平成二十七年東京都議会会議録第四号

○副議長(藤井一君) 七番鈴木章浩君
   〔七番鈴木章浩君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○七番(鈴木章浩君) 本年は、戦後七十年目の節目に当たり、私たちは改めて、今日の豊かな社会の礎になられた方々へ、鎮魂の誠をささげさせていただくとともに、私たちに託されたこのすばらしい我が国の将来のために、責任を持って取り組んでいく決意を新たにさせていただくことが何よりも大切であると思います。
 さて、これからの我が国の将来を担うのは、ほかでもなく今日の若者たちであります。しかしながら昨今、若者たちの中で、夢や希望を持てなくなっている人たちがふえております。
 知事は、若者の力を大いに引き出すことこそ今後の社会の発展のかなめとして、非正規雇用の正規雇用化を三年間で一万五千人という数値目標を立て、集中的な取り組みを重点政策として位置づけられました。
 これまでの雇用政策は、日本企業の雇用慣行に適応するように制度整備がなされてきました。しかし、経済のグローバル化と情報通信技術の進展により生じた雇用リスクを雇用調整として労働者に負担させるようになり、構造変化に雇用政策が十分に追随できていないのが現実であります。特に、非正規労働者に対する政策は後手に回っており、このことが格差問題の要因となっている面もあります。
 しかし私は、今日の社会に求められる雇用形態の中で、非正規雇用の全てが問題と捉えるのではなく、雇用される側に対する政策を充実させていくことが何よりも大切であると考えております。
 そこで具体的に、まず、中小企業への若者の就職を促進し、定着につなげていくために、若者を雇用するに当たって、採用実績や定着状況、社内教育やキャリアアップ状況、長時間労働の有無など、就職を判断するために必要な情報を積極的に開示していくべきであります。
 また、若者の正規雇用が進展したとしても、就職した会社の職場環境が劣悪であり、若者が使い捨てのように扱われることがあってはなりません。今後、都が全雇用の六割を担う中小企業の現場の声に十分に対応していただきたいと思います。
 そこで、知事の思いを受けとめ、非正規雇用対策を一過性の取り組みに終わらせることなく、都は国と連携して、良好な職場環境を兼ね備えた企業をふやすとともに、若者が就職に必要な情報を入手し、適切に判断できるように責任を持って取り組んでいくべきであると考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 さらに、非正規雇用対策に関連して見逃せない重要な課題が外形標準課税の中小企業への適用拡大についてであります。
 平成二十七年度税制改正では、法人実効税率の引き下げとともに、その代替財源を確保するため、資本金一億円超の法人について外形標準課税の拡大が図られました。外形標準課税は、法人所得に対して課税するのではなく、資本金や給与総額などに対して課税するものであり、行政サービスの受益者が広くその費用を負担するという応益税としての性格を有しています。
 黒字企業か赤字企業かにかかわらず、一定の行政サービスを受けていることからすれば、体力のある大企業等に応分の負担を求めるという趣旨は理解でき、私はこの外形標準課税自体に異を唱えるものでありません。さらにいえば、税収の安定に資する重要な税源であると認識しています。
 しかしながら、平成二十九年度に消費税率一〇%への改正が決定している上で、外形標準課税のさらなる適用拡大となりますと、その様相は異なります。今回の税制改正の対象となった資本金一億円超の法人は、全国の法人数のわずか一%であり、残り九九%、数にして二百五十万社は、中小規模の一億円以下の法人です。このうち、黒字企業は三割にすぎず、赤字企業は七割の百七十七万社に上ります。今回の税制改正において、中小規模の法人への適用は見送られたところですが、外形標準課税の対象を中小規模の法人へ拡大することは、ぎりぎりの中で経営している赤字企業に大きな影響を及ぼします。
 また、中小企業は、収益の約八割を賃金の支払いに充てており、内部留保が少なく、経営基盤が脆弱なことから、正規雇用化や従業員の処遇改善を抑制するおそれがあり、知事が目指す非正規雇用対策に水を差すことになります。
 そこで、非正規雇用対策を強力に推し進める知事の思いを改めて伺うとともに、外形標準課税の適用拡大による中小企業への影響についての見解をあわせて伺います。
 次に、在宅療養について伺います。
 二〇二五年には、団塊世代が七十五歳以上の後期高齢者になり、今後、高齢化が急速に進展することで、医療や介護を必要とする高齢者の数も大きく増加していくことが見込まれています。
 こうした中で、国は医療介護体制をしっかりと整備していくために、昨年の六月に医療介護総合確保推進法を制定し、既に医療分野においては、十月より病床機能報告制度がスタートしました。
 一方、医療や介護が必要なひとり暮らしや夫婦だけで暮らす高齢者の方々の住まいを確保しながら、生活を支え、医療、介護、両面からサポートをしていく地域包括ケアシステムも、二〇二五年に向けて区市町村を中心とした地域でのシステムづくりが、ことしの四月から始まることになっています。
 医療介護総合確保推進法の柱は、国が主導で全国一律に進めるのではなく、地域の特性に応じたものをつくっていくことであり、その主体が都道府県に移ったことであります。
 都は、区市町村の主体的な取り組みを推進するため、さまざまな支援を行っていますが、在宅療養のコーディネートをする窓口の設置が進んでいない地域もあり、たとえ医療と介護の連携が進んできても、実際に在宅医療を提供する医療機関や訪問看護ステーションが不足していれば、在宅療養は成り立ちません。
 また、他職種連携というキーワードはよく出てきますが、医療と介護の連携が図られ、それぞれの専門職が顔の見える関係の中でしっかり役割分担ができているのか、まだまだ取り組みは緒についたばかりです。
 在宅療養は、病院から在宅への移行をいかに円滑に行うことができるかが鍵になります。在宅療養を望む患者や家族の不安を解消し、その思いを実現していくためには、入院した病院において、患者の入院中から退院後の生活を見据えた退院支援を行い、患者や家族が安心して在宅療養生活へ移行できるようにしていくことが重要です。
 そこで、病院における退院支援を進めていくための都の取り組みについてお伺いいたします。
 とりわけ、二人に一人が罹患する可能性のあるがんは、医療の進歩により早期に発見され、治療を適切に受けることによって完治することができる病気になった一方で、がん診療連携拠点病院等で治療を受けた後、在宅で継続して緩和ケアを受けながら療養生活を送る方もおられます。
 緩和ケアは、診断されたときから治療に伴う副作用やがんの苦しみに対して、切れ目なく提供されることが重要ですが、在宅においても適切な緩和ケアを受けることで、患者の療養生活の質を高めることができます。
 しかし、がん患者は、病状の進行が早く急変することも多く、二十四時間対応が可能な在宅緩和ケアや、みとりまで行う在宅医や訪問看護師がまだまだ不足していることや、緊急時のバックアップヘッド機能の確保といった体制整備について困難な課題があります。
 また、患者、家族の不安やストレスが大きく、介護力の弱い家族や独身の方の場合には、対応が困難になり、入院を希望されるケースもあります。
 これらの課題を解決するために重要なことは、地域にある在宅緩和ケアのリソースを最大限に活用していくべきであると思いますが、在宅緩和ケアを担うことができる診療所や訪問看護ステーション、医療用麻薬を取り扱う薬局等の情報も不足していると聞いております。
 二〇〇七年六月に、がん対策推進基本計画が閣議決定され、ことしは十カ年の基本計画の後半の半ばに差しかかっております。
 今後、がん患者が安心して在宅でも緩和ケアを受けられるよう、都として責任を持って積極的に支援する必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
 総合防災訓練等を通じた情報力強化についてお伺いいたします。
 ことしの三月十一日で、あの東日本大震災から四年が経過いたします。いまだ避難生活を余儀なくされている方々に対し、一日も早く安心した生活が送られますよう心より祈念申し上げます。
 さて、巨大津波により東北地方の広域にわたって甚大な被害が出たことは、いまだに記憶に新しく、我々は、この想定外といわれた災害を教訓に、都民の安全・安心を守る取り組みを進めなくてはなりません。
 都は、この四年間に、首都直下地震や南海トラフ地震発生時の被害想定を見直し、それに基づき、地域防災計画を修正、さらに昨年四月には、各機関の連携手順等を定めた首都直下地震等対処要領を策定するなど、着実に取り組みを進めています。
 今後は、こうした諸計画をもとに、大規模災害が発生した際に、関係機関が活動できるよう取り組む必要がありますが、その際に、特に重要なのが情報であります。
 大規模災害時には、自衛隊、警察、消防はもちろん、国や都、区市町村、消防団など、さまざまな機関が連携協力して、救出救助活動を展開していかなければなりませんが、火災発生の状況や、道路、鉄道などの被害情報に加え、各機関に対する指示内容や動きなど、災害時に、さまざまな情報を速やかに収集、整理、伝達、共有していくことが必要であります。
 大切なことは、こうした情報の取り扱いを災害時に確実に実現することであります。そのためにも、総合防災訓練等の機会に、関係機関が協働して実践し、確認、検証を行っていくことが重要であると考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、大規模災害時の広域的な支援について伺います。
 東日本大震災の際には、多くの都民の方が何かの支援をしたい、手を差し伸べたいと声を上げられ、実際に被災地の方々がどのような支援を望んでいるのか、支援をするにはどうすればよいのかという問い合わせが多かったと記憶しています。
 当時、都は、被災地が求める支援内容を把握するため、速やかに現地に職員を派遣しました。現在、南海トラフ巨大地震の発生など懸念されていますように、近い将来、大規模な災害が他の地域で起こらないとも限りません。
 こうした大規模災害に対し、とうとい志を無にしないために、そして、一般の方々に対して、迅速かつ正確に情報提供するために、災害発生時の支援等を行うための体制を事前に整備していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 最後に、羽田空港へのアクセス強化に資する道路整備についてお伺いいたします。
 羽田空港では、平成二十六年三月の発着枠の拡大により、昼間の国際線発着枠は六万回へ倍増し、就航都市数も三倍以上に拡大されました。そして、現在、さらなる機能強化の検討も進められているところであります。
 私は、増大する空港利用に対応した円滑なアクセス確保の必要性をかねてから訴えてきました。
 羽田空港に直接つながる国道三五七号の整備は、空港への円滑なアクセスを確保し、空港周辺の渋滞対策の視点から大変重要であり、リダンダンシー機能を確保するためにも不可欠であります。
 昨年の私の予算特別委員会での質疑の後、いわゆる神奈川口の整備と一緒に、国道三五七号の延伸をすることになったと聞いておりますが、機能強化を進めようとする取り組みと相まって、早期に整備することが何よりも求められます。まだまだ国や川崎市と話が詰め切れていない中で、多摩川トンネルの整備を最優先で進めるべきであります。
 また、中央環状線の一つ外側の外環では、現在、千葉区間は平成二十九年度、関越道から東名高速間は平成三十二年早期の開通を目指し、整備が進められております。しかし、計画が具体化していないことから、都市計画上の手続など大変な時間を必要としますので、早い段階での取り組みが期待されます。
 そこで、国道三五七号や外環の東名高速から湾岸道路間など、羽田空港へのアクセス強化に資する道路整備に対しての都の見解をお伺いいたします。
 以上です。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 鈴木章浩議員の一般質問にお答えいたします。
 非正規雇用対策と外形標準課税についてでありますが、人々に元気の源を供給するのが政治の役割であります。家庭が暗くなる大きな原因の一つは、失業することであります。
 安定した仕事がなければ、将来の展望も描けないことから、私は、非正規雇用対策を重点政策として位置づけ、来年度から、正社員としての就職の推進や社内における正社員への転換促進など、積極的な支援を展開してまいります。
 安定的な雇用の実現に向けて、非正規雇用対策を推進していく上で、地域の雇用を生み出している中小企業は重要な存在であります。
 その中小企業を支えているのは、そこで働く人々であります。企業収益に占める人件費の割合は、大企業の六割に対し、中小企業は八割に上っており、労働分配率が高いことが中小企業の特徴となっております。
 こうした中小企業の経営構造や地域経済で果たしている役割を考慮すれば、単純に外形標準課税の対象を拡大した場合、中小企業や、そこで働く人々に大きな影響を及ぼしかねないと思います。
 外形標準課税の中小企業への拡大は、課題が大きく、慎重であるべきだと認識しております。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 非正規対策を通じた若者の就職支援についてでございますが、若者が就職に当たり、詳細な企業情報や採用情報を手に入れ、活用できるようにすることは重要でございます。
 都は来年度、若者の採用や育成に熱心な若者応援企業を対象に、正規雇用化を促す奨励金を創設し、情報開示に積極的で職場環境が良好な企業の拡大につなげてまいります。
 また、地域人づくり事業におきまして、若者の定着など魅力ある職場づくりに意欲的な企業の支援を開始いたします。
 さらに、しごとセンターでは、若者向けに詳細な企業情報を提供するとともに、セミナーの中で企業を見る目を養う観点から求人票を読み解くポイントなどを紹介しており、引き続き実施してまいります。
 今後とも、一人でも多くの若者が良好な職場環境の企業に就職し、みずからの希望に応じて働けるよう支援をしてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、病院における退院支援についてでありますが、都はこれまで、患者や家族が安心して在宅療養に移行できるよう、退院後に向けて入院早期から取り組むべき事項を段階ごとにまとめた退院支援マニュアルを作成するなど、医療機関の退院支援の取り組みを支援してまいりました。
 また、今年度から、二百床未満の指定二次救急医療機関に対し、入院患者の在宅への移行支援を行う看護師等の配置を支援するとともに、こうした人材を育成するための研修カリキュラムの作成に取り組んでおります。
 来年度からは、このカリキュラムを活用して、全ての病院を対象とする研修を実施するほか、退院調整や地域の医療と介護の連携に取り組む看護師等を配置する中小病院への支援を行うなど、病院から在宅療養への円滑な移行を一層推進してまいります。
 次に、がん患者の在宅緩和ケアについてでありますが、都はこれまで、がん患者が病院から在宅まで切れ目なく緩和ケアを受けられるよう、がん診療連携拠点病院を中心に、地域の医療機関の連携体制を構築するための緩和ケア連携推進会議の設置や、医療従事者等を対象とした研修会などにより、地域緩和ケアの水準の向上に努めてまいりました。
 来年度は、がん患者や医療従事者等が地域の医療資源の情報を得られるよう、医療機関、訪問看護ステーション、薬局等における緩和ケアの取り組み状況等を把握し、東京都がんポータルサイトで発信してまいります。
 今後とも、がん患者が安心して在宅で療養できるよう、地域における緩和ケア提供体制の充実を図ってまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 防災対策についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、災害時の情報共有等の実現についてでございますが、大規模災害時に円滑に救出救助活動を行うためには、都と区市町村の間はもとより、自衛隊、警察、消防等や医療関係者、応急対策を行う民間団体など、さまざまな関係者の間で、迅速かつ正確に情報を共有する必要がございます。
 発災時に、まず必要な情報は被害状況であり、警察、消防、区市町村等が情報収集いたしますが、都も区市町村等へ職員を派遣し、本部で集約、整理し、関係者間で共有いたします。
 また、各機関の活動については、昨年四月に策定いたしました首都直下地震等対処要領で連携内容や手順を事前に明らかにし、災害時に相互の活動を把握しやすくしております。
 今後とも、災害時の情報収集や共有を円滑に図れるよう、多数の関係者の参加を得て、実践的な訓練等を実施し、確認や検証を行いながら、不断の改善に努めてまいります。
 次に、大規模災害に対する支援体制の整備についてでございますが、大規模災害が発生した際には、被災自治体のみで対応することは困難であり、国を初め、ほかの自治体や被災地以外の市民による支援が求められます。
 被災地支援に際しては、被災者のニーズを的確に把握することが重要であり、平時から自治体間で相互支援のための取り組みを定め、訓練等を重ねておくことが有効でございます。
 このため、都は、九都県市や全国知事会、関西広域連合等と災害時相互支援協定を締結し、支援内容や手順に関するマニュアルを定め、総合防災訓練等を通じて、相互の情報連絡や物資運搬方法等について検証を行っております。
 今後とも、自治体間の連携を強化することで、大規模災害時における被災地の情報を都民に対して的確に提供できるよう取り組んでまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 羽田空港アクセスに資する道路整備についてでございますが、国際線の増便など機能強化が進む羽田空港のポテンシャルを一層引き出すためには、空港と首都圏の拠点とを結ぶ広域的な道路ネットワークの形成が重要でございます。
 空港に直結する国道三五七号につきましては、事業中の東京港トンネルに加えまして、多摩川トンネルの整備を進めることで、昨年、関係者間で合意いたしました。
 また、外環の湾岸道路までの区間につきましては、空港アクセスの強化とともに、首都圏の高速道路ネットワーク機能を最大限に発揮させるために整備が不可欠でございまして、国に計画の早期具体化を引き続き強く求めてまいります。
 今後も、羽田空港へのアクセス強化に資する道路整備の推進を国に強く働きかけてまいります。

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