平成二十七年東京都議会会議録第九号

○副議長(藤井一君) 五番栗山よしじ君。
〔五番栗山よしじ君登壇〕

○五番(栗山よしじ君) 初めに、都財政の運営についてお伺いいたします。
 都は、舛添知事初の本格的な予算となる平成二十七年度予算をつくり上げ、長期ビジョンの実現に向け第一歩を踏み出しました。
 その中で、先般の予算特別委員会において取り上げましたが、都は、二倍の見直しインセンティブという仕組みを活用し、施策の新陳代謝を促進しました。
 その結果、事業評価など自己改革の取り組みにより、二百三十九の事業を見直し、約四百十億円の財源を確保しました。また、新規事業は三百三十となり、その金額は、見直し額の二倍以上の九百億円を上回りました。
 長期ビジョンの実現や都民サービスの向上という観点から、積極的な施策の展開は大変よいことでありますが、常に好景気が続くわけではなく、その財源には限りがあります。二倍の見直しインセンティブなどの手法を効果的に活用するのであれば、その裏づけとなる財源が必要になります。
 こうした点を踏まえれば、いかなる状況にあっても、今後の財政状況を十分に検討し、五年後の東京五輪はもとより、その先までを意識し、施策のスクラップ・アンド・ビルドを行い、計画的な財政運営を行うことは極めて重要であります。現在の都財政は健全性を確保していますが、こうした考えは、時代や財政状況によって変わるものではありません。
 オリンピック・パラリンピックの開催準備、防災対策の強化、少子高齢化への対応など、都が抱える課題が山積する中、来月には見積もり方針が示され、来年度の予算編成がスタートします。都民サービスの効率的かつ安定的な提供という使命を都が果たすためには、事業一つ一つを常に磨き上げるとともに、しっかりと将来を見据えた財政運営を行っていく必要があると考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、女性のがん検診について伺います。
 私は、四月に五十四歳の姉を亡くしました。四十五歳で乳がんを患い、既に骨に転移をしており、十年間の闘病生活でした。亡くなる二日前に話をしたときには、両親を見送ることができ、一人娘が成人になるまで見られて納得しておりましたが、一方で、娘の結婚について気にかけておりました。きっと結婚式にも出たかっただろうし、孫の顔も見たかったと思うと、無念でなりません。姉のような方を少しでも減らすためにも、がんの早期発見は重要です。
 その翌月の五月二十日、国立がん研究センターが、がんによる死亡者数を二〇一五年までの十年間で二〇%減らす国の目標について、達成は困難との見通しを明らかにしました。
 それによると、がん検診の受診率は、最も高いもので男性の肺がん検診で四七・五%、女性は胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん及び乳がん検診の受診率は、いずれも三〇%台に低迷しているところでございます。
 東京都が実施した各種調査を見ても、がん検診の受診率は、男性に比べて女性の方が低い傾向にあります。また、女性を対象とする乳がん、子宮頸がんの検診では、仕事をしている女性に比べて専業主婦等の仕事をしていない女性の受診率が低くなっています。
 こうした実態については、より詳細な調査分析が望まれるところですが、職場での検診機会がない女性に対する受診率を上げていくためには、専業主婦等に対し、区市町村が実施している検診の受診を促していくことが必要であります。
 受診率向上には、区市町村検診への受診勧奨とあわせ、多くの女性にがん検診の重要性を知ってもらうことが大切だと思います。例えば、職場などで受診勧奨をされない子供のいる専業主婦等が情報交換をするのは、自分の子供が通っている学校の保護者同士が多いと思います。
 そこで、学校のPTAを活用して検診受診を呼びかけることにより、がん検診への意識を高めるなど、女性のがん検診受診率の向上に向けた取り組みが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、特定整備路線沿道における区との提携したまちづくりについて伺います。
 昨日の我が党の代表質問で、都は、木密地域の安全性を高めていくには、延焼遮断帯の整備とともに、その内側の市街地の不燃化を推進していく必要があり、今後、新たな防災都市づくり推進計画に具体的な施策を盛り込んでいくとの方向性を示しました。木密地域の防災性向上は早急に実現しなければならない課題であり、内側の市街地の不燃化に向けた多様な取り組みを進めることは重要であります。
 同時に、木密地域の実情も地域によってさまざまであり、地域の実情を踏まえて延焼を防止していくためには、沿道のまちづくりの推進など、延焼遮断帯の整備に向けた取り組みについても着実に進めていただきたいと思います。
 現在、私の地元である目黒区の補助第四六号線沿道では、特定整備路線の整備にあわせ延焼遮断帯を形成するため、区が地区計画の導入を検討していると聞いております。
 都は、用途地域を変更するなど、こうした区の取り組みを支援していくことが必要と考えますが、都と区が連携したまちづくりについて所見を伺います。
 次に、東京港の視察船について伺います。
 東京港は、物流拠点として、首都圏四千万人の生活と産業を支えるために不可欠な役割を果たしているとともに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技会場の多くや選手村を抱える臨海地域を背後に有するなど、東京の中でも今注目を浴びる地域の一つです。
 現在、東京港には、都が所有する視察船「新東京丸」があります。この「新東京丸」に乗船すると、レインボーブリッジの真下を航行し、大型船が着岸しダイナミックに荷役を展開しているコンテナふ頭などを間近に見ることができます。また、にぎわいのある臨海副都心や植樹の進む海の森などを海から見ることができます。多くの都民の皆さんに「新東京丸」に乗船していただき、東京港の重要な物流機能や臨海地域の将来への発展を実感してほしいと考えております。
 しかし、「新東京丸」は、通常、平日のみの運航となっており、平日お休みでない方には乗船しにくいのではないでしょうか。「新東京丸」が土日運航できれば、より多くの都民が乗船することができると考えます。
 そこで、都は、視察船「新東京丸」の土日の運航を実施すべきと考えますが、見解を伺います。
 現在の視察船「新東京丸」は、建造から三十年を過ぎ、老朽化が目立っています。そのため、都は新しい視察船を建造するものとお聞きいたしました。船の建造には多額の費用がかかることから、都は、将来を見据え、新しい視察船の効果が最大限発揮できるよう、単に船の形を決めるだけではなく、効果的な運用も含め十分な検討をしていくことが必要だと思います。
 ぜひ新しい視察船は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会のよりよいレガシーの一つとして後世に残すことができればと考えますが、そこで、都は今後、視察船についてどのような視点から検討していくのかお伺いします。
 次に、土壌汚染対策について伺います。
 土壌汚染対策は、都民の健康と安全の確保はもとより、世界で一番の都市東京の実現に向けた都市づくりを円滑に進めていくためにも、確実に行われることが重要であります。
 土壌汚染対策法や環境確保条例では、有害物質を取り扱う工場や事業場を廃止する際には、まず土壌汚染の調査を行い、その後、汚染の状況に応じた対策を実施することとしていますが、中小企業にとっては初めての経験で、ノウハウもなく、戸惑いを感じることも多いようです。
 こうした状況に対し、東京都では、我が党の提案を受けて、アドバイザー制度などさまざまな技術的支援を実施してきました。
 そこで、まず、都が実施している支援策が中小事業者の土壌汚染対策にどう貢献しているか伺います。
 都が行っているさまざまな技術的支援策は、中小事業者からニーズは高いが、一方で、調査や対策にかかる経費の負担が大きいとの声も聞きます。
 負担軽減策の一つとして、国には土壌汚染対策費用の助成金交付事業というものがありますが、平成十五年度の事業開始以降、たったの二件しか交付されていません。これは、助成の対象となる条件が厳し過ぎるためと考えられ、使いやすいものとなるよう国に求めていくべきであります。また、現行の規制制度の問題点などを把握し、都として対応を検討していくべきだと考えますが、見解を伺います。
 次に、水道の給水装置関係の電子化について伺います。
 水道局では、インターネットを利用した給水装置関係の工事申請等の電子化を推進しています。これにより、指定事業者が水道局に出向く回数が減少するため、負担が軽減されるとともに、工事が迅速に施工されることから、都民サービスの向上が図られています。
 我が党は、さきの第一回定例会において、給水装置関係の電子化の利用拡大のため、サポート体制を充実することや、水道管管理図の電子閲覧については、対象の拡大を提言したところでございます。
 これを踏まえ、水道局は、事業者へのアンケート結果等をもとに利便性のさらなる向上に努めるとともに、情報セキュリティーに十分配慮しつつ、水道管管理図の電子閲覧は対象の拡大を検討すると答弁されました。
 そこで、給水装置関係の電子化について、閲覧の拡大など現在の取り組み状況をお伺いいたします。
 次に、特別区消防団をさらに充実強化するための入団促進方策についてお伺いします。
 いつ来るかわからない首都直下地震。震災時には、私の地元目黒区でも、死者三百三十二人、負傷者三千百九十五人、全壊、半壊八千六百六十四棟と予想されております。
 震災時に重要なことは、自助、共助、公助だと思います。その重要な共助と公助を担うのが消防団です。現在、特別区消防団は定足数一万六千人に対して、平成二十七年四月現在で、約一万四千人と、二千人足りない状況です。現在、各区でその足りない定足数に対してどのような施策ができるか、消防団運営委員会で議論をされております。来年三月には答申が出される予定になっております。
 目黒区でも、協力事業者の税制や契約面での優遇措置など、さまざまな施策の検討がされております。
 特別区消防団の定員を早期に確保し、地域の防災力を高めていく必要があると考えますが、消防団員の入団促進方策について東京消防庁にお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 栗山よしじ議員の一般質問にお答えいたします。
 財政運営についてでありますが、二〇二〇年の東京とその先の明るい未来に向け、都民福祉を向上させていくためには、現場感覚にかなった実効性の高い施策を積極的に構築していかなければなりません。
 あわせまして、景気の荒波に翻弄されてきた都財政の歴史、さらには今後増大する社会保障関係費や社会資本ストックの更新経費などを踏まえれば、施策展開の基盤となる財政対応力を堅持することも重要でございます。
 こうしたことから、これまでも全ての施策について、事業評価など自己改革の取り組みを徹底し、施策の効率性や実効性を高めております。また、将来の財政負担を見据え、都債の計画的な活用や基金残高の確保などを図ってきており、引き続き、中長期的な視点に立った財政運営を行うことが不可欠でございます。
 今後とも、都民ニーズを的確に捉え、必要な施策には機動的かつ集中的に財源を投入し得る強固な財政基盤を堅持しながら、世界一の都市東京の実現に向け、全力を尽くしてまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 女性のがん検診の受診率向上への取り組みについてお答えをいたします。
 がん検診の受診率を向上させるためには、実施主体である区市町村が、対象者に応じた効果的な取り組みを行うことが必要でございます。
 このため、都は、本年三月、区市町村向けに、受診勧奨に当たっての対象の決め方や周知方法、受診しやすい環境整備などについて取りまとめた手引を作成いたしました。手引には、検診の機会を逃すことが多い専業主婦にも周知できるよう、教育委員会の協力を得て、小中学校の児童生徒を通じて保護者に受診勧奨のチラシを配布した事例も盛り込んでおります。
 今後とも、こうした取り組み事例を積極的に紹介いたしますとともに、包括補助事業も活用し、がん検診の受診率向上に取り組む区市町村を支援してまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 特定整備路線沿道におけます区と連携したまちづくりについてでございますが、都は、目黒区原町一丁目、洗足一丁目地区につきまして、不燃化特区に指定するとともに、地区内の補助第四六号線を特定整備路線に位置づけ、既存の商店街の意向なども勘案しながら、まちづくりと一体的に道路整備を進めているところでございます。
 地元区では、延焼遮断帯や、にぎわいあるまち並みの形成を図るため、この地区を対象とする地区計画の策定を目指しておりまして、住民説明会を行ってございます。
 都といたしましても、こうした取り組みを踏まえ、特定整備路線沿道について用途地域を適切に見直し、不燃建築物への建てかえを促進することによりまして、道路整備と一体となった延焼遮断機能の確保に向けて、区のまちづくりを支援してまいります。
〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕

○港湾局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京港の視察船の運航についてですが、視察船は、東京港の物流や臨海副都心のまちづくりなどを、直接都民を初め多くの方々に理解していただけるという重要な役割を果たしており、昨年度も稼働率は七割を超え、約一万二千人の方々に利用していただいております。
 これまでは、一般都民のほか企業や経済団体の視察など、平日利用の需要が大きいことに加え、休日での運航は、民間の遊覧船の運航事業者の経営に影響を及ぼすと懸念する声も一部にあることから、基本的に平日の運航としてまいりました。
 視察船が老朽化しているなどの一定の制約はあるものの、都民の方々などの利便性を考えると、土日の運航は大きな意義があるため、特定日に運航するなど、東京港をアピールしていく機会をこれまで以上にふやしてまいります。
 次に、新視察船についてであります。
 現在の「新東京丸」は老朽化が著しく、更新の時期を迎えていることに加え、今後、二〇二〇年東京大会に向けて、国内外から東京港の視察がふえることが想定されるため、新しい視察船の建造に着手することといたしました。
 建造に当たっては、都民はもとより海外からの視察への対応や、土日、夜間の航行などの乗船の機会の増加、オリンピック・パラリンピック盛り上げを初めとしたイベント時の活用、東京港のシンボルとなり得る洗練されたデザイン等も含め、さまざまな観点から検討していくことが必要であると認識しております。
 今後、こうした点を踏まえ、必要な規模や機能を中心に調査検討を進め、新しい時代にふさわしい視察船を建造してまいります。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 土壌汚染対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、土壌汚染対策に係る都の支援策についてでございますが、都は、土壌汚染対策が適正かつ円滑に行われるよう、中小事業者に対してさまざまな技術的支援を実施しております。
 平成十六年度から毎年開催している技術フォーラムや、二十二年度から配布している対策ガイドラインにより、事業者が土壌汚染対策の方法や手続に理解を深め、複数の対策方法の中から最も合理的なものを選択し、対応の迅速化を図ることができるようになりました。
 また、中小事業者や工場のある土地の所有者からの依頼に基づき専門家を派遣する土壌汚染対策アドバイザー制度は、事業者の個々の実情に合った助言により、汚染が未然に防止できた、適切な調査や必要最小限の対策にとどめることができたなど、多くの事業者から評価の声をいただいているところでございます。
 次に、土壌汚染対策に係る今後の対応についてでございますが、土壌汚染対策を円滑に進めるためには、中小事業者の負担軽減は重要な課題であると認識をしております。
 今年度、国は、土壌汚染対策法の改正の検討を始めたことから、現場を持つ都としては、事業者が実施する調査や対策の状況を分析した上で、手続上の負担を軽減する制度への改善や、中小事業者が対策を円滑に行うための助成制度の拡充について、国に強く求めてまいります。
 また、都が行っているアドバイザー制度などの技術的支援により、事業者は低コストで合理的な調査や対策を選択することができるようになるため、実質的な経費負担の軽減につながります。
 引き続き、中小事業者のニーズなどを着実に把握し、技術的支援に積極的に取り組んでまいります。
〔水道局長吉田永君登壇〕

○水道局長(吉田永君) 給水装置関係の電子化の取り組み状況についてでありますが、水道局では、平成二十六年一月から、給水装置工事の申請や水道管管理図の閲覧の電子化を順次導入してまいりました。
 現在、利便性向上を図るため、指定給水装置工事事業者へのアンケート結果や問い合わせ窓口に寄せられました声の分析を進めており、特にシステム操作に不安があるとの声が多いことから、今後は、操作に関する講習会の開催頻度を増すなど、サポート体制をさらに強化してまいります。
 また、水道管管理図の電子閲覧の対象拡大につきましては、情報管理の徹底を図る観点から、申請者の所在地、名称及び閲覧履歴を確認できる方法やシステム改修の検討を進めております。これにより、指定給水装置工事事業者に限定せず、法人、個人を問わず対象を拡大して、平成二十七年度中の運用を目指してまいります。
〔消防総監大江秀敏君登壇〕

○消防総監(大江秀敏君) 特別区消防団員の入団促進方策についてでございますが、地域防災のかなめである消防団の定員確保は極めて重要であることから、町会、自治会等と連携した募集活動のほか、トレインチャンネル等の各種媒体による広報や、消防団協力事業所表示制度を活用した事業所等への働きかけを行っております。
 また、今年度から、若い世代への取り組みとして、大学生等の消防団員の就職活動などを支援するため、特別区学生消防団活動認証制度を創設し、平素の消防団活動を社会貢献活動として認証することといたしました。
 さらに、消防団を充実強化するための入団促進方策等について、特別区の各消防団運営委員会に諮問したところでありまして、今後とも関係機関と連携し、消防団の定員確保に向けて積極的に取り組んでまいります。

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