロの発生を想定した共同訓練やサイバー攻撃対策セミナーを実施し、サイバー攻撃のデモンストレーション等を行うことにより、官民の緊急対処能力の向上に努めております。
 今後とも、サイバー攻撃による被害を未然に防止するため、サイバーテロ対策協議会等を通じて、官民連携した取り組みを積極的に推進してまいります。
 次に、サイバー犯罪対策についてでありますが、インターネットバンキングの利用者を対象としたマルウエアの最近の特徴としましては、マルウエアに感染したパソコン上に、銀行のにせ画面を表示し、利用者が入力した口座情報等を盗むという機能を有していることが挙げられます。
 このような状況の中、警視庁では、セキュリティー事業者と連携し、国内における感染端末のマルウエアが機能しないよう無力化措置を講じました。この措置は、外部サーバーと定期的に通信を行い、不正なデータを入手するという、このマルウエアの性質を逆手にとり、それにかわり無害なデータを取得させることにより行いました。さらに、総務省が実施するマルウェア対策支援プロジェクトを通じ、感染端末の利用者に対して、マルウエア駆除の呼びかけを依頼したところであり、これらの取り組みによって、迅速かつ効果的に不正送金事犯の被害拡大防止を図ることができたものと考えております。
 今後とも、官民の連携を強化し、日々変化するサイバー空間の安全・安心の確保に向けた諸対策を強力に推進してまいります。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、高等学校等における遠隔教育についてでありますが、本年四月一日に学校教育法施行規則が改正され、多様なメディアを高度に利用することにより、その授業を行っている教室以外の離れた場所での学習を認める遠隔教育について、新たに規定がされました。
 このような多様なメディアを活用した遠隔教育を高等学校教育に導入するためには、ICT環境の整備や、メディアを利用して受講する生徒への学習評価、単位認定の手続など、検討すべき課題がございます。
 今後、都教育委員会としては、都立高等学校の実態等を踏まえ、遠隔教育について、国の動向等を注視してまいります。
 次に、新しい情報サービスへの対応についてでございますが、情報化の進展の中で、児童生徒が被害者にも加害者にもなることなく、主体的に情報を選択し、適切に活用するための能力を身につけることは重要でございます。
 このため、都教育委員会では、これまでインターネット等の適正な利用に関する指導の充実のため、教員用の指導資料を作成し、都内全公立学校に配布してまいりました。
 また、スマートフォンの無料通話アプリの適正な使い方について学ぶための啓発用DVDの作成、配布、教員や保護者、都民等を対象としたICT教育フォーラムの開催などに取り組んできております。
 今後とも、区市町村教育委員会や関係機関などと連携を図り、児童生徒の情報リテラシーや情報モラル等の育成を図ってまいります。
 次に、学習障害の児童生徒への支援についてでありますが、読み書きなどに著しい困難を示す学習障害の児童生徒にとって、ICT機器の活用は、苦手な能力を補い、授業への参加や理解の促進を図る上で有効であります。
 例えば、特別支援学校の小学部においては、読むことが苦手な児童に対して、文章の読み上げソフトを活用したり、また中学部においては、書くことが苦手な生徒に対して、キーボードやカメラ機能を活用したりして、障害を補うような学習支援をしている例がございます。
 今後とも、都教育委員会は、特別支援学校がこれまで蓄積してきたICT機器を活用した指導実践等を紹介するなど、学習障害の児童生徒が円滑に学習できるよう、区市町村教育委員会と連携を図りながら、各小中学校を支援してまいります。
 最後に、障害のある児童生徒の教育の充実についてでありますが、都教育委員会は、都内の全公立学校に、特別支援教育に関する校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名を求めるなど、校内体制を整備し、教育の充実を図っております。
 さらに、都立高校の入学者選抜においては、さまざまな障害等により通常の方法では受験が困難な生徒に対し、問題用紙、解答用紙の拡大、英語リスニング検査での座席の配慮など、必要な措置を実施しております。
 今後、都教育委員会は、障害者差別解消法の趣旨を踏まえ、国の動向を注視し、関係各局と連携を図りながら、法の施行に向けて適切に対応してまいります。
〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

○政策企画局長(川澄俊文君) 集積を生かしたライフサイエンスビジネスの活性化についてでございますが、ライフサイエンスの分野では、すぐれた研究成果を効果的に発掘、選定して、製品化に結びつけていくことが重要となるため、産学公が連携して、人材や情報の交流を活発化することが求められております。
 そのため、都は、関連企業が集まり、交通利便性も高い日本橋地区等において、民間の創意工夫を生かしたビジネス交流拠点の形成を促進しているところでございます。また、医療機関の臨床研究成果を早期に治療薬創出等につなげるため、国家戦略特区制度を活用し、先進医療の実用化も進めております。
 引き続き、民間等と連携して、東京都長期ビジョンに掲げた施策を進め、東京を国際的なライフサイエンスビジネス拠点へと押し上げてまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) ライフサイエンス系ベンチャー企業への支援についてでございますが、資金力や信用力が十分でないベンチャー企業が着実に成長していくためには、その段階に応じたきめ細かな支援を行うことが重要でございます。
 このため、都は今年度より、創業期のベンチャー企業の負担軽減を図るため、オフィス賃料の一部を助成する事業を実施しております。
 また、スタートアップ期の企業に対しては、国際的な展示会、商談会への出展を支援するとともに、成約に結びつくよう、専門家からの助言等を行う事業を開始いたしました。
 こうした取り組みによりまして、ライフサイエンス系ベンチャー企業の成長を後押ししてまいります。

○副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時九分休憩

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