平成二十七年東京都議会会議録第九号

○副議長(藤井一君) 七十一番田中たけし君。
〔七十一番田中たけし君登壇〕

○七十一番(田中たけし君) まず初めに、環境エネルギー政策について伺います。
 現在の我が国は、地球温暖化対策のため、CO2削減を目指す一方で、東日本大震災以降、原子力発電所が停止し、火力発電所に頼らなくてはならず、一刻も早く環境に優しいエネルギー源の確保が求められております。
 水素エネルギーは、環境負荷の低減、エネルギー供給源の多様化、経済産業への高い普及効果、災害時対応など大きな可能性を有しており、水素エネルギーを本格的に利活用する社会を早期に実現することは大きな意義があると認識しております。
 我が党では、水素社会の実現について勉強会を重ね、都にさまざまな提言を行っており、都はこれを受けて戦略目標を策定し、四百億円の基金を創設するなど、評価しております。
 また、先日開催された関東甲信越一都九県議会議長会では、高島なおき議長から、水素エネルギー社会の実現に向け、国への規制緩和等の要望をご提案いただき、採択されました。
 このように、水素社会への動きを着実に進めるためには、都の取り組みに加えて、近隣自治体との連携、さらには水素の利活用を多くの事業者へ広げていくことも重要であります。
 こうした点を踏まえ、都として、オリンピック・パラリンピックを通じて、日本の高い技術力や環境先進都市としての姿を世界に発信していくためにも、二〇二〇年を機に、水素エネルギーを普及させていくことが必要であると考えます。知事の見解を伺います。
 また、水素エネルギーを確実に普及させていくためにも、燃料電池自動車の利用者が、燃料である水素の補給を心配せずに済むよう、水素ステーションの整備を着実に進めることが極めて重要であります。
 整備に当たっては、既存のガソリンスタンドへの併設が有効ですが、規制や経済性の観点から、都内の多くの中小事業者が参入しづらい状況にあるとも伺っており、参入しやすい環境整備が必要であると考えます。
 こうした点を踏まえ、二〇二〇年に三十五カ所を整備する戦略目標の達成に向け、どのように推進していくのか、都の見解を伺います。
 次に、防災対策について伺います。
 東日本大震災から四年が経過し、被災地の復興がまだ道半ばである中、小笠原諸島西方沖や埼玉県北部を震源とする地震に見舞われ、今後、首都直下地震の発生が危惧されます。そのため、発災時に特に大きな被害が想定される木造住宅密集地域の防災性を向上させることは喫緊の課題であります。
 都は、平成二十四年に木密地域不燃化十年プロジェクトを立ち上げ、木密地域の防災性の向上に資する特定整備路線の整備を進めております。
 私の地元品川区でも木密地域が多く、地域危険度の高い地区が広範囲にわたっており、木密地域の安全性を高めるための補助二九号線など、三つの特定整備路線が事業化されており、地元の理解を得ながら、一刻も早くこの三路線の整備を進めていくべきと考えます。
 しかし、さきに行われた統一地方選挙において、地元住民の不安をあおり、無責任にも特定整備路線の整備効果がないと主張していた政党があり、特定整備路線の整備よりも建物の耐震化を進めるべきとの主張も行っておりました。
 しかし、それぞれの事業目的は異なり、木密地域で火災が発生した際、延焼遮断帯がなければ地震に耐えた建物も燃えてしまうため、主張の目的がよくわからず、ただただ地元住民の不安をあおることを目的とした主張としか思えませんでした。また、他地区でも同様の主張があったとも伺っております。
 そこで、改めて特定整備路線が防災上どのような効果があるのか、お伺いいたします。
 特定整備路線に関し地元の理解を得るには、整備による効果の説明や関係権利者の生活再建支援とともに、地域の望むまちづくりへの貢献も大切であります。商店街と並行する区間では商店街の再生を、鉄道と交差する区間は連続立体交差化を進めるなど、まちづくりにも積極的に取り組むことを強く要望いたします。
 また、木密地域の防災性をさらに向上していくには、特定整備路線の整備とともに、その内側の市街地において不燃化特区事業を推進することも重要です。
 品川区では、不燃化特区の最初の募集に手を挙げた東中延地区を皮切りに、現在九地区、約三百ヘクタールで市街地の不燃化に重点的に取り組んでいます。既に幾つかの地区では具体的な成果が上がっており、昨日の我が党の代表質問を踏まえ、先行して実施した地区の成果を共有し、他地区でも有効活用すべきとの考えから、この東中延地区におけるこれまでの実績と今後の取り組みについて伺います。
 次に、医療人材の育成について伺います。
 平成二十六年版高齢社会白書によると、平成二十五年の高齢化率が二五・一%と過去最高となり、四人に一人が高齢者となりました。今後も高齢化率が上昇し、二〇三五年には三人に一人、二〇六〇年には二・五人に一人が高齢者になると推計されており、確実に高齢化が進んでいます。
 このように高齢化が進む中、今後さらに医療に対する期待や要求も増大し、医療人材の確保が重要な課題になると認識しております。当然、医師の人材確保も必要ですが、同時に、看護師の人材確保も必要と考えます。
 このような認識のもと、先日行われた都立広尾看護専門学校の戴帽式に出席いたしました。学生にとって、看護師となる決意を新たにする機会であるだけではなく、教職員の学生に対する期待の大きさが伝わる感動的な式でありました。
 また、大学で四年間かけて履修する科目を、都立看護専門学校では三年間で集中的に学んでいる様子を伺い、さらに国家試験も毎年ほぼ全員が合格している実績を伺い、学生の使命感と教職員の熱意を強く感じました。
 舛添知事にも、その実績を評価していただきたいと思いますが、そうした学生や教職員の熱意を感じればこそ、これまで改築された板橋看護専門学校や荏原看護専門学校のような最新の設備が整った学習環境の中で教育が行われることを願うものであり、改築が中断され、最新設備が整備されていない広尾看護専門学校の建築計画が進むことを強く要望いたします。
 都内には、都立看護専門学校だけではなく、多くの民間養成所があります。近年は大学の新設もふえており、その結果、入学定員は年々増加しております。
 しかし、団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年に向けて、医療や介護の需要がさらに増加する中、看護師等の需要はますます高まると予想されております。
 そこで、看護職員の確保に向けた都の取り組みについて伺います。
 また、看護職員の確保だけではなく、医療の高度化や専門化に対応できる看護職員を養成することも重要であり、養成所等での教育の質の向上も必要であると強く考えます。都立看護専門学校の高い国家試験合格率や臨床現場での卒業生の高い評価は、まさに教育のたまものにほかならないと思っております。
 そこで、教育の質の向上には、教員の果たす役割が大きいと認識しておりますが、都としては教員の養成にどのように取り組んでいるのか、お伺いいたします。
 次に、都市基盤整備について伺います。
 国家戦略特区に位置づけられた品川駅周辺は、国際化が進展する羽田空港に近接し、品川駅がリニア中央新幹線の始発駅になるなど、国内外の広域交通結節点としての役割が期待され、日本の成長を牽引する国際交流拠点として整備していくことが求められています。
 この拠点性を高めるため、公民協働により、新駅に隣接するJR車両基地跡地を活用した開発や品川駅の再編、道路等の基盤整備などの検討が進められています。
 国際交流拠点としての整備が進められる中、京急線品川駅から北品川駅付近には、長年の懸案である八ツ山橋踏切や旧東海道の品川第二踏切などが残っております。
 この八ツ山橋踏切付近は、一日七百本以上の上下線が通過し、しかも京急線が蛇行しているため、通過車両もスピードが出せず、その分、踏切の閉鎖時間が長く、地元住民の生活に大きく影響しております。これまでも踏切の解消の要望を受け、取り組んでまいりましたが、踏切解消はまさに地元の念願であります。
 品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン二〇一四にも位置づけられているこの踏切の解消を、国際交流拠点にふさわしい品川駅の周辺開発に合わせ、連続立体交差事業で行うことを大いに期待しています。
 そこで、この京急線の連続立体交差事業の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、オリンピック・パラリンピック開催を契機とした多言語対応について伺います。
 先月、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが発表した報告書において、日本は、おもてなしに関する項目で一位の評価を受けました。これは、日本のきめ細やかなサービスや日本人が持つ他人への思いやりの気持ちが高く評価されたものであります。
 都においても、外国人旅行者が言葉の壁を感じることなく快適に滞在できるよう、国、区市町村、民間等と連携し、二〇二〇年大会に向けた多言語対応の取り組みが進んでいます。
 こうした中、本年四月までの訪日外国人旅行者数は昨年の四割増と、急激な増加が続いており、二〇二〇年大会はもとより、二〇一九年のラグビーワールドカップも見据えると、全国の自治体や民間と連携し、オールジャパンによる多言語対応の取り組みの加速が急務であると認識しております。
 品川区では、少しの英語に、おもてなしの気持ちを込めて外国人観光客を積極的に受け入れる雰囲気を商店街や地域全体でつくり上げることを目的にした、英語少し通じます商店街事業が行われています。こうした地域に根差し、外国人の目線に沿った取り組みを広く紹介することも、地域単位で多言語対応を進めるには有効であると考えます。
 そこで、今後の多言語対応の具体的取り組みについて伺い、私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 田中たけし議員の一般質問にお答えいたします。
 水素社会の実現に向けた取り組みでございますが、成熟都市で開催される二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の先には、環境と調和した持続的な成長を実現しなければなりません。その先導的な役割を担うのが水素社会の実現であります。
 来月新たに、都市開発事業者などをメンバーに加えました水素社会の実現に向けた東京推進会議を立ち上げます。戦略目標の達成に向けまして、施策の重点化や関連する取り組みの一体的な推進などについて議論し、工程表を策定することで取り組みの実効性を高めてまいります。
 また、水素エネルギーの利用は、一つの自治体の中だけにとどまりません。先日行われました関東地方知事会におきましても、都から提案した民間事業者等への継続的な財政支援や水素ステーションの整備に向けた規制緩和などについて、国に要望いたしました。
 今後、他の自治体との連携をさらに深めるとともに、参入意欲のある事業者への働きかけを行うなど、官民を挙げて水素社会の実現の取り組みを着実に進めてまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、特定整備路線の防災上の効果についてでございますが、平成の広小路ともいうべき特定整備路線は、災害時に甚大な被害が想定される木造住宅密集地域において、都民の生命と財産を守る重要な道路であり、道路を越えて燃え広がることを防ぐとともに、沿道建物の不燃化が促進されるなど、極めて高い効果がございます。
 例えば品川区の補助第二九号線では、延焼シミュレーションによると、道路の整備により延焼面積が半減いたします。また、安全な避難路の確保や緊急車両による救援活動の円滑化、災害拠点病院へのアクセス向上が図られます。
 昨年度までに計画道路の全二十八区間、約二十五キロメートルの事業に着手したところでございまして、今後とも関係権利者の生活再建に十分配慮し、理解と協力を得ながら、平成三十二年度の完成に向け、邁進してまいります。
 次に、京浜急行本線の品川駅から北品川駅付近における連続立体交差事業の取り組みについてでございますが、この区間にあります八ツ山橋踏切は、線路が急カーブで、電車が時速二十五キロメートル以下に減速する上、運行本数が多いことから、あかずの踏切となっており、長い間、大きな懸案となっておりました。
 今回、品川駅周辺でリニア中央新幹線や山手線新駅等の開発が国家的なプロジェクトとして動き始めたことから、この機を捉え、品川駅の再編とあわせ、踏切除却や線形の改良を目的とする連続立体交差事業を実施することといたしました。今年度は、この区間を事業候補区間に位置づけ、事業範囲や構造形式などの調査検討に着手いたします。
 今後とも、世界一の都市東京の実現を目指し、国際交流拠点の形成に寄与する本事業の推進に積極的に取り組んでまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 水素ステーションの整備に向けた取り組みについてでございますが、水素エネルギーの本格的な普及には、水素ステーションの整備促進が重要であり、二〇二〇年に三十五カ所整備する戦略目標を確実に達成しなければなりません。
 整備に当たりましては、法規制等により、高いコストや広大な敷地面積が必要となるなどの課題もございます。
 このため、都では、中小事業者に手厚い水素ステーションの整備費補助制度を設け、先月からその受け付けを開始いたしました。また、東京における用地確保の困難性も考慮し、江東区潮見で都関連用地を活用した水素ステーション整備も進めております。
 こうした取り組みを着実に進めるとともに、安全性にも配慮しながら、公道との保安距離の見直しや使用可能な材質の拡大など、整備促進のための規制緩和を国へ強く求めてまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 品川区東中延地区におけます不燃化特区についてでございます。
 当地区は、平成三十二年度までに燃えないまちの実現を目指す不燃化特区に指定いたしまして、平成二十五年から他地区に先行して事業に着手しております。区では、既に八百件近い全戸訪問や相談会を実施いたしまして、約三十件の老朽建築物の建てかえや除却が進められております。
 また、同潤会住宅があった街区では、不燃化に効果の高いコア事業として位置づけた防災街区整備事業が本年四月に都市計画決定されまして、未接道敷地の改善などに向け、年度内の事業化が予定されております。
 今後、都は、他の街区でも防災まちづくりの専門家の派遣に対する支援などによりまして、地区計画の導入による道路空間の確保や老朽建築物の建てかえなどを誘導いたしまして、区の防災まちづくりを強力に推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、看護職員確保の取り組みについてでありますが、都はこれまで、都立看護専門学校の運営、修学資金の貸し付けや看護師等養成所への運営費補助などの養成対策、勤務環境の改善や新人職員研修などの定着対策、身近な地域の病院での復職相談や研修などの再就業対策を三つの柱に取り組んでまいりました。
 特に、都内で約七万人存在すると推計されます潜在看護師を復職につなげるため、東京都ナースプラザでは無料職業紹介を行うほか、都内五カ所のハローワークに職員が出張し、専門相談を行っております。
 今年度は、さらに都医師会や看護協会等と連携しまして、都内各地で地域に密着した就職相談会も開催することとしており、今後十月から開始されます離職する看護師等の届け出制度も活用し、看護職員の確保に取り組んでまいります。
 次に、看護教員の養成についてでありますが、都は、看護教員を目指す看護師等を対象に、約一年間にわたる教員養成研修を実施しておりまして、これまで二千二百人以上が研修を修了しております。
 この研修の受講を促進するため、看護師等養成所に対しましては、研修期間中の代替職員の確保に要する経費の補助を行っており、都立看護専門学校では、教育実習生を積極的に受け入れ、教員の養成に努めております。
 また、看護教員のレベルアップを図るために、五年から十年程度の経験者には、教育実践力やコミュニケーション力の向上等の研修、十一年以上の経験者には、看護教育評価や学校組織マネジメント等の研修も実施しております。
 今後とも、こうした取り組みにより、看護教員の養成や質の向上に努めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 多言語対応の具体的な取り組みについてでございますが、二〇二〇年大会に向け、官民一体で多言語対応を推進し、外国人旅行者の受け入れ環境を整備することは喫緊の課題でございます。都は、長期ビジョン等に基づき、新宿駅の案内表示の改善や翻訳アプリの活用などの取り組みを進めております。
 今後、これらの取り組みを加速させるため、来月には、区市町村や道府県、民間団体を対象とするフォーラムを開催いたします。
 このフォーラムでは、多言語対応の先進的事例やICTの技術動向など、さまざまな実践的ノウハウを提供するとともに、首都大学東京と連携のもと、外国人留学生によるディスカッションを行い、利用者の視点に立って取り組みの拡大も図ってまいります。
 こうした取り組みを通じ、都内はもとより、全国における言葉のバリアフリー化の早期実現を促してまいります。

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