平成二十七年東京都議会会議録第九号

○議長(高島なおき君) 六十五番きたしろ勝彦君。
〔六十五番きたしろ勝彦君登壇〕

○六十五番(きたしろ勝彦君) 初めに、人権施策についてお伺いをいたします。
 我が国は、日本神話を源泉とする悠久の歴史の中で育まれてきた独自の伝統と文化があり、これによって、健全なる国民精神が培われてきました。
 かつての日本は、家族を基礎として、国の伝統や歴史を学び、家族のきずな、親子の触れ合いを通して、お互いに尊敬し、思いやり、感謝し合う温かい社会を育んできました。これは、日本人固有の価値観であり美徳でもあります。
 しかし、戦後、欧米の個人主義を、伝統と文化の異なるこの日本に、寛容の心を持って、消化することなく持ち込んだ結果、日本人の行動基準が善悪から損得に取ってかわり、自分さえよければよいという利己主義が横行しております。
 また、日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重といった普遍的な原理さえも、自分の都合のいいように解釈したため、あしき平等主義や我欲などが蔓延しています。
 今や、日本人がこれまで大切にしてきた崇高な倫理観が崩壊し、家族や教育の解体などの深刻な社会問題が生起し、国のあらゆる分野で衰退現象が現出しています。
 こうした中、都は去る六月三日に、人権施策推進指針素案を公表しました。
 人権を尊重し、差別を許さないことは当然のことであります。世の中が人権を強調する余り、かえって利己主義を助長し、我が国の伝統的な美徳、価値観をも失わせることになるのではないかと懸念をしております。
 そこで、今後、都はどのように人権施策を展開していくのか、知事の所見を伺います。
 次に、自動車のCO2削減対策についてお伺いします。
 CO2排出量の増加に伴う地球温暖化は、世界各地で異常気象を引き起こし、大きな被害をもたらしています。人間が利便性を求め、エネルギーを大量消費したことに地球が怒っているのです。人間は自然をコントロールできないのであり、自然と共生する謙虚さを忘れてはなりません。
 自動車からのCO2排出量は、都内の約二割を占めており、その削減対策が重要と考えます。
 そのため、生産、販売が本格化している電気自動車やハイブリッド車といった環境性能の高い車もさらに普及拡大していく必要があります。
 都は、電気自動車など環境性能の高い自動車を導入しようとする事業者に対して、今後、どのように支援していくのか見解を伺います。
 また、自動車のCO2削減を一層進めるには、事業者がみずから計画的にCO2削減に取り組んでいく仕組みも重要です。東京都トラック協会ではグリーン・エコプロジェクトという取り組みにより、トラックからのCO2削減に取り組んでいます。
 都の環境管理計画書制度は、今年度で第三計画期間が終了すると聞いていますが、都は今後、事業者に対して、どのようにCO2削減の取り組みを促していくのか見解を伺います。
 次に、自転車総合対策について伺います。
 二〇二〇年大会を控え、港区を初め都心四区で自転車シェアリング事業が進められるなど、今後、ますます利用が拡大するものと思われます。
 一方で、信号無視、車道の逆走など、自転車利用者のルール、マナー違反も多く、歩行者等の交通に危険を生じさせる原因ともなっております。
 今月一日には、信号無視や一時不停止など、重大な事故につながる危険行為を繰り返した自転車の運転者に、安全講習の受講を義務づける制度がスタートいたしました。
 今後は、いかにして自転車利用者の意識の向上を図っていくかがポイントとなります。
 都が昨年策定した自転車安全利用推進計画では、法施行に先立ち、悪質、危険な自転車利用者対策が盛り込まれておりますが、社会的な関心も高まっているこの機を捉え、都として、より一層、自転車のルール、マナーの徹底に取り組むべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、品川駅、田町駅周辺のまちづくりについてお伺いをいたします。
 この地域が、今後、新しい東京の玄関口としての役割を担っていくことについては、昨年第三回定例会の私の質問で確認をしたところです。
 先月には、芝浦水再生センターの上部に品川シーズンテラスがグランドオープンし、広大な緑地が整備され、品川に新たなシンボルが誕生しました。
 二〇二〇年に暫定開業する新駅の周辺地区については、土地区画整理事業の施行に向け、地元との調整を進めていると聞いております。また、浅草線泉岳寺駅については、新駅の周辺地区におけるまちづくりに合わせて、駅機能強化の検討が進められています。
 一方、品川駅西口地区については、今月十四日、高輪三丁目でまちづくり協議会の設立総会が開催され、私も参加してまいりました。今後、地元におけるまちづくりの具体的な検討が進んでいくものと思います。
 そこで、品川駅西口地区におけるまちづくりについて、今後、都はどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。
 次に、浜離宮恩賜庭園について伺います。
 私は、東京を水と緑の都、環境に優しいガーデンシティー東京とすることを、大きな政治テーマの一つとしてきました。
 かつて江戸は、庭園都市と呼ばれるほど緑豊かな都市でありました。東京が風格のある、文化遺産を大切にする首都であるためには、都立庭園の適切な保存が必要です。世界に向けて、東京の歴史ある緑豊かな空間の魅力を発信していくことが大変重要であります。
 私は、以前より都議会において、浜離宮恩賜庭園の茶屋を復元し活用を図ることは、庭園の魅力を高め、江戸の伝統文化を今に伝えるために重要であると主張してきました。
 そして、松の茶屋の復元が実現し、昨年公表された東京都長期ビジョンにおいても茶屋群の復元事業が位置づけられ、現在も取り組みが進められております。
 そこで、浜離宮恩賜庭園における茶屋群の復元と、これらを生かした新たなおもてなしについてお伺いをいたします。
 また、知事から、浜離宮恩賜庭園に近代日本最初の迎賓施設であった延遼館が復元するとのお話がありました。
 そこで、浜離宮恩賜庭園の明治期の歴史的価値を伝える施設である延遼館の復元に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、オリンピック・パラリンピック大会についてお伺いをいたします。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会は、立候補した都はもちろんのこと、都議会初め、国、スポーツ界、多くの方々などが強力に連携し、まさにオールジャパンでかち取った栄光であります。
 二〇二〇年大会まであと五年余りですが、いま一度、あのブエノスアイレスの感動を思い出し、至上最高の大会に向けて、オールジャパンで力を合わせて大会を成功に導かなければなりません。
 今回の理事会において、私が昨年の第三回定例会でお願いをしたトライアスロン競技の会場が、計画どおりお台場海浜公園に決定されました。この決定は、招致計画どおりお台場海浜公園での実施を求める港区、港区体育協会、競技団体等からの要望、地元の子供たちによる会場誘致のイベントなど、関係者によるこれまでの活動のたまものだと思います。
 区長を初め関係者の皆さんに心から感謝を申し上げます。
 そこで、お台場海浜公園において行われるトライアスロン競技を通じて、どのように東京の魅力を発信し、大会の成功につなげていくのか、都の所見をお伺いいたします。
 次に、道徳教育についてお伺いをいたします。
 昨今、続発する未成年者による極めて凶悪な犯罪に驚きを禁じ得ないのは、この私だけではないでしょう。このような子供たちの状況を憂い、人が人として生きる上で大切な道徳性を育成する教育を充実させるため、学校の教育活動全体の中核として日本人の心を取り戻す教育が不可欠であることを私はかねてより主張してきました。
 我が国では、戦前、教育勅語に基づき、筆頭教科である修身により、子供たちへの道徳教育が行われていました。修身はいわば、日本人の精神形成の中心的な役割を担っていました。
 しかしながら、戦後、占領軍指令により、修身の授業停止と教科書回収が決定され、日本人の本来の価値観は教えられなくなり、自虐史観は、子供たちの日本人としての誇りを委縮させてしまいました。勤勉、正直、礼儀正しさ、思いやりや親切など、古来日本人が守り続けてきた美徳は、いつの時代においても必要とされる普遍的なものです。
 現在、グローバル化が加速度的に進展する社会への対応として、グローバル人材を育成する教育が推進されていますが、外国でコミュニケーションができるようになればそれでいいということではありません。一番重要となるのは、日本人としての誇りと自覚、国際社会に生きる日本人としてのアイデンティティーを育んでいくことであり、日本人の心を取り戻す道徳教育を推進することです。
 そのため、平成二十四年第一回定例都議会では、都教育委員会の取り組みについてお尋ねをし、家族愛、礼儀、節度、公徳心など、世代を超えて継承すべき道徳的価値を醸成するための道徳教材を開発し、規範意識や道徳性を育む教育を一層推進していくという答弁をいただきました。
 このことについて、現在、都内全公立小中学校の全児童生徒約八十万人に配布されている東京都道徳教育教材集として結実したことを高く評価するとともに、この教材が広く活用され、東京都における道徳教育が推進されることを願ってやみません。
 そこで、小中学校における今後の道徳教育の推進について、都教育委員会の決意をお伺いをいたします。
 私は、昨年の予算特別委員会でも、日本人の心を取り戻す教育の重要性につき述べるとともに、その具体的取り組みをお尋ねしました。
 教育委員会からは、都立高校で国に先駆け、人としてのあり方、生き方を学ぶ新教科の設置に取り組むという大変前向きな答弁をいただき、ついに高等学校でこのような新しい教科を導入することになったことを大変うれしく思っております。
 聞くところによれば、新教科、人間と社会は、来年度から全都立高校で全面実施するとのことです。現在の取り組み状況についてお伺いし、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) きたしろ勝彦議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の人権施策の展開についてでございますが、私が目指します世界一の都市東京は、そこで暮らし、また訪ねてくる人々が幸福を実現する都市でありまして、人権が尊重されることはその大前提であります。
 人権が尊重される都市というのは、それぞれが自分の人権だけを声高に主張していても成り立ちません。他の人の人権や公共の利益との調和を図る公共性の考え方が含まれることが重要でございまして、このことを指針の素案にも示してあります。
 また、日本には、他者を思いやり、尊重し、お互いに助け合って生活してきた伝統や多様な文化を受け入れ発展してきた歴史がございます。こうしたことはオリンピック・パラリンピックを控え、国際化がますます進展する今日、東京という都市を高めていく上で大きな強みになると思っております。
 今後、我が国の伝統や歴史の持つ、こうした価値も最大限引き出しながら、人権施策を推進していく所存でございます。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、小中学校の道徳教育の推進についてでありますが、道徳教育は、人が一生を通じて追求すべき人格形成の根幹にかかわるものであり、同時に、民主的な国家、社会の持続的発展を根底で支えるものであります。
 そのため、都教育委員会は、小中学校における道徳の授業の公開により、家庭や地域と一体となった道徳教育を推進するとともに、自己の生き方について考えを深める道徳教育教材集を開発して、全児童生徒に配布するなど、全国に先駆けて独自の取り組みを展開してまいりました。
 今後、都教育委員会は、道徳の教科化に向けて、国の動向を注視しつつ、二十一世紀を生きる子供たちに、日本人としての自覚と誇りを育み、思いやりや規範意識、公正、公平な態度や公共の精神などを身につけさせる道徳教育を一層推進してまいります。
 次に、これは仮称でございますが、新教科、人間と社会の取り組み状況についてでありますが、この教科は、思いやりや規範意識等の道徳的な価値を深め、よりよく判断する力を培い、社会とのかかわりの中でみずからの生き方を考え、行動する力を育成することを狙いとしております。
 現在、各都立高校では、自他の尊重や、社会連帯等の資質、能力を育成する授業を都独自の教科書を用いて試行的に行っております。また、推進校二十校で事例に基づく話し合いや体験活動の指導について、研究を行っているところでございます。さらに、各校の指導が円滑に行われるよう、中核となる教員を対象として、年四回の研修会も実施しております。
 今後、道徳心の育成に関する新たなテーマを加えて教科書を充実するとともに、研究を踏まえた指導資料を作成するなど、新教科の全面実施に向けて万全な体制を整えてまいります。
〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、浜離宮恩賜庭園における茶屋群の復元と、これを生かした新たなおもてなしについてでございますが、浜離宮恩賜庭園では、戦災等で焼失した茶屋群の復元を進めており、中島の茶屋、松の茶屋に続き、この春、燕の茶屋の復元が完了いたしました。さらに平成二十九年度の完成に向け、四棟目となる鷹の茶屋の復元を進めております。
 今後は、これら茶屋群を活用して、古文書から再現した将軍料理の食事会や茶会の開催など、往時の庭園文化を体験できる機会を拡充してまいります。
 また、ケンブリッジ公爵殿下にごらんいただいたライトアップを新たなおもてなしとして七月から試行し、汐留の近代的なビル群を背景に、幻想的な夜景を創出するなど、伝統と現代の対比を堪能できる浜離宮恩賜庭園のさらなる魅力の向上と活用に取り組んでまいります。
 次に、延遼館の復元に向けた取り組みについてでございますが、延遼館は、第十八代アメリカ大統領であったグラント将軍を初め、多くの外国要人を歓待した場であり、鹿鳴館誕生までの明治初期の外交の舞台でございました。
 文化財の復元に際しては、建造物があった位置を特定することが必要であるため、本年四月に地中探査調査を実施し、延遼館の基礎の位置を確認いたしました。また、五月には従来の迎賓機能のほか、展示や集会などの利活用について、関係各局で検討会を立ち上げております。
 今後は、平成三十二年の完成に向け、文化庁と復元のあり方に関して協議を重ね、設計を進めてまいります。現代によみがえった延遼館において、世界中のお客様を真心込めた和のおもてなしでお迎えをいたします。
〔環境局長遠藤雅彦君登壇〕

○環境局長(遠藤雅彦君) 二点のご質問についてお答えいたします。
 まず、環境性能の高い自動車の導入支援についてでございますが、自動車のCO2排出量は、年間約一千万トンと膨大であり、都内全体の総排出量の二割を占め、その削減に向けた取り組みは重要でございます。
 これまで都は、燃料電池自動車の普及を進めるとともに、燃費のすぐれた車両の利用拡大を図るため、中小事業者などを対象に、電気自動車やハイブリッドのトラック、バスに対して導入補助や融資あっせんを行ってまいりました。今年度からは、ハイブリッドのごみ収集車を補助対象に加え、制度の拡充に努めております。
 引き続き環境性能の高い自動車の普及に向けて、業界団体などと連携し、制度の周知を図り、導入補助や融資あっせんにより事業者支援を積極的に進めてまいります。
 次に、自動車のCO2削減に向けた取り組みについてでございますが、都は条例により自動車環境管理計画書制度を設け、三十台以上の自動車を保有する約千七百社に対して、環境性能の高い自動車の計画的な導入やエコドライブなど自主的なCO2削減の取り組みを促してまいりました。
 これにより、平成二十五年度の対象事業者全体のCO2排出実績は五年前に比べて約一三%削減されるなど、CO2削減は着実に進んでおります。
 第三計画期間が今年度で終了することから、今後これまでの取り組みを検証した上で、事業者の一層のCO2削減を促す仕組みを検討し、来年度から第四計画期間をスタートさせることといたします。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(河合潔君) 自転車利用者のルール、マナーについてでございますが、自転車死亡事故の約七割には、自転車側に何らかの違反があったとされております。安全利用のためには、まず、利用者自身のルール、マナーの習得、実践が不可欠であります。
 このため、都は、お話の法定講習の導入も踏まえ、自転車安全利用推進計画に基づき、交通安全教室やセミナー等を活用し、ルール、マナーの周知を図っております。
 具体的には、先月の安全利用キャンペーンにおいて、法定講習導入をあわせて周知し、より効果的に啓発するとともに、新たに自転車安全利用宣言証の交付や、PRサポーターを任命するなど、取り組みを強化しております。
 今月一日には、警視庁と街頭キャンペーンを実施したところでありまして、引き続きこの機会を捉え、関係機関と連携して、自転車の安全で適正な利用を推進してまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 品川駅西口地区についてでございますが、都は昨年、品川駅周辺地域のまちづくりガイドラインを改定いたしまして、新駅の整備や二〇二七年のリニア中央新幹線開業などを見据え、国際交流拠点の形成に向けまして、開発を計画的、段階的に進めていくことといたしました。
 お話の品川駅西口地区につきましては、優先整備地区の一つに位置づけ、国際会議場の整備など、羽田空港に近接する立地特性を生かした国際交流機能を充実させてまいります。
 また、環状第四号線の整備、延伸を図り、臨海部、六本木方面とのアクセスを向上させるとともに、品川の玄関口にふさわしい広場空間を整備し、広域的な交通結節機能を強化してまいります。
 今後、JR車両基地跡地など、他の優先整備地区との事業との整合も図りながら、地元区や地権者と連携いたしまして、世界の人々が集い交わる交流の拠点を形成してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) トライアスロン競技を通じました東京の魅力の発信についてでございますが、大会を成功に導くためには、オールジャパンの盛り上がりが必要であるとともに、広く世界に向けて東京の魅力を発信していくことが重要でございます。
 トライアスロン会場は、東京屈指の人気観光スポットである台場地区に位置しております。レインボーブリッジを望む臨海部の都会的な景観を背景に、世界のトップアスリートが競技を展開することは、それを目の当たりにする観客ばかりでなく映像を通じて世界中にこの地域の魅力を発信する格好の機会となります。
 今後、都としても、競技会場での観戦はもとより、パブリックビューイングやテレビなどのさまざまなメディアを通じまして東京の魅力を発信できるよう、組織委員会と協力し、取り組んでまいります。

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