平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○副議長(藤井一君) 二十二番ほっち易隆君。
〔二十二番ほっち易隆君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○二十二番(ほっち易隆君) 昨日の我が党の代表質問では、道徳教育の重要性について知事の考えを伺い、大変前向きな答弁をいただきました。
 知事の答弁にもあったように、我が国には、礼儀を重んじ、他者を思いやり、互いに助け合うという、よき伝統があります。
 しかしながら、こうした日本人のよさというものは、ふだんは余り意識されていないことから、外国人から指摘されて初めて気づくことも多いと思います。
 その意味で、二〇二〇年大会は、子供たちが我が国のよき伝統を学ぶ絶好の機会であると考えます。
 この機会を活用し、日本人が受け継いできたよき伝統や大切にしてきた価値を、子供たちに継承させていくことが重要であると考えますが、知事の見解を伺います。
 日本人のよさについて、海外から評価されている一方で、日本人が大切にしてきた、礼儀、思いやりの心といったよき伝統や、規範意識、公徳心などの倫理観が、子供たちの心にしっかりと身についていない現状があることも事実だと思います。
 その育成に取り組んでいくことは喫緊の課題ではありますが、学校だけでできることではありません。私たち大人全員の責任であり、学校、家庭、地域社会が一体となって、子供たちの倫理観や道徳性の育成に取り組んでいかなければなりません。
 そこで、学校が、家庭、地域社会と連携し、道徳教育を一層推進すべきと考えますが、都教育委員会の取り組みを伺います。
 次に、都立江北高校の進学対策について伺います。
 どんな家庭環境であっても、自分が生まれ育つ身近な地域に、将来の夢をかなえることができると実感できる教育環境を整えることが重要であると考えます。
 また、都内に十校ある都立中高一貫教育校は、来年三月には全ての学校で卒業生を送り出すことになり、既に卒業生を送り出している学校では、大学進学に実績を上げていると聞いています。
 ぜひ、この機会に、来年度は学校の取り組みをしっかりと検証していただきたいと要望をいたします。
 そこで、私は、将来的には、足立区にある都立江北高校を中高一貫教育校へ改編して、地域の子供たちの新しい進学の拠点としたいとの強い思いがありますが、まずは、学校の実績をさらに向上させていくことが肝要と考えます。
 江北高校は、地域に根差した文武両道の伝統校であり、都教育委員会指定の進学指導推進校として、生徒の進学希望の実現に全力で取り組んでおります。
 地域の子供たちが将来の夢を持って成長できるよう、江北高校を地域を代表する進学校として一層推進する必要があると考えますが、都教育委員会の見解をお伺いいたします。
 次に、東京都江戸東京博物館のさらなる活用についてお伺いをいたします。
 私は、東京の文化の根底は江戸文化にあると考えています。
 江戸東京博物館は、国内有数の専門博物館として、年間およそ百万人もの観覧者が訪れ、にぎわいを見せております。本年三月には、開館から二十二年を経て、常設展示室がリニューアルオープンし、展示内容をさらに充実させました。加えて、スマートフォンに対応したホームページを開設するなど、広報活動も積極的に展開し、好評を博していると聞いております。
 二〇二〇年東京五輪パラリンピック大会に向け、江戸東京博物館は、東京の歴史と伝統文化の発信や観光振興の拠点として、より一層その役割が期待されます。
 今後、さらなる利用促進を図るためにも、博物館の展示企画などを進化させていくとともに、都民、都外にお住いの方、訪日外国人という三つのターゲットごとに、広報活動を行うことが必要であると考えます。
 中でも、今後ますます増加が見込まれる訪日外国人に対しては、多種多様なニーズに合わせ、きめ細かなPRを実施するなど、これまで以上の取り組みを行うことが重要です。
 そこで、今後、訪日外国人向けの方策をどのように進めていくのか、見解をお伺いいたします。
 次に、都民への広報活動について伺います。
 江戸東京博物館は、江戸東京の歴史と文化を学び、体感できる都民の大切な財産です。
 多くの都民が、江戸東京の歴史と文化について理解を深めるとともに、来るべき東京大会では、そのすばらしさを他国の人々に伝えられる環境をつくっていくべきと考えます。
 現在も、一部の小中学校においては、社会科見学等で訪れていることは承知しておりますが、未来を担う、より多くの子供たちには、江戸東京の歴史と文化について、体験を通して親しみを持って学んでほしいと思います。
 そこで、小中学生や高校生が歴史や文化について学ぶに当たり、江戸東京博物館の一層の活用を図っていくことが必要と考えますが、都教育委員会の見解をお伺いいたします。
 次に、常設展示室には、勝海舟に注目し、江戸が首都東京となっていく時代の大きな転換期を扱う新たな展示がなされております。
 勝海舟については、昭和六十一年二月十日に産経新聞夕刊、そして、平成四年八月十八日の読売新聞夕刊に記事が掲載されていますが、勝海舟の胸像が、この都庁内に現在も保管されております。何らかの事情で公開されていないと思いますが、まさに宝の持ち腐れです。東京の歴史文化を勉強したいと思っている都民のそばにあってこそ、東京都の貴重な財産である勝海舟の胸像が生かされます。
 そこで、ぜひこれを江戸東京博物館や都議会正面玄関で展示し、都民を初め多くの人々に公開すべきと考えます。ぜひ、都知事にも私の考えに賛同をいただき、実現していただければ幸いです。
 そして、理事者の方々が、局の垣根を取り払い、協力して都民のために英知を出すことを期待して、次の質問に移ります。
 次に、下水道の浸水対策についてお伺いをいたします。
 さきの関東・東北豪雨に対して、心よりご冥福をお祈りするとともにお見舞いを申し上げます。
 また、ことしも各地で豪雨がありました。浸水被害が多数発生しています。
 下水道局では、時間五十ミリを超える降雨についても、浸水被害を軽減するため、従来から実施している大規模地下街周辺に加え、平成二十五年度の豪雨を受け、豪雨対策下水道緊急プランを策定し、市街地でも時間七十五ミリ降雨の対策に踏み出すこととしました。
 しかしながら、浸水対策施設は、大規模、大深度となり、整備には多大な時間を要することから、我が党は、さきの第二回定例会の代表質問において、今後の整備の進め方について質問をいたしました。その際、設計や施工で工夫し、整備効果を早期に発揮させるとの答弁でしたが、そのためには、まず一日も早く工事に着手することが必要だと考えます。
 そこで、時間七十五ミリ降雨の浸水対策の取り組み状況についてお伺いをいたします。
 次に、自転車利用者の損害賠償保険への加入についてお伺いをいたします。
 自転車は、子供から高齢者まで、多くの人々が手軽に利用できる便利な乗り物です。しかし、その手軽さ、便利さの裏には、さまざまな危険が潜んでおります。
 記憶に新しいところでは、自転車が歩行者と衝突、歩行者は意識が戻らない状態となってしまい、自転車側に一億円近い損害賠償を命じられた神戸市での事故です。
 こうしたこともあり、兵庫県では、来月から、自転車を利用する場合に損害賠償保険に加入することが義務化されます。
 義務化とはいえ、保険未加入者への罰則は設けられていません。そのため、実質的には、都条例と同様の努力義務ですが、これを契機として、保険加入に関する社会的な関心も高まっております。
 自転車に関する交通事故は、都内でも数多く発生しています。私の地元、足立区においても、交通事故の約四割は自転車が関連する事故という状況です。自転車利用者は、事故の被害者になるだけではなく、加害者にもなる可能性があります。事故を起こさないためには、交通ルールやマナーを遵守することが第一ですが、万が一の事故に備え、保険に加入をし、安全に対してみずから考えることは非常に重要です。
 また、自転車の活用推進という観点から、自転車シェアリングの取り組みが進められており、外国人を含めた観光客による利用は、今後ますます増加するものと見込まれます。
 観光客も含めた自転車利用者が、万が一、加害者となってしまった場合に備えた損害賠償保険の普及促進について、都の見解をお伺いしまして、私、ほっち易隆の質問を終わりにさせていただきます。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) ほっち易隆議員の一般質問にお答えいたします。
 日本人が受け継いできた伝統や価値を子供たちに継承させていくことについてでございますが、私自身の経験から申し上げましても、外国から日本を見たときに、改めて日本のよさというものを思い起こすことが多うございます。
 私は、ヨーロッパ滞在中に、外国人の柔道家が日本の柔道の精神を受け継ぎ、きちんと礼をしている姿を見て、日本のすばらしさを感じることができました。
 また、東日本大震災の際に、日本人は実に秩序正しく行動し、泥棒する人がいない、行列もきちんと守ると、海外から高く評価されたことによりまして、私たち日本人は、みずからの行動規範について改めて認識することとなりました。
 二〇二〇年大会は、こうした日本文化の価値を最大限に引き出し、東京を訪れる外国のお客様に最高のおもてなしを提供し、日本のよさを世界に発信する絶好の機会であります。
 この大会を契機に、子供たちが、我が国と世界の国々の歴史、文化などを学び交流することを通して、日本のよさについて自覚し、すばらしい伝統と文化をしっかりと受け継ぎ、グローバル社会で活躍できるように育成してまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、家庭、地域と連携した道徳教育についてでありますが、児童生徒に、人間として踏まえるべき倫理観や道徳性を確実に育んでいくためには、議員ご指摘のとおり、学校、家庭、地域社会がそれぞれの役割と責任を自覚し、相互に連携協力することが不可欠でございます。
 そのため、都教育委員会は、各小中学校が道徳の授業を公開し、保護者、地域関係者とともに意見交換を行う道徳授業地区公開講座の開催や、家庭でも活用できる都独自の教材集の配布などの取り組みを行っております。
 今後、これらに加え、区市町村教育委員会と連携し、道徳の教科化を推進するための拠点校を中心として、PTAや地域の健全育成関係者の代表による協議会を開催するなど、家庭、地域社会と連携した道徳教育に関する取り組みを一層充実してまいります。
 次に、江北高校の進学推進に向けた対応についてでありますが、江北高校では、国公立大学等の進学を目指す特進クラスの設置や、大学生チューターが個別指導を行う自主学習室の開設、学力達成目標を明確にした授業計画の策定など、生徒の進路希望の実現に向けて組織的な進学指導に取り組んでおり、大学進学実績も向上しております。
 さらに、都教育委員会は、江北高校に対し、昨年度、予備校による分析、提案を通じて英語科の進学指導体制の改善を図るとともに、本年十一月には、授業の改善に向けた外部機関による評価について積極的に支援を行い、学校全体の指導力の強化を図っていくこととしております。
 今後も、国公立大学や難関私立大学への進学希望をかなえることができる、地域に誇れる進学校を目指し、江北高校を支援してまいります。
 最後に、学校教育での江戸東京博物館の活用についてでありますが、教室の中で、教科書や資料集等から知識を学ぶことに加え、実際に展示を見たり、学芸員の説明を聞いたりする体験は、児童生徒にとって学習への関心を高め、内容を理解し、思考力や想像力を培う上で有効であります。
 とりわけ、江戸東京博物館では、児童生徒が再現された江戸のまち並みを歩き、かごや人力車など昔の乗り物を体験する活動や、明治から昭和にかけての生活の様子を展示から学ぶ調査活動等を通して、江戸や東京の歴史や文化についての学習を深めております。
 今後とも、都教育委員会は、関係部署や区市町村教育委員会と連携し、教科等の指導における体験学習がより一層充実するよう、江戸東京博物館の積極的な活用について、各学校や研究団体に働きかけてまいります。
〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 江戸東京博物館における、訪日外国人の来館者数をふやしていく方策についてですが、二〇二〇年に向け、江戸東京博物館が、外国の方にも、江戸東京の歴史や文化を理解していただく場となり、観光スポットとしても注目されるようになることが重要でございます。
 そのため、江戸時代の暮らしを目で見て実感できる実物大のすし屋屋台などの模型を新たに展示したり、多言語の展示解説タッチパネルを導入するなどの充実を図ってまいりました。
 今年度は、特に外国人を対象として、来館のきっかけやサービスへの評価等を伺うモニター調査を行い、この結果をもとに、サービス改善や、より効果的な広報媒体の活用など、さらなる集客につながる取り組みを実施してまいります。
 こうしたことにより、首都東京を代表する博物館として、国内外にその魅力を積極的にアピールしてまいります。
〔下水道局長石原清次君登壇〕

○下水道局長(石原清次君) 時間七十五ミリ降雨の浸水対策の取り組み状況についてでございますが、市街地では、対象の四地区全てにおきまして、工事の着手に当たり課題となるシールド工事の立て坑用地確保に向けた地元区との協議や設計等を精力的に進めております。
 その結果、四地区のうち初めて、世田谷区弦巻地区で今年度工事着手の見込みとなりました。残る地区におきましても、早期の工事着手を目指すとともに、一部完成した施設を暫定的に稼働させ、オリンピック・パラリンピック前の二〇一九年度までに効果を発揮いたします。
 一方、地下街を対象とした九地区では、既に四地区で事業が完了し、現在、二地区の工事を鋭意進めており、残る三地区につきましても、今年度中の工事着手を目指します。
 今後とも、時間七十五ミリ降雨の浸水対策を積極的に進め、都民の安全・安心を確保してまいります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) 自転車利用者の損害賠償保険についてでございますが、都内の交通事故における自転車関与率は高く、また、高額賠償事例も発生していることから、ご指摘のとおり、事故への備えとして損害賠償保険の普及が必要であると考えております。
 このため、都は、条例で保険加入の努力義務を定め、区市町村や学校等と連携したリーフレットの配布などの取り組みに加え、セミナーの開催や研修用教材の提供などによる企業等を通じた働く世代への啓発も行っております。
 また、外国人など、観光客の利用増加も見込まれる自転車シェアリングについては、条例を踏まえ、既に各区の運営事業者が損害賠償保険に加入し、対応しているところであります。
 今後とも、都として、自転車販売業者の協力を得て、利用者への啓発を行うなど、関係機関等との連携を深め、より一層、保険加入促進の取り組みを行ってまいります。

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