平成二十七年東京都議会会議録第九号

○議長(高島なおき君) 三十六番大松あきら君。
〔三十六番大松あきら君登壇〕

○三十六番(大松あきら君) まず、教育について質問します。
 グローバル化が進む世界において求められる人材の要件は、国や文化の違いを超えて人間同士の交流ができるコミュニケーション能力であり、その土台となるのが語学力、英語力です。
 こうしたグローバル人材の育成を目指し、東京都教育委員会は、都立高校生の留学支援などに取り組んでいますが、同時に求められているのは、教員の授業力アップです。このため、都教育委員会は、中学、高校の英語科教員を海外の大学に派遣し、指導力と英語力を向上させる研修に力を入れています。こうした取り組みを高く評価します。
 一方、教員の海外研修は他のアジア諸国も実施しており、教育における国際的な競争時代が到来していることを実感いたします。平成二十六年度から始まった教員の海外派遣研修について、海外の教育関係者と切磋琢磨する機会をふやすなど、その内容を充実していくべきです。都教育委員会の所見を求めます。
 教育では、競い合うとともに、磨き合い、協力し合うことが大切です。子供の幸福を目指す教育者の心は、国を越えて響き合うものと考えます。こうした観点から、私はかねてより、国内外の現場の教育者同士の交流の場として、世界教育者サミットの開催を提案してきました。
 そして、その第一歩として期待されるのが、現在、シンポジウム形式で行われている教員海外派遣研修報告会です。ことし四月の報告会では、オーストラリア大使館、日米教育委員会の日本人職員も参加したと聞いていますが、今後は、外国人の教育関係者を参加させるなど、国際化時代の教育のあり方を議論すべきと考えます。都教育委員会の所見を求めます。
 次に、首都大学東京について質問します。
 グローバル人材を本格的に養成するのは大学です。中でも、首都大学東京は、世界一の国際都市を目指す東京都が設置した大学として、優秀な人材を輩出していくことが求められています。
 そのためにも、学内のグローバル化を進め、自由で寛容な気風を養うことのできる環境を整えることが大切です。こうした観点から、公明党は、これまで優秀な外国人留学生を戦略的に受け入れ、日本人学生との交流を活性化させることを提言してきました。この結果、首都大学東京の留学生の受け入れが、平成二十一年度の二百十五人から平成二十六年度の四百十四人へ大幅に増加したことを高く評価します。
 一方、首都大学東京の学生を一人でも多く海外留学に押し出していくことが重要です。教育内容を拡充し、より多くの学生が海外留学できるよう、グローバル人材の育成のための新たな教育プログラムが求められます。
 都としても、首都大学東京の取り組みを支援していくべきです。所見を求めます。
 次に、都立高校の中途退学の対策について質問します。
 平成二十五年度、約三千二百人の都立高校生が中途退学しました。高校を中退し、ハローワークに行っても、中学卒業者の求人数は高卒や大卒に比べて極端に少ないのが現実です。就労支援とともに、中退の未然防止、再就学に向けた取り組みが重要になります。
 都教育委員会は、公明党の提案を受け、中途退学者等を支援するため、都立高校の補欠募集の実施状況を公表することになりました。中退しても補欠募集という選択肢があることを広く周知し、希望を与え、再就学につなげていくべきです。
 都教育委員会は、不登校、中途退学対策の検討会議を立ち上げましたが、中途退学対策の検討内容について伺います。
 高校生の中途退学の大きな原因の一つは、学力不振です。授業についていけず、自信をなくし、不登校、中退につながっていきます。生徒が基礎的な学力を身につけることができれば、中退防止につながると考えます。都立高校生の基礎学力を定着できるよう、個々の習熟度に応じたきめ細かい教育に力を入れていくべきです。都教育委員会の所見を求めます。
 不登校や中途退学者を多く受け入れているのが、チャレンジスクールです。単位制で自分のペースで学習ができることから、入学希望者がふえ、選考倍率が高くなっています。通学の継続を支援し、中退を未然に防止し、高校生の育成に資するチャレンジスクールをふやしていくべきです。都教育委員会の所見を求めます。
 次に、官民連携再生可能エネルギーファンドについて質問します。
 東京都は、二〇二四年までに、再生可能エネルギー利用割合を二〇%程度にする目標を掲げています。
 目標の達成には、効率性が求められる経済と、地球と人間に優しい環境を両立させていくことが課題です。また、電力の大消費地である東京と、その供給地となっている地方との共存も不可欠です。特に、東日本大震災で被災した東北の復興支援は重要です。
 こうした視点に立ち、東京都は、官民連携再生可能エネルギーファンドの投資先を都内に限定する都内投資促進型と、東京電力、東北電力管内とする広域型をつくり、都の資金を呼び水に民間の資金とノウハウを活用して、クリーンな電力の導入を都内外で促進しています。
 一方、電力システムの改革は着実に進み、二〇一六年には小売が全面自由化されます。私たち個人も電力会社を自由に選べるようになり、電力会社が競い合う中で多様なサービスが生まれてくることが期待されます。
 消費者から見れば、より廉価な電力が望まれる一方で、地球温暖化や原発事故の影響を受け、クリーンなエネルギーを使いたいという人もふえています。
 今後、電力自由化が進展していく中においても、再生可能エネルギーの導入が促進されるよう、東京都の官民連携再生可能エネルギーファンドを活用していくべきです。舛添知事の見解を伺います。
 再生可能エネルギーを普及するためには、安定供給ができるかどうかも重要な課題です。しかし、現在、再生可能エネルギーの中で圧倒的にシェアが大きい太陽光発電は、昼夜の時間帯や天候により発電量が大きく左右されます。そこで、風力や水力、また、天候の影響を受けないバイオマスや地熱を加えるなど、電源の種類をふやせば安定的な供給ができるようになります。また、小売自由化後の都民の電力選択の幅を広げることにもなります。
 舛添知事は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、水素社会の構築を表明されています。水素社会もきわめれば、再生可能エネルギーから水素を生成する完全なCO2フリー社会です。そうした未来を展望しながら、電源の種類を多様化することで再生可能エネルギーが定着できるよう、同ファンドを活用していくべきです。都の見解を求めます。
 次に、災害対策について質問します。
 大規模災害が発生した際、救命救急とともに、被災者の命をつなぐ食料と水の確保が重要です。特に、炊事、洗濯、入浴など、衛生管理に水は欠かせません。
 都は、断水被害をなくすために、配水管の耐震継ぎ手化など対策を進めていますが、現時点において断水を完全に防ぐことは困難です。
 そこで、公明党は、浄水場などに応急給水拠点を整備することや、スタンドパイプを活用して消火栓から応急給水することなど、多様な給水方法を提言してきました。
 しかし、いざ発災し、各地で断水被害が発生したとき、どこで、どのような方法で応急給水が行われるのかを住民の皆様方に知っていただかなければ、円滑な給水活動はできません。
 そこで、発災時、多くの住民の皆様方が集まる身近な地域の学校などの避難所で、給水に関する情報を得られるようにするべきです。
 また、住民の防災意識を高めるためにも、そうした情報を日ごろから積極的に発信していくべきです。都の所見を求めます。
 次に、都営住宅の再生について伺います。
 昭和三十年代から四十年代に建設された都営住宅の建てかえが、今、各地で進められています。
 都営住宅では居住者の高齢化が進み、現在は世帯主の六割以上が六十五歳以上です。一方、建物は老朽化し、エレベーターがなく、玄関、トイレ、浴室がバリアフリー化されていない住棟も多数あります。
 私の地元、北区内で昭和三十年代に建てられた王子アパート、王子母子アパートには、エレベーターだけではなく、浴室もない住棟があります。
 この住宅がまだ建てかえられない理由は、地元北区との間で、同地域における将来のまちづくりの姿を描き切れていないためです。北区との協議を進め、高齢の居住者が速やかにバリアフリー化された新しい住棟で暮らせるようにするべきです。
 都営住宅が再生され、高層化されれば、余剰の土地が生まれ、その土地をまちづくりに活用できます。まちづくり支援の観点も含め、都営住宅における高齢化に対応した建てかえを推進するべきです。所見を求め、私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 大松あきら議員の一般質問にお答えいたします。
 電力自由化の中で再生可能エネルギーの導入促進に向けたファンドの活用についてでございますが、東京は、電力エネルギーを最も多く消費する都市であることから、大消費地としての責務を踏まえ、再生可能エネルギーの普及拡大に努めていくことが重要でございます。その手段の一つとしまして、社会資本整備の資金循環システムを構築すべく、東京電力、東北電力管内を投資対象地域とする官民連携再生可能エネルギーファンドを創設いたしました。
 このファンドは、再生可能エネルギーの導入はもちろんのこと、発電所の設置による未利用地の有効活用等を通じて地方の振興にも貢献するものであります。
 また、東京電力との間で比較的連系が容易な東北電力管内に投資し、発電設備を整えることで、東京は電力逼迫時に融通を受けることができます。つまり、このファンドは、東京と地方との間でウイン・ウインの関係を築くものでございます。
 今後の電力自由化により、電気の小売の全面自由化が実現すれば、さまざまな電源の中から環境に優しい電源を選ぶ消費者も出てくると思われます。都民が再生可能エネルギーを選択する余地を広げるという意味で、このファンドの役割は大きくなると考えております。
 今後とも、民間の知恵と資金を活用し、再生可能エネルギーファンドによる投資を推進してまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、教員の海外派遣研修の充実についてでありますが、昨年度は百三十九名の教員が、オーストラリア、アメリカでホームステイをしながら大学で最新の英語教授法を学び、現地の学校で授業を実践するなどして指導力を向上させてまいりました。しかし、その一方で、現地の教員や学生との交流の機会が限られ、授業の工夫等、議論を深める時間が十分確保できないといった今後の課題も見えてまいりました。
 このため、今年度は、現地校の教員と議論する時間を設けたり、アジア各国から留学している教員たちと同じクラスで授業を受けたりするなど、情報交換や交流の機会をふやして実施することとしております。
 今後、こうした改善の取り組みの評価や検証を行い、海外派遣研修の内容や方法をさらに充実させ、教員の指導力向上に取り組んでまいります。
 次に、教員の海外派遣研修報告会についてでありますが、昨年度の研修の報告会は、本年四月に、学校関係者三百人を集めて実施いたしました。ここでは、研修の成果を広く普及し、各学校における英語の授業に還元することを目的として、派遣者が学んださまざまな指導と評価の方法や、帰国後に行った授業の成果等について報告が行われました。
 また、学校におけるグローバル人材育成の取り組みにも役立てるために、大使館やJICAの職員、外国人指導者を交えてシンポジウムを行い、生徒が身につける力や英語教育の果たす役割等について活発に議論を行ったところでございます。
 今後は、派遣先の指導者や留学生、在京の外国人等を新たに招聘し、それぞれの視点からグローバル化に対応した教育のあり方や具体的方策等を幅広く議論し、提案する機会とするなど、研修成果のさらなる拡大を図るとともに、国際交流を深める場にもしてまいります。
 次に、不登校・中途退学対策検討委員会における検討内容についてでありますが、不登校や中途退学は、児童生徒の生活の乱れや学習のおくれを招き、社会から孤立した若者を生むことにもつながる重大な問題であります。
 とりわけ中途退学した者には、学校との関係が途絶えることにより、社会的自立に向けた支援を十分に受けることが難しいといった状況がございます。
 このため、本年五月に設置した不登校・中途退学対策検討委員会では、中途退学の未然防止対策はもとより、都立高校補欠募集制度を活用した再就学の促進や、ハローワーク等関係機関と連携した就労支援など、中途退学者の再チャレンジを可能とする支援策等について検討してまいります。
 次に、高校における基礎学力定着の取り組みについてでありますが、生徒一人一人に対して基礎学力の定着を図ることは、生徒が自信と希望を持ち、進路実現に向けた意欲的な学校生活を送ることにつながり、中途退学防止の有効な方策となります。
 そのため、都立高校では、学業不振の生徒に対する指導として、習熟度別の少人数指導や個別相談、補充指導などを実施し、基礎学力の定着に学校全体で組織的に取り組んでおります。
 今後、都教育委員会は、こうした学校の取り組みを一層推進するとともに、義務教育段階を含めて、つまずいた箇所を明らかにし、基礎学力を確実に定着させるための科目の開発や、学び直しを行うための放課後の補充指導の一層の充実について検討してまいります。
 最後に、チャレンジスクールについてでありますが、チャレンジスクールは、小中学校で不登校を経験した生徒や、高校を長期欠席等で中途退学した生徒などを主に受け入れ、学校生活を継続するためのきめ細かな対応を行い、社会的に自立できる力を育成しております。
 具体的には、学び直しのための基礎的な学習や体験的な活動などを取り入れるとともに、精神科医を学校医に任用するなど、教育相談体制の充実を図っております。生徒や保護者からは、このような取り組みが評価され、入学者選抜の応募倍率は高い状況が続いています。
 こうした状況を踏まえ、今後、都教育委員会は、チャレンジスクールの適正な受け入れ規模等について検討を行ってまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 首都大学東京におけるグローバル人材育成の取り組みについてでございます。
 大学では、これまでも海外留学に対する渡航費等の支援や留学協定校の拡大などに取り組んでまいりました。
 加えて、今年度から新たに海外留学を必修とした国際副専攻コースを開設いたしました。このコースは、通常の学生と同様に主専攻コースの科目を履修し、専門知識を得るのと並行して、一年間または一学期間留学し、海外の大学で単位を修得することを特徴としております。
 また、グローバル化の中、学問の進歩が特に著しい生命科学の分野において、今年度から、卒業単位を全て英語で履修可能な課程を新規に開講いたしました。
 このような取り組みにより、首都大学東京におけるグローバル人材の育成が推進されるものと考えており、都といたしましては、今後とも、大学の取り組みを支援してまいります。
〔会計管理局長塚本直之君登壇〕

○会計管理局長(塚本直之君) 電源の種類の多様化による再生可能エネルギー定着に向けたファンドの活用についてでありますが、太陽光発電については、設置が比較的容易である一方、日照量により発電量が左右されることから、電気の安定供給を図るには、他の発電方式の普及も必要であります。
 本ファンドも、神奈川県と埼玉県の太陽光発電所に加え、今般、青森県の風力発電所への投資を行いました。
 再生可能エネルギーへの投資については、各発電方式の特徴を認識した上で、それぞれの地域にある日照や風況、森林といった自然の資源を効果的に活用するという視点が重要であります。
 今後とも、ファンドを活用した多様な再生可能エネルギーへの投資について、リスク、リターンをしっかりと見きわめながら取り組んでまいります。
〔水道局長吉田永君登壇〕

○水道局長(吉田永君) 震災時の水の確保に関する情報発信についてでありますが、水道局では、避難所への管路の耐震継ぎ手化や応急給水資器材を貸与するとともに、区市町などとの合同の応急給水訓練を実施するなど、震災時の水の確保に取り組んでおります。
 お話のように、発災時に応急給水を円滑に行うためには、こうした取り組みの周知が重要であることから、局事業所で発行する地域広報紙などで、わかりやすくお伝えする工夫をしております。
 さらに、発災時に水の確保に関するより正確な情報がいち早く避難所に伝わるよう、今後は、断水情報や復旧見込みなど、局、事業所で把握した情報を直接区市町に提供するなど、取り組みを強化いたします。
 これらさまざまな取り組みにつきまして、日ごろからホームページや水道ニュースなど、各種媒体を活用してきめ細かく情報を発信してまいります。
〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 居住者の高齢化に対応した都営住宅の建てかえについてでございますが、昭和四十年代以前に建設された都営住宅は、建物や設備が老朽化し、エレベーターが設置されていない住棟も多いことから、居住者の移転先や地域のまちづくりの状況を勘案しながら建てかえを行っております。
 こうした都営住宅を対象として、今年度は三千八百戸を建てかえ、エレベーターの設置を初め、玄関や室内の段差解消、またぎやすい高さの浴槽の設置などのバリアフリー化を推進しております。
 今後とも、高齢者世帯にとっても、一層住みやすい都営住宅とするとともに、建てかえに伴う創出用地等につきましても、少子高齢化の進行を踏まえた地域のまちづくりに活用してまいります。

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