午後一時開議
○議長(高島なおき君) これより本日の会議を開きます。
○議長(高島なおき君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。
○議長(高島なおき君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。
○議事部長(新美大作君) 知事より、地方自治法第二百四十一条第五項の規定により、平成二十六年度東京都区市町村振興基金及び東京都用品調達基金の運用状況に関する調書等の提出がそれぞれありました。
(別冊参照)
○議長(高島なおき君) 次に、日程の追加について申し上げます。
知事より、平成二十六年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について外一件が提出されました。
これらを本日の日程に追加いたします。
○議長(高島なおき君) これより質問に入ります。
百十三番宇田川聡史君。
〔百十三番宇田川聡史君登壇〕
○百十三番(宇田川聡史君) 平成二十七年第三回定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
初めに、先般発生した調布飛行場付近における航空機墜落事故によって亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。
現在、国土交通省及び警視庁が事故原因等について調査中でありますが、こうした事故を繰り返すことのないよう、一層の安全対策を求めてまいります。
冒頭に、知事と議会との関係について、あえて申し上げさせていただきます。
地方自治体の長と議員は、住民に直接選挙で選ばれ、ともに有権者を代表し、互いに独立、対等の関係にあり、それゆえに二元代表制と呼ばれています。
議会は、首長及び執行機関を監視監督し、首長は議会の決定に基づいて事務事業を執行いたします。
さきのオリンピック・パラリンピック特別委員会での我が党の質疑は、知事がこの議会との関係をどのように認識されているのかをただすというものでありました。
この数カ月間、新国立競技場整備計画の白紙撤回やエンブレム使用中止に関する知事の発言や行動は、一評論家もしくは市井の一学者の批判に終始し、残念ながら、都知事の発言、行動としては不適切だったといわざるを得ません。私たちや都民が求めている姿ではなかったと思います。
そして、都知事として発言、行動する際には、冒頭申し上げた二元代表制の趣旨を踏まえ、議会と連携協力し、議会の意思を尊重していただく責任があると考えます。
もとより、都知事として幅広く情報発信をしていくことは重要であり、否定するものではありません。
しかしながら、知事のツイッターのフォロワーが都民の全てではありません。現代ビジネスの読者が全てでもありません。都民の代表は都議会であることを改めて申し上げておきます。
そして、何より重要なことは、現在、東京都が直面しているオリンピック・パラリンピックとラグビーワールドカップの二大会であり、成功を目指した取り組みは、東京都のみが単独でできることではありません。都内、区市町村はもとより、全国の自治体、日本政府、関係する団体とが、しっかりとスクラムを組まなければなし得ない大事業であります。
こうした一大イベントを成功に導くためには、時には水面下で必死にもがく、プライドを捨て、泥をかぶることもいとわず、汗をかいていくことも、知事がなすべき大きな役割だと考えます。
都知事として都の行財政運営について、さまざまな観点で検討するのは当然なことでありますが、最終的に開催都市の長として決断、発言する際には、まず都議会の意思を尊重していただくとともに、中長期的視点で都政を俯瞰し、課題を円滑に進め、処理していくという大局的な見地から対応していただくよう強く要望をいたします。
そこで改めて、二元代表制における知事の基本姿勢のあり方について所見を伺います。
さて、日本経済は、アベノミクスの着実な実施により、緩やかな回復基調が続いています。今後、こうした景気の足取りをより確かなものにするためにも、国と自治体が一丸となって、経済の好循環をさらに拡大させていかなければなりません。
こうした中、政府は、地方創生の実現に総力を挙げて取り組んでいます。自治体も活力にあふれた地域経済の構築に向けて、地方版総合戦略を策定し、国と一体となって取り組んでいくことが求められています。
地方創生の実現には、都市と地方がそれぞれの魅力を高め、みずからの強みを磨くことに加え、お互いの連携を強化することにより、ともに栄えるという共通認識が必要であります。都市と地方がともに発展することなくして、日本全体に明るい未来はありません。
いうまでもなく、昨年末に策定した長期ビジョンを都が着実に実行していくことが、世界で一番の都市東京の実現のためには、大変重要なことだと考えます。
同時に、日本全体の活性化に向け、地域間の結びつきを強化する、東京ならではの取り組みを着実に実行していく。こうした取り組みを行ってこそ、お互いの信頼感も高まるものと確信しています。
一方、地方税財政の現状を見ると、地方の財源不足という本質的な問題は、都市と地方の財源争いという問題に矮小化されています。税源の偏在是正の名のもと、東京を狙い撃ちした不合理な措置が継続的に行われており、奪われた額は一兆三千億円にも達しています。
経済活性化と地方の自立を目指す地方創生の実現のためには、不合理な偏在是正措置の撤廃、そして地方税財源の充実が不可欠であります。我が党は、このことを国に強く訴えていく覚悟であります。
折しも、来月からは、年末の税制改正に向けた議論が本格化します。既に六月末に決定された国の骨太の方針では、税源の偏在是正を講ずることが示されています。仮に、年末の税制改正で不合理な措置の拡大が決まれば、都財政への影響は甚大であります。加えて、最近では、地方法人課税の分割基準のあり方について、同様の趣旨での見直しが行われる動きも出てきております。
こうした措置が単年度限りではなく、恒久的なものとなれば、将来にわたって財源を失うこととなり、都政にとって極めて深刻な事態となります。だからこそ、我々都議会は、いち早く、さきの第二回定例会において、偏在是正措置の撤廃に向け意見書を可決し、行動を開始したわけであります。
この問題に知事がどのように対応するのか、知事の一挙手一投足に都民は注目しております。この問題の決着いかんによっては、最悪の場合、都財政は壊滅的な打撃を受け、先人たちが塗炭の苦しみをなめながら、何とか健全化をなし遂げた今の財政が、再び危機に陥る可能性もあるわけです。
都政の最高責任者である知事には、将来に禍根を残すことのないよう、みずからの問題として強い覚悟を持って、この難局に向き合っていただきたいと思います。まさに知事の政治姿勢が問われているのではないでしょうか。
また、この問題を知事一人の力で解決することは困難であります。都内の区市町村、大都市部の他の自治体、そして東京都選出の国会議員などの力を総動員して、初めてかたい岩盤に穴をうがつことができるのであります。これらの力を総結集するためには、何よりも知事の本気度と、協力を求めともに戦う姿勢をしっかりと示す必要があります。
不合理な偏在是正措置の撤廃等に向け、知事みずからが先頭に立って汗をかき、不退転の決意で都の主張を展開していく、このことが重要だと考えますが、知事の所見と決意をお伺いいたします。
また、地方創生にかかわる東京都版総合戦略についてでありますが、地方創生では、東京一極集中の是正が殊さらに強調され、東京対地方というゆがめられた構図での議論が先行しています。しかし、それは本質を見誤った議論であります。
都は、これまでも地方の各地域と手を携え、お互いの強みを持ち寄り、お互いの活性化を図ってきましたが、今後は、さらに強固な関係を構築していくことが必要です。
東京における食料供給は、他の地域に支えられていますが、同時に、生産地にとって東京は一大消費地でもあります。こうした関係は、製造業やサービス業においても全く同じです。そもそも東京と地方は、持ちつ持たれつの関係にあるのです。
我が党はこれまで、東京が日本全体の発展に貢献するための取り組みについてさまざまな提案を行ってまいりました。東京都版総合戦略は、こうした地方創生の本質をしっかりと踏まえて策定していくべきであると考えます。知事の考えを伺います。
次に、平成二十八年度予算編成について伺います。
知事は、先般、二十八年度予算を世界一の都市の実現に向けて確実なステップアップを図る予算と位置づけ、来年度の予算編成をスタートさせました。現下の東京には、二〇二〇年大会の成功、レガシーの具現化、少子高齢化への対応、産業振興や都市インフラの推進などなど、課題が山積しています。
都は、我が党の提言を踏まえ、昨年末に長期ビジョンを策定しましたが、東京を世界で一番の都市にするためには、長期ビジョンに掲げる施策を着実に実行していかなければなりません。そのためには、平成二十八年度予算の中身が極めて重要であり、まさに知事の姿勢、実行力が問われることとなります。
そこで、平成二十八年度予算編成に係る基本方針について、知事の所見を伺います。
知事は、平成八年のローマ市以来、十九年ぶりとなるロンドン市との友好都市関係の結成について議案を提出されました。
我が党は、二〇二〇年東京大会の招致が決定した直後の平成二十五年十一月に、いち早くロンドンに調査団を派遣いたしました。東京大会を成功させ、その後も東京を発展させるためには、ロンドンの経験をしっかりと学ぶ必要があること、そのためにはロンドン市との間に永続的な友好関係を築くことが重要であるとの思いを強くいたしました。
知事も昨年ロンドン市を訪問され、我が党と思いを同じくされたことが、今回の友好都市締結の提案につながったものと考えます。
日本とイギリスの関係は古く、特に明治以降、イギリスは日本の近代化に大きな影響を与えてきました。一九〇二年には日英同盟が締結され、その後の日本外交の基礎となりました。また、先日、英国君主として歴代最長在位となられたエリザベス女王も一九七五年に来日されるなど、日本の皇室とイギリス王室は、長きにわたり親しく交流を行っています。
こうした日本とイギリスの歴史的な結びつきを考えても、両国の首都同士が友好都市としてきずなを強めることは、日英両国のさらなる発展と友好親善にも役立つものであります。ロンドンとの友好都市提携を決断した知事の思いや、その狙いについて伺います。
次に、いわゆるマイナンバー制度により社会保障、税、災害対策の手続で添付書類が削減できるなど、国民負担の軽減や行政手続の簡素化が図られるほか、所得やサービスの受給状況が把握しやすくなることで、公平公正な社会の実現が期待されております。
この十月以降、都民にマイナンバーが順次通知され、来年一月からは、個人番号カードの交付とマイナンバーの利用が開始されることとなり、制度開始は目前に迫っています。
一方で、昨今の個人情報漏えい事故等により、マイナンバー制度の安全性が不安視されているほか、民間事業者を含めた導入準備のおくれも懸念されておりますが、本制度は都民の利便性の向上に資するものであり、都としても都民に安心していただける形で円滑に導入していくことが非常に重要です。
都における導入に向けた取り組み状況について伺います。
次に、我が党の政策の柱として第一に掲げる災害に強い安全な東京をつくるについて伺います。
台風十八号による記録的な大雨により、鬼怒川の堤防が決壊するなど、北関東から東北にかけて大規模な浸水被害が発生しました。今回の災害によって亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
一昨年十月の大島町、昨年八月の広島市での集中豪雨なども記憶に新しく、数十年に一度といわれる豪雨が全国各地で頻発しておりますが、地球温暖化の進行を考えれば、今後の大水害の危機は、我々の身にも迫っていると認識する必要があります。
今回の大水害により、改めてダムや堤防整備の必要性が論じられ、治水の重要性が再確認されました。荒川や江戸川などが一たび氾濫すれば、被害は極めて広範囲に及び、生命、財産が脅かされることに加え、都市機能を初めさまざまなる社会活動が停止するおそれがあります。ゼロメートル地帯に住む私は、首都直下地震とともに、常に大きな危機感を抱いております。
だからこそ、水害対策は、ハード、ソフトともに万全の体制を整えなければなりません。首都東京における大規模水害対策の強化について、知事の所見を伺います。
東京は、今後、三十年以内に七〇%の確率でマグニチュード七クラスの地震が起こるとされており、いつ起きてもおかしくない首都直下地震の脅威にさらされています。
都民の生命と財産を守ることができる高度防災都市を実現するためには、都民生活や都市機能を支えている道路、橋梁、河川、公園などのインフラが、震災時においてもその機能を十分に発揮できなければなりません。
高度防災都市の実現に向け、これらのインフラの整備をどのように進めていくのか、都の所見を伺います。
また、都民の生命と財産を守るには、公助を担う機関の役割はもとより、都民がみずからの身を守り、お互いに助け合う、自助、共助の力が欠かせません。
今月から防災ブックが都内全世帯に配布され、各家庭における防災意識の高揚が期待されますが、これまで防災に関心の低かった都民も含め、具体的な行動につなげていくことが重要です。
特に、町会、学校、事業所など、あらゆる地域コミュニティが防災訓練を通じて顔を合わせ、地域が一体となり、自助、共助を高める取り組みを消防団を初めとする地域住民と連携しながら推進すべきと考えます。
防災ブックを活用し、各地域の自助、共助を高め、地域防災力を強化するための東京消防庁の取り組みを伺います。
先日公表された耐震化状況によると、ことし七月末時点で沿道約一万八千五百棟のうち、耐震性を有していないものが約二割存在することが明らかになりました。
特定緊急輸送道路は、震災時において救急救命活動や緊急支援物資の輸送等を担う重要な道路であります。
大地震の発生に際し、被害を最小限に抑え、迅速な復旧、復興が可能となるよう、建物所有者に対する継続的な支援などにより、改修等に至っていない建築物の耐震化を進め、早期に安全・安心な都市を実現していかなければなりません。
そこで、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に向けた今後の取り組みについて伺います。
また、公共建築物は、日常多くの都民が利用するだけではなく、災害時に応急活動の拠点や避難所等になることから、十分な安全性を確保し、東京の防災対応力を強固なものにすることが重要であります。
そのため、都は東京都耐震改修促進計画に基づき、庁舎、病院などの防災上重要な都有建築物四千八百九十六棟のうち、十分な耐震性が確保されていないもの及び耐震診断を未実施のもの計四百七十七棟について、具体的な整備プログラムを定め、計画的に耐震化を推進してきました。
この整備プログラムに基づく、防災上重要な都有建築物の耐震化の成果と今後の取り組みについて伺います。
我が党はこれまで、最も重要なライフラインの一つである水道の機能が途絶えることがないよう、さまざまな政策提言を行ってきました。しかし、首都直下地震の危機、施設の老朽化に加え、最近では火山噴火やテロ行為など、安定給水を脅かす危機要因がふえています。また、地球温暖化などから水資源への懸念は増大しており、大きな利水効果をもたらす八ッ場ダムの早期完成が待たれます。
首都東京の安定給水を確保していくために、日常的なリスク管理はもとより、五十年、百年先といった長期的展望を持って、強靱な施設づくりに取り組むべきですが、今後の基本的な考え方を伺います。
次に、政策に掲げる都民の命と健康を守る安心都市東京をつくるの観点から伺います。
まず、二〇二〇年大会の開催を見据え、警視庁は、世界一安全な都市東京実現のためのビジョンを策定し、治安対策を推進中とのことですが、その中でサイバー攻撃対策について伺います。
近年、国際的にもサイバー攻撃が多発し、また、我が国においても日本年金機構に対するサイバー攻撃により、多くの個人情報が流出するなど、その脅威は、日々悪質化、巧妙化しており、国の治安、安全保障はもとより、都民の安全・安心な暮らしを脅かす喫緊の課題となっております。
警視庁は、二〇二〇年大会を見据え、どのような対策、取り組みを推進していくのか、警視総監のご所見をお伺いいたします。
また、開催が近づくにつれ、都庁を標的としたサイバー攻撃もますます増加するものと懸念されております。二〇二〇年大会の成功はもとより、都政の安全・安心を支えていくためにも、都庁のセキュリティー対策を速やかに強化すべきと考えますが、都の見解を伺います。
また、今後の都庁舎のセキュリティー対策も大変重要と考えます。
昨今の国内外の治安情勢を踏まえ、さきの第一回定例会において、我が党は議会棟を含む都庁舎のセキュリティーをより強化すべきとの提言を行いました。これを受け、七月には来庁者への手荷物検査を試行し、実施結果を検証中と聞いております。
都民の皆様が安心して訪れることができる都庁舎とするための恒久的なセキュリティー対策を早期に講じる必要があると考えます。
そこで、今後の都庁舎のセキュリティー対策について、知事の所見を伺います。
現在、国では、社会福祉法人制度の見直しを内容とする社会福祉法改正案が審議されています。
社会福祉法人は、福祉サービスの重要な担い手でありますが、複数の特別養護老人ホームを運営する法人がある一方、保育所一施設のみを運営する法人があるなど、その規模や事業内容はさまざまです。
今回の制度改正は、これまでにない大規模なものであり、新制度に円滑に移行していくためには、全ての法人が新制度の趣旨を十分に理解する必要があります。
都は、今回の社会福祉法人制度の改正にどのように対応していくのか伺います。
国内外から多くの人が訪れる二〇二〇年大会に向け、東京を全ての人にとって、住みやすく、訪れやすいまちへと成熟させていかなければなりません。
我が党はこれまでも、東京を世界一住みやすいまちにするために、福祉のまちづくりを推進するよう求めてまいりました。
その結果、道路や鉄道駅の段差解消や公共施設における多機能型トイレの設置など、ハード面におけるバリアフリー化は着実に進んでいます。一方で、福祉のまちづくりの実現には、思いやりにあふれ、高齢者や障害者を初め、誰もが必要な情報を得ることができるようにすることも重要です。
都は、現在、福祉のまちづくり推進協議会において、ソフト面の取り組みの充実について検討していると聞いておりますが、今後どのように推進していくのか見解を伺います。
知事は、第一回定例会の我が党の代表質問に対し、大都市東京の特性を踏まえたさまざまな施策を展開し、世界一の福祉先進都市の実現という大きな目標に向かって、全力で取り組んでいくと力強く答弁されました。
三月に策定した第六期東京都高齢者保健福祉計画では、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年に向け、大都市東京にふさわしい地域包括ケアシステムの構築を目指すとしております。
こうした中、六月に民間団体である日本創成会議が、東京圏の高齢者の地方移住などを提言した東京圏高齢化危機回避戦略を発表しました。
この提言は、マスメディアにも取り上げられましたが、在宅サービスの充実や介護基盤の整備など、地に足のついた取り組みを進めていくことこそが、都の役割と考えます。
世界一の福祉先進都市を実現するため、介護が必要になっても、高齢者が住みなれた地域で暮らし続けることができる地域包括ケアシステムの構築に向け、どのように取り組んでいくのか、知事の見解を伺います。
次に、政策に掲げる日本の将来を担う子育て世代に優しい東京をつくるという観点から伺います。
我が党はこれまでも、待機児童解消を最優先課題の一つとして、繰り返し強く求めてまいりました。都はこれに応えて、区市町村の取り組みを強力に支援し、その結果、本年四月の待機児童は三年ぶりに減少いたしました。このことは、率直に評価するものであります。
しかし、平成二十九年度末までに待機児童解消という目標を達成するためには、引き続き手を緩めることなく、保育サービス拡充に邁進していく必要があります。
待機児童解消に向け、都はどのように取り組みを進めていくのか伺います。
次に、子供家庭施策について伺います。
都内には、虐待等の理由により、親元で暮らすことができない子供が約四千人いるといわれています。こうした社会的養護を必要とする子供たちは、児童養護施設や乳児院などの児童福祉施設、養育家庭等で生活しています。
都はこれまで、養育家庭等の家庭的養護を推進し、社会的養護に占める割合は約三割にまで達しました。都が本年四月に策定した東京都社会的養護施策推進計画では、平成四十一年度までに、この割合を六割に引き上げるという目標を示しています。この目標の達成に向け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
核家族化や地域のつながりの希薄化により、家庭や地域の教育力が低下し、いじめや不登校、児童虐待など、子供、若者にかかわる諸問題が後を絶ちません。
また、働くことの意味や自分が社会の中で果たすべき役割を見出すことができずにいる若者の存在は、人口減少社会の到来が目前に迫った今、個人の問題にとどまらず、社会にとって大きな損失につながりかねない状況にあります。
東京の活力低下を防ぎ、持続的発展を遂げるためには、子供、若者対策は喫緊の課題であり、その施策展開に当たっては、身近な区市町村を軸に、広域自治体として都が十分な支援を行うことが必要であります。
こうした考えを踏まえ、都は先月、社会に参加し、社会を形成する若い力を育むと題した子供・若者計画を策定しました。
都は、子供や若者が抱える困難や課題に対する地域の対応力の強化に、これまで以上に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
次に、政策の柱、後世に誇れるクリーンで美しい東京をつくるについて伺います。
まず、環境エネルギー政策であります。
近年、世界各国で集中豪雨や台風の大型化、熱波の頻発など、異常気象が常態化しております。地球温暖化が着々と進行する中、気候変動による危機に立ち向かっていくためには、世界各国が責任を共有し、一体となって対策を講じていかなければなりません。
先般のG7では、温室効果ガスを二〇五〇年までに二〇一〇年比で四〇%から七〇%の上方修正で削減するとの首脳宣言が採択されました。また、本年末のCOP21では、排出削減の新たな枠組みが合意される予定であります。
こうした中で、世界一の環境先進都市を目指す東京としても、国や世界の大都市をリードする具体的な行動が求められます。
都は、さきの定例会で意欲的な削減目標を新たに打ち出す旨を表明しましたが、目標の策定に合わせ、今後どのような考え方で温室効果ガスの排出削減を進めていくのか、知事の見解を伺います。
多摩・島しょ部に広がる東京の自然公園は、極めて多彩な自然環境や個性豊かな歴史、文化を有し、東京の魅力を構成する重要な地域となっております。近年はトレイルランナーや外国人旅行者等、利用形態や利用者層の多様化も進んでおり、来訪者が急増した高尾山では、さらなる魅力の向上策や開発、利用の方針を地元の市や企業などで検討していると聞いております。
都はこれまで、自然公園の利用者が守るべきルールづくり等に取り組んできましたが、今後、環境負荷等に配慮しつつも、国内外のより多くの方に訪問してもらい、地域振興にもつながるよう自然公園のポテンシャルを高め、その魅力を積極的に掘り起こしていくべきと考えます。知事の見解を伺います。
資源制約、環境制約が一層進む中、資源の大消費地である東京は、持続可能な資源循環型都市の構築に向け、最終処分場の延命化にも資する、実効性のある取り組みを率先して進めていかなければなりません。
そのため、都は、我が党からの提言を踏まえ、今後の施策の基本的考え方を示した、「持続可能な資源利用」に向けた取組方針を昨年度策定いたしました。
今般、取り組み方針の具体化のため、先進企業等と共同したモデル事業を公募により選定し、事業実施に向けた取り組みを進めていると聞いています。
都は、このモデル事業をどのように進め、また、得られた成果を今後の資源循環施策にどのように生かしていくのか、見解を伺います。
かつて、関東各地は、荒川、江戸川、利根川などで結ばれ、江戸においては網の目のようにめぐらされた掘り割りや河川などを利用し、さまざまな人や商品の輸送に舟運が活用され、まさに水の都でありました。物流の中心が鉄道や陸運にかわるに従い、掘り割りなどは埋め立てられ、舟運の活用は大幅に減少することとなりました。
しかし、現在、東京の新たなまちづくりが進む中、お台場やレインボーブリッジなどに代表される臨海部や東京スカイツリーなど、魅力的な水辺空間や観光資源の創出により、人々の生活の豊かさや観光の視点から水辺空間が見直されています。五十年ぶりに復活した葛西海浜公園の海水浴場などもその魅力の一つであります。
我が党は、世界で一番の都市東京の実現に向け、舟運を活用した観光経路などの開発を掲げるとともに、党内の水の都東京政策研究会においても、水辺に親しむことができる各地の観光拠点を結ぶなど、広域的展開を視野に入れた取り組みを進めることを提案しています。
また、かねてから国内外から首都圏を訪れる多くの観光客などが利用する羽田空港と臨海部や都心とを結ぶアクセスの一つとして舟運の活性化を提言してまいりました。
臨海部に競技会場の多くが設置される二〇二〇年大会に向け、水の都東京の魅力を高めていくためにも、都として舟運の活性化を進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
また、現在も東京港では、水上バスや屋形船、クルーズ船など多様な船が航行していますが、航路などが限定的であり、環境や日常の交通手段として気軽に利用できる状況ではありません。
舟運事業者の新たな事業展開を促進するための取り組みを、都として進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
次に、二〇二〇年大会と臨海地域の発展を踏まえた都営地下鉄の取り組みについて伺います。
大江戸線の沿線には、オリンピックスタジアムを初め、二〇二〇年大会の競技会場が幾つもあり、大会開催時には、国内外から多くの観客が利用することとなります。
また、現在、臨海地域における再開発の進展などにより、大江戸線の利用者が大幅に増加しています。交通局では、勝どき駅の大規模改良に取り組んでいますが、選手村の後利用も含め、今後も大規模な開発により、車内の混雑もさらに激しくなることが懸念されます。
こうした状況を踏まえ、大江戸線の輸送力を増強し、利用者サービスの向上を図ることが不可欠であると考えますが、見解を伺います。
次に、政策の柱、力強い経済で日本をリードする東京をつくるに関して伺います。
首都東京の経済をさらに力強いものとすることで、我が国の景気回復、経済再生につなげていく、東京が牽引役としての責任を果たす、この政策の柱にはこうした思いを込めております。
二〇二〇年大会を大きな目標、契機として、さまざまな産業振興に取り組むとともに、それぞれの産業が抱える構造的な課題にもしっかりと向き合っていく、この二つの視点から必要な施策を展開していかなければなりません。
まず、二〇二〇年大会は、アスリートが集う世界最大のスポーツの祭典であると同時に、開催国日本の伝統文化やすぐれた技術、豊かな自然や食文化など多様な魅力を世界に発信する絶好の機会でもあります。
日本の魅力を余すことなく世界に伝え、全国各地の観光の振興や経済の活性化につなげ、我が国全体のさらなる発展を図っていかなければなりません。
開催都市である東京は、その中心的役割を果たすべきです。真の地方創生に向けても、東京の率先した努力が求められています。
都は、オールジャパンの視点に立ち、日本各地と連携した産業振興策を強力に展開していくべきと考えますが、見解を伺います。
世界にアピールすべき日本の魅力の一つが、ものづくりのすぐれた技能、たくみのわざであります。先日、我が党の勉強会でも、左官業の皆さんの壁塗りを間近で拝見することができました。
熟練技術者の高齢化や若者のものづくり離れなどの厳しい現実を乗り越え、次世代に技能を伝える努力を重ねられていることがよくわかりました。この努力に応えるためにも、若者が進んでものづくりを目指す社会的な機運を醸成していく必要があります。
ものづくりやたくみのわざの魅力の発信に向け、都は日本各地と連携した取り組みを進めるべきと考えますが、所見を伺います。
昨年来、我が国を訪れる海外からの観光客が急増しており、都心の繁華街だけでなく各地の観光スポットで、さまざまな商品を意欲的に買い求める姿が報道されています。
知事は、観光を東京の一大産業として戦略的な振興を図るとしています。こうした外国人観光客の旺盛な消費は経済の活性化に大いに寄与するものであり、一時的な売り上げの増加で終わらせることなく、経営者の目線で観光産業の質の向上に結びつけていく発想こそが求められています。
旅行者が快適に滞在し、気持ちよく買い物ができる環境を整えることに加え、商品やサービスの多様化や質の向上を目指し、さらには観光に携わる中小事業者の経営の向上をも実現できるような取り組みが必要です。
将来をも見据え、観光産業が東京の重要な産業分野として発展できるよう、都としてどのように取り組んでいくのか、知事の所見を伺います。
力強い経済の実現のためには、中小企業の新たな事業展開を促していくことが重要です。
高齢化や外国人旅行者の増加によるサービス需要の拡大、二〇二〇年大会を契機としたスポーツ関連の技術開発など、中小企業がみずからの強みを生かしつつ、これまでと異なる事業分野に取り組むチャンスが広がっています。
都は、新事業に果敢に挑戦する中小企業を後押しするため、さらなる支援の強化を図るべきと考えます。見解を伺います。
中小企業のすぐれた技術やノウハウを次代につなげる事業承継は、待ったなしの課題です。経営者の高齢化が進み、後継者がいない、多額の債務までは受け継げないなどの理由で廃業を余儀なくされる町工場も多いと聞きます。
課題が単純ではないだけに、なかなか手がつけられず手おくれになってしまう例も多いと聞いております。
都は、小規模企業向けの相談窓口の設置など支援を強化していますが、事業者へのより積極的な働きかけや、後を継ぐ人材の発掘、企業の将来性を評価した金融面の支援等、専門機関と連携した取り組みを進めるべきです。
中小企業の事業承継に向け、都はどのように取り組むのか、見解を伺います。
去る九月二十五日、新銀行東京と東京TYフィナンシャルグループとの経営統合の最終合意が発表されました。さきの定例会で我が党は、経営統合の協議に当たり、預金者や融資先企業の立場に立ち、中小企業への金融支援という本来の趣旨を完遂すること、議会の付帯決議を重く受けとめ、追加出資した四百億円を毀損させないことを強く求めました。このうち追加出資については、都が持ち株会社の優先株式を取得する形で確保されることになりました。
来年四月の経営統合により、新銀行東京は都内最大級の地銀グループの一員として新たな一歩を踏み出すことになります。その際、中小企業支援の強化という新銀行の設立趣旨をしっかりと継承していただきたい。そのためにも、都が、このたび東京TYフィナンシャルグループと締結した包括連携協定を十分に生かしていくべきであります。
新銀行東京のこれまでの経緯を踏まえ、今回の経営統合を契機として、中小企業支援の強化に向けてどのように取り組むのか、見解を伺います。
さて、都市農業は新鮮で安全・安心な農畜産物の供給だけではなく、防災や環境保全など良好な都市環境の形成に貢献しており、都民の都市農業に寄せる期待は高まっています。
都は、特区提案により、都市農業の振興と農地の保全に向けた制度改善を国に強く働きかけており、我が党も政策研究会や説明会などを通じて農業者から実情を聞いています。高齢化や後継者不足、価格低迷による収益の悪化などの課題を抱える一方で、栽培技術の改良など、さまざまな工夫に積極的に取り組む農業者もふえてきています。
都市農業を成長産業としていくために、国の制度改善を見据え、都としても、意欲ある農業者を支援する新たな都市農業振興策を展開すべきです。見解を伺います。
こうした産業活動を支えるため、女性や若者、高齢者を含めた全ての人々が生き生きと活躍できる社会の実現に向け、働き方改革の取り組みが国や都で進められています。
働き方を見直し、柔軟な勤務時間の設定やテレワークなどを広めることで、仕事と生活に調和のとれた環境を実現するとともに、企業の生産性の向上につながることが期待されます。
我が党が強く求めている女性の活躍の推進にも資する重要な取り組みですが、日々の事業を営むのに精いっぱいの中小零細企業にとっては、いうはやすしで取り組みが進まない状況もあると思われます。
こうした企業の実情を踏まえ、きめ細やかな支援を行っていくことが重要です。東京の働き方改革をどのように進めていくのか、知事の所見を伺います。
次に、政策に掲げる若者が夢と希望を持てる教育都市東京をつくるについて伺います。
教育基本法にも明記されているとおり、教育の目的は人格の形成であります。そして、人格の基盤となるものが道徳であり、その意味からも、道徳教育は学校教育の中核に位置づけられるべきものであります。
しかしながら、これまでは正式な教科ではありませんでした。本年三月、我が党の長年にわたる議論が実を結び、国は、道徳を教科として位置づけることを発表しました。
我が国が品格ある国家として世界から信頼を受け、敬愛され続けるためには、礼儀、思いやりの心など日本人の美徳、よき伝統を子供たちに確かに継承させていく、まさに道徳教育の充実が極めて重要であると考えます。知事の所見を伺います。
今日の子供を取り巻く、いじめを初めとするさまざまな社会問題の解決にも、道徳教育の抜本的な改善、充実が不可欠です。
道徳の教科化により、小学校は平成三十年度から、中学校は平成三十一年度から、国の検定教科書を用いて指導する特別の教科道徳が実施されます。また、教科化とあわせ、指導内容面でも、いじめ問題やグローバル化へ対応するものとして、公正公平な心や、寛容の精神、日本人としての自覚や国際親善の心などについて改善が図られます。
特別の教科道徳の指導内容については、本格実施を待たず先行して実施することが可能となっており、東京の各小中学校において先行実施ができるよう、都教育委員会には強力に推進していただきたい。
そこで、この先行実施の推進に向けた都教育委員会の取り組みを伺います。
次に、政策に掲げる人と物の流れがスムーズに行き交う首都圏をつくるに関して伺います。
二〇二〇年大会の開催決定により、日本の再生とそれを牽引する東京の再起動の舞台が整いました。
今こそ、このチャンスを生かして、次の時代においても輝き続ける世界一の都市東京をつくっていかなければなりません。そのためには、二〇二〇年を通過点として、将来のあるべき都市の姿をしっかりと描き、その実現に向けて取り組んでいくことが重要であります。
東京の将来像については、既に働き方や科学技術など幅広い分野の有識者による意見交換が開始され、先ごろ、東京都都市計画審議会に、都市づくりについての諮問がなされたと聞いております。
都市づくりのグランドデザインについて、今後どのように検討を進めていくのか、都の所見を伺います。
これまで都は、区部及び多摩地域における都市計画道路の整備方針に基づき、着実に道路整備を進めてきましたが、現在の方針は、平成二十七年度までとなっています。
東京の持続可能な発展をさらに促すためには、次期整備方針を速やかに策定し、引き続き重要な都市基盤である都市計画道路のネットワークを形成していくべきと考えます。
都市計画道路の整備方針について、今後どのように取りまとめていくのか伺います。
先般、東京都住宅政策審議会から、マンション施策の新たな展開についての答申がなされました。東京においてマンションは、都民の主要な居住形態として広く普及する一方で、建物の老朽化や居住者の高齢化が進んでいます。
我が党は、かねてより、適正な管理や再生の促進に向け、管理組合への支援等に都が率先して取り組むべきと主張してまいりました。今回の答申でも、こうした観点から具体的な提言がなされています。
都は、本答申を踏まえ、今後どのようにマンション施策に取り組んでいくのか伺います。
東京を、将来にわたり活気があふれ快適な都市とするためには、渋滞を解消し、人と物の流れをスムーズに、移動しやすい環境整備をしなければなりません。
中央環状品川線がことし三月に完成し、中央環状線内側の利用交通量が五%減ったことにより、渋滞、混雑量が約五割減少するなど、高い整備効果が得られています。圏央道は着々と開通しています。
また、我が党は、外環道のうち関越道から東名高速間を二〇二〇年大会開催までに開通させるよう、国に強く求めているところであります。このように、高速道路ネットワークの充実の取り組みは着実に進んでおり、災害時の代替機能強化も図られているところであります。
一方、一般道路の整備はいまだ道半ばであり、都内各所に渋滞ボトルネックが点在しています。そのために、渋滞解消を図り、道路ネットワーク全体を機能させることが東京の活力を一層向上させるために不可欠だと考えます。
そこで、一般道路の渋滞解消に向けた道路整備の推進について伺います。
また、ことしの夏は、八日間連続の猛暑日となるなど厳しい暑さに見舞われました。同時期の真夏に開催される二〇二〇年大会を成功させるためには、万全の暑さ対策が必要です。
とりわけマラソンなどの競技が実施される道路においては、選手が存分に力を発揮し、観客にとっても観戦しやすい環境を整えるため、路面の温度を下げる舗装の整備等を進めていくことが重要です。現在の状況と今後の取り組みについて伺います。
区部において法定耐用年数である五十年を超えた下水道管は約一千五百キロメートルに達し、高度経済成長期に集中的に整備された多くの下水道管が、今後一斉に耐用年数を迎えるため、下水道局では、平成二十五年度から再構築の整備ペースを約二倍にスピードアップしています。
一方、近年、再構築工事での入札不調が増加しています。かねてから我が党は、不調対策の充実を求めてまいりました。下水道局では追加の対策として、工事の発注時期のさらなる平準化や、受注者の工事変更に関する相談にきめ細かく対応できる工事変更ホットラインの設置など、さまざまな対策を講じた結果、入札不調の状況に改善の兆しがあるとも聞いておりますが、まだまだ予断を許さない状況であります。
下水道は、都民生活や経済活動になくてはならないライフラインです。再構築は、将来にわたって下水道の機能を維持するために必要不可欠な事業であり、これを着実に進めていくためにはさまざまな手段を講じる必要があると考えます。
今後、どのように下水道管の再構築を進めていくのか、見解を伺います。
さて、二〇二〇年東京五輪パラリンピック競技大会の開催まで、いよいよ五年を切りました。来年にはリオデジャネイロ大会が開催され、その終了後、世界の目が東京に集中する中で、大会開催に向けた準備がますます本格化していきます。
一方で、セキュリティー対策や輸送対策、暑さ対策など、大会開催に向けて取り組むべき課題は山積しており、また急増する外国人観光客の対応も急務となっています。残された五年の間にこうした課題の解決を図りつつ、世界中のアスリート、観客を安全・安心に、そして快適な環境でお迎えできるよう、大会開催に向けた準備を着実に進めていかなければなりません。
また、東京にとって二〇二〇年大会は決してゴールではありません。大会で確かなレガシーを残し、東京を世界で一番の都市へと押し上げていくために、さらにその効果を全国へ波及させていくためにも、今後五年間の取り組みは非常に重要であり、都全体で懸命に努力を積み重ねていかなければなりません。
開催都市の長として、知事の決意を伺います。
また、IOCは、大会を持続可能なものとしていくため、アジェンダ二〇二〇でさまざまな改革の方向性を示しています。
我が党はそれを踏まえ、本年三月の予算特別委員会において、新規恒久施設等の有効活用のみならず、規模の大きな仮設施設である体操競技場の有効活用について質問をしました。体操競技場は仮設施設とはいえ、恒久施設と同等の耐震性などもあることから、大会後も一定期間は使用可能であります。せっかく活用するのであれば、将来を見据え、組織委員会としっかり連携した中で、広く都民のために有効活用してほしいと願っています。
現在、体操競技場は組織委員会が基本設計を進めているところだと聞いていますが、この施設を大会後どのように活用していくつもりか、所見を伺います。
パラリンピックは世界最大の障害者スポーツの祭典であり、都民、国民は、スポーツ本来の魅力だけでなく、障害のあるトップアスリートがみずからの障害と向き合いながら無限の可能性に挑戦する姿に、じかに触れることができ、オリンピックとはまた違った感動があります。
我が党は先般、障害者スポーツ振興政策研究会を設置し、競技の魅力を広く都民に伝えるなど、障害者スポーツの振興に積極的に取り組んでいくことといたしました。このパラリンピック開催こそが、障害者スポーツ振興のまたとない機会であると考えます。
東京大会の準備はこれからまさに本格化していきますが、オリンピックの準備にも増して、パラリンピックの準備に万全を期さなければなりません。
そこで、パラリンピックの成功と障害者スポーツの振興に対する知事の決意をお伺いさせていただきます。
パラリンピック開催を機に、東京のバリアフリー化を推進することもまた重要です。特に、障害がある人も自由に東京を訪れ、楽しむことのできるバリアフリー観光都市を構築し、未来へ継承することができれば、またとないパラリンピックのレガシーとなると考えます。
具体的には、車椅子のままで乗れる観光バスやタクシーの普及、乗降場所、待合場所の改修、道路の段差解消、バリアフリー公衆トイレの増設など、観光インフラのバリアフリー化を強力に推進することであります。これは障害者だけではなく、今後増加する高齢者や要介護者、乳幼児を育てる都民にとっても大きな朗報となります。
さらに、高齢者や障害者を含めた多くの観光客をおもてなしすることで、東京に好印象を抱き、また来ようと感じていただける、そして、都民ボランティアの育成や教育などを強力に推進し、心のバリアフリーを内包したおもてなしの姿勢を育んでいくことにもつながります。
二〇二〇年を契機に、東京都を挙げて、ハード、ソフト両面で必要な対策を実施し、世界に誇れるハイレベルのバリアフリー都市東京を築くことが開催都市東京の重大な責務と考えますが、パラリンピックレガシーに関する取り組みについて知事の見解を伺います。
また、障害者スポーツの振興に欠かせないものが、施設の確保です。現在、都立障害者スポーツセンターは区部と多摩地域に各一カ所のみであり、開設以来、利用者は常に増加傾向で、順番待ちもあると聞いています。一方、地域には区市町村のスポーツ施設や学校体育施設等がありますが、障害者スポーツの場として十分に活用できていない現状があります。
パラリンピックの開催を契機に、これまで関心のなかった障害者がスポーツに興味を持つとともに、世界中で活躍するアスリートに憧れるなど、障害者スポーツの裾野が一気に拡大することを期待しています。
この機を捉え、今後、障害者スポーツの場の確保、拡大にどのように取り組んでいくのか、都の見解を伺います。
大会のレガシーを引き継ぐことになる子供たちにとって、今回の大会はかけがえのない体験ができる貴重な機会であります。特に、東京は世界で初めて二度目のパラリンピック大会を開催する都市であり、障害のある人もない人もともに笑顔で暮らせる世界一の都市になることこそ、子供たちにとって最高のレガシーとなります。ぜひ、子供たちが積極的にパラリンピックにかかわるような教育を進めてほしいと願っております。
そのためには、学校教育の中で子供たちに障害者スポーツの魅力を伝えていくとともに、障害者への理解を促していくことが重要です。
今後、どのように取り組みを充実させていくのか、伺います。
昨日、新国立競技場の代替として、東京スタジアムがラグビーワールドカップの開会式、開幕戦の会場に決定したという、大変うれしいニュースが入りました。
都議会としても超党派で、東京スタジアムを代替会場として、開幕戦を初め、重要な試合を開催することを求める声明を発表するなど、組織委員会の取り組みを積極的に後押ししてきた成果だと考えています。都と都議会が一体となって東京スタジアムでの開催をかち取ったこの経緯を忘れてはならない、そして、その成果をラグビーワールドカップの成功につなげていかなければなりません。
こうした中、二〇一五年イングランド大会において、日本代表が優勝候補の一つである南アフリカ代表を接戦の末破るという歴史的快挙をなし遂げました。選手たちの活躍は、日本、そして世界のラグビーファンの心を動かしました。世界中の人々の心を熱くするラグビーワールドカップが、四年後の二〇一九年、日本で開催されます。
今後、都と都議会が一体となって本格的に開催準備に取り組むことが必要と考えますが、ラグビーワールドカップの成功に向けた知事の決意を伺います。
二〇二〇年大会の成功のためには、さまざまなボランティア活動への都民参加を推進することにより、開催機運を盛り上げていくことが重要です。また、ボランティア活動は、福祉、災害、教育など、社会を取り巻くさまざまな課題の解決にも寄与するものであります。
多くの都民が参加するに当たっては、必要な情報を容易に得られるようにするなど、環境づくりを進めることが必要不可欠であります。
企業、学校、地域に貢献している地縁団体など、多彩な主体と連携したボランティア活動を推進するための今後の取り組みについて、知事に伺います。
次に、政策に掲げる多摩・島しょ地域の振興について伺います。
まず、多摩地域の医療拠点である多摩メディカルキャンパスについて伺います。
多摩総合、小児総合医療センターの開設から五年が経過しました。この間、がん患者は著しく増加し、救急患者は急速に高齢化しています。また、医学の進歩により、小児がんや難病など、患者が少なく治療が困難な疾患についても、治癒することが可能となってまいりました。
医療が集積する多摩キャンパスは、将来の疾病構造や医療制度改革の動向をしっかりと見据え、機能を充実するとともに、各施設の相互連携を一層強化し、多摩における医療の中核としての役割を果たしていくことが求められております。
本年の予算特別委員会において、多摩キャンパスのあり方を検討していると答弁がありましたが、このような状況を踏まえ、今後、多摩キャンパスの医療体制をどのようにしていくのか伺います。
また、多摩地区の各市町では、かつて水源不足や料金格差等の問題を抱えていたため、都は全国に先駆けて水道事業を一元化し、これらの問題を解決してきました。しかし、一元化後も、業務面では市町ごとに事務委託を行ってきたため、広域水道としてのメリットを十分に発揮できておりません。
老朽化した施設の再構築など、さまざまな課題を解決しながら、真の意味で広域水道として一体的に運営していくための取り組みは、事務委託解消を機に、今まさに緒についたところであります。しかし、横浜市を上回る約三百九十万人もの給水人口を擁する多摩地区水道の本格的な再構築は、一朝一夕にはなし得ません。
中長期的な視点を持って計画的に取り組むことが必要と考えますが、都の所見を伺います。
次に、島しょ五村における超高速ブロードバンド整備について伺います。
今日、インターネットなどのICTサービスは多くの都民の生活に浸透し、今や年代を問わず幅広く利用されています。しかし、都内区市町村のうち、伊豆諸島の利島村、新島村、神津島村、御蔵島村及び青ヶ島村の五村のみが超高速ブロードバンド未整備地域であり、早期に整備してほしいという声が我々にも届いております。
離島での生活の向上とともに、遠隔医療の環境改善や特産品のネット販売促進による産業振興などの実現も期待されており、超高速ブロードバンド整備が島しょ振興に果たす役割は非常に大きいものがあると考えます。
国は、平成二十七年六月に改定した世界最先端IT国家創造宣言において、離島の情報通信基盤整備の推進を明記しており、国が率先して支援すべき施策でもあります。
都は、東京都長期ビジョンにおいて、全ての島しょ地域に超高速ブロードバンドサービスを提供するとしていますが、その実現に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
さて、最後に一言申し上げます。
先日、地元のお祭りに行ったとき、ある年配の女性からは、二回目を見られるのはうれしいけど、オリンピック、大丈夫なのといわれました。また、ある少年からは、問題ばっかりなのに、オリンピック、本当にできるのと率直にいわれました。いずれも、オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まったときに、私たちと一緒に心から喜んでくれた人たちであります。
知事、フランスの英雄ナポレオンはこういっています。リーダーとは希望を配る人のことだと。確かに戦略として、戦術として、時には批判、批評をすることも、政治家の一面として否定はいたしません。しかし、都民のリーダーたらんとするならば、あるいはこの国のリーダーの一人と自覚するならば、ラグビーワールドカップ二〇一九、そして二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けて最大限の努力を重ねていただきたい。
大事業とは、その道のりの過程で大きな困難や障害があってしかるべきだと考えます。これから先も、どれほど大きな壁に直面するかわかりません。しかし、その壁を一つずつ乗り越えるために、苦労をいとわず、努力を積み重ねてこそ、輝かしい成功にたどり着けるのではないでしょうか。
ぜひ、知事には政治の王道を真っすぐに歩んでいただき、都民、国民に夢や希望を配る人であってほしい、私はそう願ってやみません。
我々都議会自民党も、大きな夢を都民の皆様と共有し、その実現のために精いっぱい力を尽くしてまいりますことをお約束申し上げ、代表質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕
○知事(舛添要一君) 宇田川聡史議員の代表質問にお答えをいたします。
二元代表制における私の基本姿勢についてでございますが、地方政治における長と議会は、執行機関と議事機関というそれぞれの役割を十全に果たすことで円滑な都政運営を可能とする、まさに車の両輪でございます。この両輪が健全な緊張関係を保持しつつ、緊密に意思の疎通を図り、相互の信頼関係を構築することで、初めて都民本位の都政が確立され、都政を取り巻く諸課題に対応できるものと確信しております。
このために、都民の代表であります都議会の皆様との丁寧かつ率直な議論の積み重ねを何よりも大切にしていくことを肝に銘じ、都知事としての職責を果たしてまいります。
都議会の皆様からのご意見やご指摘を謙虚に受けとめつつ、ご理解とご協力を仰ぎながら、東京を世界一の都市とするための諸施策に全力を挙げて取り組み、国、各組織委員会、区市町村、さらには全国の道府県などの関係者の皆様との紐帯による、二〇一九年ラグビーワールドカップや二〇二〇年大会の成功、そしてその先の東京のさらなる発展を目指してまいります。
次に、不合理な偏在是正措置についてでございますが、都はこれまで、不合理な措置により、一兆三千億円を超える財源を国に奪われてまいりましたが、この措置の拡大が強行されれば、将来にわたって年間五千八百億円という巨額の減収に直面することも想定されます。都政を預かる者として、このことに大変強い危機感を抱いております。
そもそもこの措置は、行政サービスの対価としての負担という地方税の原則に反するばかりか、頑張って税収を伸ばした自治体ほど多くの税収を奪われることになり、地方創生に必要な地方の自主性、自立性を損なうものであります。
何よりも、地方間で限られた財源を奪い合う現状維持の発想では、税収全体の拡大にはつながりません。今必要なことは、日本全体の成長のために、地域の実情に即して、努力をした自治体が税収を伸ばし、都市と地方の共存共栄により、ともに発展する道を歩むことであります。
そのためには、総体としての地方税財源の拡充という本筋に沿った議論こそが必要でありまして、不合理な措置を直ちに撤廃することはもとより、新たな措置の導入や法人課税の分割基準の不合理な見直しは阻止しなければなりません。
年末の税制改正に向けまして、先般、都の主張を公表するとともに、東京都税制調査会でも議論を重ねており、今後、都内区市町村や他の自治体などとの連携も強化してまいります。私みずからが先頭に立って汗をかき、都議会の皆様としっかり手を携えながら、あらゆる機会を捉えて働きかけるなど、全力で取り組んでまいります。
地方創生の本質を踏まえた東京版総合戦略の策定についてでございますが、東京の発展と地方の繁栄は二律背反の関係ではなく、むしろ互いに協力し合い、互いに高め合う関係であります。都が目指す真の地方創生とは、こうした関係の上に成り立つものでありまして、東京と地方がそれぞれの持つ力を合わせて成長し、日本全体を発展させていくことであります。
そこで、都の総合戦略は、最重点の事項であります東京と地方の共存共栄に加え、経済活性化に向けた東京の発展、高齢化、少子化への対応といった事項に焦点を当てて策定をいたします。
とりわけ、地方との共存共栄に関しましては、さまざまな機能が集積する東京のメリットを最大限に用いて、他の地域が持つポテンシャルを生かし、地域経済発展に結びつく施策を積極的に展開いたします。
具体的には、都庁舎における全国特産品の販売などに加え、東京と地方を結ぶ観光ルートの設定の拡大や、トウキョウXの東北地方での生産拡大、また、新潟県三条市での木質バイオマス発電所へのファンドを通じた投融資など、地方と共同した事業を一層発展させてまいります。
このような考え方のもと、東京都長期ビジョンでの目標や政策を基本とし、東京と地方がともに栄える真の地方創生の実現を目指す東京版総合戦略の策定に向けて、全力で取り組んでまいります。
平成二十八年度予算編成の基本方針についてでありますが、私は、就任一年目の昨年末に、今後の都政の羅針盤となります長期ビジョンを策定するとともに、初の本格的な予算を編成し、二〇二〇年の東京とその先の明るい未来に向けた具体的な取り組みに着手してまいりました。
今後は、長期ビジョンで掲げる将来像やその先を描くグランドデザインなどを見据え、東京をより進化した成熟都市へと高めていく取り組みを一層積極的に推進していく必要があります。
そのため、来年度予算におきましては、オリンピック・パラリンピックの準備を着実に進めることはもとより、都市インフラの整備や観光を初めとする高い付加価値を持つ産業の振興など、東京のみならず、日本全体の成長につながる施策を戦略的に実行していかなければなりません。
同時に、急速に進行する少子高齢化への対応や災害に強い都市づくりなど、都政の喫緊の課題に時期を逸することなく取り組んでいく必要があります。あわせて、全ての施策を多面的に検証し、各部局間の連携を強化しながら、必要な見直し、再構築を図るなど、自己改革の取り組みをたゆみなく進めてまいります。
こうした基本方針のもと、中長期を見据えた強固な財政基盤を堅持しつつ、世界一の都市の実現に向けて確実にステップアップを図る予算をつくり上げてまいります。
次に、ロンドン市との友好都市提携についてでありますが、世界人口の半数以上が都市に集中します都市の世紀にあって、環境問題や災害対策、インフラ整備などの諸課題が大都市に先鋭的にあらわれています。こうした中で、大都市同士、課題解決のために連携を深めることは極めて重要だと考えます。
昨年、ロンドン市を訪問し、オリンピック・パラリンピック大会のレガシーを見事に都市経営に組み込んだ活力のある成熟都市の姿を目の当たりにしてまいりました。
第二次世界大戦後、一度は斜陽の帝国とも呼ばれたイギリスは、停滞を乗り越え、見事に復活いたしました。この復活を支え、その後、二〇一二年大会を経て、世界一の都市に上り詰めたのがロンドン市であります。このロンドン市との友好関係は、東京をさらなる高みに導くと確信をいたしました。
まさにこうした観点から、ボリス・ジョンソン・ロンドン市長と会った際に、私の方から、両都市の永続的でより強固な関係づくりを提案し、意見の一致を見たところでございます。
昨晩も、実はボリス・ジョンソン氏と、ロンドンと東京を結びまして電話でお話しいたしましたけれども、両都市が友好都市関係を結成することで、東京がロンドン大会の成功とそのレガシーを学ぶことはもとより、大都市に共通する課題の解決に協力して取り組んでまいりたいと思っております。
そして、その知見を生かしながら、引き続き世界のほかの都市とも協力し、かつ切磋琢磨することで、世界一の都市の実現につなげていく考えであります。
次に、大規模水害対策の強化についてでありますが、台風十八号による記録的な大雨は全国各地に甚大な被害をもたらし、鬼怒川の堤防決壊からは、自然災害の脅威と災害に強い都市づくりの重要性を改めて痛感させられました。
東京は、河川、運河、東京湾などの豊かな水環境に囲まれた都市である一方、区部東部のゼロメーター地帯など、防災上の脆弱性を有することから、大規模災害への対策は喫緊の課題であります。
このため、都は、防潮堤の整備や耐震対策を進めるとともに、区部では時間最大七十五ミリ、多摩地区では最大六十五ミリの降雨に対応する河川の護岸や調節池の整備などに着実に取り組み、国とも連携し、水害への備えに取り組んでまいります。
また、想定外の大規模水害から住民を広域的に避難させる枠組みの整備に向け、区市町村や鉄道事業者等の関係機関と連携協力しながら、国や近隣県とともに検討を進めてまいります。
頻発する大規模水害の脅威にさらされている今、こうした取り組みを一層加速化させることが不可欠であります。引き続き、都民の生命と財産を守り、世界一安全・安心な都市を実現していくために、大規模水害を初めとする災害対策を強力に推進してまいります。
次に、今後の都庁舎のセキュリティー対策についてでありますが、テロの脅威が高まる中、来庁者の安全を確保し、都政のヘッドクオーター機能を維持するためのセキュリティー強化は喫緊の課題であります。一方、都庁舎は多くの都民や事業者、観光客が訪れる、開かれたシティーホールでもあります。
このため、都民サービスとセキュリティーの二つのバランス、そして費用対効果にも十分配慮しながら、都庁舎の警備体制を強化いたします。
七月に試行した実施状況などを検証の上、来月早々には、議会と連携して都庁舎のセキュリティーレベルを高めてまいります。
都議会議員の皆様、都民の皆様には、ご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
地域包括ケアシステムの構築についてでありますが、多くの高齢者は、たとえ介護が必要になっても、可能な限り住みなれた地域で生活したいと望んでおります。
こうした願いに応えていくためには、高齢者のための適切な住まいを確保し、医療や介護、生活支援サービスが日常生活の場で切れ目なく提供できる地域包括ケアシステムを構築していかなければなりません。
そのため、本年三月に策定した東京都高齢者保健福祉計画では、地域包括ケアシステムの構築を目指し、介護サービス基盤の整備、在宅療養や認知症対策の推進、介護人材や高齢者の住まいの確保などを重点分野に、さまざまな施策を盛り込みました。
また、七月には、福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議を立ち上げ、医療、介護、まちづくり、労働などの分野で活躍されている専門家の方々に、新たな施策形成につながる議論を行っていただいております。
今後、検討会議での議論も踏まえながら、民間の力、地域の力、行政の力を組み合わせ、大都市東京にふさわしい地域包括ケアシステムの構築に全力で取り組んでまいります。
次に、温室効果ガス削減に向けた考え方についてでありますが、人類の生存基盤を脅かす気候変動の危機を回避するためには、全体で世界の温室効果ガスの七割を排出しております都市の果たす役割が重要であります。
このため、都は、再生可能エネルギー目標や省エネルギー目標を勘案しつつ、十一月に意欲的なCO2削減目標を策定することといたしました。
都はこれまで、キャップ・アンド・トレード制度等により、CO2排出量削減対策に取り組んでおりますが、再生可能エネルギーの利用拡大に向けた多面的な取り組みや水素戦略目標の着実な達成も不可欠であります。
こうした取り組みに加えまして、排出量全体の約六割を占めるものの、大規模事業者に比べるとCO2削減幅の小さい中小規模事業者や家庭の省エネ対策を今後積極的に後押しするなど、新たなCO2削減策を構築し、他都市の模範ともなる世界一の環境先進都市東京を実現してまいります。
続きまして、自然公園についてでありますが、東京は、四季折々の美しさを見せる多摩の森林や渓谷、海や火山の活動による独特の地形や生態系から成る伊豆諸島、動植物が独自の進化を遂げた世界自然遺産の小笠原諸島など、多様で豊かな自然を有しております。
これらの多くが自然公園に指定されておりまして、これまでのハイキングやキャンプ等の利用に加え、近年ではトレイルランニングやイルカと泳ぐドルフィンスイムなど、自然公園の楽しみ方の幅が大きく広がっております。また、都心に近く、手軽に自然に触れられる場所として、海外からの来訪者もふえております。
今後、こうした利用形態や、利用者層の多様化に合わせた環境整備や、外国人旅行者等の増加を念頭に置きました地域のさまざまな観光資源との連携など、新しい時代にふさわしい自然公園の取り組みを考えていく必要があります。
このため、東京の自然公園の持つ魅力をさらに拡充し、豊かな自然を守りながら、国内外からのお客様にそのすばらしさを体感していただけるよう、自然公園のあるべき姿や戦略的な施策展開の方向性を盛り込んだ新たなビジョンの策定を検討してまいります。
次に、舟運の活性化についてでありますが、東京の魅力の一つは水辺の空間であります。特に臨海部では、都心の高層ビル群を背景に、東日本の物流を支えるコンテナふ頭群、レインボーブリッジなど、都心と海とが近接した東京ならではのダイナミックな景観が広がっております。
こうした景観は東京の貴重な財産でありまして、この財産を最大限活用し、国内外の観光客に楽しんでもらうためには、舟運の活性化が必要であります。
二〇二〇年の東京大会、さらにその先に向け、水辺に立地する観光資源などが多様な船や航路で結ばれ、舟運が身近な観光交通手段として気軽に利用できるための取り組みを速やかに進めてまいります。
魅力的な航路の実現に向け、まずは今年度、羽田空港と都心、臨海部を結ぶ水上ルート等において、基礎調査のための運航を行い、その成果を来年度実施します社会実験に生かしてまいります。
舟運を活性化し、ウオーターフロントの魅力をアピールすることにより、水の都東京を世界に売り出してまいります。
次に、観光産業の発展についてでありますが、東京は江戸の伝統と先端の文化の共存や、多摩・島しょ地域の豊かな自然、船が行き交う水の都としての風情など、観光地としてのさまざまな魅力を備えており、昨年、都内を訪れた外国人旅行者は八百八十七万人と、過去最高となりました。こうした旅行者の活発な消費活動は、観光産業の裾野の広さを通じて、大きな経済波及効果を生み出しております。
これまで、東京の多様な魅力を世界にアピールするとともに、言葉のバリアフリーなどの受け入れ環境の整備により、国際的に存在感のある観光都市として発展するよう着実に取り組んでまいりました。
観光を産業として大きく発展させるためには、こうした取り組みに加えて、事業者のサービスレベルの向上を図る努力や、新しいサービス機会を生み出す創意工夫を支援していかなければなりません。
そのため、宿泊施設などにおける情報提供ツールや多言語表記の充実を図るとともに、外国人旅行者の受け入れに向けた接客サービス向上の支援や経営ノウハウの提供などにより、事業者の取り組みを後押ししてまいります。
また、免税店の開設に向けた支援といった旅行者の快適な買い物のサポートなどを通じて、さらなる消費の拡大につなげてまいります。
オリンピック・パラリンピック大会の開催を見据えながら、東京の観光産業がそのポテンシャルを十分に発揮し、都民の生活を支える一大産業に成長できる取り組みを確実に進めてまいります。
続きまして、働き方改革の推進についてでありますが、女性を初め、誰もが生き生きと活躍し、豊かな生活を送ることが、成熟した先進都市のあるべき姿であります。働く人が意欲と能力を発揮しつつ、ワークライフバランスを実現できる社会を目指してまいります。
そのためには、企業現場において付加価値の創造や生産性の向上を図ると同時に、長時間労働の削減や有給休暇の取得促進など、これまでの働き方を改めることが必要であります。
こうした社会的機運を醸成するため、今年五月には、公労使会議において働き方改革の共同宣言を行いました。今後、働き方の見直しを社会全体のムーブメントに高めていくためには、大企業はもとより、中小企業での取り組み促進も不可欠であります。
都内企業は、規模や業種によって働き方も多種多様でありまして、厳しい環境に置かれている会社も少なくありません。それぞれの状況に応じた働き方の見直しに踏み出すことを奨励する仕組みづくりや、専門的な見地からの助言、先行する企業の取り組み事例の提供などについても取り組んでまいります。
誰もが持てる能力を存分に発揮し、豊かな生活を享受できる働き方を実現することで、東京の活力の維持向上を図ってまいります。
次に、道徳教育の重要性についてでありますが、我が国には、礼儀を重んじ、他者を思いやり、互いに助け合って生活する伝統と、多様な文化を受け入れ、発展させてきた歴史があります。こうした我が国の伝統や文化を背景にした日本人の行動基準については、海外からも高く評価されております。
世界一の都市東京の実現には、このようなすばらしい伝統と文化をしっかりと受け継ぎ、日本人としての誇りを胸に、グローバル社会の一員として活躍できる人材の育成が不可欠であります。
今回の道徳の教科化を大きな契機に、人間として、そして日本人として踏まえるべき倫理感や道徳性を全ての子供たちが身につけられるよう、全国に先駆けた取り組みを推進してまいります。
二〇二〇年大会開催に向けた準備でございますが、史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現と、それを契機に東京を世界一の都市にしていくことが私の使命であり、就任以来、全力で邁進してまいりました。
大会まで五年を切り、二〇一六年のリオデジャネイロ大会終了後には、世界の目が東京に集まります。開催都市の長として、みずから先頭に立ち、二〇二〇年、そしてその先を見据えたハード、ソフト両面にわたる取り組みを着実に進めてまいります。
これまでハード面では、都が整備する競技会場について見直しを実施し、大規模な三施設については基本設計を進めるなど、具体的な整備を行っております。また、選手村につきましては、事業協力者を選定し、地域の魅力を高めるまちづくりのあり方などについてさまざまなアイデアを出し合っております。
ソフト面では、ボランティアについて、今月、東京都ボランティア活動推進協議会を立ち上げ、今後、情報発信や裾野拡大に取り組んでまいります。さらに、セキュリティー対策や輸送対策、暑さ対策、多言語対応の推進、文化、教育プログラムなどの各分野についても取り組みを加速化させてまいります。
大会開催に向け、都議会の皆様と手を携えながら、国や組織委員会とも一致協力して、大会準備を全力で推進してまいります。そして、二〇二〇年大会を成功させるとともに、大会後の東京に確かなレガシーを残し、世界一の都市へと飛躍させてまいります。
パラリンピックの成功と障害者スポーツの振興についてでございますが、インスブルック・パラリンピックの金メダリストでありますダイアナ・ゴールデン・ブロスニハン選手は、人は誰もが生きた印を刻んでいく、私たちの傷跡は、私たちが生き、人生から逃げなかったあかしなのだといっております。これは、障害の有無にかかわらず、限界に挑戦し続けるアスリートの本質を伝えております。
私は先日、チャレスポTOKYOで、車椅子バスケットボールの迫力や障害者スポーツのすばらしさを再認識いたしました。二〇二〇年大会に向けて、パラリンピアンが限界に挑む姿を伝え、体感してもらうプログラムをNO LIMITS CHALLENGEと名づけ、都内の各所で実施し、パラリンピック、ひいては障害者スポーツへの興味、関心を高めてまいります。
また、一人でも多くの障害者が身近な地域でスポーツ活動に取り組み、スポーツを通じてより豊かな生活が実現できるよう、場の確保や人材育成を重点的に進めます。
さらに、新たに整備する施設を初め、ハード面のバリアフリー化を、障害者のご意見なども伺いながら推進し、競技者も観客もともに利用しやすい快適なスポーツ環境を創出してまいります。
二〇二〇年パラリンピック大会を機に、障害者スポーツが日本社会において確固たる地盤を得たと語り継がれるよう、全力で取り組んでまいります。
二〇二〇年大会を契機としたバリアフリー化の推進についてでありますが、大会のレガシーとして、障害のあるなしにかかわらず、全ての人がバリアを感じることなく生活し、人生を楽しむことができる、そういう東京を実現したいと思っております。パラリンピックの成功は、まさにそのことの土台となるものであります。
まず、大会に向けまして、都は会場やそこに至る経路のバリアフリー化推進に向けて、基準の策定を進めております。四月には、各会場のドア幅などの施設の基準について先行的に取りまとめ、今後はこの基準を広く周知して、大会に向けた環境を整備してまいります。
また、ハード面の対策だけではなく、心のバリアフリーも重要であります。車椅子の方やベビーカーを抱えたお母さんが来れば、みずから進んで手助けする意識を育む必要があります。ボランティアの育成やパラリンピックの普及啓発、教育などのさまざまな機会を通じて、こうした風土を築いてまいります。
さらに、我が国は、海外からの観光客にとっては言葉のバリアが存在します。案内表示の多言語化や先端技術を使った翻訳ツールの充実など、言葉のバリアフリーも進めてまいります。
こうした取り組みを東京全体に波及させ、大会を機に、世界一の都市東京へと躍進を遂げてまいりたいと思っております。
ラグビーワールドカップ成功に向けた決意についてでございますが、都議会の皆様方からの強力な後押しを得まして、ラグビーワールドカップ二〇一九の会場として東京スタジアムが選ばれ、あわせて開会式、開幕戦の会場となったことは大変光栄なことでありまして、喜ばしいことでございます。
東京スタジアムは多摩地域のスポーツ拠点であり、翌年のオリンピックでは七人制ラグビー会場ともなります。ラグビーワールドカップの開催は、スポーツ都市東京を世界にアピールする絶好の機会となります。
イングランド大会におけます日本代表の南アフリカ戦での歴史的勝利は、都民、国民の皆さんに大きな感動と興奮をもたらし、私も大変感銘を受けました。
今回、主催者のワールドラグビーから招待を受けまして、ロンドン市を訪問して決勝戦を視察いたします。さらに、現地のジャパン・パビリオンにおけるレセプションやブース出展などを通じて、大会成功への意気込みや東京の魅力を世界に発信してまいります。
アジア初開催となりますラグビーワールドカップ二〇一九の成功に向け、国内外からお越しになる皆様に最大限のおもてなしを提供し、世界各国のラガーたちが最良のコンディションでぶつかり合うことができるよう、組織委員会や各開催自治体と連携し、都議会の皆様としっかりスクラムを組み、全力で開催準備に取り組んでまいります。
次に、ボランティア活動の推進についてでございますが、二〇二〇年東京大会を契機としてボランティア活動の機運を醸成し、大会後もボランティア文化を定着させていくことが必要であります。東京には、企業、学校、NPOなどが集積しておりまして、こうしたさまざまな主体がボランティア活動についての取り組みを進めることは、居住地での活動のみならず、通勤、通学先などを通じた幅広い活動の機会を提供することにつながります。
こうした観点も踏まえまして、ボランティア関係の有識者で構成される検討会の議論をもとに、都民の活動を拡大するための具体的な方策を明らかにした指針を今年度策定いたします。
また、広く都民に対し呼びかけるなど、機運の醸成や裾野拡大に向けた環境づくりを進めるため、官民さまざまな団体、関係者で構成される東京都ボランティア活動推進協議会を発足させました。あわせまして、まず都として、今月、庁内各局が別々に募集していたボランティアの情報を初めて一元的に提供するホームページを開設いたします。
これらの取り組みを進めまして、長期ビジョンに掲げた二〇二四年度における都民のボランティア行動者率四〇%の達成を目指しまして、人と人とが支え合う共助社会を構築してまいります。
なお、そのほかの質問につきましては、警視総監、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔警視総監高橋清孝君登壇〕
○警視総監(高橋清孝君) 東京オリンピック・パラリンピックを見据えたサイバー攻撃対策と今後の取り組みについてお答えいたします。
オリンピック・パラリンピックのような大規模なスポーツイベントは、国際テロ組織やテロを実行しようとする者にとって格好の攻撃対象であります。現に、二〇一二年に開催されたロンドン・オリンピックの期間中に多数のサイバー攻撃が敢行されたことに鑑みれば、二〇二〇年大会開催に向けてサイバー攻撃対策を強化することが必要不可欠であります。
警視庁では、一昨年に設置しましたサイバー攻撃特別捜査隊を中心として、海外ハッカーの動向などサイバー攻撃に関する情報収集や、民間事業者との情報共有、共同訓練などによる被害未然防止対策のほか、サイバー攻撃事案の捜査を通じ、攻撃者や手口の実態解明を鋭意推進しているところであります。
また、さらなるサイバー攻撃対策の強化を図るため、サイバー攻撃に関する情報収集や事案対処のための資機材の整備、捜査員に対する教育訓練、海外におけるサイバー攻撃情報の調査研究などを推進することとしております。
今後とも、組織委員会などの関係機関と緊密に連携し、東京オリンピック・パラリンピックにおけるサイバー攻撃対策に万全を期してまいります。
〔教育長中井敬三君登壇〕
○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、教科道徳の先行実施に向けた取り組みについてでありますが、児童生徒に人が人として生きる上で大切な倫理感や道徳性を身につけさせることは喫緊の課題であり、先行実施に向けた速やかな取り組みが極めて重要であります。
そのため、都教育委員会は、道徳教育推進教師養成講座を実施し、小中学校における教科化推進の核となる実践力のある教員の養成を進めております。さらに、全国に先駆けて、検定教科書が発行される前に各学校が先行して指導できるよう、教科化に対応した教材の開発と、指導資料の作成及び教科化を推進する拠点校の設置などを行ってまいります。
今後、これらの取り組みを通して、小中学校における特別の教科道徳の先行実施を、区市町村教育委員会と連携して強力に推進してまいります。
次に、学校教育の中で障害者スポーツの魅力を伝え、障害者への理解を促すための取り組みの充実についてでありますが、パラリンピック大会は、障害者スポーツを通じて、心のバリアフリーを体得するための絶好の機会であります。都教育委員会は、パラリンピアン等を招いて障害者スポーツを体験する取り組みや、障害者スポーツを通じた特別支援学校と小中学校等との交流を促進してまいります。
また、特別支援学校を地域における障害者スポーツの拠点として位置づけ、オリンピック・パラリンピック準備局と連携して体育施設の活用を一層推進するとともに、必要な施設の環境整備を検討してまいります。
二〇二〇年大会に向けて、こうした取り組みを加速させることにより、児童生徒一人一人が障害者への理解を深めるための教育を推進してまいります。
〔東京都技監安井順一君登壇〕
○東京都技監(安井順一君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化についてでございますが、耐震診断により耐震性不足が明らかになっても、改修工事に合意できていない分譲マンションなどもあることから、現在の耐震化率は約八割にとどまっております。一方、条例で診断を義務づけた建築物のうち約九割の診断結果が得られており、路線ごとの耐震化の状況をほぼ把握することができております。
今後、現状を踏まえたシミュレーションにより、支援物資の輸送など、緊急輸送道路としての機能を確保できる耐震化の目標を定めまして、オリンピック・パラリンピック開催までに達成できるよう、支援策を検討してまいります。
引き続き、災害に強い都市の実現に向け、建物倒壊による道路閉塞ゼロを目指す道筋についても検討し、年度内に改定予定の耐震改修促進計画に反映させてまいります。
次に、都市づくりのグランドデザインについてでございますが、オリンピック・パラリンピックを跳躍台にして東京を持続的に発展させていくためには、大会のレガシーを生かしつつ、そのさらに二十年後、三十年後を見据えて計画的に都市づくりを進めていく必要がございます。
このため、先般、都市計画審議会に対しまして、本格的な少子高齢化、人口減少や技術の進歩など、今後のさまざまな社会の変化を視野に入れた二〇四〇年代の東京の都市像と、その実現に向けた道筋について諮問いたしました。
先行しております生活像にも着目した東京のグランドデザイン検討委員会における広範な議論も参考に検討を進めまして、経済活力とゆとりある生活を支えるインフラや土地利用、住環境のあり方など、社会の成熟に合わせて進化した都市の姿を明らかにしてまいります。
次に、都市計画道路の整備方針についてでございますが、将来にわたる東京の持続的発展を実現していくためには、広域的な交流、連携や高度な防災都市、個性的で活力ある地域づくりなどを支える道路ネットワークのさらなる充実が不可欠でございます。
次期の整備方針では、骨格的な幹線道路網の形成に加えまして、災害時における救援、救護ルートの確保、ゆとりのある歩行者空間の創出などの観点から、今後十年間で優先的に整備する路線を選定いたします。また、都県境の連絡や空港アクセスの強化などを図るための新たな計画路線を示す一方で、廃止を含め、計画を見直す路線についても明らかにいたします。
引き続き、地元区市町とともに検討を進め、年内には新たな整備方針案を公表いたします。
最後に、マンション施策の今後の取り組みについてでございますが、今月初めに開かれた住宅政策審議会におきまして、管理組合による適正な管理や老朽マンションの再生を促すために重点的に取り組むべき施策についての答申が出されました。
都は、直ちに区市との検討会を設置いたしまして、マンション管理の実態を把握し、管理不全の予防、改善を図るための具体的な方策などについて検討を開始したところでございます。
また、マンション再生につきましても、既に着手した先行モデル事業の中で、まちづくりと連携した方策について区市との意見交換などを進めており、今後の制度構築につなげてまいります。
年度内には、これらの施策を盛り込んだ新たな計画を策定し、安全で良質なマンションストックの形成に向けて取り組んでまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕
○総務局長(中西充君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、マイナンバー導入に向けた取り組みについてでございます。
来年一月からの利用開始に向け、都民の安心と理解が得られるよう、制度の周知などの準備を着実に進め、円滑に導入していくことが重要でございます。
これまで都は、都民や事業者向けに各種媒体を活用した広報を積極的に行うとともに、区市町村に対しまして、カード交付等が円滑に行われるよう、説明会の開催や助言などを行ってまいりました。また、個人情報の保護に係る対応やセキュリティーを確保したシステムの構築、改修などを進めるとともに、都民の利便性の向上のため、都がマイナンバーを利用する事務について定める条例案を本定例会に提出しております。
都民が安心してマイナンバーを利用できるよう、今後も国及び区市町村とも連携して適切に取り組んでまいります。
次に、サイバーセキュリティー対策の強化についてでございます。
日々高度化、多様化するサイバー攻撃の脅威に対し、事前事後の対応を含め、総合的な対策をさらに強化していく必要がございます。
そこで、十月には、全庁横断的な体制として、副知事をトップとするサイバーセキュリティー委員会の設置や情報セキュリティーに関する基本方針などの見直しを行います。
また、国、警視庁及び区市町村等との連携体制の構築、人材の育成、サイバー演習の実施などの取り組みを計画的に進めるため、今年度中にロードマップを策定し、来年度初めには、全庁のセキュリティー事故対応を統括し指導、指示などを行う東京都CSIRTを設置いたします。
こうした取り組みを早急に進め、東京都全体のサイバーセキュリティーレベルの向上を加速させてまいります。
最後に、島しょ五村における超高速ブロードバンド整備についてでございます。
島民生活の向上及び産業振興等の観点から、早期の着手が必要と認識しております。高額な整備費などが課題となりますが、国は成長戦略の柱としてICT利活用を掲げ、離島の超高速ブロードバンド化を推進していることから、国も一定の責任を果たすべく、財政支援を国に強く要望しております。
また、伊豆諸島近海では、季節風により冬季の海洋工事が困難という特殊事情があるため、数カ年での分割整備など、さまざまな方策を講じていく必要がございます。
今後とも、国及び五村と連携し、財政支援や整備手法の具体化について精力的に協議を進めるなど、早期整備の実現に向けて積極的に取り組んでまいります。
〔建設局長佐野克彦君登壇〕
○建設局長(佐野克彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
初めに、高度防災都市を実現するインフラについてでございますが、切迫する首都直下地震から都民の命と暮らしを守るためには、被害を最小化し、避難や救援を支えるインフラ整備が重要でございます。このため、都道における緊急輸送道路等の橋梁は、四百一橋全ての耐震化について、今年度完了を目指してまいります。
第一次緊急輸送道路では、道路閉塞を防止する無電柱化の延長を、平成三十六年度までに約三百キロメートルへ倍増させます。木密地域では、延焼遮断帯や避難路等となる特定整備路線の全二十八区間で用地取得に着手いたしました。また、公園において、非常用発電設備やデジタルサイネージ等の設置により、防災機能の向上を図ってまいります。東部低地帯では、防潮堤約四十キロメートル、水門等全二十二施設の耐震、耐水対策を、平成三十一年度までに完了いたします。
こうしたインフラ整備を通じ、地震に強い都市を実現してまいります。
次に、渋滞解消に向けた一般道路の整備についてでございますが、東京の道路は、経済の活性化や国際競争力の強化に資するとともに、安全で快適な都市活動や都民生活を支える重要な都市基盤でございます。このため、交通渋滞を解消し、効率的な移動ができるよう、道路ネットワークを形成することが極めて重要でございます。
都は、環状第二号線を二〇二〇年早期に全線開通させるなど、骨格幹線道路の整備を推進してまいります。あわせて、京王線笹塚駅から仙川駅間など連続立体交差事業による踏切の除却、第三次交差点すいすいプランによる七十六カ所の交差点改良などに取り組んでまいります。
今後とも、二〇二〇年東京大会のみならず、その先も見据え、積極的に道路整備を推進し、世界一渋滞の少ない都市東京を実現してまいります。
最後に、道路の暑さ対策についてでございますが、二〇二〇年大会開催時にアスリートや観客が暑さをしのげるよう、道路の暑さを緩和する環境を整えることが重要でございます。
都は、センター・コア・エリアを中心とした重点エリアで、路面温度の上昇を最大で八度抑制する遮熱性舗装などを、路面補修工事にあわせて実施しております。都道の対象延長約百三十六キロメートルのうち、平成二十六年度までに八十四キロメートルを整備いたしました。
今後は、残る五十二キロメートルを毎年約十キロメートル整備し、大会開催までに完了させます。あわせて、街路樹の樹形を大きく仕立てる剪定を計画的に実施し、歩道の木陰をより多くつくり出してまいります。
こうした道路の暑さ対策について、大会開催後も見据え、引き続き取り組んでまいります。
〔消防総監高橋淳君登壇〕
○消防総監(高橋淳君) 地域防災力強化の取り組みについてでありますが、当庁では、防災ブックの配布を都民に防災の重要性を認識してもらう絶好の機会と捉え、今月上旬から全消防署において、誰でも参加できる東京防災セミナーを開催し、防災ブックを活用して、出火防止や家具類の転倒防止など、今すべき対策の実践を促すとともに、初期消火訓練や応急救護訓練等を実施しているところでございます。
さらに、これを契機として、防災に関心の低い層の掘り起こしを図るほか、消防団や区市町村と連携し、町会や学校を初めさまざまな地域コミュニティに働きかけ、訓練を実施していない地域の解消にも取り組んでまいります。
今後とも、都民が参加しやすいまちかど防災訓練等を積極的に推進し、より多くの都民が実践的な防災行動力を身につけることによって、地域防災力の充実、強化を図ってまいります。
〔財務局長長谷川明君登壇〕
○財務局長(長谷川明君) 都有建築物の耐震化についてお答えいたします。
消防署や警察署、病院、学校などの都有建築物は、災害時の活動拠点や避難所等となることから、速やかな耐震化が必要と認識しております。
このため、平成二十年三月に、東京都が所有する防災上重要な公共建築物の耐震化整備プログラムを策定し、二十七年度末までに耐震化を完了することを目標として計画的に事業を推進してまいりました。
この結果、土壌汚染や地中障害物の対策に時間を要したものなどを除き、今年度末までに約四百四十棟の建てかえや移転、改修等が終了し、耐震化率は九九%となる見込みでございます。残る約三十棟につきましても、現地や移転先での建てかえ工事などを進めているところであり、引き続き関係各局と連携し、耐震化の完了に向けて着実に取り組んでまいります。
〔水道局長醍醐勇司君登壇〕
○水道局長(醍醐勇司君) 二点のご質問にお答えします。
まず、安定給水確保に向けた施設整備の基本的な考え方についてでありますが、発災時の応急対策はもとより、さまざまな課題やリスクに備えるには、予防対策としての強靱な施設整備が重要であります。このため、渇水や大地震などの災害や事故に備え、八ッ場ダム建設の早期完成を働きかけるとともに、管路の二重化、ネットワーク化、耐震化等の整備を計画的に推進してまいります。
また、経験したことのない自然災害やテロ行為の発生などにも備えるため、大規模浄水場更新に際しては、ろ過池に加えまして、沈殿池等を含めたさらなる覆蓋化など、危機管理対策を多角的に検討してまいります。
こうした取り組みを、現在策定中の新たな経営プランに反映し、強固で強靱な水道施設を整備することにより、将来にわたる首都東京の安定給水を確保してまいります。
次に、多摩地区水道の本格的な再構築についてでありますが、水道局では、一元化に際して維持管理業務を各市町に事務委託してきたため、配水管のバックアップ機能が不十分で、老朽化した施設の更新が進まない状況にあります。また、業務や各種システムのさらなる効率化、広域化を踏まえた地元業者との一層の連携等が不可欠です。
ご指摘のように、多摩地区水道の再構築は、事務委託を解消した今、まさに緒についたばかりでございまして、これらさまざまな課題を解決し、名実ともに広域水道といえるよう本格的に取り組みを推進していく必要があります。
今後は、市町域を越えた配水管網の整備や老朽化した小規模施設の再編、区部と多摩で異なる業務システムの統合などを積極的に行っていくため、長期的な道筋をつけた新たな改革計画を策定し、再構築を推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕
○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、社会福祉法人制度改正への対応についてでありますが、現在議論されている制度改正は、全ての法人に対する評議員会の設置や、一定規模以上の法人への会計監査人の導入を義務化するほか、余裕財産を活用した地域福祉サービスへの再投下計画の作成を義務づけるなど、現行の社会福祉法人制度を大幅に見直すものとなっております。
都内では、さまざまな事業規模を持つ約千の社会福祉法人が活動しておりますことから、制度改正時にその内容を全ての法人が正しく理解し、みずから適切に対応できるよう、現在、学識経験者や法人の代表者等で構成する社会福祉法人専門家会議において、効果的な普及啓発方法や法人の自主的な取り組みの促進策等について議論を行っております。
今後、国の状況や専門家会議の議論も踏まえながら、新制度に円滑に対応できるよう法人を支援してまいります。
次に、福祉のまちづくりの推進についてでありますが、お話のように、東京を障害者や高齢者を初め、誰もが安心かつ快適に過ごすことができるまちにするためには、ソフト面での取り組みの充実が必要でございます。
このため、昨年策定した長期ビジョンでは、心や情報面のバリアフリーの推進を政策目標の一つに掲げており、現在、福祉のまちづくり推進協議会では、学校や地域における学習の推進や、点字や手話、多言語対応等による情報提供など、具体的な方策をご議論いただいております。
来月一日には意見具申をいただく予定であり、今後、基本方針や効果的な対策事例を盛り込んだガイドラインを作成し、区市町村や事業者とも連携しながら、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会に向け、ソフト面での福祉のまちづくりをより一層推進してまいります。
次に、待機児童解消に向けた取り組みについてでありますが、都はこれまで、保育サービスの整備を促進するため、区市町村や事業者の負担軽減、都有地の減額貸付、国有地、民有地の賃借料補助など、独自の支援を実施してまいりました。
その結果、昨年度の利用児童数は一万二千六百二人分増加し、待機児童数は減少したものの、人口流入や共働き世帯等の増加等により、保育ニーズは増大しております。
今年度からは、整備促進策に加え、認可保育所、認証保育所、認定こども園、小規模保育等を対象に、保育士の確保、定着を促進するためのキャリアアップ補助や、保育の質の向上に向けた新たな取り組みも開始いたしました。
今後とも、平成二十九年度末までに待機児童を解消するという目標の達成に向け、保育サービスのさらなる整備と質の向上に取り組む区市町村を積極的に支援してまいります。
最後に、家庭的養護の推進についてでありますが、都はこれまで、養育家庭の登録数をふやすため、制度を広く都民に周知するとともに、民間団体も活用して児童を委託している養育家庭をきめ細かく支援してまいりました。また、ファミリーホームやグループホームの開設準備経費や家賃助成等を独自に支援し、設置を促進してまいりました。
こうした取り組みをさらに進めるため、本年八月に児童福祉審議会に学識経験者や事業者等から成る専門部会を設置し、養育家庭の登録拡大、ファミリーホーム等の設置促進、委託促進のための体制強化など、家庭的養護を進める具体的方策をご議論いただいております。
今後、社会的養護施策推進計画に定めた目標の達成に向け、専門部会での議論も踏まえながら、新たな支援策を検討し、家庭的養護を一層推進してまいります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) 東京都子供・若者計画策定による地域の対応力の強化についてでございますが、社会的自立に困難を抱える子供、若者を取り巻く環境は多様化しており、教育、福祉、雇用等の関係機関がこれまで以上に連携を強化することが重要でございます。
このため、都は本計画を策定し、今後の五カ年で、都内全域で子供、若者施策の枠組みづくりを推進することで、子供、若者が関係機関の連携のもと、地域できめ細かな支援が受けられるよう取り組むこととしており、区市町村が地域の課題に応じた計画の策定や、支援のネットワークである子供・若者支援地域協議会を設置することができるよう、関係各局等から成る東京都子供・若者支援協議会を活用し、ノウハウや情報等を提供し、支援体制の充実を図ってまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕
○環境局長(遠藤雅彦君) 今後の資源循環施策についてでございますが、持続可能な資源利用の実現には、廃棄物減量施策を着実に推進するとともに、製品等の生産や流通段階から資源のロスなどを削減していくことが必要でございます。
このため、都は、「持続可能な資源利用」に向けた取組方針に基づきまして、エコマテリアルの利用の促進等、三つの分野について先進的なモデル事業を公募し、専門家の意見を踏まえた上で、計六事業を選定いたしました。
今後、選定された事業主体との意見交換や調整を積極的に行い、民間の知恵と創意工夫が十分に生かされた事業にしてまいります。さらに、モデル事業の成果を取りまとめ、情報発信することなどにより、都民、事業者に広く普及拡大するとともに、今年度中に策定予定の東京都廃棄物処理計画に反映し、今後の資源循環施策に生かしてまいります。
〔港湾局長武市敬君登壇〕
○港湾局長(武市敬君) 舟運事業者の新たな事業展開の促進に向けた取り組みについてでございますが、二〇二〇年の東京大会を見据え、国内外からのお客様のおもてなしにも対応できる舟運を実現していくためには、舟運事業者の航路創設を促進する環境整備を図っていく必要がございます。
このため、都は、保有している八つの公共桟橋を一層活用するとともに、鉄道駅や商業施設などから近く、利便性が高い場所への新たな船着き場の設置について検討してまいります。
今後とも、東京のウオーターフロントの魅力を、都民を初め、東京を訪れる旅行者など多くの方々に体験していただけるよう、舟運の活性化を図り、世界に誇る水の都東京の実現に取り組んでまいります。
〔交通局長塩見清仁君登壇〕
○交通局長(塩見清仁君) 都営大江戸線の輸送力増強についてでございますが、大江戸線は、多くの駅で他路線との乗りかえができ、ネットワーク効果が高いことなどから、近年、乗客数が年平均約四%増加しており、特に開発が進んでいる臨海地域の伸びは約七%と顕著でございます。
また、この地域は、二〇二〇年大会の多くの会場を擁しておりますことから、大会期間中には国内外から多くの利用客が見込まれるとともに、再開発計画等を踏まえますと、大会後の混雑率は一六〇%を超え、国土交通省が混雑改善の指標とする一五〇%を上回ると予測しております。
こうしたことから、交通局では、勝どき駅ホーム増設にあわせまして、大江戸線の輸送力を増強するため、平成三十年度中の三編成の車両増備について検討を進め、臨海地域の発展や二〇二〇年大会の成功に貢献してまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕
○産業労働局長(山本隆君) 六点のご質問にお答えをいたします。
まず、日本各地と連携した産業振興策についてでございますが、二〇二〇年大会を契機として、東京、さらには日本の経済が発展していくためには、国内の各地と協力をしてさまざまな産業活性化策に取り組むことが重要でございます。
そこで、東京と各地を結ぶ観光ルートについて、現在の東北に加え、中国、四国を対象とするよう検討をいたします。さらに、都内にある各自治体のアンテナショップとの連携や、東京ドームで開催をされるふるさと祭り東京二〇一六への出展により、東京で各地の魅力に触れる機会の拡充を図ってまいります。
また、全国の中小企業に発注情報を提供するポータルサイトの構築、東北等の畜産農家と協力をしたトウキョウXの生産拡大、多摩産材とあわせた他県産木材のPRを進めてまいります。
今後、こうした連携策をより一層強化することにより、東京のみならず、日本全体の発展につなげてまいります。
次に、ものづくりとたくみのわざの魅力発信についてでございますが、若者のものづくり離れが進む中、我が国のものづくり産業を持続的に発展させるためには、東京を起点として日本各地と連携し、ものづくりとそれを支える職人わざの魅力を広く発信していくことが重要でございます。
このため、都内のみならず、全国からすぐれた技能を一堂に集めた大規模なイベントを、来年夏、東京国際フォーラムで開催するための準備に着手をいたします。ものづくりとたくみのわざの魅力を、若者を初め、国内外の多くの人々に広く発信するとともに、実際に参加をして体験できる機会を提供するイベントとなるよう検討をしてまいります。
こうした取り組みによりまして、若者がものづくりを目指す社会的な機運を高めてまいります。
次に、中小企業の新事業分野への展開支援についてでございますが、東京の産業が持続的に発展していくためには、中小企業がこれまでにない発想のもとで新しい製品やサービスを生み出し、新たな事業分野を切り開いていくことが重要でございます。
こうした新分野は、ものづくりとIoTを初めとする最新の情報処理技術の融合などのように、目標や課題を共有する企業や大学などさまざまな主体が出会い、相互に影響を及ぼし合う中で生まれてまいります。
このため、都は、意欲ある中小企業が革新的なアイデアを実現し、新事業に参入できるよう、大学、研究機関等とのマッチングを行うとともに、そこで生まれた連携体に対し、事業計画の策定から販路開拓に至るさまざまな施策をパッケージ化した総合的な支援策を検討してまいります。
次に、中小企業の事業承継への支援についてでございますが、東京の産業力の維持発展のためには、すぐれた技術力を有する企業の次代への承継が円滑に進むよう、経営、財務や人材確保等のさまざまな課題に対し、効果的に支援していくことが重要でございます。
都は今年度、新たに設置した六カ所の小規模企業等の支援拠点において、専門家を活用して、事業承継に係る経営面等の支援を行うとともに、制度融資に事業承継のメニューを新設するなど、多面的に施策を展開しております。
今後は、支援の効果を一層高めるため、金融機関や人材紹介会社等、外部機関の活用、連携により、現場に出向いての経営者への働きかけや後継者探し等の取り組みに対する支援、企業の財務上の課題解決を図る仕組みなど、施策のさらなる充実を検討してまいります。
次に、新銀行東京の経営統合を契機とした中小企業支援の強化についてでございます。
新銀行東京は、一時深刻な経営状況にありましたが、追加出資を都議会に認めていただき、貸出先の中小企業の多くが事業を継続することができました。その後、経営陣や行員の懸命な努力もあり、黒字を継続しつつ、中小企業支援を進めてまいりました。
このたびの東京TYフィナンシャルグループとの経営統合の実現により、新銀行東京の設立理念である中小企業支援の取り組みをさらに発展させることが期待されます。これを実効性あるものとするため、都は、同グループと産業振興に関する包括連携協定を締結いたしました。
今後、都は、同グループの有する都内百二十以上の店舗網を活用し、中小企業の海外展開や創業支援を初めとする施策を広く紹介し、さらなる利用を促進してまいります。また、金融機関に寄せられる中小企業の生の声を反映させ、一層きめ細かで効果的な施策を展開することにより、中小企業への支援を強化してまいります。
最後に、新たな都市農業振興施策についてでございますが、都市農業の振興を図るためには、国による農地制度等の改善とあわせて、担い手の確保や経営力向上など、農業者が抱える課題に的確に対応することが重要でございます。
都ではこれまで、担い手の確保策として、農業後継者育成のための技術研修やセミナー等を行ってまいりましたが、今後は、農地の貸借等の制度改善を見据え、新たな就農希望者に対する先進農家での研修なども検討してまいります。
また、経営力の向上に向けては、ハウスなどの生産施設の整備や商品開発の取り組みの支援に加え、農産物のブランド化を促進するため、商工分野の専門家等の助言や販売促進に対する支援の充実などを検討してまいります。
こうした取り組み等を着実に推進し、都民の期待に応える魅力ある都市農業の一層の振興を図ってまいります。
〔下水道局長石原清次君登壇〕
○下水道局長(石原清次君) 下水道管の再構築についてでございますが、現在、整備年代の古い都心などを第一期再構築エリアとして、平成四十一年度の完了を目標として事業を進めておりまして、工事に当たっては、道路を掘らずに施工し、再構築のスピードアップが可能な更生工法を多用するなど、工夫をしております。
一方、入札不調の対策として、受注者が一定の期間内で工事着手日を決定し、柔軟に技術者を配置できるフレックス工期制度を今年度導入いたしました。この効果の検証も含め、建設業界の意見を踏まえた取り組みを、必要に応じ進めてまいります。
また、再構築の進捗状況に応じまして、老朽化が進み、対応を急ぐ地区では、局所的な補修工事を組み合わせるなど、柔軟に対応を図ってまいります。
これらにより、オリンピック・パラリンピック開催にも支障がないよう、下水道の機能維持や道路陥没対策を確実に進めまして、都民の安全・安心を確保してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕
○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、体操競技場の大会後の活用方法についてでございますが、体操競技場は規模の大きな仮設施設であることから、大会終了後も可能な限り有効活用していくことが重要と考え、これまで組織委員会とともに検討を重ねてまいりました。
本施設の活用期間は、その立地場所であります有明北地区のまちづくりの将来像等や周辺の開発状況を勘案いたしますと、十年程度と想定されます。また、施設自体は、ホール状の大空間を有するなどの特徴がございます。
これらを踏まえ、必要となる改修費用や近隣施設との機能のすみ分け、さらにスポーツ、文化、産業などさまざまな利用ニーズ等の視点から、活用策について幅広く調査検討を行ってまいりました。
その結果、中小企業を中心に、都内にニーズが見込める展示場機能を初め、各種セミナーやイベント会場など、本施設の大空間をそのまま生かした多様な活用が最もふさわしいとの方向性を得たところでございます。
都といたしましては、今後、より具体的な内容を検討し、首都東京を支える産業振興のための拠点の一つとして積極的に活用を図ってまいります。
次に、障害者スポーツの場の確保についてでございますが、障害者スポーツの場としては、日常的なスポーツ活動を支える身近な地域の施設と、専門性が高く、障害者の幅広い活動を支える広域拠点とがあり、これらを利用者の意見などを踏まえ、活用、充実させていく必要がございます。
そこで、まず身近な地域の施設につきましては、昨年度から始めた区市町村立スポーツ施設のバリアフリー化工事への補助など、引き続きハード、ソフト両面から支援策を講じてまいります。また、教育庁と連携し、都立特別支援学校の体育館などのさらなる活用推進策を検討してまいります。
さらに、都立障害者スポーツセンターを改修し、機能、利便性向上を図るとともに、パラリンピック後の障害者スポーツ振興をも見据え、既存施設の活用を含め、広域的な観点から、場の充実強化の可能性を検討してまいります。
〔病院経営本部長真田正義君登壇〕
○病院経営本部長(真田正義君) 多摩メディカルキャンパスにおける医療体制についてでありますが、現在、多摩及び小児の二つの総合医療センターが中心となり、救急、がん、周産期など重症度の高い急性期医療を担っております。
今後の医療環境の変化に適切に対応するため、さらなる医療の高度化を図るとともに、小児や難病等の希少疾患に対して、先進的かつ専門性の高い医療を提供することが必要でございます。
そのため、都内最大となる集積メリットをこれまで以上に活用し、医療、研究、人材育成の好循環の創出により、キャンパス総体の潜在能力を引き出す考えでございます。
今後は、ハード、ソフトの両面から、都内で最も高度な医療集積群、いわゆるメディカルコンプレックスとして整備するため、来年二月をめどに外部委員を含む検討会において最終報告を取りまとめ、多摩地域の医療拠点としてさらなる充実を図ってまいります。
○議長(高島なおき君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
午後三時十八分休憩
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