平成二十七年東京都議会会議録第十三号

○議長(高島なおき君) 七十一番鈴木隆道君。
〔七十一番鈴木隆道君登壇〕

○七十一番(鈴木隆道君) 私から、都市外交、都市交流についてお伺いをいたします。
 オリンピック・パラリンピックは、政治、宗教、国境を越え、若人が集まる平和の祭典であります。このことは、オリンピック・パラリンピックが目指す最高の理念でもあります。
 東京都民のみならず、日本中、そして世界中が、その平和の祭典、二〇二〇年東京大会を待ち望んでおります。大会開催まで、余すところ五年を切りました。しかし、新国立競技場の建設や大会エンブレムが白紙撤回となったことから、東京大会は国民の信頼を失い、さらには国際的な信用も失いつつあるとの厳しい指摘も聞こえてまいります。そうした状況となった今、私たち日本人は、改めて初心に返ることが必要ではないでしょうか。
 思い起こせば六年前の十月、我々は、コペンハーゲンの地で、大変残念ながら二〇一六年大会招致に敗れ、涙をのみました。その失敗に学び、次こそは何としても東京招致をかち取ろうという強い意思を持って結束をいたしました。再度の挑戦に向け、国内外の人脈を駆使し、オールジャパンで、でき得る限りの努力をもって招致に邁進したのであります。
 そして、二年前の九月七日、ブエノスアイレスで東京大会開催が決定をした瞬間、日本全体が歓喜の渦に巻き込まれたと承知をしています。我々都議会議員も、多くが現地を訪れ、あの熱狂を肌で感じてまいりました。
 しかし、考えてみれば、東京大会の招致成功は、東京の、また日本の努力だけでなし得たものではありません。IOC委員を擁する多くの諸外国、諸都市の理解があったからこそだと私は信じています。
 とりわけ、ASEANを初めとするアジア諸国、諸都市が一つになり、応援をしていただいたことが、その結果を導いたといっても過言ではありません。
 私自身も、招致活動の渦中で、中東を含み、開催に影響力を持つアジア諸国の日本を支持してくれた方々の声を生で聞いてまいりました。こうした声は、東京に対する期待をあらわしたものであります。
 単に、大会開催の波及効果や東京の経済力だけではない、東京が有する都市問題解決への力、あるいはこれまでのさまざまな協力への高い評価、そして今後の協力や相互発展を通じたリーダーシップへの東京都に対する期待であると私は思っております。そうした諸都市の期待と支援を受けたこの東京大会は、アジア諸都市が連携をして開催するアジアのオリンピック・パラリンピックであるといっても過言ではない、いや、そうあるべきでありましょう。我々東京都は、そうした諸都市の期待に応える責任があります。
 そうした諸都市の思いを前に、この間の開催準備をめぐるさまざまな問題、そしてその対応に追われる姿を目にすると、我々日本人は、アジア諸国、また世界の国々から受けた応援、支援が東京開催につながる大きな力であったことを忘れてしまったのではないかと思うのであります。
 感謝の心や謙虚さ、思いやり、そしてあえていえば、ありがとうの心といった、日本人が持つ美徳というものが失われつつあるのではと、正直、私は心配をしています。本当のおもてなしの心とは何なのかと考えざるを得ないところであります。
 東京が世界に対して何ができるのか、どういう貢献をしていくのか、一人一人が日本人として考え、行動をしていく、その姿勢を示していくことが何よりも重要であると考えます。
 その一つとして、目前に迫ったリオデジャネイロ・オリンピックへの協力があると思います。東京は、リオ大会から多くのことを学ぶことになります。そのリオ大会を東京も一緒になって盛り上げ、成功に導くことが次回開催都市としての東京の責務であります。そうしてこそ、東京大会に対する国際社会の支持も確固としたものとなるのであります。
 そこで、リオ大会に向けた知事の所見を伺います。
 次に、在京大使館との連携について伺います。
 国際社会、とりわけアジアのリーダーたる日本、東京はその首都として、アジア諸都市の期待に応え、信頼と尊敬を得ることが何より肝要であると考えます。
 幸い首都である東京には、アジア諸国を初めとした大使館や領事館が数多く点在をしております。そうした大使館に対し情報を発信し、また多くの声を聞くことで、お互いに有益な交流が可能となると考えます。それが、東京大会の成功だけではなく、双方の未来に向けた連携につながり、そして大使館側もそれを望んでいます。
 九月二十六日には、ASEAN十カ国の大使が主催する会に高島議長、ともに都議会自民党も招かれ、交流をして、さまざまな意見交換を行ってまいりました。
 知事が掲げる都市外交、そして、これまで都が積み上げてきたアジア諸都市との国際交流を発展、進化させるためにも、大使館等と具体的なニーズに基づいた施策を展開していくことが必要だと考えます。
 今後の在京大使館との連携の強化について伺います。
 次に、教育機関における国際交流について伺います。
 まず、首都大学東京の取り組みについてであります。
 海外諸都市、特にアジアでは大学教育に非常に強い関心を抱いており、その充実が国の発展に一番必要であると考えているとのことであります。だからこそ、都立の大学である首都大学東京における国際協力の取り組みを数段進化させる必要を感じます。首都大学東京では、昨年度まで、アジア人材育成基金を活用し、アジア諸都市から多くの留学生を受け入れてきたと聞いています。
 今後、アジア諸都市のニーズも踏まえて、留学生の受け入れや首都大学東京の持つ技術の提供など、アジア諸都市発展のための協力をさらに進めていくべきであり、都市外交においても、東京都の首都大学東京だからこそ果たすべき重要な役割があると考えますが、所見を伺います。
 次に、都立高校における国際交流についてであります。
 さまざまな分野で国際協力を推進するためには、国際社会の一員としての自覚や行動力を持ち、世界で活躍できる若者を育成することが不可欠であります。そのためには、若いうちから海外の学校の生徒との交流を体験させることが重要であります。
 具体的には、海外の高校とのマッチングで相互交流をしていくこと、お互いの文化を紹介したり、共通のテーマについて意見交換を行うこと、そうした活動を通して語学力と豊かな国際感覚を身につけるようにすることであります。
 このように、生徒相互の国際交流というものは、国際都市東京の将来にとって不可欠であると考えます。公立、私立を問わず、多くの高校生に国際交流の機会があるべきでありますが、都立で国際交流を推進することで、私立高校でも交流が促進されることが期待できます。
 そこで、今後の都立高校における国際交流について、都教育委員会の見解を伺います。
 あえて申し上げれば、全高校生が三年間のうちに海外体験ができるようなことを考えられれば、すばらしいことだなと思います。
 ところで、都市外交や各局の国際業務を推進するには、そうした業務を担う人材の育成が不可欠であります。経済交流にしろ文化交流にしろ、都市外交では、相手を知り、その知見を基本に戦略を立てることが肝要であります。
 そのためには、百聞は一見にしかず、行動に移すことが重要であります。議会も都職員も、相手の国を知るために幅広く人材交流を進めることが必要だと考えます。
 都庁では、今後、国際業務の増加に伴い、これまで以上に語学の重要性も高まります。仕事と語学の双方にたけた職員が、都市外交にとって必要となってまいります。
 こうした状況の中、都は今年度、これまでの取り組みに加え、都庁国際化リーダー育成研修を開始いたしました。今後五年間で千人を育成することとしており、私は、この取り組みを非常に高く評価をしています。
 論語にも、四方に使いして君命を辱めざる、これを士というという言葉があります。都職員をしっかり育て、機会を捉えて海外に派遣するなど、積極的に活用していくことを強く求めておきます。
 次に、アジア諸国との経済交流に向けた取り組みについて伺います。
 経済がグローバル化する中で、都内中小企業が最も発展を続けていくためには、特に大きな成長が見込まれるアジアに目を向けていくことが必要であります。
 オリンピック・パラリンピックの招致活動を通して、アジア諸国の方々と親しくなり、意見交換をしてまいりました。いずれの国でも、東京の中小企業との交流を望んでいます。そして、技術力の向上やビジネス拡大を図り、自国の産業をさらに活性化させたいと考えています。
 こうした声にしっかりと耳を傾け、都内中小企業がアジア諸国の企業とともに発展していけるよう、両者を結びつけ、さまざまなビジネスの交流を通して、ウイン・ウインの関係を築いていくことが一番重要なことと考えます。
 ここで大切なことは、東京大会へのアジアの国々の温かい応援に対して、感謝の気持ちを持って東京として、また我々日本人として何ができるのかを本気で考えて行動をすることであります。
 都はこれまで、経営面や技術面はもとより、金融支援も含めて中小企業の海外展開支援に総合的に取り組んでまいりました。毎年開催している産業交流展では、アジア諸国の企業にも参加をいただいております。
 こうした都だからこそ、将来には、アジアの都市、例えばタイ国のバンコクで東京都主催の産業交流展を開催するぐらいの意気込みが必要ではないでしょうか。都内中小企業とアジア諸国の企業の交流が活発に行われるように、都は、一層精力的な取り組みを進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 改めて申します。東京大会を成功させるためには、海外各国の協力をいただかなければなりません。だからこそ我々は、東京大会を応援し、また、日本、東京都のリーダーシップに大きな期待をしている多くの国々が望んでいることを知るべきであり、そのことに積極的に応えていく責任があると考えます。
 日本人、また日本のみならず、そうした諸外国の諸都市双方との発展につながる実りの多い真の国際交流、真の都市外交こそが、東京大会後の東京のさらなる発展のかなめになると考えます。都の協力が世界からの協力につながり、相互の発展をもたらす、それが今後の東京の大きな、大きな財産となるということを申し述べます。
 また、八月の北京で開催された世界陸上に参加をしてまいりました。そこで余りにも世界の目が、東京で考えていることと違う意見を持っていることに驚きを隠せませんでした。謙虚に承ることを申し述べて、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 鈴木隆道議員の一般質問にお答えいたします。
 リオデジャネイロ大会でありますが、来年二〇一六年のリオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピックは、南米大陸で初めて開催される大会でありまして、世界中の人々がその盛り上がりを楽しみにしております。
 次回開催都市であります東京としましても、このリオ大会にできる限りの協力をし、オリンピック・パラリンピックムーブメントの発展につなげていくことが重要であります。また、リオ大会の成功によってオリンピック・パラリンピックのすばらしさが改めて認識され、次回の東京大会への期待も高まると考えております。
 このため、開催期間中、都は、組織委員会などと共同で、リオ市内にジャパンハウスを設置するとともに、東京キャラバンなどを展開して、現地との交流を深めながら、東京の多彩な文化を世界に発信していくことで、リオ大会の盛り上げに貢献してまいりたいと思っております。
 私も、リオデジャネイロに赴きまして、オリンピックとパラリンピックの閉会式で、リオ市長から受け取った旗を力強く振り、リオ大会の成果を東京に引き継ぐ姿を世界にアピールしてまいります。そして、閉会式におけるプレゼンテーションにおきまして、日本の姿を海外に発信いたします。
 今後、組織委員会や関係団体と連携を図りながら、さまざまなアイデアを結集し、二〇一六年のリオ大会、そして二〇二〇年の東京大会の成功に向けて全力を挙げてまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 都立高校における国際交流についてでございますが、高校生が教室の中で多様な文化や外国語を学ぶだけでなく、海外の生徒との交流等を直接経験することは、異文化理解の促進やコミュニケーション能力の向上に極めて有効であります。
 現在、都教育委員会は、次世代リーダー育成道場による高校生の海外留学や東京グローバル10の指定校が行う海外の高校との交流を支援する取り組み等により、都立高校における国際交流を推進しております。
 今後は、こうした取り組みに加え、海外の自治体と相互交流を目的とした協定を結ぶなどして、姉妹校提携や留学生の交換、短期語学研修等をより活発に行える環境を整備し、都立高校の国際交流を一層推進してまいります。
〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

○政策企画局長(川澄俊文君) 在京大使館等との連携強化についてでございますが、ご指摘のとおり、都が積み上げてきた都市外交をさらに発展させるには、在京大使館等との関係を強化し、相互の信頼をより深めていくことが重要でございます。
 そのため、知事は就任以来、多くの表敬訪問を受け、大使等と積極的に交流を行っております。また、こうした機会に加え、都政説明や施設の視察などを通じ、個別のニーズにもきめ細かく対応しているところでございます。
 本年七月には、大使館等の防災責任者を対象に、防災連絡会を初めて実施し、参加者からは、有意義な情報が得られた、引き続き東京都と協力していきたいとの声が寄せられております。
 今後とも、大使館等と緊密な連携を進め、さらなる信頼関係を構築し、海外諸都市との交流を発展させてまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 首都大学東京における国際協力についてでございますが、教育研究活動の成果を生かし、アジア諸都市など広く国際社会に貢献していくことは、重要な取り組みでございます。
 これまで、アジア人材育成基金を活用し、水問題など大都市共通の課題についての研究やアジアからの優秀な留学生の受け入れを進めてまいりました。
 さらに昨年度からは、理学療法、作業療法などに関する高度な技術を習得させる事業に着手し、今年度は教員をインドネシアなどに派遣して医療技術に関する講義や実技指導を行うとともに、平成二十九年度からのこの分野の留学生受け入れに向けた準備も進めております。
 今後も、首都大学東京が積極的に国際協力を進め、東京のプレゼンス向上に寄与できるよう、都市外交人材育成基金の活用など、都として一層の支援を行ってまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) アジア諸国との経済交流についてでございますが、都内中小企業とアジア諸国の企業が、ともに成長発展していくためには、企業同士の出会いの場を設けるなど、交流を促進することが重要でございます。
 このため、都は、産業交流展にアジア諸国の企業を招待するとともに、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどで開催される展示会に都内中小企業のブースを設置するなど、商談の機会を提供しております。
 また、年内には、アジアの重要拠点であるタイに中小企業振興公社の現地支援拠点を開設し、販売代理店の紹介など現地でのビジネスを支援してまいります。
 今後は、都内中小企業と現地企業との交流促進に向け、この拠点を足がかりに展示会のさらなる活用など、取り組みの強化について検討してまいります。

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