平成二十七年東京都議会会議録第九号

○副議長(藤井一君) 十七番栗林のり子さん。
〔十七番栗林のり子君登壇〕

○十七番(栗林のり子君) 初めに、少子化社会対策について伺います。
 二〇二〇年までの少子化対策の方向性を示す国の少子化社会対策大綱が、三月二十日、閣議決定されました。
 平成十六年、二十二年に続き、今回は三回目であり、少子化は社会経済の根幹を揺るがしかねないとの危機感のもと、結婚や子育てしやすい環境づくりへ社会全体を見直し、これまで以上に対策を充実するとしています。
 また、個人の選択、価値観の押しつけにならないよう配慮をした上で、個々人が結婚や子供について希望が持てる社会の実現を目指しています。
 初めに、こうした国の動きも踏まえ、知事の少子化対策に向けた所見を伺います。
 また、今回の大綱では、自治体などの結婚支援にも大きく踏み込んでいます。
 私は、平成二十四年、予算特別委員会で、未婚、晩婚化の対策として、結婚を希望する人に向けてのサポート体制の構築の必要性を取り上げたところ、当時の知事より大変前向きな答弁をいただきました。
 地方行財政調査会の二〇一四年に行われた都道府県の婚活支援実施状況調査では、八割を超す三十九道府県の団体が支援事業を行い、検討中の自治体も含めると八七%が前向きに取り組んでいます。
 都も、ようやく昨年より、東京都子育て応援ファンドモデル事業を開始し、対象事業の中に、出会い、結婚支援事業も含め、スタートしたところです。
 しかしながら、二十六年の採択されたモデル事業十四事業のうち、出会い、結婚支援事業は一件という状況で、まだまだ情報が行き渡っていません。この事業の情報が広く行き渡る取り組みが必要です。
 この事業の現状と広報の拡充について見解を伺います。
 次に、新生児里親委託事業について伺います。
 子供を授かることを希望する夫婦に対し、不妊治療の助成制度も拡充されつつあります。しかしながら、治療を続けた結果、授かることが難しい場合に、選択肢の一つとして、里親や特別養子縁組の制度があります。ところが、情報提供と相談体制が構築されていないため、制度につながらない現状があります。
 先日視察をした愛知県では、通称愛知方式と呼ばれる、特別養子縁組を前提とした新生児里親委託を推進しています。この制度は、さまざまな事情から、親が産んでも育てられない新生児を育てたいという里親登録をしている家庭に、生まれてすぐに橋渡しをする制度です。
 親がいない子供が、乳児院や児童養護施設ではなく、家庭の中で愛情を受けて育つことは、子供の権利も守られることにつながります。また、子供ができずに悩んでいた夫婦も、赤ちゃんを迎えて、新しい家族を築くことができるのです。
 東京都は、四月に社会的養護施策推進計画を策定し、その中で家庭的養護を推進していくとしています。
 今後、特別養子縁組も含め、里親委託を推進していくべきと考えます。所見を伺います。
 また、我が党が一貫して取り上げてきた、妊娠、出産に関する切れ目のない支援の中で、昨年より妊娠相談ほっとラインが開始されました。特に、予期しない妊娠や望まない妊娠で悩んでいる女性にとり、この窓口が果たす役割は大変重要であり、利用した方からも喜びの声が届いております。
 しかしながら、相談受け付けの曜日、時間が限られているため、急な対応が必要なときにすぐに相談ができないとの声も寄せられています。利用状況を検証し、相談時間の拡充をすべきです。
 これまでの利用実績と今後の事業の展開について伺います。
 次に、若者の命と健康を守ることから、HIV感染、エイズ予防について伺います。
 昨年の都のHIV感染、エイズ患者の報告数は五百十二件で、過去三位となり、HIV感染者は二十代から三十代に多く、二十代は百四十八件で、前年より四十五件も増加し、過去最高となっています。また、ほかの性感染症でも、梅毒が過去最多で、特に二十代の女性の感染が倍増している驚くべき状況です。正しい知識と理解、関心を深め、予防することが重要です。
 先日、東京都エイズ啓発拠点ふぉー・てぃーに伺いました。中高生から若者が気軽に相談できる工夫がされており、性に悩む世代にもワンストップで役に立つ重要な活動であると感じました。さらに周知し、内容の充実を図るべきと考えます。また、若者向け予防キャンペーンなどを強化するべきと考えますが、あわせて見解を伺います。
 また、学校教育でも、性に関する健康教育も重要であります。
 先日、有村少子化担当大臣は、少子化対策の一環として、妊娠、出産に関する医学的な知識を学校で教える考えを示しました。高校の保健体育向けの副読本にこうした内容を盛り込み、秋以降に各校に配布をし、学校側の判断で授業やホームルームなどで活用を進めるとしています。
 これは、日本産科婦人科学会を初めとする九つの学術団体が中心となり、大臣宛てに提出をされた、学校教育における健康教育の改善に関する要望書が反映されたものと聞いており、医学関係者の協力も期待できます。
 今、生徒たちを取り巻く環境は、インターネット等を通じ、さまざまな情報が簡単に入手できる状況にあり、そうしたことからも医学的に正しい性の知識が必要です。医師や看護師、専門家による出前授業などで性に関する健康教育を実施する必要があると考えますが、見解を求めます。
 また、中学、高校という多感な思春期において、性の悩みも生まれます。
 昨年、文部科学省は、性同一性障害を抱える児童生徒に関する初めての調査の結果を公表しました。その結果によると、全国で六百六人が、学校側に悩みや対応を相談していることがわかりました。
 私は、世田谷区内で開催されたLGBT成人式に参加をしました。その際、参加者との懇談の中で、先生や友達にわかってもらえなかった、何げない言葉に傷ついたなど、子供のころのつらい経験を聞いてきました。
 また、教員からも、生徒の接し方に戸惑うことがある、相談先もわからないなど、悩みを聞いてまいりました。まずは、児童生徒が安心して学校生活が送れるよう、教員がどのように対応し、かかわることが望ましいかなどを学ぶ必要があるのではないでしょうか。
 そこで、教員を対象にした研修を実施すべきであると考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、市街地再開発事業について伺います。
 地元世田谷区で昭和五十七年からスタートした二子玉川東地区再開発も、いよいよ来月、ホテル、オフィス棟の完成をもち、全ての事業が完了となります。三十三年間という長きにわたり、地域住民や事業関係者がさまざまな困難を乗り越え、当時の課題であった脆弱な都市基盤、交通渋滞、老朽化した家屋、防災上の問題などを解決するとともに、地域の若者が待ち望んでいた音楽スタジオ、映画館なども整備され、安心、快適な新しいまちに生まれ変わりました。
 また、国分寺崖線と多摩川という豊かな自然環境に囲まれている一方で、治水対策も必要な地域でもあることから、再開発事業に合わせて、スーパー堤防の機能も備えた防災公園も整備されました。
 このように、再開発事業は、防災を初めとした地域が抱える問題を一体的に解決し、安全で快適なまちに一変することが可能です。
 一方、地元世田谷区を初め、都内には多くの木密地域が存在し、道路などの都市基盤の不足に加え、老朽住宅が多く、建てかえが進まないことから、早急な改善が求められています。この大きな力を持った再開発事業は、木密地域の改善に効果的と考えます。
 そこで、木密地域の改善に当たっては、都が積極的に再開発事業の活用を誘導すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、駒沢オリンピック公園の魅力向上について伺います。
 私の地元、駒沢オリンピック公園では、スポーツを楽しむ人、ドッグランでペットと遊ぶ人、そして、ぶたさん公園や、りすさん公園などで遊ぶ親子連れと、特に土日は大変なにぎわいで活気にあふれています。
 公園内では、屋内球技場など、スポーツ施設の建てかえ工事は進められていますが、売店や休憩場所は老朽化しており、数も少なく、ゆっくり座ってくつろげる場所がありません。
 私も以前より、利用者からの改善要望の声を都に届けてまいりました。知事の所信表明にもあったとおり、都は、このたび公園の多面的な活用の第一弾として、民間の飲食店事業者の公募により、カフェやレストランの設置を発表したことは大変期待するところであります。前回大会のレガシーでもあるこの公園が、二〇二〇年に向けてさまざまなイベントでも活用されることを、地域の皆様は大変楽しみにしています。
 そこで、駒沢オリンピック公園のさらなる魅力向上に向けて、初めて展開される今回の取り組みについて伺います。そして、今後はこのような取り組みがほかの都立公園でも広がることを要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えいたします。
 少子化対策についてでございますが、少子化は、東京のみならず、これからの日本全体のあり方に大きな影響を与えるものであります。
 少子化の進行に歯どめをかけ、子供を大切にする社会を実現するためには、子供を持ちたいと願う全ての人が安心して子供を産み育てることができる環境を整備していかなければなりません。
 そのため、昨年策定いたしました東京都長期ビジョンには、妊娠から子育てまでの切れ目のない支援、保育サービスの拡充、子育てしやすい環境の整備、ワークライフバランスの推進など、さまざまな施策を盛り込んでございます。
 もとより、結婚や出産は、一人一人の価値観や人生観に深くかかわるものでありまして、社会が強制できるものではありませんが、都は、子供を持ちたいと願う人のために、少子化の問題に正面から向き合い、福祉、医療、雇用、住宅、教育など、あらゆる分野の政策を総動員いたしまして、全力で対策を講じてまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、性に関する健康教育についてでありますが、高等学校における性に関する指導では、生徒が性や生命の大切さについて正しい知識と意識を身につけ、適切に行動できるようにすることが重要であります。
 このため、都教育委員会では、都立高校からの要望に応じて産婦人科医を派遣し、生徒、教職員への講演、教職員からの個別相談についての対応、教職員への研修等を実施することにより、学校が行う健康相談や保健指導等の学校保健活動を専門的な視点から支援しております。
 今後とも、全校の養護教諭等を対象とした産婦人科医の講演会や学校関係者との連絡会等を通じて、派遣事業について一層の周知を図ることにより、取り組み校を拡大するなど、産婦人科医派遣をさらに充実させてまいります。
 次に、性同一性障害等に関する教員研修についてでありますが、性同一性障害等の児童生徒が自分らしさを発揮し、生き生きと学校生活を送ることができるようにするためには、教員が研修等を通して、このような人権課題についての正しい理解と認識を深める必要がございます。
 これまで都教育委員会は、学校が性同一性障害等の児童生徒の心情に配慮し、適切な対応を図ることができるようにするため、通知文を発出するとともに、教員からの相談に対して具体的な指導や助言を行ってきております。
 今後は、教員研修等において、医療や心理の専門家等を講師として招聘するとともに、研修内容等をまとめた指導資料を作成、配布するなどして、性同一性障害等の児童生徒に対し、よりきめ細かな支援ができる教員を育成してまいります。
〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 駒沢オリンピック公園における魅力向上の取り組みについてでございますが、公園の多面的な活用を進めることで新たなにぎわいを創出し、公園の魅力をさらに高めていくことは重要でございます。
 このため、都立公園では初めての取り組みとして、民間事業者がみずから、店舗のデザインから建築までの全てを行い運営するレストラン、カフェを設置することといたしました。
 この店舗では、にぎわいの創出に加えて、売り上げの一部を還元させ、Wi-Fiなど情報取得に必要な通信設備の設置や、乳幼児用の粉ミルク、紙おむつなどの備蓄を行ってまいります。さらに災害時には、店舗そのものを被災者の支援を行う施設へと転用することで、防災機能の向上に役立ててまいります。
 今後とも、都市の貴重な緑を守りつつ、都民ニーズに合った多彩な機能を持つ公園づくりを推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、東京子育て応援事業についてでありますが、この事業は、NPO法人や企業等が実施する子育て支援や、結婚へ向けた出会いの場づくりを含むさまざまな先駆的、先進的取り組みを支援するものでございまして、今年度は五月十八日から事業者の募集を行っております。
 今回の募集に当たりましては、子供の健全育成等に取り組むNPO法人へチラシを個別送付するほか、都内事業者向けのメールマガジンやパンフレットを活用するなど、周知に工夫を凝らしており、六月上旬に開いた説明会には、昨年度の二倍を超える二百四十の事業者の参加がございました。
 今後、本事業により多くの事業者が参画するとともに、事業の成果が広く都民に活用されますよう、さまざまな媒体を通じて情報発信してまいります。
 次に、養育家庭等への委託の推進についてでありますが、子供は本来、家庭的な環境のもとで愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましいものでございます。
 そのため、都は、家庭的養護の取り組みを進めており、養育家庭の登録数をふやすため、制度を都民に広く周知するとともに、養育家庭に対し、児童相談所や民間団体を活用したきめ細かな支援を行ってまいりました。
 本年四月に策定した社会的養護施策推進計画では、平成四十一年度に社会的養護に占める家庭的養護の割合を、現在の三割から六割に引き上げる目標を定めており、今後、国の養子縁組に関する研究成果も踏まえ、特別養子縁組を含めた養育家庭等への委託の推進など、具体的な方策について専門家の意見を聞きながら検討し、家庭的養護を一層進めてまいります。
 次に、妊娠相談ほっとラインについてでありますが、昨年七月に開設した妊娠相談ほっとラインでは、妊娠や出産に関する悩みを抱える女性からの相談に対し、看護師等の専門職が電話やメールで対応し、助言などを行っております。相談は、本年四月までの十カ月間で八百六十四件寄せられておりまして、そのうち予期しない妊娠や望まない妊娠に関する相談が約四割を占めております。
 現在、このホットラインを広く周知するため、区市町村や医療機関等でリーフレットを配布するほか、電車内にポスターやステッカーを掲示するなど、さまざまな媒体を活用して広報を行っており、今年度は新たに母子健康手帳の交付時に普及啓発用カードを渡すこととしております。
 今後、これまでの利用実績を踏まえながら、より利用しやすい実施体制につきましても検討を行ってまいります。
 最後に、HIV、エイズの若者向け普及啓発についてでありますが、若者向けには、現在、エイズ啓発拠点ふぉー・てぃーで、若者の自発性と発想を生かした予防啓発イベントや交流を行いますとともに、保健所や看護協会が専門研修を受けた学生等とともに、学校や地域で若者同士が学び考えるピアエデュケーションを実施しております。
 今年度は、ふぉー・てぃーの活動を都内各地の青少年センターや大学等に拡大いたしますとともに、ピアエデュケーションの回数もふやしてまいります。
 また、六月から、若者に人気の芸能人を起用して、性感染症の豆知識やHIV、エイズをテーマにした番組をインターネットで配信するなど、HIV、エイズを初めとした性感染症に関する若者向けの予防啓発活動を強化してまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 木密地域におけます再開発事業の活用についてでございますが、再開発事業は、木密地域の改善に効果が大きいことから、都は、民間施行の取り組みを支援するとともに、白鬚西地区や北新宿地区などの都施行事業を行ってまいりました。
 また、不燃化特区制度の活用に当たりましても、西新宿五丁目地区や大森中地区など八地区におきまして、再開発事業をコア事業として位置づけ、建物の共同化や道路、広場の整備などにより、市街地の不燃化とともに居住環境の改善を推進しております。
 都は今後とも、防災まちづくりの勉強会や専門家の派遣に対する支援などを通じまして、木密地域における再開発事業の活用を促し、安全・安心な市街地の形成に取り組んでまいります。

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