平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○議長(高島なおき君) 三十九番高倉良生君。
〔三十九番高倉良生君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○三十九番(高倉良生君) 初めに、防災対策について質問いたします。
 防災の日の九月一日、東京港で自衛隊の護衛艦「いずも」など、船を活用した海からの医療支援の訓練が実施されました。首都直下地震を想定し、治療が必要な被災者を羽田空港から広域搬送する際、緊急手術などが必要な重傷患者を「いずも」に搬送し、治療する訓練であります。
 国においては、自民、公明の国会議員でつくる議員連盟が、いわゆる病院船の実現に取り組んでおり、そのための実証訓練が一昨年は三重県尾鷲沖で行われ、昨年は都も全面協力して東京港で実施されました。今回の訓練は、それに続くものであります。
 当日、私は、羽田空港や「いずも」での訓練の様子を見ましたが、広く海に面した東京において、医療設備を搭載した船が海からの医療支援を行っていくことは、大変有効であると改めて実感いたしました。
 こうした医療支援に力を注いでいる姿を示すことは、二〇二〇年に向けて、安全・安心に全力で取り組む東京の姿を世界に大きくアピールすることにつながります。
 ことしの訓練でも、都の関係局から多くの職員が訓練に参加していますが、船を活用した東京での二度にわたる訓練を踏まえ、海からの医療支援について、知事の所見を伺います。
 次に、空からの対策についてであります。
 最近、遠隔操作や自動飛行できるドローンと呼ばれる無人機が話題になっています。小回りがきくことから、カメラを搭載し、映画撮影を初め、空撮によく使われています。
 先日、ドローンの有効活用を研究している千葉県の国際医療福祉専門学校の小澤貴裕氏と意見交換してきました。スマートフォンから緊急電話をかけてきた現場の位置情報をたどってドローンを飛ばし、搭載したカメラ画像を見ながら正確にAEDを運ぶなど、注目すべき取り組みを進めていました。
 私は、ドローンをうまく活用すれば、災害時の情報収集、救命救急のほか、平常時には危険箇所の詳細な調査などに有効なツールになると考えています。
 先般、豪雨で甚大な被害が発生した茨城県常総市の被災現場でも、国土地理院がドローンを飛ばし情報収集をしておりました。災害時には、あらゆる手段を講じ、情報を素早く正確に把握することが何より重要であります。
 都は、災害発生に対して万全な準備に取り組んできていると思いますが、災害時の情報収集の重要性とドローン活用の今後の可能性について見解を伺います。
 次いで、空き家対策について質問します。
 都内の空き家は八十二万戸に上り、そのうち長期不在などの空き家は十五万戸ともいわれています。適切な管理が行われていない空き家は、防災、衛生、景観など、さまざまな面で地域の生活環境に大きな影響を与えており、的確な対策が望まれております。
 ことし五月、空家等対策の推進に関する特別措置法が全面施行され、区市町村は、空き家の調査、データベースの整備、対策計画の策定などに取り組むこととされました。また、倒壊のおそれがあるなどの特定空き家については、立入調査や撤去、修繕の指導、勧告、命令ができるようになりました。
 都内の区市町村を見ると、取り組みが進んでいる自治体がある一方、そうでないところも見られ、対応にはばらつきがあります。
 特別措置法において、都は区市町村に対し、技術的な助言や相互の連絡調整など必要な支援を行うこととされていますが、現在の区市町村の空き家に対する取り組み状況と都の対応について伺います。
 空き家は、戸建てなどの形態や築年数などが異なり、個々の空き家の状況や所有者の意向を踏まえた対応が必要であります。また、中古住宅としての空き家の流通や跡地を含めた利活用、管理不全の予防などを進めていくには、専門的な助言が欠かせません。
 そのためには、土地家屋調査士、宅地建物取引士、弁護士、税理士、司法書士、建築士など専門家との十分な協力体制のもと、都や区市町村に空き家所有者の相談窓口を設置するなど相談体制を構築すべきと考えますが、見解を求めます。
 次いで、伝統芸能についてであります。
 演芸番組「笑点」のレギュラーとして活躍し、一、二、三、チャラーンの挨拶で広く愛されてきた落語家林家こん平師匠をご存じと思います。十一年前、テレビ出演の後、倒れ、難病の多発性硬化症を発症、手足が麻痺し、はなし家の命である声も出せなくなりました。こん平師匠は、さまざまな運動や声を出す練習、さらには卓球にも挑戦しながらリハビリを続けております。そして、厳しい状況の中で、笑いがもたらす無限の可能性を信じ、昨年八月から都電荒川線を借り切って都電落語会をスタートさせました。
 先月、都電落語会一周年の記念イベントが開催をされ、翌日、こん平師匠は、二十四時間テレビ番組の「笑点」の舞台にも出演、正座することが困難な中、座布団に座り、声を振り絞る姿が大きな感動を呼びました。要介護度も四から三になり、さらに二を目指しながら、芸歴六十周年に当たる二〇二〇年のパラリンピックの大成功を目標に、多くの障害者に勇気と希望を与えていこうと奮闘しています。
 都電荒川線に乗って江戸落語を味わう粋な試みは、難病と闘う、こん平師匠の姿と相まって大きな注目を集めております。マスコミにも大きく取り上げられたことから都電の注目度が上がり、利用増にもつながっていると思います。
 これを機に、都電の魅力をより一層アピールする取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 落語は、江戸時代から庶民生活の中で、歯切れのいいリズムで、おもしろおかしく、相手への配慮も見せながら、話術で伝える世界に誇れる日本の伝統文化であります。具体的な内容をわかりやすく人々に伝えられる落語は、すぐれた情報伝達の手法といえます。この特質を生かし、さまざまな啓発活動に協力していただいてはどうかと思います。
 最近、巧妙な手口で高齢者などがだまされる被害報道をたびたび目にいたします。被害に遭われた方々が手口を知っていれば、トラブルを避けられたはずであります。落語や漫才などのわざを消費者被害防止の啓発に生かしていくなら、消費者自身が知恵をつけ、自分自身や家族、親しい人を守れるようになると思います。
 都は、消費者被害の未然防止のために、いろいろな普及啓発を行っていますが、さらに楽しくわかりやすい取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 次いで、動物との共生について質問します。
 この夏、都の動物愛護相談センターでの動物をテーマにしたサマースクールや、上野動物園、井の頭自然文化園で開催された動物の新たな飼い主探しを紹介するイベントに参加しました。都議会公明党が、ことしの第二回定例会で取り上げたものであります。
 夏休み中の小中学生が親と参加したサマースクールでは、保護された犬猫などの飼い主探しについて詳しく紹介されたほか、子供たちが犬に直接触れながら、その生態や接し方、しつけ方などを楽しく学んでいました。
 上野動物園や井の頭自然文化園でのイベントでは、動物愛護相談センターの仕事や動物の飼い主探しを紹介するパネルが展示される一方、犬猫に関する相談コーナーも開設され、親子連れなど多くの方々が訪れていました。
 このようなイベントは、都として初めてのものであり、都民へのよい啓発の機会になったと感じております。こうした取り組みなどを活用して、さらに飼い主探しの拡大を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 都内の自治体において、公共施設を活用してボランティア団体が開催した飼い主探しを見たことがあります。丁寧な運営で、動物の鳴き声、におい、汚れの心配もありませんでした。ボランティア団体などと連携した飼い主探しや、地域における動物愛護施策に積極的に取り組む区市町村に対し、都として支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 都内でも、犬猫など動物を飼育する人は多くおります。私のもとには、動物に関する相談がしばしば寄せられているところです。どこに相談していいかわからないという都民も多いと感じております。動物に関する総合相談窓口である動物愛護相談センターをもっとPRすべきと思いますが、都の取り組みを伺います。
 最後に、自然公園について伺います。
 私は、平成二十一年の第四回定例会で、高尾山のトイレの混雑解消に向けた取り組みについて質問しました。それを受け、山頂付近のトイレが、大きなリュックを背負った女性や子供連れにも利用しやすいようリニューアルされました。そのトイレが、今年度、国が創設した日本トイレ大賞を受賞いたしました。
 私は、日本山岳会に長きにわたり所属しており、山歩きによく出かけます。東京には、高尾山同様、観光スポットとしても人気の高い御岳山や日本百名山にも位置づけられている雲取山など、すばらしい山々が自然公園の中にあり、都心からも時間をかけず気軽に行くことができます。
 山登りを楽しむ方々と話していると、いまだトイレへの不満が多いと感じます。リニューアルされた高尾山のトイレは非常に好評ですが、その他の山のトイレについては、和式であったり、古く、においもひどかったりと、楽しい山登りの気分が台なしになるという声をよく聞きます。
 先日、トイレ機器メーカーを見学した際、外国人旅行者が日本を訪れたときの一番のネックはトイレであるにもかかわらず、東京には洋式化など改善が必要なトイレが多いと説明を受け、強く共感を覚えました。
 私は、トイレは洋の東西を問わず大切なものであり、その都市の文化の成熟度をあらわすものでもあると思います。最近は、高尾山に限らず、東京の山を訪れる外国人旅行者もふえています。
 今後、都は、おもてなしの観点からも、そして、東京の子供たちや年配の方々、女性がより利用しやすい環境を整える観点からも、自然公園のトイレ改善に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺いまして、質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 高倉良生議員の一般質問にお答えいたします。
 災害時における海からの医療支援についてでございますが、首都直下地震等発生時には、病院の被災やライフラインの途絶などにより、都内の医療機能が低下する可能性がございます。
 国が病院船により海からの医療支援を行うことは、医療関係者の確保や負傷者の搬送などの課題はあるものの、都内の医療活動を補完する役割が期待できます。
 そのため、都は、国が実施します医療資機材を搭載した民間フェリーを用いた訓練や医療機能を有する護衛艦を用いた訓練に、昨年度から医療スタッフ等を派遣するなど、船舶を活用した医療機能の実証訓練に積極的に協力してまいりました。
 今後、国が行う訓練の検証を待って、病院船を活用した医療支援の取り組みについて、その動向を見据え適切に対応してまいります。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔東京都技監安井順一君登壇〕

○東京都技監(安井順一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、空き家に関する取り組みについてでございますが、長期間使われていない空き家の増加は、地域の生活環境の悪化や活力の衰退などにつながることから、その有効活用などを含め、適正な対策を進めていく必要がございます。
 都は今年度から、区市町村が行う実態調査や高齢者等への賃貸を要件とした改修助成、空家等対策特別措置法に基づく対策計画の作成への財政支援を開始いたしました。
 現在では、法施行以前からの取り組みを含め、実態調査は三十二自治体、改修助成は五自治体で実施され、対策計画の作成を検討する動きも出てございます。
 引き続き、連絡調整の場などを通じて、都の支援制度の活用を促すとともに、円滑な調査の実施等に向けた技術的助言を行うなど、空き家対策に取り組んでまいります。
 次に、空き家に関する相談体制についてでございますが、空家等対策特別措置法では、区市町村が空き家所有者などからの相談に応ずる体制を整備することとされておりますが、相談窓口の設置は四自治体にとどまっております。
 また、空き家の所有者の抱える課題は、維持管理にとどまらず、相続や売買、賃貸など多岐にわたることから、相談体制の整備に当たっては各分野の専門家を活用することも有効でございます。
 都としては、今後こうした専門家の協力を得ながら、区市町村が空き家に関する相談窓口を開設するよう促してまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 災害時の情報収集についてでございます。
 大規模災害時に緊急性の高い救出救助活動を円滑に実施するためには、正確な被害状況を迅速に把握することが重要でございます。
 そのため、都では、発災直後から、都庁屋上に設置された高所カメラや警視庁、東京消防庁等のヘリコプターからの映像などを活用して俯瞰的な被害状況を確認するとともに、都職員を区市町村の庁舎に派遣し、被害情報等を直接入手することとしております。
 ご提案のドローンの活用について、都といたしましては、さまざまな機関での実用化に向けた取り組みを注視しつつ、今後とも、こうした先進機器の活用も視野に、災害時の情報収集に万全を期してまいります。
〔交通局長塩見清仁君登壇〕

○交通局長(塩見清仁君) 都電の魅力をアピールする取り組みについてでございますが、荒川線は、東京に残った唯一の都電であり、地域の足としての役割を果たしておりますが、新たな利用客を獲得するためには、その魅力を広く発信することが重要でございます。
 このため、交通局では、これまでもお話にありました貸切電車による都電落語会などの話題づくりや広報誌の発行、沿線四区と連携したイベントの実施、都電マスコット、とあらんの活用などを通じて、荒川線の魅力向上に取り組んでまいりました。
 こうした中、本年五月には、世界最大級の旅行者向け口コミサイトで、評価の高い観光施設として認証されました。さらに先般、魅力ある新型車両を導入したところでございまして、今後とも、SNSの活用や外国語の案内冊子の発行などにより、荒川線の魅力を国内外へ積極的に発信することで、より多くの新たな利用客を獲得してまいります。
〔生活文化局長多羅尾光睦君登壇〕

○生活文化局長(多羅尾光睦君) 消費者被害防止の普及啓発についてですが、消費者被害を未然に防止するには、悪質事業者の手口等を消費者に親しみやすい方法でわかりやすく伝えることが重要でございます。特に、被害に遭いやすい高齢者や若者向けに、お話の落語等を活用することは効果的でございます。
 そのため、都は、悪質商法を題材に、若手落語家や大学の落語研究会に新作の制作を依頼し、町会や自治会、老人会等の集まりで出前寄席を実施しております。
 本年度も、新作落語を発表するとともに、さらに、若者向けには、新たに、若手芸人や学生芸人による啓発イベントを大学祭において開催いたします。
 今後とも、都は、消費者に親しみやすい方法で、悪質事業者の最新の手口や対処法を盛り込むなど、工夫を凝らした普及啓発を行い、被害防止に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、犬や猫の譲渡拡大に向けた取り組みについてでありますが、都は、より多くの都民に命の大切さを理解してもらい、保護動物の譲渡をさらに進めるため、今年度初めて、都やボランティア団体の譲渡活動を紹介するイベントを七月と八月に開催し、多くの方に参加していただきました。
 また、来月には、二つの都立公園の場におきましても、同様のイベントを開催することとしております。
 都は現在、飼育経験が豊富で実績のある四十九のボランティア団体等と連携して、譲渡活動を進めるとともに、保護された犬、猫の飼い主になる方法を紹介するパンフレットを区市町村や関係団体に配布するなど、譲渡に関する都民の理解促進を図っております。
 今後とも、さまざまな方法を活用して普及啓発を進め、保護された犬や猫の譲渡拡大に取り組んでまいります。
 次に、動物愛護施策に取り組む区市町村への支援についてでありますが、動物愛護施策を着実に推進していくためには、地域に根差した取り組みが重要でございます。
 都は現在、猫に関する苦情や致死処分数を減少させるため、地域の特性と実情に応じて、飼い主のいない猫対策に関する町内会やボランティア等との会議の開催や、不妊去勢手術の実施などの取り組みを進める区市町村を包括補助により支援しております。
 また、飼育が困難になった飼い主への助言や新しい飼い主探し等を区市町村と連携して行っている約三百名の動物愛護推進員の活動を支援しております。
 今後とも、動物愛護推進員やボランティアなどと連携して、動物愛護施策に取り組む区市町村を支援してまいります。
 最後に、多くの方に動物愛護相談センターを知っていただく取り組みについてでありますが、都はこれまで、ホームページでセンターの取り組みを紹介するほか、イベントや区市町村の窓口等で配布する、動物の適正飼養、終生飼養など、動物愛護に関する普及啓発パンフレット等にセンターの案内を掲載し、周知に努めてまいりました。
 また、今年度新たに作成する高齢者向けのパンフレットには、飼育困難時の家族等への協力依頼などに加え、センターを初めとする相談窓口の案内を盛り込むこととしております。
 今後とも、動物に関する総合相談窓口であるセンターの事業内容等の情報提供に努め、動物愛護の取り組みを一層推進してまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 自然公園のトイレについてでございますが、東京には高尾山や御岳山あるいは伊豆諸島や小笠原の島々など、豊かな自然が広がっており、その多くが自然公園に指定されております。
 近年、外国人観光客など、利用者の多様化が進む中、トイレや休憩所などの施設を充実させることは極めて重要でございます。
 自然環境を守るため、立地条件や技術的条件などに一定の制約はございますが、今回の日本トイレ大賞の受賞を機に、高尾山だけでなく、ほかのエリアにおいても、誰もが快適で使いやすいトイレの整備をさらに積極的に推進してまいります。
 こうした取り組みにより、国内外からの多くの来訪者が東京の自然環境の豊かさを堪能できるよう、安全で快適な自然公園の環境整備に努めてまいります。

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