平成二十七年東京都議会会議録第九号

○副議長(藤井一君) 二十番堀宏道君。
〔二十番堀宏道君登壇〕

○二十番(堀宏道君) 初めに、東京の都市再生に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 舛添知事は、東京で生まれ、生活し、老後を過ごせてよかったと誰もが実感できる都市こそが、真に魅力的な世界一の都市であるとおっしゃっております。私も目指すべき方向性は知事と同じ認識であります。
 東京を世界で一番の都市としていくためには、民間活力を生かして都市再生を推進し、魅力あふれる東京を創造して、海外から人、物、資金を呼び込むことが重要であります。
 都市再生を重点的かつ緊急に進める地域として、東京では、既に七地域、約二千七百六十ヘクタールについて、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域が指定されております。
 さらに、そのうち四地域、約二千五百三十ヘクタールについては、特定都市再生緊急整備地域が指定され、多数の民間プロジェクトが進行しております。
 例えば、東京駅や渋谷駅などの大規模ターミナル駅周辺では、民間による意欲的な都市再開発の実施により、質の高い国際ビジネス拠点や新たなにぎわい空間が形成されつつあります。
 これらの地域に加え、都は、池袋駅周辺についても、特定都市再生緊急整備地域の指定を国に申し入れているところであり、都市再生の取り組みを進めるとのことであります。当地区の指定については、私が豊島区の区議会議員の時代から積極的に取り組んでまいりましたので、万感胸に迫る思いがございます。
 池袋では、先月、豊島区役所が新庁舎に移転し、いよいよ旧庁舎跡地の開発計画が動き出します。来年度には造幣局の移転が予定されているほか、駅周辺においても複数のプロジェクトが見込まれており、特定都市再生緊急整備地域の指定は、地元の開発促進に向け、大きな弾みになると大いに期待しているところであります。
 池袋駅は、世界第二位の乗降客数を有する大規模ターミナルであり、この地域の都市再生を進めることは、東京の国際競争力を向上させるためにも重要であると考えます。
 池袋駅周辺の都市再生について、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、都電荒川線を活用した緑のネットワーク化についてお伺いいたします。
 魅力あふれる東京を創造していくためには、都市の再生に加え、都市の景観や環境にも配慮して、後世に誇れるクリーンで美しい東京を実現することも必要です。
 私の地元豊島区には、開業から百年以上の歴史を誇る路面電車が運行されており、地域住民によるバラの植栽など、沿道を華やかに彩ることにより、地域の活性化に貢献しております。このような取り組みを後押しするためにも、この軌道敷を緑化していくことは、景観向上とともに、新たな観光スポットになる可能性も秘めた取り組みとして期待できます。
 昨年の第四回都議会定例会で交通局は、都電荒川線を活用した緑のネットワーク化に向け、今後、検証を行うという答弁がありました。
 この軌道敷の緑化への取り組みについては、例えば、平成十八年度から実施しております鹿児島市の市電では、緑化した軌道敷内の温度は、地表面温度と比べ、夏季の測定結果で二十度近く低くなったとの結果が出ておりますし、緑化による都市景観の向上により、市民や観光客からも高い評価を得ているようであります。
 こうした他都市の事例においては、軌道事業者と行政とが、費用負担や維持管理も含め、連携して取り組んでいるようです。
 今後、本格的に事業を展開していくためには、軌道という特殊な条件下における最適な工法や、四季を通して緑を維持できる品種等を選定するとともに、その課題を明らかにしていくことが極めて重要です。
 そこで、都電荒川線を活用した緑のネットワーク化に向けて、今後どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、防災対策についてお伺いいたします。
 日本を訪問する外国人観光客数は、近年急速に増加をしております。日本の玄関口である東京でも、昨年は日本を訪問する外国人観光客の約七割となる八百八十七万人の訪問がありました。二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会を控え、今後さらなる増加が見込まれます。
 また、東京に暮らす外国人は、現在四十一万七千人を超え、今後、海外企業誘致などが進めば、その数はさらにふえることが予想されます。
 そうした中で、地震大国といわれる日本で大災害が発生した場合、外国人は言葉の問題などから、日本人以上に災害弱者となる可能性が高いことが憂慮されます。
 東京は首都であるがゆえに、多くの大使館等が置かれています。各国大使館員は自国民の保護の役割を一義的に担うことから、発災時の初期対応にはとりわけ高い関心を持っています。
 そこで都は、在京大使館等の関心が特に高い発災時の情報通信体制の確立を急ぐべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、情報モラル教育についてお伺いいたします。
 情報化の進展の中で、児童生徒がインターネットのトラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。
 昨年度、文部科学省が実施した全国学力・学習状況調査によりますと、東京都の小学校六年生の児童は六五%が携帯電話かスマートフォンを持ち、全国平均と比べ一〇%以上も高く、また利用時間も長くなっているなど、小学生であってもインターネットへ気軽につながる環境にあります。
 そのような中、社会に与える影響の大きさを理解できない子供が安易にインターネット上に顔写真を掲載したり、根拠のない情報を書き込んだりすることで、さまざまな問題が生じております。
 これからは、子供が被害者にも加害者にもならないようにするため、小学校の早い段階から学校と家庭が連携した情報モラル教育を充実させていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、中小規模事業所の省エネ対策についてお伺いいたします。
 さきの第一回定例会においてお尋ねした、中小規模事業所のICTに関連する省エネルギー対策については、都からは、業界団体と連携して、省エネ性能の高いデータセンターの評価、認定を行い、その上で中小規模事業所が所有するデータサーバーをクラウドサービスに移行するための費用を支援するとの答弁がありました。
 私の地元豊島区では、新たに建設された豊島区役所の庁舎において、最先端のシステムとクラウドサービスの利用により、住民記録などの基幹情報をデータセンターに移行し、省エネの推進はもとより、情報システム関連経費の削減、総合窓口支援システムによるワンストップ化など、効率化と住民サービスの一層の向上に効果を上げていると聞いております。
 この豊島区役所でのクラウドサービス活用例にもあるとおり、今回、都の実施する認定制度と助成事業は、中小規模事業所でのICTの普及に伴って増大するエネルギー消費を削減し、業務の効率化やセキュリティーの向上などを進めるためには、的を射た施策であり、早期の実施が望まれます。
 その後の取り組み状況についてお伺いいたします。
 また、中小テナントビルの省エネ対策に関しては、省エネ性能にすぐれたビルの市場価値の向上を図る方策を議論する低炭素パートナーシップが、先月初旬に開催されたとお聞きしました。
 こうした取り組みは、中小テナントビルオーナーの省エネ改修への意欲を引き出し、中小テナントビルのさらなる省エネを進めるために重要であり、引き続き、業界団体と連携を図りながら推進していくことを要望いたします。
 次に、ものづくり産業の支援についてお伺いいたします。
 経済のグローバル化がますます進む中、東京の中小企業も世界との厳しい競争の真っただ中にあります。
 我が国のものづくりの強みは、すぐれた技術力に支えられた高い品質や信頼性にありますが、それだけで競合相手に打ち勝てるほど市場は甘くありません。技術の磨き上げはもちろんのこと、さらに市場の動きに合わせたスピーディーな対応や一層のコストダウンを追求していかなければ、今後、中小企業が世界で生き残っていくことは困難であります。
 世界で活躍する日本の大メーカーは、新技術の開発などに貪欲に取り組むだけではなく、生産工程の見直しなどを不断に積み重ねることで競争力を高め、現在の地位を築いてきました。
 例えば、トヨタ自動車のトヨタ生産方式や「カイゼン」という言葉は、今や世界中の生産現場に波及し、お手本とされております。大手製造業が強みとするこうした手法を、中小企業のそれぞれの現場に合った形で取り入れ、定着させていくことにより、生産性のさらなる向上につなげていくことができると考えます。
 都は中小ものづくり企業に対して、生産管理のノウハウを学ぶ機会を提供することにより、東京のものづくりの力をさらに高めていくべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 東京の産業の発展のためには、ものづくり産業における生産性の向上に加え、これからの東京を牽引する成長産業を育てていくことが必要だと思います。
 今世紀は生命科学の時代ともいわれており、バイオ、ヘルスケアや医療、介護等のライフサイエンス分野は、世界的にも市場規模の拡大が見込まれ、今後最も成長が期待できる分野の一つであると思います。
 こうした分野において、関連する大学や研究機関、企業が多く存在し、人や情報が集まる東京において、集積の強みを生かし、世界を相手に戦えるベンチャー企業を創出していくことは、東京が世界をリードする国際ビジネス都市として発展していくために極めて重要なことです。
 しかしながら、ライフサイエンス系ベンチャー企業の多くは、専ら製品の研究開発に労力を奪われ、資金繰りや開発後の販路開拓など経営面での力が脆弱であるという課題を抱えていると思います。今や世界的な事業展開を実現して上場している大学発のバイオベンチャー企業でさえ、創業した当初は、外部の支援なしには事業化することは難しかったとも聞いております。
 都は、日夜、新しい製品の研究開発に取り組む、こうしたライフサイエンス系ベンチャー企業を積極的に支援し、創業や成長を強く促していくべきと考えますが、具体的な取り組みをお伺いし、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 堀宏道議員の一般質問にお答えいたします。
 池袋駅周辺の都市再生についてでございますが、東京の国際競争力を強化するため、大手町、丸の内、有楽町地区や日本橋、渋谷地区などにおいて、特定都市再生緊急整備地域の特例を活用して、国際ビジネス拠点の形成やコンテンツ産業の育成、江戸の風情が感じられるまち並みの創出などの大きな成果を上げてまいりました。
 先般、池袋駅周辺につきましても、緊急整備地域の指定を国に申請し、優良な民間プロジェクトを迅速に立ち上げることにより、東池袋地区の木密地域の改善を一層推進していくこととしました。
 また、池袋駅前を通る明治通りのバイパスとなる環状第五の一号線の整備を契機に、駅周辺の市街地の更新を促進しながら、ゆとりや豊かさ、それから池袋モンパルナスなどの伝統も生かしながら、芸術文化を感じられる歩行者中心の都市空間を創出してまいります。
 引き続き、東京の都市再生を進め、多様な個性ある拠点を形成し、世界一の都市にふさわしい魅力と活力にあふれた東京を実現してまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 情報モラル教育の充実についてお答えいたします。
 議員ご指摘のとおり、携帯電話やスマートフォンなどから情報を発信する際のルールやマナーについては、小学校の早い段階から学校と家庭が連携して指導していくことが大切でございます。
 そのため、都教育委員会は、児童が保護者と一緒にインターネットにかかわるトラブルの防止をテーマに学ぶセーフティー教室を開催するとともに、小学三年生の児童と保護者に向け、啓発リーフレットを作成、配布するなど情報モラル教育を推進してまいりました。
 こうした取り組みに加え、今後は都教育委員会が指定する推進校などで、教員と児童、保護者の三者がともに情報モラルについて話し合い、実効性のあるルールづくりを行うとともに、その成果を指導資料にまとめ、全公立学校の教員を対象とする講習会等で普及してまいります。
〔交通局長新田洋平君登壇〕

○交通局長(新田洋平君) 都電荒川線を活用した緑のネットワーク化についてでございますが、交通局では地元区等と連携し、バラなどによる沿線の緑化に取り組んでおり、軌道敷内の緑化は沿線地域の価値をさらに高める上で重要と認識しております。
 お話の、本格的な事業展開に向けた課題を整理するため、関係各局で構成する庁内検討会を今月中に立ち上げてまいります。
 この検討体制のもと、まずは生育に適した品種等の選定に向け、緑化技術を有する企業を公募し、今年度中に複数の品種や工法を組み合わせた検証実験を開始いたします。その結果を踏まえまして、安全な運行や保守点検への影響など技術面の課題とともに、費用面での課題を整理し、継続的に実施が可能な事業スキームの検討を進めてまいります。
 今後とも、荒川線の緑化を通じまして、質の高い都市環境の形成や美しい都市東京の実現に貢献してまいります。
〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

○政策企画局長(川澄俊文君) 在京大使館等への発災時の情報通信体制の確立についてですが、都は、在京大使館等の実務者を対象として、発災時の対応に視点を置いた定期的な情報交換の場としての防災連絡会を本年七月に初めて開催することといたしました。
 本連絡会では、都の防災対策の全体像や在留外国人向けの施策、大使館等に対する窓口としての都の対応について、関係局とともに説明し、意見交換を行う予定でございます。
 また、外務省や地元区の担当者とともに、災害時の外国人支援に関する相互連携についても取り組んでまいります。
 さらに今回は、全在京大使館等を対象とする通信訓練をあわせて実施し、災害発生時の大使館等との連絡体制強化をより効果的に進めてまいりたいと考えております。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 中小規模事業所のICTに関連する省エネ対策についてでございますが、ICT機器の利用によるエネルギー消費を削減するには、事業所ごとに保有するデータサーバーを省エネ性にすぐれたデータセンターへ移行し、集約することが有効でございます。
 このため、都は、エネルギー効率が高く、環境に配慮したデータセンターの普及に向け、先月、業界団体と協定を締結いたしました。この協定に基づき、夏にはデータセンターの認定制度を開始し、順次結果を公表してまいります。
 これにより、認定されたデータセンターへ中小規模事業所がみずからのデータサーバーを移行する場合、その経費の一部を助成する事業を十一月をめどに開始いたします。
 都は、こうした取り組みを通じて、環境配慮型データセンターの普及と中小規模事業所の省エネを推進してまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ものづくりの生産性の向上についてでございますが、東京の中小製造業が世界に通用する競争力をつけていくためには、ものづくりの現場における工程の改善等を図り、生産性を一層向上させていくことが必要でございます。
 このため、都は、大手製造業で採用されている生産管理の手法を中小企業がそれぞれの実情に応じて導入できるよう、社内の指導を担う従業員などを対象に、生産管理の体系的知識や現場での指導法などを総合的に伝授する講座を新たに立ち上げることといたしました。
 本年度は、中小企業の生産現場に精通した人材を講師として養成するとともに、効果的なカリキュラムを検討するなど、来年度の開講に向けた準備を進めてまいります。
 生産性向上を目指すものづくり企業の中核を担う人材を育成し、競争力のさらなる強化につなげてまいります。
 次に、ライフサイエンス系ベンチャー企業の支援についてでございます。
 今後の成長が期待されるライフサイエンス分野において、次代を担う数多くのベンチャー企業の創出を促すことは、東京の産業の発展にとって極めて重要でございます。
 そのため、都は、今年度より新たな取り組みとして、すぐれた技術シーズを持つベンチャー企業を対象に、インキュベーション施設やオフィスへの入居に係る経費の二分の一について、年二百万円を限度に最大三年間助成をいたします。
 また、ベンチャー企業の有望な研究成果や製品をPRし、内外の大手企業等との技術提携や販路開拓につなげるため、コーディネーターによる助言、指導のもと、展示会への出展支援や商談会によるマッチングを実施いたします。
 これらにより、ライフサイエンス系ベンチャー企業の創業と成長を強力に後押ししてまいります。

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