平成二十七年東京都議会会議録第九号

   午後三時三十分開議

○副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四番山内晃君。
〔四番山内晃君登壇〕

○四番(山内晃君) 初めに、安全都市東京について伺います。
 東京オリンピック・パラリンピックの開催を五年後に控え、東京は注目されており、この機を捉え、東京の魅力を最大限アピールをし、大勢の外国人客に東京に来てもらうことが大会成功につながります。
 そこで大きなポイントとなるのが、世界で評価される治安のよさであります。
 折しも、イギリスの調査研究部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの報告書において、世界の主要五十都市のうち、東京が世界で最も安全な都市として評価をされました。
 大変名誉である一方、都民生活に関する世論調査では、治安対策への都民要望は依然として高いことから、海外における評価と都民の実感が一致しているとはいいがたいのが現状です。
 そこで、海外の評価に甘んじることなく、都民が世界に誇れる安全・安心を実感するため、さらなる治安の向上に取り組むべきと考えるが、知事の所見を伺います。
 登下校中の児童生徒の安全確保について伺います。
 中でも、児童生徒の安全確保については重要なことであり、都はこれまでも、登下校中の児童の安全確保を目的に、学校が家庭と地域とともに取り組む対策として、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業を行い、区市町村を支援してきました。さらに、都は平成二十六年度から、学校設置者である区市町村が通学路へ設置をする防犯カメラの補助事業を開始いたしました。
 児童の安全強化に向けた世界に誇れる取り組みと考えるが、今後の進め方について都の見解を伺います。
 東京のものづくりについて伺います。
 京浜工業地帯の発祥の地である私の地元品川は、世界に誇る高い技術力を持つ中小企業が、今なお集積しております。
 昨年、大東文化大学の学生グループ、中村ゼミナールが、品川の製造業について研究を行い、その成果をまとめた、「進化し続ける品川区のものづくり」という本を出版しました。収録された五十社近くの中小企業に対するインタビューの中で、特に事業承継や人材確保、金融機関との関係強化といった課題があることに気づきました。その課題について解決を図っていくのは、行政の使命であります。
 特に多くの企業が掲げた課題が、後継者の確保であります。経営者の高齢化が進む中で事業を継ぐ者が確保できなければ、廃業を余儀なくされ、東京の産業の衰退につながってしまいます。
 都としても、中小企業の事業承継に対する支援を充実させていると聞いているが、こうした東京の中小のものづくりの灯を消さないよう、実効性の高い取り組みをさらに進めるべきと考えるが、所見を伺います。
 中小企業で働く人材確保について伺います。
 東京の産業が今後も持続的に成長し続けるためには、中小企業の活力向上が不可欠であり、都は人材面からその成長をしっかりと支えていくべきです。
 四月に公表された中小企業白書によると、中小企業の約四割が人材を確保できておらず、今後、大企業が採用を大幅にふやす動きがある中で、中小企業の人材不足感はますます強まると予想されます。企業の中には優秀な人材の確保に成功しているところがある一方で、多くの中小企業は採用の手段や方法に苦慮をしております。
 こうした企業の人材確保という課題に対し、若者が中小企業の魅力を感じてもらう取り組みに、都は積極的に支援していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、中小企業に対する金融支援について伺います。
 中小企業が成長していくためには、日々の資金繰りを初めとする金融支援はもとより、中小企業に寄り添ったさまざまな支援を行うことができる金融機関の果たす役割は大きいと考えます。せっかくすばらしい技術があっても、経営がうまくいかなければ企業の存在は危うくなります。金融機関が日ごろから企業の現場を知っていれば、必要なときに経営のアドバイスができ、融資に当たっては、中小企業の持つ技術力や将来性、機械や在庫などの資産の活用状況を評価することが可能になります。
 昨年度始まった都のABL制度は、企業が持つ動産や債権を担保に融資を行うものでありますが、担保保全のため、定期的にヒアリングや実施調査を行う仕組みで、金融機関が企業とのコミュニケーションを図る観点からも大変意義深い制度であります。
 このような特徴を持つABL制度のさらなる普及促進に努めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、子育て支援について伺います。
 四月に子ども・子育て支援新制度が施行され、この制度によって、認可保育所だけではなく、認定こども園も国の財政支援の対象となり、区市町村認可による地域型保育事業が創設をされ、区市町村はさまざまな選択肢から、地域の実情によって柔軟に保育サービスの拡充を図れることになりました。
 しかし、残念ながら、都独自の認証保育所は、国の財政支援の対象ではありません。認証保育所は、保育を必要とする全ての利用者を対象とし、認可保育所だけでは対応し切れないニーズに柔軟に対応するとともに、既存賃貸物件の活用を基本とするところから迅速な整備が可能であり、保育事業者にとっては参入しやすく、待機児童対策にも大変有効であります。
 今後、認証保育所の設置促進を図るとともに、安定的な運営を確保するため、引き続きしっかり支援していくべきと考えますが、所見を伺います。
 新制度施行後も、保育サービスの先駆的な役割を担う認証保育所の拡充を進めていくことは、待機児童を解消するためにも大変重要と考えます。
 ところが、昨年、厚生委員会で質問したように、新規の事業者の参入については、これまでの実績重視というところから参入のハードルが高く、待機児童の解消に協力したいと思っても、自治体によっては断られるケースがあると伺っております。また、都独自の制度のため、保育事業者が自治体の窓口に相談に行った際、課題点が生じると、基準については東京都の意向に従いますという一方で、運営については都に問い合わせると、自治体の実績を踏まえ対応してくださいというケースがあると聞いております。
 認証保育所の設置を促進するため、保育の実施主体である区市町村と都が、これまで以上に取り組みを強化していただくことを要望して、次の質問に移ります。
 マンション施策について伺います。
 都内には数多くの分譲マンションが集積をし、都民の生活を支える一方、今後、老朽化したマンションが急増していく中、都市の安全性の向上、生活環境の改善を図る上で、これらの再生を進めていくことは重要です。建設後の都市計画変更等により、既存不適格になるなど、単独敷地での建てかえが困難なマンションも少なくありません。
 都は、こうしたマンションの再生を支援する新たな制度の構築に向け、今年度から先行モデル事業に取り組んでおります。
 先日、その実施地区として三地区が公表され、私の地元品川区からも、大崎西口駅前地区が選ばれました。大崎駅周辺では、工場跡地などを中心に再開発が進んでいますが、この地区は旧耐震基準のマンションが集積をし、防災上の課題を抱えたまま取り残されております。今回のモデル事業に選定されたことで、まちづくりが大きく前進することを期待しております。
 ほかの選定地区も含め、都はどのように先行モデル事業に取り組み、新たな制度を構築していくか、所見を伺います。
 羽田空港の機能強化について伺います。
 東京の国際競争力には、羽田空港の機能強化が重要であります。昨年夏、国から、発着容量を拡大させるため、都心上空を飛行する新たな飛行ルート設定の提案があり、その後、国は提案の具体化に向け、関係自治体等と協議を行い、先月、国は住民説明の進め方など、実現に向けた工程を公表しました。
 都心上空を飛行する経路案については、品川区を初め、飛行経路周辺の住民にとっては、騒音や落下物等、不安な面もあるかと思います。まずはこの点をしっかりと踏まえ、機能強化の検討を進めていただきたいと思います。
 そこで、今後、国が実施する羽田空港の機能強化に関する地元への説明について、都はどのように取り組んでいくのか伺います。
 空き家対策にかかわる税制について伺います。
 適切な管理が行われていない空き家が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、その対策が強く求められております。
 空き家対策を進める上で、これまで同じ自治体内であっても、税務部局が保有している固定資産税の情報を空き家対策部局が活用することができなかったため、空き家の所有者の特定が困難だったという問題がありました。
 しかし、二月に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法により、ようやく固定資産税の情報の活用が可能となったため、早期の所有者特定につながるものと考えております。
 さらに、五月二十六日、倒壊などのおそれがある特定空き家の具体的な判断基準等を示したガイドラインを国が公表し、特別措置法が施行され、区市町村による空き家対策が本格化していく中で、法の施行により、固定資産税の情報の利用や住宅用地の優遇措置の解除が可能となり、特に二十三区においては、ほかの自治体とは違い、都が固定資産税を課税していることもあり、区が進める空き家対策を支援するには、都と区のより一層の連携が必要と考えるが、所見を伺います。
 最後に、水辺環境の創出について伺います。
 河川は、豪雨や高潮から都民の生命と財産を守る重要なインフラでありますが、治水機能の向上だけではなく、多くの人々が水辺に親しむようにできるようにすることも重要であり、我が党は、隅田川などにおいて、にぎわいあふれる水辺の創出に向けた取り組みを展開するよう、政策提言を行っております。
 東京都長期ビジョンでは、隅田川における恒常的なにぎわいの創出、新たにウオーキング等にも利用しやすい河川沿いの通路の整備などが掲げられています。
 水辺環境の向上に向け、これまで以上に積極的な都の取り組みが必要と考えますが、見解を伺いまして、私の一般質問を終了させていただきます。
 ご清聴まことにありがとうございます。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 山内晃議員の一般質問にお答えいたします。
 さらなる治安の向上についてでございますけれども、都市活動の土台は、安全・安心でございます。犯罪が横行し、将来への見通しが立たないようでは、旺盛な経済活動を初め、活力ある都市の成長は望めません。
 ご指摘のとおり、東京の大きな強みが治安のよさであります。これは世界に冠たるものでありまして、都市の魅力として大いにPRし、売り込んでいきたいと思っております。刑法犯の認知件数も、ピークの平成十四年から半減してございます。
 一方で、首都東京は、治安上の課題が常に新たな形で発生する最前線であることも事実です。危機への対処を片時たりともおろそかにしてはなりません。都は、危険ドラッグや特殊詐欺といった喫緊の課題にも迅速に対応し、誰もが安全・安心を実感できる社会を実現するため、本定例会に東京都安全・安心まちづくり条例の改正を提案しております。
 今後、オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、警視庁を初め、東京都全体で治安対策の取り組みを加速化させてまいります。また、身近な犯罪を未然に防ぐために、地域の力も最大限強化してまいります。
 二〇二〇年以降も、常に世界で最も安全な都市であり続けますよう、世界に誇る東京の治安をさらに高いレベルに引き上げていきたいと考えております。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 登下校中の児童生徒の安全確保についてでありますが、都教育委員会は区市町村教育委員会に対し、公立小中学校が家庭、地域と連携して取り組む、通学路における児童生徒の見守り活動への支援を実施してきております。
 また、こうした地域における見守り活動を補完する目的で、都は区市町村が通学路に設置する防犯カメラの補助を昨年度から開始し、二十二区市町村で設置が行われたところでございます。
 今後も、都教育委員会は、公立小中学校が取り組む通学路における見守り活動を推進するとともに、防犯カメラの設置が円滑に進むよう、関係機関との調整や先行事例の紹介等により、区市町村教育委員会を支援し、児童生徒のより一層の安全対策を進めてまいります。
〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 人々に親しまれる水辺環境の創出についてでございますが、都はこれまで、緑豊かなスーパー堤防や四季を感じさせる花壇のあるテラスの設置、川沿いへのオープンカフェの誘致などに取り組んでまいりました。今後は、周辺のまちづくりと一層連携して水辺環境の整備を進め、地域の魅力を相乗的に高めてまいります。
 例えば、浅草エリアでは、北十間川沿いのテラス、隣接する東武鉄道の高架下、区の道路や公園が一体となるよう整備し、約四百メートルの新たなプロムナードを創出してまいります。こうしたさまざまな事業をパッケージ化して実施し、浅草寺から東京スカイツリーに至る地域の回遊性を向上させてまいります。また、築地エリアでは、海、川、まちをつなぐ舟運の拠点として築地リバーフロントターミナルを形成いたします。
 このような川から、まちづくりを誘導する取り組みなどを広く進め、水の都東京の再生を図ってまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、中小企業の事業承継の支援についてでございますが、東京の産業の活力を将来にわたって維持していくためには、中小企業経営者の円滑な世代交代を図り、事業を持続的に発展させていくことが重要でございます。
 このため、都は、この四月から商工会議所、商工会連合会及び中小企業団体中央会との連携により、小規模企業等の支援拠点を六カ所設置し、事業承継など、解決の難しい課題につきまして専門家を活用した支援を行っております。
 加えて、中小企業振興公社では、事業承継に取り組む企業に対し、経営の改善や後継者の選定など、さまざまな課題の解決を三年間にわたって支援する事業に着手いたしました。
 今後は、これら支援機関相互の連携強化とともに、金融機関や経営人材の情報を持つハローワーク等と協力をいたしまして、中小企業の事業承継を一層効果的に後押ししてまいります。
 次に、中小企業で働く人材の確保についてでございますが、人材確保に向けましては、企業の魅力を若者に伝えるとともに、各企業の実情に応じた支援が重要でございます。
 これまで都は、企業情報や採用情報をしごとセンターで若者に提供するほか、ウエブサイトや企業見学会を通しまして、働く場としての魅力を広く発信してまいりました。
 今年度は、これらの一層の充実に加え、中小企業の採用力を強化し、確実な人材確保を図るため、専門家を派遣して採用活動や人材活用の助言を行うとともに、国と連携し、個々の企業の求人ニーズに合った人材との面接機会を設定いたします。また、その中で効果的な事例を取りまとめ、広く発信し、普及を図ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、人材確保を積極的に支援し、中小企業の成長を後押ししてまいります。
 最後に、都のABL制度についてでございますが、本制度は、担保物件の評価や保証を行う専門機関と金融機関が連携し、融資先の中小企業に対する定期的なモニタリングを行う仕組みとしておりまして、お話のように、本制度の普及促進を図ることは、金融機関と企業との密接な関係構築の後押しにもつながります。
 これまで都は、取扱金融機関の拡大や中小企業団体に対する周知など、制度の普及に取り組み、昨年度は六十一件の融資が実行されました。ABL制度による融資後には、金融機関が企業訪問を行う回数がふえるなど、両者の円滑なコミュニケーションが図られてきております。
 今後とも、専門機関と連携し、ABL制度の活用事例を紹介する金融機関向けの勉強会を新たに実施するなど、本制度のさらなる普及促進に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 認証保育所への支援についてお答えをいたします。
 都はこれまで、認証保育所の設置を促進するため、新たに開設する際の改修経費や保育を担う人材の確保、定着を図るための処遇改善経費を補助しておりまして、昨年度からは、開設準備経費補助の補助率の引き上げや、保育従事者向けの宿舎借り上げへの支援も実施しております。
 また、今年度は、運営費補助について補助単価を増額するとともに、賃借料や減価償却費の加算を創設するなどの充実を図るほか、保育士等のキャリアアップを図る取り組みや、障害児やアレルギー児などに対する保育を推進する取り組みへの支援も開始いたします。
 認証保育所は、都の保育施策の重要な柱の一つであり、今後とも、保育の実施主体である区市町村と連携しながら支援してまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、マンション再生の先行モデル事業についてでございます。
 今回、区市からの提案を受けまして選定した三地区については、それぞれ魅力とにぎわいのある駅前街区の形成、緊急輸送道路沿道の耐震化、大規模団地の再生という、地域特性を踏まえた特色ある提案がなされております。
 引き続き、選定された区市におきましては、マンション再生を含むまちづくりの計画を策定することとなっており、これに対しまして、都は、都市計画制度や再開発事業の活用などの技術的な助言とともに、財政的にも区市の取り組みを支援してまいります。
 今後、こうしたモデル事業を通じまして、マンション再生の促進策を検討し、来年度中の新たな支援制度の構築に向けて取り組んでまいります。
 次に、羽田空港の機能強化についてでございます。
 オリンピック・パラリンピック東京大会やその後の航空需要に応え、国際便の就航をふやしていくためにも、羽田空港の容量拡大は必要不可欠でございます。
 国は、二〇二〇年までの空港の機能強化に向け、新たな飛行経路付近となる大井町駅周辺等の地域におきまして、オープンハウス型の説明会を実施するとともに、特に影響の大きい地域を対象に、小規模な単位で意見交換を行う場を設けることとしてございます。
 都は、こうした説明の場におきまして、住民に対し、騒音、落下物対策等の丁寧な説明を行うよう国に求めております。
 今後とも、都民の理解が深まるよう積極的に取り組み、国際的な拠点空港としての羽田空港の機能強化を進めてまいります。
〔主税局長塚田祐次君登壇〕

○主税局長(塚田祐次君) 空き家対策における区との連携についてのご質問にお答えいたします。
 特別措置法の施行に伴い、空き家の所有者を特定するに当たり必要な限度において、税務情報の提供が可能となりました。都では、区の依頼を受け、情報の提供を始めました。
 今後、各区は、国が定めたガイドラインに沿って空き家対策を進めていきますが、区が特定空き家の所有者に対して除却、修繕等を勧告した場合、都はその情報を受けて、固定資産税等の住宅用地特例から除外することになります。この措置は、平成二十八年度から適用されます。
 このように、空き家対策と税制が密接に関連することから、各区の実情に応じた適切な情報共有ができるよう、必要な仕組みづくりを行うなど、空き家対策の推進に向けて各区との連携を一層強化してまいります。

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