平成二十七年東京都議会会議録第九号

○副議長(藤井一君) 六十四番桜井浩之君。
〔六十四番桜井浩之君登壇〕

○六十四番(桜井浩之君) 初めに、人口減少社会への対応について伺います。
 日本の人口は既に減少に転じており、東京の人口も二〇二〇年をピークに減少局面を迎えます。特に労働力人口の減少は、日本の経済規模を縮小させ、ひいては国力の低下にもつながる深刻な事態であります。経済が縮小すれば税収も減る。そうなれば、今後増大が見込まれる介護や医療はもとより、道路などのまちづくりや子供の教育など、政策に必要な財源が確保できず、都民の生活にも大きな影響が生じるわけであります。
 我々は、こうした局面の中にあっても、都民のニーズに応え、その生活を守り抜いていかなければなりません。それには、都民の生活を支える東京経済の活性化を政策の中心に据え、三十年、四十年先を見据えた根本的な手を打っていくことが重要と考えます。
 知事は、さきの所信表明で、二〇四〇年代の東京のあるべき将来像を取りまとめる旨を明らかにいたしました。その将来像の実現のためにも、こうした視点での取り組みが必要であります。知事の強力なリーダーシップのもと、外部の知見を取り込み、官民連携によるオール東京で、産業構造の変革や、全ての人が活躍できる社会を実現し、東京こそが首都として日本の経済を牽引し続けなければならないと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、新技術や契約制度についてお伺いいたします。
 身近な社会資本の整備や維持管理を支え、同時に地元の雇用も担っている中小企業の中には、すぐれた技術を有する事業者も少なくありません。
 さきの第一回定例会における都有施設維持更新に関する我が党の代表質問に対し、民間の新技術を積極的に取り入れ、その効果を検証し、標準化を図る新たな制度を実施していく旨の財務局長答弁がありました。このような制度が今年度創設されれば、民間事業者にとっても、新たな技術を開発しようという機運が高まるとともに、大企業のみならず、技術力を持つ中小企業に対してもビジネスチャンスにつながるわけであります。
 そこで、都有施設への民間の新技術導入に関してどのように取り組むのか、お伺いをいたします。
 次に、中小企業を支える大切な取り組みとして、公共調達における分離分割発注があります。都の入札参加有資格者の約九〇%は中小企業であり、都が事業を安定的に継続していくためには、これら中小企業の存在が欠かせません。そのため、都はこれまでも分離分割発注を原則として推進してきたと思います。
 ところが最近では、一部に、不調対策として発注ロットを拡大させるなど、結果として中小企業への受注機会の確保につながらないものも見受けられます。この例外が、いつの間にか原則とならないように、都の公共調達のあり方についての基本を振り返る必要があると考えます。
 改めて、公共調達における分離分割発注の意義について、都の見解をお伺いいたします。
 また、入札契約制度においては、計画事業の着実な進捗を下支えする役割が重要です。今後とも、都民生活に密着した社会資本の整備や維持管理も着実に推進する必要があります。
 このような中、建設需要の先高感や構造的な技術者不足により、平成二十六年度の工事関係の入札不調率が全体の一三・五%と、依然として高どまっております。
 都は、この三月に、入札不調に対する緊急対策として、市場価格とのギャップを埋める適切な予定価格の設定を初め、意欲と能力のある中小企業の入札への参加意識を高める、いわゆるJV基準の見直しなどの制度改革を四月よりスタートさせました。
 そこで、これらの状況を総合的に踏まえ、都のインフラを持続的に整備、維持し、事業を着実に推進していくため、入札契約制度の今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、介護需要の増大に対する近隣県との連携の必要性について、問題提起を兼ねてお伺いをいたします。
 都は、昨年十二月に策定した東京都長期ビジョンや、本年三月に策定した第六期東京都高齢者保健福祉計画において、特別養護老人ホームを平成三十七年度までに六万人分整備する目標を示しました。都が、都有地貸し付けの減額率の拡大や、建設費の高騰に対応する補助額の加算などさまざまな支援策を講じて、特別養護老人ホームの整備を都内において全力で進めようとしていることは評価をいたします。
 しかし、特別養護老人ホームは広域型の施設であり、交通網が発達した首都圏においては、都県をまたいでの入所が、自然な人の流れとして見られます。
 今後、東京、埼玉、神奈川、千葉の一都三県では、後期高齢者が急激に増加することが見込まれていることから、介護サービス基盤の整備が追いつかずに、介護難民が大量発生することを懸念する声もあります。
 私は、将来的には、例えば東京都と千葉県が協力して特別養護老人ホームを整備することがあってもよいと考えております。
 今月二日には、舛添知事と石破地方創生担当大臣の面会を契機として、一都三県の地方創生に関する連絡会議が立ち上げられ、日本全体の将来像に大きな影響を与える少子化や高齢化の問題について議論が始まりました。
 また、第六期東京都高齢者保健計画の策定に当たっては、一都三県の介護保険担当部局による情報交換が行われ、その結果、介護基盤の整備や介護人材の確保について、連携協力を図る方策を検討していく方針が盛り込まれたと聞いております。
 そこで、都は今後、介護ニーズの増大に対応するために、一都三県の連携協力をどのように展開させていくのか、所見をお伺いいたします。
 次に、MICE誘致戦略について伺います。
 知事は、先日の所信表明で、国際会議を初めとするMICE誘致を効果的に推進するための戦略を来月中に策定する旨を表明されました。大規模な国際会議の開催は、学術やビジネスの交流はもちろん、宿泊や飲食、地域の観光など、大きな経済波及効果をもたらすことから、観光振興の観点からも大変重要です。
 特に、会議等で東京を訪れる外国人には、東京の都市部だけでなく、豊かな自然や伝統文化が息づく多摩や島しょ、そして日本各地に足を運んでもらいたいと思います。オールジャパンが連携し、さまざまな魅力を味わっていただくことで、MICE開催の効果も高まります。都が策定するMICE誘致戦略には、こうした多摩・島しょの観光資源の活用や、地方への誘客につながる取り組みを積極的に盛り込むべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、都立病院の病児、病後児保育についてお伺いをいたします。
 本年第一回定例会の我が党の代表質問で、小児科のある都立、公社病院において、区市のニーズを踏まえ、病児、病後児保育を実施していく旨の答弁があり、病児、病後児を実施できるよう改正した東京都立病院条例が平成二十七年四月より施行されました。
 子供が急に発熱し、家で看病したいが、どうしても仕事が休めない。やむを得ず子供を預けなければならない。共働き家庭がふえている都内において、このような状況は、今後の保育サービスの利用の増加とともに一層顕在化する問題であります。
 病児、病後児保育は、共働き世帯の子育てにおける不安感の軽減につながる取り組みであり、まさにセーフティーネットとしての役割を果たす、地域の子育て支援策に欠かせないものであります。都立病院における病児、病後児保育の実施に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、京成押上線連続立体交差事業についてお伺いをいたします。
 私の地元墨田区では、東京スカイツリーの開業以降、とうきょうスカイツリー駅、押上駅周辺は、世界各地より多くの観光客が訪れるようになりました。
 一方、隣接する京成押上線の押上駅から八広駅区間は、平成二十五年八月に上り線の高架化が完了しましたが、下り線の高架化が残されており、地元では、長年の悲願である踏切除却が一日も早く実現されるよう期待が高まっております。
 また、京成曳舟駅周辺では、大規模な再開発事業などにより、商業、文化、生活などの拠点となるまちづくりが進んでおり、京成押上線連続立体交差事業の効果と相まって、より魅力のある市街地としての発展が期待されています。
 そこで、京成押上線押上駅から八広駅間の連続立体交差事業について、今後の取り組みをお伺いいたします。
 最後に、東武伊勢崎線連続立体交差化についてお伺いをいたします。
 都が平成十六年に策定した踏切対策基本方針には、鉄道立体化の検討対象区間として二十区間抽出されており、鐘ヶ淵駅付近はこのうちの一つに位置づけられております。本地区では、補助一二〇号線の道路整備が進んでいるほか、木密地域不燃化特区として指定を受け、地区全体で安全で安心できるまちを目指した取り組みを行っており、さらに、まちの魅力を高めるためにも鉄道立体化に向けた取り組みを進めるべきと考えます。
 しかし、鉄道立体化を実現するためには、まずは地域が総意でまとまり、地域全体でしっかり議論を積み上げて、どのようなまちにしていくか考えることが重要であります。それには、まずもって地元墨田区が強力なリーダーシップを発揮して、地域の意見を集約し、主体となってまちづくりをまとめていくことが欠かせません。
 こうしたまちづくりを進めるに当たっては、その検討過程で、鉄道立体化に関する既存事例の知見が豊富な都の後押しが必要となってくると考えます。東武伊勢崎線鐘ヶ淵駅付近の立体化実現に向けて、都として今後どのように取り組むのかお伺いをいたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 桜井浩之議員の一般質問にお答えいたします。
 日本経済を牽引する取り組みについてでございますけれども、少子高齢化、人口減少が急速に進む中にあっても、子や孫の世代がひとしく充実した人生を送ることができるよう東京を発展させていくことは、今の時代に生きる我々の使命であります。
 将来においても豊かな生活を実現するためには、確かな成長が不可欠でありまして、さらなる経済の拡大を目指して戦略的に取り組んでいかなければなりません。
 こうした考えのもと、産学公の連携によりますライフサイエンスの拠点の形成など、成長分野の取り組みを促進してまいります。東京国際金融センターの実現、国家戦略特区の活用などで新たなビジネスチャンスを生み出してまいります。世界中から人材、企業を呼び込んでいくことで、東京の世界経済における地位をさらに高めていきます。
 また、成熟の中での成長を実現していくためには、長時間労働といった高度経済成長時代にしみついた働き方を見直し、生産性を向上させていかなければなりません。とりわけ、女性が生き生きと活躍し、高齢者が知恵と経験を発揮できる環境を整えていくことが重要だと考えております。
 外部の有識者や幅広い専門性を有する民間企業等からの知見も得ながら、人々の人生を見詰め、人々が活躍する土壌を整備し、将来を見据えた政策の種をしっかりとまいていきたいと考えております。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 京成押上線押上駅から八広駅間の連続立体交差事業の今後の取り組みについてでございますが、本事業は、明治通りなど六カ所の踏切を除却することで道路ネットワークの形成を促進し、交通渋滞や地域分断を解消するとともに、地域の活性化に資する極めて効果の高い事業であり、既に上り線を高架化しております。
 現在、駅舎や電気設備等の工事を進めており、この八月には残る下り線についても高架に切りかえ、全ての踏切を除却いたします。
 本事業で高架化される京成曳舟駅周辺では、再開発事業により約千三百戸の高層住宅の整備などが進んでおります。これにあわせ、側道整備や商業施設等の高架下利用を進め、歩行者の回遊性や地域の利便性の向上を図り、にぎわいのあるまちづくりの促進に全力で取り組んでまいります。
〔財務局長長谷川明君登壇〕

○財務局長(長谷川明君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、民間の新技術導入に関する取り組みについてでございますが、都有施設の性能をより一層向上させるとともに、中小企業を含む民間の建築技術開発の促進に資することを目的として、今年度から建築技術革新支援事業を実施いたします。
 具体的には、施設整備に当たり、その特性に応じて省エネ、再エネや建物の長寿命化などに効果のある技術を民間から公募し、専門家や学識経験者の意見を踏まえ、先進性、施工性及び経済性等ですぐれたものを選定し、設計に反映させてまいります。また、施工時や施設完成後に効果の評価を行い、有効性が認められたものについては標準仕様とするなどして、都有施設への普及を図ってまいります。
 今後は、秋を目途に、高断熱のサッシやガラスなどの新技術の公募を行い、その結果を検証した上で継続的に展開してまいります。
 次に、分離分割発注の意義についてでございますが、都では、中小企業が地域社会の活力や雇用の創出など都民生活の向上に果たす役割を踏まえ、分離分割発注によって中小企業の受注機会の確保を図っております。
 分離分割発注は、業種や営業種目ごとに工事や業務を分離発注することで、事業者の専門性が発揮される効果がございます。また、発注ロットを適切に分割することで、技術力のある事業者間での競争環境が生じ、確実な履行の確保が期待できます。このことは、入札契約制度に求められる透明性、競争性、そして品質の確保という社会的要請を満たすことでもございます。
 このような認識のもと、都の公共調達に当たりましては、今後とも分離分割発注に努めてまいります。
 最後に、入札契約制度の今後の取り組みについてでございますが、都の入札契約制度は、市場動向やその時々の状況の変化に対応しつつ、将来にわたっても実効性及び持続性の高い制度であることが重要でございます。
 一昨年の夏以降、資材価格や労務費の上昇などを主な要因とする入札不調の増加や、インフラ整備を担う人材の構造的不足が顕在化してまいりました。
 そのため、都民生活に必要なインフラの着実かつ継続的な整備等に向け、入札不調対策や担い手の中長期的な確保などの視点も入れ、積算、入札、維持管理などの各段階にわたり、都独自の制度改革や運用改善を進めてまいりました。
 今後は、こうした制度改革等の成果を効果的に活用するとともに、確実な定着を図るなど積極的に取り組み、発注者としての責務を果たしてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 介護ニーズの増大に対応するための方策についてお答えをいたします。
 東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の一都三県の後期高齢者人口は、二〇一〇年の約三百十五万人から、二〇二五年には約五百七十二万人へと急増し、施設サービスや在宅サービスの需要が増大することが見込まれております。
 こうしたニーズに対応するため、昨年度から、厚生労働省と一都三県の実務担当者が相互に情報共有を図り、意見交換を行う連絡会議を開催しておりまして、都の第六期東京都高齢者保健福祉計画には、サービス基盤の整備や人材の確保について、一都三県が連携協力を図る方策を検討していくことを方針として盛り込んだところでございます。
 今後、一都三県の地方創生に関する連絡会議や厚生労働省との連絡会議での議論も踏まえながら、連携協力に向けた具体的な対応策を検討してまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) MICE誘致戦略についてでございますが、国際会議等のMICEの開催は、東京の都市としての競争力やプレゼンスの向上に資することに加え、多くの外国人旅行者が、東京及び日本各地の多様な魅力に接する絶好の機会でございます。
 このため、都が策定する誘致戦略におきましては、多摩・島しょの魅力的な資源を生かしたMICE参加者向けの観光ツアー、体験メニューの開発、提供や他都市との連携による国内周遊型の報奨旅行の誘致促進など、多摩・島しょや地方への誘客につながる取り組みを盛り込んでまいります。
 こうした戦略に沿って、東京と地方のそれぞれの魅力を生かしたMICE誘致を推進することで、MICE開催の効果を広く行き渡らせてまいります。
〔病院経営本部長醍醐勇司君登壇〕

○病院経営本部長(醍醐勇司君) 都立病院の病児、病後児保育についてでありますが、これまで保育事業の主体である区市の取り組みの状況や、その充実に向けた意向を把握するとともに、各病院における施設整備の時期や方策を検証するなど、実施に向けてさまざまな側面から検討を行ってまいりました。
 こうした検討に基づき、平成二十八年二月を目途に、墨東病院におきまして、地元自治体である墨田区と連携し、都立病院として初めてとなる病児、病後児保育を実施することといたしました。
 加えて、隣接区のニーズに対応する広域利用についても検討を進め、墨東病院の医療資源のさらなる活用を図ってまいります。
 今後は、他の都立、公社病院におきましても早期に実施できるよう、取り組みを進めてまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 東武伊勢崎線鐘ヶ淵駅付近の鉄道立体化についてでございますが、道路と鉄道の立体化は、交通渋滞や踏切事故の解消とともに、分断されてきた市街地の一体性を高めることから、地域のまちづくりとあわせて進めていく必要がございます。
 鐘ヶ淵地区では、墨田区が平成二十四年度にまちづくりの基本的な計画を策定しておりますが、今後は、立体交差化に向けまして、生活道路の拡幅など駅周辺の具体的な整備計画を策定する必要がございます。
 都といたしましては、地元の区や住民等による今後の取り組み状況を十分勘案しながら、道路と鉄道の立体化の実現に向けまして、区によるまちづくりの検討が促進されますよう、積極的に支援してまいります。

○副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時二十六分休憩

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