平成二十七年東京都議会会議録第九号

   午後五時四十五分開議

○副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十九番大西さとる君。
〔七十九番大西さとる君登壇〕

○七十九番(大西さとる君) 私は、都内で最も学力レベルが低いといわれた足立区の学力を向上させる施策が必要と求め続けてまいりました。特に、足立区を初めとする二十三区東部地域において、進学の面で意欲が高く、頑張っている子供たちを応援する制度の欠落を指摘しました。
 それに対して教育庁は、地域的な偏在を避けるために、足立区に進学指導推進校を設置いたしました。その高校は現在、難関大学の突破に向け日々努力していますが、まだまだ当初の目標、期待には及んでおらず、今後のさらなる取り組みの充実が求められるところでございます。
 ところが、この動きにつられて、他の高校にもいい影響が及んでいます。例えば、足立区では三番目の学力レベルであるとされる高校で、ことしは国立大学に三人合格し、早稲田大学にも一般入試で現役合格をしています。足立区内の進学指導推進校の存在が他校にもよい影響を及ぼしているという点を踏まえ、今後は、この取り組みをより積極的に他校に広め、足立区全体の学力を向上させる施策が大切です。
 足立区における進学指導推進校の今後の取り組みと他校への普及について伺います。
 一方で、一旦つまずきながらも、もう一度頑張ろうとする子供たちを応援する学校も存在いたします。エンカレッジスクールです。学習する習慣がほとんどなかった子供たちのために、三十分授業制の採用や二人担任制、習熟度別少人数学級や個別指導などにより基礎学力をつけさせ、一年生のときからキャリアガイダンスや職業体験などの将来の生活設計や夢の構築などのアドバイスを行い、安定した就職へと結びつける施策など、とても手厚い指導が行われています。
 それがゆえ人気が上がり、競争率も二倍を超えているほどになっています。これは都立高校でいうと、学業トップの日比谷高校や戸山高校と争うという状況です。このため、エンカレッジスクールに入れない子供が多く存在する結果になってしまっています。この学校に不合格となることが、頑張ろうとした子供たちの志を奪うことにつながります。
 この状況に対する都教育委員会の認識と今後の取り組みについて伺います。
 さらに、危惧する点も見られます。中途退学者の多さです。平成二十五年度、足立区における都立学校全体では、三百十四人が中途退学者となっています。これは率でいうと、墨田区や練馬区の三倍、板橋区のほぼ倍になります。足立区は貧困の連鎖を断つためにも、中途退学者の防止を区の重要事項に選定し、東京都と連携して防止に努めるとしていますが、中途退学者の多くは経済的に厳しい家庭に育っているため、中途退学すると非正規社員やアルバイトなどで働き始める子が多くいます。しかし、高校を卒業していないため、結果、正社員になれず、貧困の連鎖に陥ってしまいます。
 中途退学者が多い区内のある学校では、中退防止と安定した就業に向け、足立区の就業支援課の積極的なサポートを受け、進路セミナーなどの特別講義を足立区の費用により進めているほか、国庫補助事業を活用した土曜日の補習学習を実施しています。
 都教育委員会でも、平成二十五年度から、中退者の多い都立高校を支援するために、若者の自立支援に実績のあるNPOと連携し、在学中に進路を決定するための支援や中途退学者等への支援を目指したモデル事業を実施しています。
 こうした事業を踏まえ、中退防止と中退者の就職支援について、区市とも連携して強化していくべきだと考えますが、見解を伺います。
 知事は、英語村などによりグローバル人材の育成に力を入れております。これは私も大変重要だと思います。
 一方で、国では平成二十三年度から、小学校で英語教育を開始しております。今まで英語指導をしたことのない小学校の担任が、文部科学省から配布された教材を使い、週一回のペースで精いっぱい頑張っておられますが、限界もかいま見られます。
 今後、知事は教育委員会と協議しながら教育の基本方針である大綱を策定するとしていますが、世界で活躍できる人間をつくる、これも大切です。同時に、全ての子供たちが英語の基礎を学ぶことについても、しっかりとした取り組みが必要と考えます。知事の所見を伺います。
 この英語授業は、国が定めている小学校五、六年生での週一時間のほかに、各地方自治体が独自に計画を設定できるとのことですが、財政力の違いで自治体によって大きな差が出てしまっています。
 足立区では、英語の授業は、五年生と六年生が週一度に当たる年間三十五時間、一年生から四年生までは余剰時間において小学校の学級担任が英語を教えております。これが基本でございます。
 一方で、港区や中央区、台東区では、小学校一年生から六年生まで毎週ネーティブ、外人が入って教えているとのことでございます。こんなところにも地域間格差が見受けられるのは残念でございます。
 小学生の英語力の向上が必要であり、そのためには小学校の教員の指導力を向上させることが最も重要です。今後の取り組みについて、都教育委員会の所見を伺います。
 私は長年、青少年健全育成審議会の委員として活動してまいりました。この審議会は、青少年の健全育成を目標として、不健全図書の指定と優良映画の推奨を行っています。私は数年前、優良映画に推奨した後の東京都の取り組みについて、東京都のホームページにアップすることと学校にはがきを送付するだけでは、審議会にて真剣に審査した意味がないのではと提言をさせていただきました。
 その後、推薦対象の学校には、当該映画のポスターを学校の目立つところに掲示していただいています。先日は、ももいろクローバー主演の「幕が上がる」のポスターが、都内のほとんどの中学校、高校の玄関や廊下に張り出されていました。そのポスターを見て映画を見に行って、頑張ることの必要性を感じたとの生徒の感想も伺いました。
 先般、「奇跡のひと マリーとマルグリット」という映画が審議され、優良映画として推奨されました。この映画は、生まれつき目も見えない、耳も聞こえない女の子が、触感だけで会話ができるようになるという感動の映画です。
 私と同じように、長年この審議会に出席している委員の一人は、この審議会で多くの映画を見てきたが、この映画が一番すばらしいと述べられ、また、他の委員は、人生で一番感動した映画であったと述べるほどでした。
 さらに先日、秋篠宮紀子様が佳子様とともにごらんになられ、佳子様が感動の余り涙されたと大きく報じられていました。これほどのすばらしい映画、ぜひとも一人でも多くの子供たちに見てもらいたいというのが審議会委員の総意でした。
 今回、この映画の周知から学校に対するポスター配布に関して、青少年・治安対策本部と教育庁の連名によるポスター掲示依頼文を同封したり、配布に当たり東京都が少し手伝いをするなどして、多くの学校でポスター掲示が実施されています。このようなすばらしい映画を推奨するならば、ぜひ子供たちに鑑賞してもらえるよう、さらに広く周知をしていただきたいと考えます。
 例えば現在、各学校にポスターが掲示されていますが、東京都が所有する施設かつ子供の目に触れる場所でのポスター掲示も効果が出ると考えられます。今後の都の周知活動の取り組みについて所見を伺います。
 六月一日、道路交通法が改正され、自転車運転について悪質な交通違反が危険行為と定められ、三年以内に二回以上摘発されると有料講習が義務づけられることとなりました。これは、最近の自転車運転マナーの悪さが目立ってきたことや、ルールをきちんと学ぶ場が少ない自転車利用者には、規則を知らずに走行している人もいるからです。
 一方で、東京都は、二〇二〇年東京オリンピック開催時までに、自転車推奨ルートを約二百キロメートル整備するとしています。今、自転車利用者に、マナーを高めるために、道交法改正も踏まえて、自転車走行ルールの周知も必要だと考えますが、東京都の所見を伺います。
 都は従前から、ナンバープレートは有効として検討していくと述べています。今回の道交法改正に当たり、自転車へのナンバープレート装着と自賠責保険の制度を創設するべきと考えます。ナンバープレートを装着することにより、ルールを遵守する意識と、自転車が自動車と同じく車両の範疇になるという意識が高まることが期待されます。
 また、放置自転車の問題解決の一助にもなり、当て逃げ事故や盗難件数も減るでしょう。さらに、最近ふえてきている自転車事故と高額賠償補償に対して強制保険も必要です。
 こうした自転車へのナンバープレート装着や強制保険といった新たな制度の創設も、自転車安全利用を推進する一つの方策だと考えますが、こうしたことも含め、自転車安全利用の推進に関する所見を伺い、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 大西さとる議員の一般質問にお答えいたします。
 全ての子供たちの英語力を伸ばすための取り組みについてでありますけれども、世界一の都市東京を目指す上で、ニューヨークやシンガポールなどほかの大都市と比べたとき、東京の最大の課題は英語力であります。
 次代を担う若者には、言葉のバリアフリーを実現し、実生活や仕事の場面で苦手意識なくコミュニケーションできる英語力を身につけてほしいと考えております。
 私は、英語の習得には、基礎的な内容を学校の授業でしっかりと身につけることが基本だと考えております。そのために、東京都におきましては、在京の外国人や専門性の高い外部人材を活用して、学校における実践的な外国語教育や異文化理解を推進してまいります。
 また、子供たちのために新たに英語村を開設し、東京にいながら英語しか使えない場所での生活を体験できるようにいたします。
 こうした学びの機会を十分に活用することで、東京の子供に英語力を身につけさせ、国際都市東京を支える人材として育てていきたいと考えております。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長及び青少年・治安対策本部長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、進学指導推進校の今後の取り組み等についてでありますが、平成二十二年度に都教育委員会が進学指導推進校に指定した江北高校では、これまで個々の教員の授業力の向上や組織的な進学指導の体制づくりに取り組み、直近数年間では大学進学実績も向上しております。
 同校では、さらに改善を図るため、昨年度、英語科を対象に予備校等による進学指導コンサルティングを受け、組織体制や指導方法に関し改善を進めてまいりました。今後は、その成果を他の教科にも活用し、学校全体の指導力を強化してまいります。
 また、都教育委員会は、江北高校を含む進学指導推進校など三十六校から成る進学指導研究協議会を通じて、進学指導のすぐれた取り組みを他の都立高校にも積極的に情報提供し、都立高校全体の指導力の向上を図ってまいります。
 次に、エンカレッジスクールについてでありますが、エンカレッジスクールは、小中学校で十分能力を発揮できなかった生徒のやる気を育て、頑張りを励まし応援する全日制の高校であり、都教育委員会は平成十五年度から現在まで五校を指定しております。
 各学校は指定後、小中学校の学び直しを含め、きめ細かな学習や体験活動、生活指導を重視した教育を展開し、中途退学者を大きく減少させてまいりました。このような取り組みが生徒や保護者から評価されたことが、入学者選抜の高い応募倍率にあらわれていると考えております。
 今後、都教育委員会は、地域バランスなどを考慮して、エンカレッジスクールの適正な受け入れ規模等について検討を行ってまいります。
 次に、中途退学者等への支援についてでありますが、都教育委員会は平成二十五年度から、区部と市部の二地区において、中途退学者等への支援を目指したモデル事業を実施しております。
 モデル事業では、地区内のハローワーク、地元区市の就労支援部署、若者の自立支援に実績のあるNPOなどから成る都立高校生進路支援連絡協議会を設置し、地域におけるネットワーク形成に努めるとともに、都立高校が実施するキャリア教育や中途退学者等への支援のあり方などについて協議を行ってきております。
 今後とも、この連絡協議会での検討の成果を踏まえ、地元の自治体や企業等との連携を一層深めながら、中途退学の未然防止はもとより、中途退学者や進路未決定者への進路支援の取り組みを推進してまいります。
 最後に、小学校教員の英語教育の指導力向上についてでありますが、平成二十三年度から、小学校第五、第六学年に導入された外国語活動に対応し、都教育委員会は、教育課程を編成していくための基準を策定するとともに、区市町村教育委員会と連携を図り、小学校外国語活動を円滑に実施していくための教員研修を実施してきております。
 現在、国では、次期学習指導要領の改訂を視野に、児童生徒の英語力をさらに高めていくため、平成三十二年度から、小学校三、四年生に外国語活動、五、六年生に教科としての英語を新たに導入する検討を進めております。
 今後、小学校から高校に至る英語教育をより充実していくためには、教員の指導力向上は喫緊の課題であり、都教育委員会は、国の動向も踏まえ、教授法や英語力に係る研修を一層充実させてまいります。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(河合潔君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、推奨映画の周知についてでございますが、事業者から推奨の申請があった映画は、青少年健全育成審議会において、条例に定める規定に照らして、推奨するにふさわしい映画か否かについての審議を行い、その答申を受けて、都は優良映画として推奨しております。
 都は、これら優良映画を周知するために、報道発表、東京都公報への公告を初め、東京都のホームページへの掲載、学校等への通知やポスターの掲示等を行うなど、今後とも、広く多くの子供が鑑賞できるように努めてまいります。
 次に、自転車利用者へのルールの周知についてでありますが、都は、近年における自転車事故の発生状況等を踏まえまして、昨年策定した自転車安全利用推進計画に基づき、自転車利用者に対して交通ルール、マナーの周知を図るなど、安全利用の取り組みを推進しております。
 具体的には、自転車安全利用リーフレットの配布、交通安全教室や事業者向けセミナーの開催などにより、効果的に啓発を行ってまいります。
 法定講習が導入されたことを踏まえまして、引き続き、警視庁等の関係機関と連携して、ルール、マナーの普及啓発に取り組んでまいります。
 最後に、自転車の安全利用についてでありますが、ご指摘のナンバープレートによる車両管理の仕組みは、安全利用を推進する反面、導入には、自転車が車両であるとの認識の徹底や、利用者の負担を伴う点などについての社会的な議論を十分に踏まえる必要があります。
 また、自転車へのいわゆる強制保険、自賠責保険導入についても、車両管理の議論を踏まえる必要がございます。
 このため、都は、今後も引き続き自転車安全利用推進計画に基づき、交通ルール、マナーの普及啓発やヘルメットの着用、自転車の点検整備、損害賠償保険への加入の促進を図るなど、安全利用の取り組みを推進してまいります。

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