平成二十七年東京都議会会議録第九号

○副議長(藤井一君) 三十番山内れい子さん。
〔三十番山内れい子君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○三十番(山内れい子君) 都議会生活者ネットワークを代表して質問いたします。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会については、世界一のオリンピックを目指し、国やスポーツ界も大会を盛り上げようとしてきましたが、ここへ来て、新国立競技場をめぐる完成時期や建設費などの問題により、収拾のつかない事態となっています。旧競技場を跡形もなく取り壊したタイミングでのどたばた劇には、多くの都民から非難の声が上がっています。
 知事は、開催都市としての責任を果たすため、国に対して、費用負担について情報公開を求めるとともに、負の遺産にしないためにも、計画の全面的見直しを求める必要があると考えます。
 こうした中で、二〇二〇年東京大会を今の時代に合ったものにしようと、障害のある人もない人も一緒に参加するなど、多様性をキーワードにした若い世代による大胆な提案も出されています。この際思い切って、多様な人がわくわくするような新たなオリンピックを構想してほしいと考えます。
 東京は、さまざまな文化や価値観を持った都市であり、そこに多様な人が集まる東京大会は、多様性の尊重がどこまで実現できるか試される大会になると思いますが、知事の見解を伺います。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会は、環境配慮もうたっています。
 都は長期ビジョンで、エネルギー消費量を二〇二〇年までに二〇〇〇年比二〇%削減、二〇三〇年までに三〇%削減の目標を掲げていますが、二〇二〇年東京大会は、その成果を示す機会となります。
 カーボンニュートラルの大会を目指して、各会場ごとのエネルギー消費量を捉え、省エネ仕様にするとともに、再生可能エネルギーの飛躍的な導入にも取り組む必要があると考えますが、見解を伺います。
 環境配慮の面からも、地場や国産の木材利用を進めることは有効です。
 二〇二〇年東京大会の関連施設の整備において、多摩産材の利用を検討することが都の計画の中に位置づけられています。施設の設計が始まるに当たって、国産材もしくは多摩産材をどれくらい利用しようとしているのかお伺いいたします。
 福島原発事故をきっかけに、省エネや再エネの普及は大きく進みました。
 特別養護老人ホームなどの福祉施設や医療施設は、電気だけでなくお湯をたくさん使うことから、熱を含めてエネルギーを効率的に利用することが重要です。熱と電気を合わせたマネジメントや太陽熱利用などを積極的に導入してほしいと考えていますが、新しく建設された施設でも導入されていない実態がありました。こうした中小規模の施設では、省エネ、再エネ対策が検討項目に入っていなかったり、資金面や人材面がネックとなり手が回らないという声を聞きます。
 このような課題に対し、都は昨年度より、中小医療福祉施設向けに創エネ、省エネ機器の導入を支援していますが、これまでの実績と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、未受診妊婦について伺います。
 二〇一一年、都は、周産期搬送コーディネーターが一一九番通報で搬送調整した事例を調査したところ、約四割もが未受診妊婦であることが明らかになりました。
 本来なら、妊娠したとき、自治体窓口に届けを出しさえすれば、母子健康手帳や妊婦健診のための補助金交付や、妊娠、出産、育児等の相談を受けることができます。しかし、そうした情報にたどり着かず、妊婦健診を受けないまま出産に至るケースがあります。これが未受診妊婦、飛び込み出産といわれるものです。
 未受診妊婦は、若年で望まない妊娠であることが多く、パートナーや家族の支援を受けられずに孤立し、経済的理由などのために未受診となっていることがわかりました。未受診で出産に至ることは、胎児にとっても母体にとってもリスクが大きいだけでなく、出産後の子育てにも影響が出やすく、児童虐待に至るケースもあり、社会問題となっています。
 妊婦健診を受けることの重要性を普及啓発するとともに、妊婦本人が孤立しないように、さまざまな不安や悩みを軽減し、適切な支援につなぐ相談支援の充実が必要であると考えます。
 舛添知事は、フィンランドのネウボラを参考にして、妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援の仕組みをつくっていくとのことですが、そうした仕組みを構築するに当たっては、地域において悩みを抱える妊婦を適切な支援につなげるという視点も重要と考えます。
 そこで、未受診妊婦対策として、普及啓発や相談支援の充実に都はどのように取り組んでいるのか伺います。
 調査結果では、未受診妊婦が出産した子供のうち、四人に一人が低出生体重児で、四割がNICU、GCUへの入院が必要だったことも明らかになりました。
 このように、医学的にも社会的にもハイリスクを抱える場合、地域の医療機関、福祉、保健、療育などの地域行政等による社会的、経済的支援や情報提供、心理的サポートなど、入院中からの支援が必要と考えます。
 とりわけ、NICU等からの退院支援において未受診妊婦への支援は重要と考えますが、都の取り組みについて伺います。
 十代で、しかも生徒が妊娠した場合、養護教諭等、学校内で相談することも多いと聞いています。学校生活を続けられるかを含めた今後の生活の変化に対する不安や、どうしたら産み育てていくことができるかなどの相談に対する支援を充実するために、都立学校における実際の支援の内容、支援のための学校内外の連携など、実態を把握し、生徒に寄り添った支援ができるようにすることが重要と考えます。
 そこで、妊娠した生徒の相談体制と対応についてお伺いいたします。
 都は、東日本大震災の経験を踏まえて、二〇一二年四月に災害時における外国人への情報提供をまとめました。
 その中では、災害時の日本語は日常生活で見聞きしない専門用語やいい回しが多く、外国人にとってはわからないという声がありました。当日は交通機関がとまり、日本人でも苦労しましたが、外国人にとっては、駅のアナウンスが理解できず、大変だったと想像いたします。
 多くの外国人が必要とした情報は、地震情報や原発事故情報、水や食料がどこで買えるのか、計画停電の予定などの平易な言葉での生活情報であり、報告書では、課題の整理を行い、効果的な情報提供に向けて提言しています。
 この報告書の中にある「やさしい日本語」の取り組みについてお伺いします。
 「やさしい日本語」とは、小学校三、四年生程度の表現を使い、例えば、避難は逃げる、給水車は水を配る車と表記するものです。来日一年の外国人を対象とした実験では、九割が内容を正しく理解できたという報告もあります。東京都地域防災計画でも、多言語とともに「やさしい日本語」が位置づけられています。
 オリンピック・パラリンピック開催を見据え、「やさしい日本語」を生かしたマニュアルやガイドブックを作成し、例えばコンビニや駅周辺、商店街などの関連機関、自治体等が統一して、東京に滞在する外国人に対し、防災、減災にかかわるわかりやすい情報提供を行い、適切な行動がとれるよう取り組みを進めていくべきと考えますが、見解をお伺いいたしまして、都議会生活者ネットワークの質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 山内れい子議員の一般質問にお答えいたします。
 多様性が尊重される二〇二〇年大会の実現についてでございますが、前回の東京大会から五十年以上を経て行われる二〇二〇年大会は、価値観が多様化した成熟都市東京での開催でありまして、相互理解、多様性の尊重などのオリンピズムを普及させることが重要だと考えております。
 二〇二〇年大会では、多様性と調和を大会ビジョンの基本コンセプトの一つとしており、世界の人々がスポーツの力を通じて、人種、性別、性的指向、言語、宗教、障害の有無など、あらゆる面での違いを肯定し、互いに認め合う社会を育む大会を目指すこととしております。
 私は、生活習慣、文化、価値観などにおいて人間の多様性が尊重され、誰もが幸せを実感できる都市こそ、東京が目指すべき姿であると考えております。
 二〇二〇年大会の成功を通じて、全ての人が生き生きと暮らすことのできる真の共生社会が実現できるよう取り組んでまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 生徒の相談体制と対応についてでありますが、都立高校においては、日ごろから生徒の不安や悩みなどに対応するため、担任、養護教諭、スクールカウンセラーを初めとして、全教職員が生徒の健康観察などに努め、教育相談を行うとともに、学校外の相談機関を生徒に周知するなどして相談体制の充実を図っております。
 生徒から妊娠の相談を受けた場合には、本人の意向や状況を的確に把握し、不安や悩みに寄り添い、保護者と連携するなど、きめ細かな対応を行うとともに、生徒の健康を第一に考えて、学校生活や授業等への参加について配慮を行っております。
 今後とも、教育委員会は各学校に対し、生徒一人一人の状況を踏まえ、本人や保護者からの相談や要望等に適切に対応できるよう、指導助言を行ってまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、オリンピック・パラリンピックにおける環境配慮についてでございますが、二〇二〇年大会におきましては、立候補の段階から環境を優先する大会という理念を掲げており、競技施設などの整備につきましては、環境に配慮して進めることとしております。
 そのため、都が整備する新規恒久施設につきましては、省エネ・再エネ東京仕様を適用し、建築物の熱負荷の低減を図るほか、太陽光や太陽熱、自然の風など、多様な再生可能エネルギーを利用する設備をできる限り導入するよう検討を進めております。
 大会の開催に向けまして、今後ともエネルギー使用の合理化を図り、環境負荷の低減に努めてまいります。
 次に、二〇二〇年大会におけます国産や多摩産の木材の利用についてでございますが、オリンピック・パラリンピックの施設整備における国産材等の活用につきましては、我が国の森林資源の循環や、日本の文化であります木を生かした建築などを国内外の方々に発信する絶好の機会であると認識しております。
 都は、長期ビジョンや森づくり推進プラン等に基づき、多摩産材の流通や利用拡大などに取り組むこととしております。
 都が整備する競技施設等につきましては、こうした方針を踏まえつつ、施設の設計を進める中で、コストや耐久性なども考慮し、広く施設整備における木材の活用を検討してまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 中小医療福祉施設の創エネ、省エネについてでございますが、昨年度より取り組んでいるESCO事業者を活用したコージェネレーションシステムなどの導入支援では、特別養護老人ホームや病院などから十九件の申請があり、中にはエネルギー使用量を一割以上削減するような事例もございます。
 また、小規模な施設に対しては、太陽熱システムの導入を支援しており、グループホームなどから三件の申請がございました。
 今後とも、補助制度の内容やエネルギー消費量の削減効果などについて、業界団体などを通じて幅広く周知を図りながら、引き続き中小医療福祉施設の創エネ、省エネを支援してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、妊婦健康診査の普及啓発と相談支援についてでありますが、都はこれまで、区市町村や医師会等の関係団体との連携やインターネット広告の活用などにより、妊婦健診の重要性の啓発に努めてまいりました。
 また、女性相談センターや女性のための健康ホットライン、昨年開設いたしました妊娠相談ほっとライン等におきまして、予期しない妊娠に関する相談のほか、経済面の悩みなど出産への不安を抱える方の相談に対応しております。
 さらに、今年度から開始するゆりかご・とうきょう事業では、区市町村において出産等準備のために育児パッケージの配布を行い、専門職が全ての子育て家庭の状況を妊娠期から把握し、継続した支援を実施いたします。
 今後とも、こうした取り組みにより、妊娠、出産に悩みを抱える女性を適切な支援につなげてまいります。
 次に、NICU等からの退院支援についてでありますが、都は、NICUやGCUに長期入院している子供が在宅療養へ円滑に移行できるよう、周産期母子医療センターへのNICU入院児支援コーディネーターの配置を支援しております。
 このコーディネーターは、子供が在宅に移行する際に、家族への医療的ケアの指導や相談、助言等を行っており、妊婦健康診査を受けずに出産した母親に対しては、育児に関する知識等を提供するとともに、保健所など地域の関係機関にもつないでおります。
 また、こうした支援方法や内容につきましては、NICUスタッフの連絡会や研修会で紹介するなど情報の共有化を図り、周産期母子医療センター等における取り組みの充実に役立てております。
〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 「やさしい日本語」を活用した取り組みについてでありますが、平成二十四年四月、地域国際化推進検討委員会から、災害時における外国人への情報提供については、英語などの外国語対応に加えまして、外国人でも理解可能な易しい表現による日本語を取り入れることも有効であるとの提言がございました。
 都はこれを受け、在住外国人向けに東京都国際交流委員会のホームページを通じて、英語や中国語などとあわせ、「やさしい日本語」でも緊急時の対応方法等を情報提供をしております。
 また、災害時に直接外国人支援を行います防災語学ボランティアを初め、区市町村、地域の国際交流委員会に対しては、易しい表現による日本語を活用した情報提供について理解を深めるための研修などを行っております。
〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 発災時に備えた外国人支援についてでございますが、大規模地震等の発生時に外国人の安全・安心を確保することは重要でございます。
 これまでも都は、在住外国人に対する英語での防災情報の提供や、「やさしい日本語」による防災知識の普及啓発、外国人旅行者向け観光ガイドへの防災情報の掲載など、発災時に備えた外国人支援策を進めております。
 また、昨年末取りまとめました東京の防災プランにおいて、災害情報の多言語化や、わかりやすい案内板等の整備など、二〇二〇年を目標に、外国人等への情報提供手段の強化を図ることとしております。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、区市町村などとも連携し、発災時における外国人の安全・安心の確保に努めてまいります。

○議長(高島なおき君) 以上をもって質問は終わりました。

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